本年1月30日Melinda Wilsonが77歳で逝去された。哀悼の意を捧げる。
2000年代以降、音楽界の伝説Brianの傍らには常にMelindaという存在があった。
単なる伴侶やビジネスパートナーを超え、彼女は彼の音楽、人生、そして精神を支える光であり、時に影となる複雑な関係を築き上げてきたのだ。
公私に渡ってブライアンを支え、彼の才能を開花させたMelinda。しかし、その関係は常にスムーズだったわけではない。Brianは躁うつ病などの精神疾患を抱えており、Melindaは彼の世話役や精神的な支柱となることもあった。時には、彼の気分や行動に振り回され、苦悩することもあっただろう。しかし、彼女は決して彼を見捨てず、献身的に愛情を注ぎ続けた。
Melindaは、Brianにとってかけがえのない存在であり、彼の音楽、ビジネス、そして私生活において重要な役割を果たしてきた。彼女の献身的なサポートと深い愛情が、Brianを支え、彼の人生をより豊かに彩っている。
Melindaの死から2週間後の2月14日、ロサンゼルス郡上級裁判所へ後見申立てが行われる。申立てはBrianのパブリシストである Jean Sieversとビジネスマネージャーである Lee AnnHardの両名による申立てであった。
Brian自身のケアにまつわる代理人や後見行為には過去様々な経緯があった代表的なものとしては以下の通りである。
1970年代後半: Stan LoveがBrianの身上監護のためにWilson家に派遣される。
後年StanはDennisに対する住居侵入等の不始末やWilson家に対する利益相反行為で放逐される。
1989年9月: Eugene Landyのコントロール下にあったBrianが、Irving Musicらを相手にSea Of Tunes売却に関する訴訟を起こす。
1990年: StanはBrianに対する後見申立てを行い、Stanの後見は認められなかったが主張の一部は裁判所で認められる。
1991年: 裁判所は、LandyとBrian間の個人的および経済的関係の切断を命じる。
1992年:
3月9日: Brianが精神的に無能力であると法廷で判断された後、Jerome Billetが後見人に任命される。
4月: Sea Of Tunesの訴訟は法廷外で和解し、Brianは1000万ドルを受け取る。
8月: MikeがBrianに対して作曲クレジットと報酬の分け前を求め公訴の提起を行う。
1994年:
12月24日: Mikeは裁判で勝訴し、Brianは500万ドルを支払い、35曲の将来の印税を折半することに同意する。
1995年:
BrianはMelindaとの婚姻後Billetを後見から解任し以後Melindaが後見行為を行う
9月: Brianは、前保佐人となったBilletをMikeとの訴訟での利益相反行為を持って1000万ドルで訴える。
Melindaの死去により後見が終了となるため、今回申立ては必要となるのは自然な流れである、肉親以外のビジネス関係の人物が後見人または保佐人に就任するのは一抹の不安があるが、Wilson家側としてはSNSなどを通じて今回の申立てについてはBrian、彼の7人の子供たち(Carnie及びWendyそして養子の五人)、Brianの医師等ケアに関わるスタッフとの慎重な検討と協議の末決定したことである旨主張しているので問題ないと思われる。
筆者の入手した法廷資料から伺われるのは、今回の申立ての目的はBrianに対する全ての権利のコントロールというよりは、今後も在宅ケア中心にBrianが自宅で快適に暮らしていけるための大きな配慮が感じられる。
同資料から
「Wilson氏は、自身の身体的健康、食事、衣服、または住居のための適切な世話を提供することができないため、妻であるWilson夫人が日常生活の世話をしていました。ウィルソン氏は、健康管理のために妻を代理人として指名する事前ケア指示書を持っています。しかし、ウィルソン氏の事前ケア指示書には後継代理人が指名されていませんでした。そのため、Wilson夫人の死去と事前ケア指示書に後継代理人が指名されていないことから、Wilson氏のために保護者が任命される必要があります。」
とある、事前ケア指示書は自身が意思無能力状態や話すことができなくなった場合にのみ使用するもので、本人が希望する医療における選択肢を周りの人に知らせるための文書である。そして代理人は、本人が意思表示できない場合に、医療に関する代理決定を行うことができる。第二、第三のEugene Landyの跳梁跋扈を許さないための抑止力としては後見申立ては適切な措置と考える。Melinda死後の適切な代理人選定までの後見行為ということを信じてBrianを見守っていこう。
閑話休題と、いうか前置きが長くなってしまったが
2024年4月刊行された本書は前年に500部限定でメンバーのサイン入りで販売されている。
普及版としての出来はというと、こちらも公式バイオ本だけあって装丁や品質のクリティも非常に高い。サイズ自体30cmx25cmx4cmで4キロ弱もありパラパラ軽く紐解くには程遠い重厚感がある。そもそも発行元のGenesis publication社はミュージシャン/バンド系の豪華本を得意としてきたので、さもありなんといった風情である。
本書の監修はIconic Brothers IP LLCとBrother Record両名で行われている。
本書の構成は編年体で出生から時系列に時代ごとの出来事が編纂されているが編集方針としてオリジナルメンバー存命期にフォーカスしたため1980年までの事績を対象としている。
ブライアンの後見人に関する情報と、豪華本の内容についてのレヴューをありがとうございます。まだ本は入手出来ていないので、とても参考になります。
返信削除ところで、アーヴィング・エイゾフがビーチ・ボーイズの音楽出版権を管理するようになってから、やはりオリジナル・メンバーにフォーカスし、アイコン化した"Little Saint Nick"アニメPV、ぬり絵、絵本が出るようになりましたが、これについてはどう思われますか? 私は、こういう試みはエイゾフ体制以前には見られなかったので、ビーチ・ボーイズの魅力を若年層に伝え、今後の音楽作品の永続的なセールスに繋げるためのものではないかと思っています。
お見込みのとおり、Iconicの一連の知財戦略は長期戦略です。
返信削除AzoffはWall Street Journalのインタビューで「私たちはファンドではなく、長期的な価値を構築し、ビジネスを展開しています。他の音楽ビジネス業ではアーティストのレガシーを保存し、向上させることに焦点を当てる独自の存在がないことに気付きました。The Beach Boysは過去うまくいっていませんでしたが、私たちは彼らの接着剤となり、過去10年間の軋轢で逃した多くの機会を取り戻すことを目指しています。」とコメントしており今後もファンにとっても期待できる方向性が打ち出せていると思います。
Matsumotoさん、ありがとうございました。私はジーン・シーバーズ女史には1999年の来日時にお会いしました。とても親切な方でした。現在もブライアンの後見人として世話をしていると聞いて安堵しました。
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