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2024年11月1日金曜日

shino kobayashi / small garden:『Mijn Nijntje(“私のナインチェ”)』


 今年2月に8年振りのアルバム『The Wind Carries Scents Of Flowers』(*blue-very label*/ blvd-043)を発表した、シンガー・ソングライターの小林しのが、同アルバムに2曲でアレンジャーとして参加したSmall Gardenの小園兼一郎とのタッグで7インチEP『Mijn Nijntje(“私のナインチェ”)』(blvd-051)を11月3日の「レコードの日」にリリースする。
 オランダ語のタイトルを持つ本作は、架空のサウンドトラックというコンセプトで『The Wind ・・・』でのコラボレーションの続編と言うべきサウンドに仕上がっている。アレンジと全演奏の他、ミックスとマスタリングも小園が担当し、アートワークはスリーヴ・デザインの岩渕あすかとジャケット・フォトのdavis k.clainという2人で、同じブルーベリー・レーベルからリリースされている、女性シンガー・ソングライターのツキトウミの諸作も手掛けている。

小林しの

Small Garden・小園兼一郎

 弊サイトでこれまでの作品を高評価していた両者のコラボは、小林のセカンド・アルバム『The Wind ・・・』収録の「5メートルの永遠」と「海の底で」でその成果を感じていたが、本作では更に深化して魅力的なサウンドに仕上がっているので、収録曲を解説していく。
 サイドA冒頭の「Garden's Gate」は、小園が作曲したスキャット入りボサノヴァ・インストルメンタルの小曲で、フルートを含め全ての演奏を小園が担当している。スキャットは二人によるもので、サウンド的には『ランプ幻想』(2008年)時のLampにも通じた独特の音像である。
 続くタイトル曲「私のナインチェ(Mijn Nijntje)」は、小林のソングライティングだが、小園のアレンジによりSmall Gardenの諸作に近く、引き算の美学で音数を整理し空間系エフェクターで処理されたサウンドは、小林のファンシーなボーカルをよく引き出して視覚的歌詞を浮かび上げている。柔らかい音色のシンセサイザーのフレーズやモジュレーション・ディレイの処理など、トーマス・ドルビーが手掛けていた頃のプリファブ・スプラウトを彷彿とさせて、好きにならずにいられない。

 
短編映画サントラ"Mijn Nijntje ~ 私のナインチェ" trailer (blvd-051) 

 サイドBの冒頭「A Tsui A-KI」(暑い秋?)は小園作のインスト小曲で、ソプラノ・サックスがリードを取り、フルートのアンサンブルにピアノとヴィブラフォン、パーカッションによる編成で演奏される。マルチ・プレイヤーである小園の才能がここでも発揮されている。
 続く「summer in blue jelly」は小林のソングライティングで、本作収録の歌物の一曲で、彼女の作風を活かすべく、ベースとドラムのリズム隊にエレキギターが入るギター・ポップ風ながら、他の楽器を加えて全体的な音像をSmall Garden印に持って行くのが小園らしさだろう。 休符を活かした表情豊かなニュアンスのソプラノ・サックスのソロ、エレキのカッティングのトリートメント、ウィンドチャイムやチャフチャスといったパーカッションまで使用しており、繊細なミックスも非常に素晴らしい。
 ラストの「Garden's Gate part 2」は、小園作のスキャット入りインストルメンタル小曲で、小林作の「Garden's Gate」の変奏曲ではない同名異曲だ。こちらはアコースティック・ピアノとエレピ、アコースティックギターだけのシンプルな演奏に、小林の一人多重スキャットが乗るミニマル・ミュージックで、後ろ髪を引かれるノスタルジーを感じさせる。
 
 全体的に小園のサウンド・プロダクションに信頼を置いている姿が、”shino kobayashi in Small Garden”といったファンタジー・ワールドを観ているようで、『The Wind ・・・』リリース時の小林へのインタビューで語っていた小園へのシンパシーを改めて感じさせた。

「小園さんの作品の優しい太陽の日差しのようなオーガニックな音作りや、反対に深夜のよ うな暗さがあるところも好きでした。 小園さんの携わる音楽の、緻密だけれど自然体で、計算されているような、されていないような、華やかなのに派手ではない不自然ではないところが好きでした。」

 数量限定の7インチEPなので、筆者の詳細レビューを読んで興味を持った音楽ファンは、リリース元レーベルのオンラインショップで予約して確実に入手しよう。

*blue-very label*オンラインショップ:


【小林しの出演イベント:11月のフィリアパーティー
〜Harmony hatch 25th anniversary〜


11月恒例のレーベルイベントです。
小林しのはファーストキャリアのバンドHarmony hatchセット。
Abebeによるユニットarchaic smileは、初期メンバーで現在は作詞家として
活動する磯谷佳江を迎えた貴重な編成。
また名古屋からthe vegetablets、山口からshinowaが東京に集結。
DJはtarai、そしてブルーベリーレーベルの出店、物販も充実です。

2024/11/17(日)
mona records
11:30 OPEN 
12:00 START
出演 :
archaic smile
(Abebe with Yoshie Isogai)
the vegetablets
shinowa
小林しの(Harmony hatch set)
DJ : tarai(hdht!)
Store : blue-very label
前売¥3000+1drink
当日¥3500+1drink

もしくは各出演者まで 。


(テキスト:ウチタカヒデ


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