選出した楽曲は今年2023年にリリースされ、弊サイトで取り上げた作品を中心に最もリピートした収録曲であり、アルバムを象徴する曲である。主に非メジャー・レーベルのミュージシャンの作品が多いが、そんな彼らを後押して応援する意味で今後も続けていきたいと思う。
この記事で初めて知って興味を持った各アルバムはこれからでも遅くないので、記事文末のリンク先から入手して是非聴いて欲しい。
選出趣旨からコンピレーション・アルバム、セルフ・カバーを除く他者のカバー作品は除外とした。例年同様、順位不同のリリース順で紹介する。
※サブスクに登録されたベストソング・プレイリスト
☆Another October / Snow Sheep
(『WHITE ALBUM』収録・レビュー記事はクリック)
男女3人組ポップ・バンドの結成23年にして初のフル・アルバムより。オリジナル・ヴァージョンからBPMをかなり落とし尺も延長して、ネオアコ系ギターポップから渋いロッカ・バラードに生まれ変わった。このリアレンジにより原石が磨かれて理想的サウンドになったと確信。筆者が十代半ばの頃大好きだった英国のペイル・ファウンテンズにも通じる。
☆ローマでチャオ / Wink Music Service
(同名7インチ及び配信シングル)
本年度最も完成度の高い現代ソフトロック。サリー久保田と高浪慶太郎のユニットに美形女子高生ヴォーカリストのアンジーひよりを迎えており、アレンジャー岡田ユミの仕事も光っている。イタリアの巨匠エンニオ・モリコーネのサウンドがベースにあるも、フランシス・レイやホーランド=ドジャー=ホーランドなどの要素がモザイクに構築され、めくるめく転調を多用して聴き飽きさせない。
☆Hit & Run / WACK WACK RHYTHM BAND
オリジナルよりBPMを上げて疾走感があるセルフ・カバーで、魅惑的なコード進行のイントロに導かれて始まる、永遠のパーティー・バンドの愛すべきファンク・チューンだ。リード・ヴォーカルに元メンバーのToshieとLemonが参加しているのも嬉しい。アルバム全体的な選曲やジャケット・デザインなどトータル的センスも秀でており、誰もが憧れる理想の大所帯バンドである。
☆むかしの魔法 / 生活の設計
(『季節のつかまえ方』収録・レビュー記事はクリック)
20年前筆者が絶賛したゲントウキの「素敵な、あの人。」にも通じる、ブリル・ビルディング時代から脈々と受け継がれているポップスの煌めきが宿る屈指の名曲である。ソングライターでヴォーカル兼ギターとドラムの兄弟を中心としたスリーピース・バンドのファースト・アルバムのリード曲で、東京の若手バンドの中でも正統派感があり、今後の成長が非常に楽しみである。
☆Tableaux / cero(『e o』収録)
“理解するな、感じろ”と言わんばかりの楽曲に毎作ごと魅了されてしまう、鬼才3人組による5thアルバムから。2021年の先行配信シングル「Nemesis」も同様だが、聖書の一節のような哲学的で難解な語彙を持つ歌詞が、音数少ない空間を生かしたサウンドに天使のごとく舞っている。幾度も聴き続けたくなるサムシングとしか形容できない稀有な存在なのだ。
☆マガジン・キラー / Nagakumo
(『JUNE e.p.』収録・レビュー記事はクリック)
音楽通から注目される大阪の4人組ネオネオアコ・バンドのサードEPより。Cymbalsの最高傑作「Highway Star, Speed Star」に通じる、得も言われぬ疾走感と甘酸っぱいメロディの融合、ディストーションが効いたギターリフ、ドライヴしまくるリズム・セクションに刹那的なヴォーカルが乗る3分弱の多幸感。まるでスリリングなショート・ムーヴィーを観たような爽快感が残る。
☆彼女の時計 / Lamp
(『一夜のペーソス』収録・レビュー記事はクリック)
デジタル配信のみでリリースされた9作目より。2018年の8作目『彼女の時計』と同タイトルのこの曲は前作のサウンドを踏襲しながら、シカゴ・ソウルやブラジリアン・フュージョンのエッセンスをより消化してバンドとしての成熟度も著しく増した。またサブスクリプション時代において、彼らの独自性とジャパネスク感覚に世界レベルでファン達が魅了され増加している面目躍如とも言える。
☆Never Can Say Goodbye / 青野りえ
(『TOKYO magic』収録・インタビュー&レビュー記事はクリック)
アルバム制作のきっかけとなった2021年の初コラボレーション曲で、唐突なドラムフィルのイントロから「Never can say goodbye(さよならなんて、言えないわ)」のサビのコーラスというドラマチックなスタートに初見でノックアウトしてしまった。ブルーアイドソウルやシティポップを愛する音楽通も許容するであろうクール・サウンドで、是非7インチ化して欲しい。
☆Longtime Woman / Ellie
(『90s Baby』収録・レビュー記事はクリック)
ラヴ・タンバリンズ時代の傑作「Midnight Parade」を彷彿とさせる、ミッドテンポのブルース・ファンクで、レニー・クラヴィッツの『Are You Gonna Go My Way』を愛聴していた筆者には直撃であった。ハードなリード・ギターを相手にEllieのシャウトが炸裂し、ホーン・アレンジのヴォイシングのセンスなど含めサウンド全体が一級品であり、ライヴで聴きたい曲の最有力候補である。
☆Don't Ask Me Why / 吉田哲人
(『The Summing Up』収録・インタビュー&レビュー記事はクリック)
WHY@DOLL提供曲のセルフ・カバーで、先行短冊CDのシングル・ヴァージョンと異なり、イントロからヴァースへのギター・アルペジオがなく、ヴォーカルをより強調したミックスが新鮮である。不毛の恋愛を綴った歌詞と四つ打ちキックが効いたエレクトロ・ダンス・サウンドとのコントラスが世界観を広げ、間奏の一人多重コーラスが原曲の価値を高めている。
※サブスク登録は無いため、プレイリストには管理人が好きだったWHY@DOLLのオリジナルVerを収録。
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