FMおおつ 音楽の館/Music Note(2022年5月号)~西城秀樹特集・前半解説
音楽の館5月号は、2018年5月16日に急性心不全のため63歳で逝去されたヒデキこと西城秀樹さんの特集です。今年は彼のデビュー50周年を記念し、4/3に横浜4/14に大阪で5年振りのイヴェント「HIDEKI SAIJO CONCERT 2022 THE 50」が開催されています。このように今も根強い人気を持つヒデキ、オープニングは1979年発表以来、日本中にパワーを届けているヒデキのキラー・チューン<YOUNG MAN (Y.M.C.A)>!
本家Village Peopleの<Y.M.C.A.>も世界10数ヵ国で1位を記録した大ヒット・ナンバーですが、ヒデキ・ヴァージョンはオリジナルにはない「Y」「M」「C」「A」のポーズをとるパワー・アップしたものになっています。曲中の女性コーラス・手拍子を務めたのはファンクラブ会員選抜隊でした。
BGは1972年3月25日発売のデビュー曲<恋する季節>(42位5.8万枚)。作者は昨年天に召された巨匠・筒美京平さんで、GSカーナビーツのアイ高野さん用の曲でした。サビ前の「お前のすべ~てぇ♪」風アレンジがそれを象徴しています。
その筒美さんは新御三家の五郎さんとひろみさんの黄金期を支えた作家でしたが、ヒデキさんのブレイクと黄金期を支えたのは「鈴木邦彦さん」と「馬飼野康二さん」の二人です。その始まりはセカンド・シングル<恋の約束>(18位;14万枚)でした。なお鈴木さんは黛ジュンさんのレコード大賞曲<天使の誘惑>の提供で知られるヒット・メーカーで、GSブームを牽引した作家のひとりで、ダイナマイツの<トンネル天国>、シャープ・ホークス<ついておいで>等ビート系ナンバーに定評がありました。
そんな彼の個性が活かされたセカンド・シングルはデビュー作を大きく上回り、アレンジャーに馬飼野さんを起用した3曲目の<チャンスは一度>(20位;9.9万枚)以降は、ダイナミックな振り付けもついています。そして同じコンビでリリースされた爽快な<青春に賭けよう>(16位;12.1万枚)は、以後彼のライヴでは観客と一緒に大合唱する定番曲になります。とはいえ、当時のヒデキは同期デビューの「新御三家」となる他の二人とは知名度で大きく差をつけられています。
そんなヒデキの快進撃は翌1973年からで、それがBGのChase<Get It On(黒い炎)>風アレンジの5枚目<情熱の嵐>でした。この曲は彼の歌唱時のコール&レスポンス(「 (♪君が望むなら) ヒデキー!!」)がはまり初トップ10(6位;24.6万枚)。そして馬飼野さんが作・編曲を担当した第6作<ちぎれた愛>はチューリップの<心の旅>(51.4万枚/年間7位)から1位を奪取。<神田川/南こうせつとかぐや姫>(86.5万枚/年間6位)に座を渡すまで、堂々の4週間1位(47.5万枚)を記録。「新御三家」初1位曲でした。
その馬飼野康二さんは1970年代からジャニーズ系への曲提供で存在感を際立たせた人物。近藤真彦さん<ケジメなさい>、光GENJI<剣の舞><勇気100%>、男闘呼組<DAYBREAK>、嵐<A・RA・SHI>、Sexy Zone<Lady ダイヤモンド>、Hey! Say! JUMP<Come On A My House>等々、彼の作品を聴けば1970年代以降の男性アイドル史が一望出来るほどのヒット・メーカーでした。
この大ブレイクにあやかり、11月には「ヒデキ、カ~ンゲキィ!!」の名セリフでお馴染み「ハウス・バーモントカレー」のCMに起用され、その後12年間(1985年)も務めています。そのCM効果で、バーモントは日本におけるカレーライスの国民食化に貢献。その勢いの中リリースされた鈴木邦彦さん作による7枚目<愛の十字架>もチャート1位(35.2万枚)となり、人気を不動のものにしています。
