Kippington LodgeはNick Lowe、Brinsley Schwarz、Bob Andrewsらが若い頃に在籍していたとして知られるバンド。と言ってもあまり有名ではなく、彼らのファン向けのコレクターズアイテム的な位置付けになっているよう。私は以前何かのきっかけでKippington Lodgeの方を先に知ったのだけれど、サイケデリックな要素がありながら難解に感じないポップなサウンドが心地よくて好きだった。
1967年から1969年の間に5枚シングルをリリースしたのみのバンドで、もともとは1964年にサフォーク州ウッドブリッジの学校でNick Lowe (ベース)、Brinsley Schwarz (ギター)、Barry Landerman (キーボード)、Phil Hall (ギター)が結成した学生バンドのSounds 4+1から発展したらしい。この時ドラムがなかったのでBarry Landermanが周りにある物を叩いたり、Nick Loweはティーチェストベースを手作りしていたそう。しばらく学校のイベントやドイツ空軍基地で演奏していたようだけれど、Nick Loweがサフォーク州を離れ、Brinsley Schwarzもケント州タンブリッジ・ウェルズの故郷へ戻ったことでサウンズ 4+1としては活動が停止。その後1966年にBrinsley SchwarzはThree’s A CrowdというバンドをPete Whale (ドラム)、Dave Cottam (ベース)と結成する。
グループのマネージャーだったMalcolm GlazierがEMIのプロデューサーMark Wirtzに彼らを売り込み契約。最初に録音された「Lady on a Bicycle」と「Land of Sea」は、Mark Wirtzの意向でデビューシングルA面には使用されず、「Lady on a Bicycle」はB面に、「Land of Sea」はお蔵入りとなる。Three’s A Crowd はKippington Lodgeに改名され、1967年にEMI傘下のParlophone レコードから「Shy Boy」(Parlophone-R 5645)という曲でデビューした。
「Shy Boy」は英サイケ・ポップの重要人物Keith West(作曲のクレジットはKeith Hopkins)と彼の作曲パートナーKen Burgessの作で、後にKeith WestのバンドTomorrowのバージョンも『Tomorrow Featuring Keith West』(Parlophone-PCS7042, PMC7042)に収録されリリースされている。この曲はMark Wirtz がポップオペラをコンセプトとして構想していた『Teenage Opera』 というプロジェクトのために書かれたものだったそうだけれど、プロジェクトの方は当時未完のまま中断された。(英RPMが残された音源を基にプロジェクトを復活させ、映画のサウンドトラックとして1996年にリリース(RPM Records-RPM165))
Kippington Lodgeのデビュー作となった「Shy Boy」は、Brinsley Schwarzのボーカル以外はセッションミュージシャンが演奏していたらしく、オルガンを使っていた為メンバーにキーボード奏者が必要になり、Barry Landermanに声をかけ加入することになったそうだ。
ベースのDave Cottamが脱退しイギリスに戻ったNick Loweが加入、2作目のシングル「Rumours」(Parlophone-R 5677)がリリースされた。この曲と、B面の「And She Cried」も演奏はセッションミュージシャンだそう。制作を続けつつも、売れ行きが芳しくなかったKippington LodgeはBillie Davisのバックや、マーキークラブでサポートバンドをするなどで収入不足を補いながら活動していたらしい。
Mark WirtzがEMIを去り、3作目のシングル「Tell Me A Story」(Parlophone-R5717)はMike Collierプロデュースで録音された。B面は「Understand A Woman」で、これがKippington Lodge本人達が両面演奏した最初のシングルだったようだ。
4作目の「Tomorrow Today」(Parlophone-R5750)は、The Fortunesの「You've Got Your Troubles」やWhite Plains の「My Baby Loves Lovin」などで知られるヒットメーカーチームRoger CookとRoger Greenawayによって書かれた曲。しかしこの曲も商業的な成功は得られなかった。B面はBarry Landerman作の「Turn Out The Light」だった。この後、Barry LandermanはVanity Fareに参加するため脱退することになり、Bob Andrewsに交代。
最後のシングルに収録されたのはThe Beatlesのカバー「In My Life」(Parlophone-R 5776)と、B面はKippington LodgeでのNick Loweの唯一作 になる「I Can See Her Face」。
約2年の活動は成功には至らず、当時のイギリスでもKippington Lodgeの知名度は低かったらしい。その後Pete Whaleが脱退し、アメリカ人のドラマーBill Rankinに交代、リズムギターのIan Gommが加わる。サイケ・ポップなKippington Lodgeはやがてパブロックの代表格と言われるバンドBrinsley Schwarzへと変化した。
Kippington Lodgeの再発は、1998年にNick Lowe初期の音源を紹介するBrinsley Schwarz編集盤としてリリースされた『Hen's Teeth』(Edsel Records-EDCD 546)にシングル全10曲が収録された他、2011年にKippington Lodge 名義で 『Shy Boy: The Complete Recordings 1967-1969』 がリリースされた。これには、シングル全10曲にボーナストラックとして未発表曲、別テイク2曲、BBC公演2曲が収録されている。(RPM Records-Retro 899)
参考・参照サイト
https://theseconddisc.com/2011/07/08/nick-lowe-welcomes-you-to-kippington-lodge/
https://www.45cat.com/biography/kippington-lodge
http://sideonetrackone.com/2014/07/raised-eyebrows-short-history-brinsley-schwarz-randy/
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