The Beach Boysとの関わりは『The Beach Boys Party!』の「Mountain of Love」でハーモニカを演奏したところから始まる。Dino,Desi& Billyの中でもっともミュージシャン志向があったのはBillyで以後The Beach Boysへのセッションへの関与を深め、同時期に姉がCarlと結婚したため、Wilson一族とも姻族となったことで結びつきはさらに深まる。
1966年リリースの『Memories Are Made Of This』
では「Girl Don’t Tell Me」をカバー
1967年Smileセッション「Tones」でのセッションシート William Hinsche名で参加
なんと!セッションリーダーとして登記されていた
Dino Desi&Billyの活動も並行して行われており、音楽的成長を伺わせる作品が増えてくる。自身のプロデュースで1968年発表の「Tell Someone You Love Them」は『Wild Honey』以降のデッドな音像の影響下にあるハーモニー・ポップの秀作だ。
また、今年3月にリリースした『助けて!神様。〜So help Me,GOD!』は約10年振りとなる新曲であり、サウンドプロデュースにアイドル・シンガーソングライターの加納エミリを迎えるなどで大きな話題を呼んだ。
今回リリースされる『My Eternal Songs〜BEARFOREST COVER BOOK vol.1』は全編ピアノ弾き語りによるカヴァーアルバムとなっており、7月リリースの最新シングル『GOD Can Crush Me.』において共同プロデューサーを務め、サザンオールスターズ、木村カエラなどを手掛けたVICTOR STUDIOのエンジニア・中山佳敬が参加している。
続く「Love of My Life」(原曲:QUEEN)はクラシカルな進行がピアノによってより際立ち、QUEENのお家芸ともいえる重厚なコーラスは鈴木の声によって一層煌びやかに演出され、召されるような多幸感に包みこまれる。打って変わって次曲「I Only Want to Be With You」(原曲:Bay City Rollers)は軽快に踊れるナンバー。気持ち良いタイミングで入ってくる裏打ちのタンバリンやキュートかつパワフルに歌い上げる歌声に体を揺らしながらA面は幕を閉じる。
続く「Yesterday Once More」(原曲:Carpenters)は我々にとって恐らく最も馴染み深い楽曲ではないだろうか。原曲さながらストレートに歌い上げる彼女の歌声の端正さには安心感を覚えるだろう。
モーツァルトのピアノ・コンチェルトの一節が奏でられた後、流れるように始まる「Different Drum」(原曲:The Stone Poneys)はA面3曲目と並びクラシカルなアプローチが活きる編曲が施されており、イントロのリフレインとの相性は特に抜群である。徐々に抑揚付いていく歌唱表現の素晴らしさに胸を打たれながら、ラストは楽典的な終止をもって本作は幕を閉じる。
卒業後に様々なバンドに参加する中で、2007年にD.W.ニコルズに加入し、2年後にはメジャー・デビューしている。同バンドに9年間在籍した後、2016年9月にD.W.ニコルズを脱退し、以後はフリーのセッション・ドラマーとして様々なレコーディングやライブに参加していた。昨今ではシンガーソングライター(以降SSW)の関取花や先月弊サイトで紹介したbjonsのサポートをはじめ、沢田研二のバックバンド“エキゾティクス”のリーダ-でプロデューサーとしても著名なベーシスト、吉田建が結成したオーケストラ”The Stellar Nights Grand Orchestra”に正式メンバーとして参加している。
本作には楽曲提供者として、前出の関取花をはじめ、谷澤智文、今泉雄貴(bjons)、相子鳶魚(モノノフルーツ)、橋口靖正、大森元気(残像のブーケ/元残像カフェ)、弊サイト企画でもお馴染みの松木俊郎(流線形/ Makkin & the new music stuff)、谷口雄(Spoonful of Lovinʼ/元森は生きている)と多彩なソングライター達が参加しており、曲毎の提供者が主にサウンドのイニシアティブを取っているが、谷口(各種キーボード)、松木(ベース)、渡瀬賢吾(エレキギター/bjons)、朝倉真司(各種パーカッション/ヨシンバ)が多くの曲で演奏しておりサウンドの要になっている。
2016年12月に36歳の若さで逝去した橋口靖正が生前残した「だいじなじかん」は、石崎がアレンジとキーボード類を担当し、生前橋口と親交があったGOIND UNDER GROUNDの中澤寛規がギター、SSWの磯貝サイモンがウーリッツァー、ベースは前田、トランペットにファンファン、パーカッションに朝倉が参加している。ミュージシャンズ・ミュージシャンとして慕われた橋口の才能を証明する感動的なメロディ展開を、石崎らしいサウンドで構成していて耳に残る曲である。なお岡田はこの曲に参加した中澤、磯貝、前田、朝倉らと橋口のトリビュートバンドHGYM(エイチジーワイエム)として現在も活動している。
松木作曲、岡野作夢作詞の「ハートにキッスでふれさせて」は、松木が嘗て結成したグループMakkin & the new music stuffで披露したポップなシティポップに通じ、フォーリズムは岡田、松木、渡瀬、谷口の編成だ。岡田のチャームなボーカルからYUKI(岡崎友紀)の「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」(80年)や今井美樹の「雨にキッスの花束を」(『retour』収録/90年)を彷彿とさせる。
本作ラストの「冬をとめて」は関取花の作詞で、谷口が作曲及びアレンジを担当し、岡田、松木、渡瀬、谷口、朝倉の編成で演奏されている。レスリー・ダンカンの「I Can See Where I'm Going」のそれを彷彿とさせる特徴的なイントロのギターリフに、リズム隊とコンガが加わった瞬間からなんとも言えない普遍性を発しており、詩情溢れる歌詞とメロディの虜になり、その後幾度もリピートして聴き込んでしまった。これは岡田の自然体な歌声を的確にバッキングする手練なミュージシャン達の演奏との結晶であり、正にエバーグリーンで完成度が高く、本作屈指の曲ではないだろうか。