先日、しりあがり寿presents 新春!(有)さるハゲロックフェスティバル'25〜あなたとわたしの温泉郷〜にThe Pen Friend Clubで出演し、イベントのテーマ曲だった「いい湯だな」を演奏した。
これまで子供の頃にテレビで親しんだ "ドリフの曲" という認識だったけれど、この機会に改めて聴いてみると、なんとも他にないような風情がある曲だなと思う。この曲はもともと群馬県のご当地ソングだそう。「上を向いて歩こう」の作詞でも知られる作詞家永六輔と、「手のひらを太陽に」「ゲゲゲの鬼太郎」などの作曲家いずみたくが、日本各地を旅して作りあげた『にほんのうた』シリーズのひとつだそうだ。1965年から1969年にかけて発表されたこのシリーズの題材が46都道府県と本土復帰前の沖縄になっていて、全部で52曲ある。
シリーズの歌い手に選定されたのはNHKの音楽バラエティ番組『夢であいましょう』のレギュラー出演などで活躍していたコーラスグループ、デューク・エイセスだった。黒人霊歌を得意とし、ジャズや落語、童謡など、幅広い分野をレパートリーに取り入れているグループということもあって適任と考えられた。取材の旅にはデューク・エイセスが同行することもあったらしい。
1965年に発表された、京都を題材とした「女ひとり」は「いい湯だな」と同様に歌いつがれているヒット曲。〽︎きょうとおおはらさんぜんいん、の歌い出しには聴き覚えがある。この曲のヒットで大原・三千院への観光客は急増したという。
「いい湯だな」は、翌年1966年に発表された。ドリフターズ版では歌詞の舞台となる温泉地の範囲が広がっていたけれど、デュークエイセスの原曲では上州の温泉について歌われている。
『にほんのうた』シリーズの内容は楽しげなものや情緒溢れるものなど様々だけれど、一定層から注目を集める1969年発表の「クンビーラ大権現」などは異彩を放つ。
この曲の題材になっている香川の金刀比羅宮(ことひらぐう/ 愛称: こんぴらさん)は明治元年の神仏分離令が出される以前は、神道と仏教が融合された神仏習合の神、金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)が祀られ、海上交通の守り神として特に船のりから信仰されていたそう。「金毘羅」の語源がサンスクリット語の「クンビーラ」で、歌詞に出てくるようにこの「クンビーラ」とはガンジス川に棲むワニが神格化された水神のこと。「大権現」は神号で、仏、菩薩が衆生を救うために仮の姿で現れたものを尊んで呼ぶそうだ。
『にほんのうた』シリーズは、今では私がそうだったように「いい湯だな」や「女ひとり」などの曲単位でしか知らない人も多いようだけれど、シリーズとして聴いてみるとまた味わい深い。
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