七夕の日であり短冊CDの日でもある7/7にリリースしました、僕と田中友直さんとのユニット、BABY JOHNSONZのデビュー短冊CD『BABY JOHNSONZ E.P.』をWebVANDAの読者の皆さまは当然手に入れて下さってますよね!?
僕は信じてますよ!
インストゥルメンタルばかりを収録した短冊CDになっておりまして、中々無いものを作ったぞ!と自負しております。まだ買ってないよ!って方はお急ぎください。今回は我々BJzが製作費を全額負担しているので流通枚数が極端に少ないのです。
という事で今回のコラムは『BABY JOHNSONZ E.P.』についてです。
※関連記事:短冊CDの日★Wink Music Service / 平野友里(ゆり丸)/ フレネシ>こちら
と、その前に。
「わたくしのオフコース -3- 」で取り上げました『ワインの匂い』について、読者の方々から幾つか有力な情報を頂きまして、調査に進展がありました。
本当にありがとうございました。めっちゃ嬉しい。
次回にでもその辺りをふれますのでお楽しみに。
話題は少し逸れます。
最近の僕のXのタイムライン情報ですが、オフコースのシングルが売れているっぽいのですよ!
初期プレスを集めるなら今のうちかもしれませんね。なんてね。
BABY JOHNSONZ
(左から吉田哲人、田中友直)
さて本題のBABY JOHNSONZについてです。
突然ですが、皆さんは「DAT(ダット、ディー・エー・ティー、Digital Audio Tape)再生できない問題」をご存知でしょうか。
近年ごく一部で話題となりましたが、ざっくり説明をしますとDATには曲毎にCDと同様にIDを打つことが出来ますが、そのIDが何らかの原因で消える事で再生が出来なくなる現象が起こっているようです。
実はその話題が出る数年前に、僕もこの現象により聴けなくなったDATが存在していたので、生き残っているDATを早めにサルベージし作品化しなければと思い、作ったのが僕の『The World Won’t Listen』Disc2なのでした。
閑話休題。
どうもこの現象を気にした田中友直さんがDATをサルベージする作業をしたらしく、
「DAT整理したりして昔のデータでてきたんで送ります、一瞬二人でやろうとしていたJOHNSONSというやつの。」
というメールと共に送ってきたのが今回の短冊CD収録の「SLOW DANCE」「ONE」の元となった楽曲でした。
久々にこれらを聞いて記憶よりも出来が良かったので、
「手を加えてこれをリリースしましょう。ただ、〆切決めないとウチらまた何もやらなくなるから短冊CDの日に出すのはどう?」
と、持ち掛けたのでした。
その後、制作はメールのやり取りのみで進められ、よくよく考えればZOOM等使えば良かったのですが、顔を見る事なく声も聞く事なく無事完成となりました。
(ハウス系イベント@心斎橋/1997年頃)
さて、BABY JOHNSONZはわたくし吉田哲人と、私の出身校である大阪芸術大学芸術学部音楽科音楽工学コースの、直の先輩である田中友直さんとのユニットです。
田中友直さんはWebVANDA読者の方にはお馴染みの、フレネシさんの最初期の作品(京都のレーベルBAMBINIより)でエンジニアとマニピュレーターを務めた人です。
田中さん曰く、我々のユニット結成時期はDAT音源の制作環境から1998年くらいのようです。
当時のユニット名はJOHNSON and JOHNSONSでしたが、今、その名前でデビューするのは怒られ案件かなあと思い、ジョンソンズ残しで現在の名前としました。
個人的には、いつかユニット組むことがあったら「Baby Lemonade」みたいな名前がいいなと思っていたので気に入っています。
結成時期の記憶が薄いのですが、当時、僕がSportscut(スポーツカット)という独りユニットをやっており、この時期の作風はラウンジ・ブレイクビーツものにスクラッチやコラージュをのせるスタイルだったので、それらを聞いて一緒にやれると思ったのか、
「なんかスクラッチとかネタに使えそうなレコード持ってきて。」
と、声をかけられた事から旧JOHNSONSが始まるのでした。
