今年もWebVANDA管理人が選ぶ、邦楽の年間ベストソングを発表したい。
選出楽曲は今年リリースされ弊サイトで取り上げた作品を中心にアルバム(シングル)中最もリピートした収録曲で、アルバムを象徴する曲である。以前からだが、いかに個性的なアプローチをしたかが重要なリファレンス・ポイントになっている。
昨年からのコロナ禍の影響はこの年末まで続いているが、徐々に回復してきているのも確かだ。本サイトで主に紹介するインディーズ・ミュージシャン達の作品を紹介することで、微力ながら彼らを応援し続けていきたいと思う。またこの記事で改めて知った各作品は、これからでも彼等の活動を後押しすることが出来るので是非入手して聴いて欲しい。選出趣旨からコンピレーション、カバー作品、配信のみの単体楽曲は除外とした。
昨年同様、順位不同のリリース順で紹介する。
※サブスクに登録されたベストソング・プレイリスト
☆おこもりさん / シンリズム(7”『おこもりさん』収録)
流線形の『Talio』でオーケストレーションを担い、現在KIRINJI のツアー・メンバーでもある若きマエストロの最新7インチより。配信リリースは昨年で表向きは8分刻みの変哲のないポップスだが、アレンジの引き出し量の豊富さやアッパーストラクチャーのセンス、70年代ジャズロック風ギター・ソロのスケール感覚に至るまで、23歳の若者が一人多重録音で作ったとは思えない完成度だ。今後のソロアルバムも期待大である。
☆小さな手のひら / 吉田哲人(7”『光の惑星』収録)
作編曲家としてアイドル系楽曲で活躍している吉田が、シンガーソングライターとして発表したセカンド・7インチのカップリング曲。元々イベント・スペース存続のドネーション・コンピへの提供曲で、無垢なメロディラインと慈愛に満ちた詞の世界に一聴して虜になってしまった。バロック風アレンジの和製ソフトロックとして素晴らしい仕上がりだ。
☆City Nights / 前川サチコとグッドルッキングガイ
(『My Romance』収録)
関西で活動する女性シンガーソングライターを中心とするバンドのサード・アルバムより。メンバーでArgyleのリーダーでもある甲斐鉄郎によるソングライティングで、多くのソウル・ミュージックの影響下にある良質なシティポップである。前川と甲斐のデュエットで歌われる本曲は、令和時代の「DOWN TOWN」(シュガー・ベイブ)と言えるだろう。
☆反撥 / Francis (『Bolero』収録)
90年代東京を代表するバンドを渡り歩いたベーシストが、欧州ロマンティシズムのソロ・ユニットで唯一無二の才能を開花させた。今月7インチでシングルカットされたばかりのこの曲は、有機的に絡み合ったヒプノティックなグルーヴをバックにダンディな歌声を聴かせている。7インチのジャケはブライアン・フェリーの『In Your Mind』をミリターアート手法で処理したようでインパクト大だ。
☆君の気配 / The Bookmarcs
2年前に配信されていた和製AOR~シティポップで今年リリースされたサードに収録された。作詞を手掛けた近藤健太郎の高域で響く甘くソフティな歌声に、ゲスト・ボーカルの青野りえによるレンジが広くテクニカルな声質が絶妙にブレンドされている。作編曲の洞澤徹によるデイヴィッド・T風ギター・プレイも聴きどころが多く、スタッカートで跳ねるサビのメロディを引き立てている。
☆デジャヴ / bjons(『CIRCLES』収録)
数多のネオ・シティポップ・バンドとは一線を画し独自路線でポップスを追求するバンドのセカンドより。ドラマティックなギターリフのイントロから不安定で緊張感のあるヴァース~ブリッジを経て、開放感あるサビに繋がる構成は見事である。哲学的な歌詞も含め、彼らでないと作れないサウンドをクリエイトしており、引き算的アレンジによって手練なメンバー達のプレイが際立った。
☆散歩娘 / ポニーのヒサミツ(『Portable Exotica』収録)
アメリカン・ルーツミュージック系シンガーソングライター、前田卓朗のソロ・ユニットのフォース・アルバムの1曲。名ドラマー増村和彦によるセカンドライン・ファンクと沖縄民謡を融合させた独特なドラミングが肝となっている。前田の素朴で個性的なボーカルは環太平洋のエッセンスが加わっても健在であり、この牧歌的日常こそが美しいのだとしみじみ感じさせてくれる。
☆冬をとめて / RISA COOPER(『RISA LAND』収録)
元D.W.ニコルズのメンバーでセッション・ドラマーとして活躍している岡田梨沙のソロ・ユニットのファーストより。交流の広さから様々なミュージシャンが参加しており、捨て曲無しのアルバムから一曲選ぶのは困難であるが、特徴的なイントロのギターリフ、リズム隊とコンガのコンビネーション、詩情溢れる歌詞からこのエバーグリーンな曲を選んだ。
元BRIDGEのキーボーディスト、イケミズマユミのソロ・プロジェクトのファーストより。典型的ソフトロックの美しいフォルムを持ったサウンドで、イントロ~ヴァースのボッサのリズムから三声コーラスがリフレインするブリッジを経て甘美なサビで解決する。複数パートと転調を経ても聴き飽きないメロディとアレンジは高評価したい。
☆ただの風邪 / KIRINJI (『crepuscular』)
堀込高樹のソロ・プロジェクトとなって初のアルバムより。弟の泰行との兄弟ユニットからスタートしバンド編成活動を経ても、高樹のソングライティングセンスはぶれることはない。2005年のソロ作『Home Ground』を愛聴していた筆者は、この冒頭曲にもシンパシーを強く感じてしまった。研ぎ澄まされたサウンドにはただため息が出てしまう。
(選者:WebVANDA管理人 ウチタカヒデ)
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