今回は今年結成50周年を迎えたファンク・バンドWARの初来日公演体験を紹介する。その1974年は初ライヴ・アルバム『War Live !』をリリースした翌年だった。当時は全米を制覇(R&B.も1位)した『The World Is Getto』(1972年)、全米6位(R&B.1位)を記録の『Deliver The Word』(1973年)で頂点を極めており、ソウル界代表する存在として全米のトップ・グループに君臨していた。
この来日公演はそんな彼らのまさに全盛ともいえる黄金期で、絶好のタイミングだったといえる。とはいえ、この時期彼らの人気は(今もそうだが)日本で絶大だとは言い難かたった。その理由は抜群の演奏力を持った本格的なバンドではあったが、初期のEric Burdonのようなグループの顔となるようなメンバーが不在で印象が薄かったからかもしれない。それゆえ当時日本で彼らを支持していた有名人は、元モップスのヴォーカリスト鈴木ヒロミツ(注1)氏程度だった。
その初来日公演は、東京・大阪等の大都市に交じって静岡の駿府会館(注2)でも開催されている。ただ昔から静岡で開催される公演は客の入りが悪く、業界では「鬼門」(注3)とされていた。それゆえチケットは入手したが、実際に開催されるかは、当日まで不安交じりだった。
そんな思いで会場に向かったが、今回は開場されており、胸をなでおろした。
ただ会場の入りは半分程度で、近隣の席にいた熱狂ファンは、「あのWarが静岡まで来てくれているのに、なんだよこの集まり具合は!」と愚痴っていた。とはいえ無事コンサートは開催されたのだからメデタシ・メデタシという思いだった。
開演時間をわずかに過ぎると、リラックスした雰囲気でメンバーが登場。ステージ上から「Hello」「KONBANWA」とコメントしながら、楽器のチェックが始まった。
そして、唐突にB.B.Dickersonのどっしりとしたベースが鳴り響き、そこにLee Oskerのハーモニカが絡み、ずっしりと地響きがするようなHarold Brownのドラムが刻まれ、バンド全体がマグマの噴火を感じさせるように<The World Is Getto>のパフォーマンスがスタートした。オープニングにしては単調なテンポではあったが、その重厚感のあるゴスペル的なサウンドには圧倒された。
続いてのナンバーはイントロからPaPa Dee Allenのアクレッシヴなパーッカッションが炸裂する大ヒット<The Cisco Kids>。ここでは、リズム隊以上にCharles MillerのサックスとLee Oskerのハーモニカが見事なアンサンブルで、最高のノリを体感させてくれた。
3曲目も大ヒットアルバム『The World Is Getto』から<City, Country, City>。ゆったりとしたリズムの間奏で聴かれるOskerのハーモニカ・ソロはまた格別なものだった。
そして、4曲目からは彼らの最新スタジオ作『Deliver The Word』からの楽曲が演奏された。まずはリズム隊が大活躍のファンク・ナンバー<Me and Baby Brother>。そこではトップ・グループたる躍動感にあふれていた。
続くは<The Cisco Kids>のメロディー・ラインがフューチャーされた南部風のメキシカンな雰囲気が漂う<Southern Part Of Texas>。この手のチカーノ・サウンドは、後にLos Lobos等メキシコ系バンドに脈々と引き継がれているように感じる。
6曲目はお持ちかねの大ヒット<Gypsy Man>。アルバムのイントロに挿入されていた風S.E.は、アフリカン・ルーツ・サウンドに通じたリズム隊のどっしりとしたプレイに置き換わってスタートした。この曲の肝は、PaPa DeeのパーカッションとBrownのドラムが刻むリズム隊の踏ん張りだが、間奏以降で聴かせる味わい深いOskerのハーモニカも見事なもので、10分を超す演奏ながら飽きさせる隙を与えなかった。
そんな迫力満点のファンク・サウンドに続いてはゆったりとした<Four Cornred Room>に移り、ここで一息つく。そしてBrownのドラムをBGにRonnie Jordanからメンバー紹介。そのラストにコールされたOskerは『Deliver The Word』のラストに収録されていた<Blisters>で見事なハーモニカ・ソロを堪能させてくれた。
その演奏が終わると同時に、いよいよオーラスといわんばかりに定番の<Sleepin’ into Darkness>の演奏がはじまった。アフリカン・ビートとチカーノ・サウンドが融合したようなお馴染みの彼らの代表曲だ。間奏パートではBob Marley & The Wailersの<Get Up, Stand Up>のフレーズも挟み込まれ、ラストはPaPa DeeのパーカッションとBrownのドラム・ソロよる怒涛の応酬合戦で締めくくられた。
補足になるが、それ以降の来日公演で印象に残っているものといえば、1977年に東京で開催された「ミラージュ・ボウル」(注4)のオープニング・セレモニーへのスペシャル・ゲストだった。そこではGodiegoを前座(注5)に迎え、試合会場の後楽園球場に設営された特設ステージで、迫力のパフォーマンスを繰り広げている。この公演はテレビ中継されていたので、ご覧になった方も多いかと思う。
ここでは、コール&レスポンスで盛り上がる定番ソング<Why Can't We Be Friends?>
も披露されている。「I Know you're workin' for the」⇒「CIA~♪」 、「They wouldn't have you in the」⇒「MAFAIE~♪」は、今もお馴染みの返しだ。
そんな彼らにはオフィシャルでのライヴ・アルバムが3作リリースされている。1作目は文頭でも紹介した全盛期1973年のライヴ、2作目はMCAに移籍後の1980年の『The Music Band Live』、3作目はRonnie Jordanが率いている2007年の『Greatest Hits Live』だ。この中で個人的にお薦めしたいのは、1980年の2作目だ。人気が低迷していた時期のリリースで、セールス的には振るわなかったが、全盛期のラインナップで代表曲が全て聴ける唯一のライヴ作として必聴作だ。
(文・構成:鈴木英之)
0 件のコメント:
コメントを投稿