BABY JOHNSONZ e.p. Trailer
1. POLE SHIFT
制作順で言えば1番新しい曲。原曲は「SON (of) POLE SHIFT」。
当初の予定では、TB-303が中心でハッキリしたメロディは無し、ワンコードでビルドアップしていく所謂ワイルド・ピッチ・スタイルの楽曲を目指していたのですが、
「悪くはないんだけれども、良いとは言い切れない…」
と、放置していた曲を田中さんに投げて何往復かをしているうちに「POLE SHIFT(ver.1)」が完成しましたが、
「悪くはないんだけれども、共作とはいえ、いま吉田哲人の曲として出すべきものなのかな…」
と考え、自分がテクノに拘りすぎてると感じたので、テンポを落とし愛用しているNord Grandでコード進行をつけたところ、納得がいくものになる確信を得たのでシンセを色々足して、303を使ったチルなテイストの「POLE SHIFT(ver.2)」をいったん完成させます。
そのヴァージョンを数日は気に入っていたのですが、
「雰囲気モノとしては良いけれども、テーゼに乗っかりすぎて自分らしさが少なくないか…?あと、多分一曲目に収録するだろうけど、そうするとリードとしては曲が弱くないか?」
と思ってしまい、作れるのにわざわざメロディを封印するのはむしろ不自然ことだと考え、メロディを新たに作りテンポも元に戻し、更にテクノだからと言って僕の歌声が入ってない事もやはり不自然だと感じたので、ハーモニー・パートを作って遂に完成となりました。
あまり無いテイストの曲になったし、ずっとループして聴ける8小節の良いメロディを作れたのは『The Summing Up』『The World Won’t Listen』の制作を経た、今だから、と我ながら思っております。
2. SLOW DANCE
当時、レコードを持って田中さんのスタジオに行くと、この曲の原型がある程度出来ており僕はあまりやる事がなかったので、このトラックではスクラッチをしてます。
当時のNinja TuneやMo’ wax、Rephlex辺りの作品を二人とも好んでおり、ビートの効いたラウンジものといった感じでしょうか。
僕の記憶では、展開をつける際に「田中さんのあの曲みたいにEnsoniq ASR-10を使って、ここをこうして~」「エンディングはこういう感じで~」の様なアイディア出しをしました。
今回、発売にあたり当時よく見られた、変化もないのに妙に長いクラブトラックを意識した構成にメスを入れて、タイト目の変化に飛んだ楽曲になる様にエディットを施し、楽器も追加しました。
この曲は当時の田中さんのビート感がよく表れていますね。
(TANZAKU CD FESTIVAL 2024)
3. ONE
僕の機材がない慣れない環境とはいえ、せっかくユニットを組んだので何か作りなよ、という空気になり、田中さんにマニピュレーターになってもらい、持っていってたレコードから6/8のビートを作り、最初のパートのコードとホルンの様なシンセのフレーズ、ヴィブラフォンのメロをある程度作ったのを覚えてます。
その後、田中さんがヴォコーダーや途中の展開、ベースラインを作って元曲の完成としました。ヴィブラフォンやオルガンの音などは、当時のフレネシさん楽曲の音色に通ずる様に思います。
今回は「SLOW DANCE」同様、タイト目なサイズ感に変える事と、展開とメロディを追加、そして、元曲のドラムが当時のチープなラウンジもののビートにより過ぎるかなと判断し、リッチな響きになる様に新たなドラムパートを全編にひきました。
当時を思い返すと「メンバーといっても、大して何もやってないしなあ…」という感情が真っ先に浮かんできますが、今回、エディットや追加音源を制作する事によって漸く自分もJOHNSONZに参加しているんだと実感しました。
4. SON (of) POLE SHIFT
POLE SHIFTの別ヴァージョン。通称;サンポール。
LFO「Tide Up - Acid Mix」の様なタイトルにしようかと思ってましたが、あまり面白味を感じられず「Acidって酸だよな…」というところからの駄洒落に。