このように大ブレイクを果たしたヒデキは、翌1974年になるとTBS『寺内貫太郎一家』のレギュラーに起用され、小林亜星さんとの派手な親子ゲンカシーンで骨折するなど、ワイルドな話題も提供。さらに「少年マガジン」連載の『愛と誠』の映画化に際して(作者梶原一騎氏に)直訴して映画初主演。公募となった愛役は4万人もの応募がありました。
シンガーとしては2月25日発売の<薔薇の鎖>(3位;33.4万枚)で、ロッド・スチュワートばりのスタンド・マイクを・アクションでファンを魅了。今では矢沢え~ちゃんのトレード・マークですが、日本中にパフォーマンスを印象つけたのはヒデキでした!続く<激しい恋>(2位/58.4万)ではBGの和田アキ子さんの代表作<古い日記>を彷彿させるロック・ナンバー。ここでのボディ・アクションはファンを熱狂させ、それはもはやアイドルの枠を超えていました。中条きよしさんの<うそ>(154.1/年間3位) に1位を阻まれますが、セールス枚数は<ちぎれた愛>を超えるビッグ・ヒットになっています。
そしてその興奮が冷める間もなくリリースされた曲が、激しい絶叫シーンに圧倒される<傷だらけのローラ>(2位/34万枚)でした。ここに至り唯一無比の存在であることを印象付けています。この曲も中村雅俊さんのミリオン・ヒット<ふれあい>(126.5/年間4位)にトップを阻まれますが、1位となった<愛の十字架>以上のセールスを上げています。この成功はソロ歌手初のスタジアム・コンサート『ヒデキ・イン・スタジアム“真夏の夜のコンサート”』(大阪球場)を開催出来るほどでした。
そのライヴはクレーンで宙づりされた「ゴンドラ」の中で歌唱、本邦初導入のレーザー光線など、ファンの度肝を抜く演出を披露。そのステージングは聴衆を魅了・圧倒し、これが現在のスタジアム・ライヴの布石になったとも言われています。
またこのライヴ直前に(ラジオ番組から)「何か光るものを会場へ!」と観客に呼びかけ、ファンの持ち寄ったペンライトが日本のコンサートで広く普及したという説があるほど。なお大阪球場では以後1983年まで10年連続(1978年からは東京後楽園球場でも)開催しています。
BGは1975年最初のリリース曲<この愛のときめき>(3位/ 27.7万枚)ですが、同時期に<傷だらけのローラ>が海外向けにフランス語ヴァージョン<LOLA>としてカナダ、フランス、スイス、ベルギーで発売され、カナダでは堂々の2位を記録。ちなみに<~ローラ>はNHK紅白歌合戦に初登場曲で、そこでは怪傑ゾロのマスクを着け、半シースルーというSexyないで立ちで登場しています。
また1975年にはヒデキにとって欠くことのできない存在となる吉野藤丸さんと出会いがあります。そして彼の結成した藤丸BANDが、以後ヒデキのバックを務めることになります。その体制は13作目の<恋の暴走>(3位;34.1万枚)からで、ライヴでは7月に富士山麓での野外ステージからスタートした『全国縦断サマーフェスティバル』でした。このバンドのお披露目模様は、ライヴ・アルバム『ヒデキ・オン・ツアー』(9/25)に収録され、10月にはドキュメンタリー映画『ブロウアップ・ヒデキ(BLOW UP! HIDEKI)』として上映公開されています。この作品はヒデキの訃報を受けた2018年7月に、Zepp東京で再上映され、即日ソールド・アウトになっています。
