2022年1月12日水曜日

HACK TO MONO(part4 Capitol編 後半)


前回同様に以下の条件でこれからシングル盤を聴いてみよう。
以下紹介する音源はオリジナル盤から取り込んだものであり
ノイズ除去処理は一切行っていない。
また、盤の選定についてはRIAA制定及びステレオ音源の普及を考慮し
1964年までのリリースを対象とした


さらに今回は頼もしい味方もやってきた。放送局用アームを入手したのだ。

                                 

現代の金属パイプのようなものとは違い、振り下ろせば凶器になるような太さで、40cm程の長さもある。しかもこのアームはオイルダンプアームといい、文字通りオイルの膜がベアリングの役割を果たすという代物である。したがって操作性の鍵を握るのはオイル、正確にはシリコンオイルとなる。そのため、オイルの交換の為シリコンオイルを求めてラジコンショップへ出かけることとなった。マニュアルも付属品もほとんどない中でウエイトや位置の調整を必死にやっていたら手がオイルでベタベタになってしまったほどだ。別ルートで新たなカートリッジを入手することが出来た、こちらも放送局仕様のクロームメッキのものカートリッジだ。
今回も針圧7グラムでモノラルの世界を探求する。
きんさん ぎんさんに加えてクロちゃんと呼ぶことにした(きんさんぎんさんよりは先輩だが)。

閑話休題、早速1964年のシングルに移ろう。

「Fun,Fun,Fun」(Capitol 5118) 1964


新規に導入したアーム+ぎんさんの組み合わせでこれが初となる。
ジャズやクラシック全盛時代のアームなので効果は危惧されたが杞憂に終わった。力強いドラムサウンドを奏でている!
ドンドンというより、ドスンドスン鳴っている。元々はJan Berryのプロダクション・テクニックであるドラムの二重録りをBrianは導入し、前年からのスタジオでの実験をこれから自らのグループへ移植しようという強い意思を感じる。当時のラジオから流れる音もこんな風に聴こえたのだろうか?間奏のオルガン演奏の低音もベースと混ざり合うことなく太い音をグイッと鳴らしてくれる。ぎんさんならではのエモーショナルな面を引き出したのはこのアームなのだろうか?
EQのカーブはRIAAではなくCapitolカーブを用いた

「Why Do Fools Fall in Love」(Capitol 5118) 1964


新アーム+クロちゃん初見参!ステレオ前夜の製品の組み合わせでこちらも危惧されたがシングル・ヴァージョンのみ聴くことができる冒頭のコーラスからガツン、とくる。BrianとMikeにかけられたエコーも終始心地よく響いている。コーラス全体にかけられたディレイも生々しく、バックの演奏も大きな壁を構築している。
EQのカーブはRCA studio作にもかかわらずRIAAではなくPacificカーブを用いた。
1964年はヒット連発であるがB面に傑作が多い、以降B面のみ紹介しよう

「Don't Worry Baby」(Capitol 5174) 1964


ベースのストロークがバシバシ聴こえてとにかく力強い、キラキラ響くピアノとBrianにかけられたエコーが響きあっているのがよくわかる。さらにコーラスが楽曲の厚みを加えて、前作から続く壁をここでも披露してくれる。モノラルの音像を支える中底部音がしっかり出ている。
EQのカーブはRIAAではなくCapitolカーブを用いた。

「She Knows Me Too Well」(Capitol 5245) 1964


こちらもベースの輪郭を終始なんとか崩さずに聴くことができる。
特にサビの部分はアナログだとどうしてもMikeのバスと被る箇所でアームの共振があり、ぐしゃっと鳴りがちのところをギリギリ抑えている。
EQのカーブはRIAAではなくCapitolカーブを用いた

「The Warmth of the Sun」(Capitol 5306) 1964


再びクロちゃんの登場だ!
こちらもアナログ泣かせの一曲で、中低音部分はアームの共振でボケがちになるが今回の再生では問題なく聴くことができた。特に2番目の〜Love of my life〜辺りになるとキックとベースが混在する部分はうまく分離できている。
EQのカーブはRIAAではなくCapitolカーブを用いた。

「Blue Christmas」(Capitol 5306) 1964


本作の一年前Phil Spectorは「White Christmas」をカヴァーし、Brianはその一年後「Blue Christmas」をカヴァーする。Spectorはシングル盤のB面は疎かにしたが、Brianにとって1964年のシングルB面はSpectorへの憧憬に溢れている。
Brianのヴォーカルにかけられたエコーをよく鳴らしてくれる、メンバーのコーラスがないので地の底から響く侘しさが感じられる。
EQのカーブはRIAAカーブを用いた。

—--番外編----

「If You Only Knew (The Love I Have For You」
 The Teddy Bears(Imperial 5581) 1959


最後にまたまたアナログ泣かせの一枚を紹介しよう。ヴォーカルが囁くように歌ったり熱唱したりというエモーショナルなSpector節が冴えまくる一枚である。
その為熱唱パートではかなりの音の振幅があり、さすがのぎんさんでもビリビリ振動してしまった、そこで急遽クロちゃんに差し替えたところ見事に再生してくれた。ほぼ同時代のアーム、カートリッジ、レコード盤が最良の組み合わせになったのだろう。

EQのカーブは珍しいSP時代のAESカーブを用いた。

ロックンロール時代のモノラルの探求をこれからも続けていこう。

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