因みに「Son of ~~~」というタイトルで僕が真っ先に思いつくのが「The Mighty Dub Kats! - Son Of Wilmot」でしたが、田中さんは「TOWA TEI - SON OF BAMBI」らしいので、各々がどういう音楽を好むかがここに表れているような、無いような…。
経緯は概ね「POLE SHIFT」に書いたとおりなので繰り返しになりますが、悩みつつも田中さんが作ったフレーズによって自分が当初予定していたよりもいい楽曲にはなったし、共作にもなった。ただ…というところから色々経て「POLE SHIFT」の完成をみた訳ですが、一方、完成した後アーリー・ヴァージョンのであるこちらを聞き直したら全然悪くない。むしろ共作感はこちらの方に出てる。とはいえ、リード曲とするにはユニットのコンセプトから外れているので、ボツにはせずにこちらはこちらで更にブラッシュ・アップして収録しました。
このコラムを読んでCDを聴いて頂けると、僕が何を基準にボツと考え、また、どの様に作業してゴールへ向かうかが垣間見えるかと思います。
(TANZAKU CD FESTIVAL 2024)
最後に。
WebVANDAさんのXでのポストがきっかけで、田中友直さんとフレネシさんが旧交を温めている様子を見てふと、当時、僕が田中さんたちの様子を見ていて「田中さんをはじめ、みんな才能があるから、ここに自分の居場所はない。どこか別の居場所を見つけないと…とは言うものの…」と、周りの友人には見えない/言えない悩みを抱えていた事を思い出しました。僕が悩んでる間に田中さんが忙しくなっていったのもあり、旧JOHNSONSは宙ぶらりんで休止となったのかな、と今の僕は考えているのですが、田中さんにはどう見えているのでしょうね。
その後、運よくマニピュレーターとして声をかけられたので僕は上京するのですが、田中さんの作業を見ていなければ、僕はマニピュレーターになっていなかった様に思いますし、そうなるとひょっとすると今の僕はいなかったのかもしれません。人生は何があるか分かりませんね。
その様なbittersweetな思い出のトラック達を再構築、更に新曲まで作ってリリースするには、この年齢になるまではやはり無理だったのかもなあ、とライナーノーツを書きながら思ってました。
このセルフ・ライナーノーツはあくまで僕からの視点でしかないのですが、如何だったでしょうか。田中さん視点が入ればもっと違った印象になるかもしれません。
このライナーノーツがテクノは苦手だからどう聞けば良いの…という方への手引きとなれば幸いです。
※短冊CDの日オフィシャルサイト:https://tanzaku-day.jp/#release2024
(各紹介作品のオンラインショップ・リンク付)
※DiskUnionオンラインショップ:https://diskunion.net/jp/ct/detail/1008868220
アイドル楽曲界の奇才、稀代のメロディメーカー吉田哲人と、彼の大学の先輩であり、サウンドクリエイターとして多岐に渡るジャンルで活動する田中友直とのエレクトロニック・デュオがこのたび誕生。その名はBABY JOHNSONZ(ベイビー・ジョンソンズ)。
ラウンジでテクノ、アブストラクトでアシッド、ブレインダンスでサマー・オブ・ラブなサウンドは、云うならば『令和のインテリジェンス・テクノ』か!?2024年7月7日短冊CDの日に『BABY JOHNSONZ E.P.』でデビュー。
吉田哲人プロフィール
作編曲家。 代表作『チームしゃちほこ/いいくらし』『WHY@DOLL / 菫アイオライト』等。自身もシンガー・ソングライターとしての1stアルバム『The Summing Up』、テクノ/アンビエント系楽曲アーカイブ集『The World Won’t Listen』を2023年11月に同時発売。
田中友直プロフィール
TREMORELA名義でマシンライブを中心とした電子音楽家としての顔を持ちながら、商業音楽等の制作にも携わる。ミックス/マスタリングエンジニアとしても長らく活動しており、近年はkojikoji、空音などを担当、関西のシーンを中心に幅広くサポートしている。
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