そして、翌1976年以降は「阿久悠=三木たかし」コンビを起用。三木たかしさんといえば、<津軽海峡・冬景色>や<時の流れに身をまかせ>といった情緒あふれるメロディ作りに定評ある作家で、ヒデキを大人のシンガーに向け歌唱スタイルに新たなエッセンスを加えています。それは16作目の<君よ抱かれて熱くなれ>(3位/ 33.6万枚)から、<ジャガー>(3位 23.7万枚)<ラストシーン>(8位 22.6万枚)と着実に歩みはじめ、その完成形となった曲が1977年3月の20作<ブーメランストリート>(8位 22.6万枚)だったといえます。歌いだしで聴き手を引き付ける強いインパクトがそれを証明しています。私の末っ子長男は「ヒデキ世代」ではありませんが、幼少時この曲が大好きで、「ブーメラン、ブーメラン♪」と腕を振り回して歌っており、まさに不滅のフレーズと感じます。
BGでは誰もが大人のシンガーとして認めるようになったヒデキの「阿久悠=三木たかし」コンビの<若き獅子たち>(4位/ 23万枚)です。そして1978年23作<ブーツをぬいで朝食を>(7位/ 21.7万枚)は、井上尭之バンドのキーボード・プレーヤー大野克夫さんによるものです。彼はザ・スパイダース~PYGを経由した稀有のマルチプレーヤーで、沢田研二さんのレコード大賞受賞曲<勝手にしやがれ>をはじめ、「太陽にほえろ!」「名探偵コナン」の音楽までこなす才人でした。
さらにヒデキにとって欠くことのできない存在の馬飼野さんによる25作<炎>(5位 25.7万枚)26作<ブルースカイ ブルー>(3位 29.3万枚)といったスケールの大きなドラマティックな楽曲を書き下ろし、その実力を如何なく発揮しています。
また1995年にはサザンオールスターズの桑田さんから熱烈なラヴ・コールを受け、彼らのビッグ・イヴェント(8月5、6日開催)『スーパー・ライブ・イン横浜/ホタル・カルフォルニア』の「オープニング」に登場。そのライヴに詰めかけた16万人(2
Days)の観衆に、Y.M.C.A.のボディ・アクションをさせ、サザンの公演ながらヒデキ一色に染めています。
そして、今やJリーグの強豪「川崎フロンターレ」は、2004年以降等々力競技場でのホーム・ゲームのハーフタイム・ショーの定番曲になっています。
この大ヒットを受けリリースされた29作<ホップ・ステップ・ジャンプ>(2位 36.9万枚)は、岸田智史さんの<きみの朝>(59.9万枚/年間15位)に1位を阻まれるも2位の大ヒット。そしてデビュー曲以来久々に筒美京平さんから提供されたバラード<勇気があれば>(3位 30.8万枚)は彼らしい包容力を持った傑作に仕上がり、この年の「日本レコード大賞」をジュディ・オングさんの<魅せられて>と大賞を競うほどでした。
ということで今回は「デビュー50周年」を迎えた「西城秀樹さん」の特集の前半を解説しました。セット・リストは下記にまとめましたのでご覧ください。近日中に後半パートの詳しい解説とセット・リストをまとめますので、またご覧いただければと思います。
<セット・リスト~前半>
Opening B.G.~ Gems1(A Cappella)/ esq(三谷泰弘)
1. YOUNG MAN (Y.M.C.A)/西城秀樹
B.G.~ 恋する季節
2. 恋の約束
3. チャンスは一度
4. 青春に賭けよう
B.G.~ Get It On(黒い炎)/Chase
5. 情熱の嵐/西城秀樹
6. ちぎれた愛
7. 愛の十字架
B.G.~ 古い日記/和田アキ子
8. 薔薇の鎖/西城秀樹
9. 激しい恋
10. 傷だらけのローラ
B.G.~ この愛のときめき
11. 君よ抱かれて熱くなれ
12. ジャガー
13. ラストシーン
14. ブーメランストリート
B.G.~ 若き獅子たち
15. ブーツをぬいで朝食を
16. 炎
17. ブルースカイブルー
B.G.~ Y.M.C.A/ Village People
18. ホップ・ステップ・ジャンプ/西城秀樹
19. 勇気があれば
(鈴木英之)
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