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2021年7月10日土曜日

ツチヤニボンド:『にっぽん昔ばなし / Fall In Love』(TOYOKASEI/ TYO7S1028)

 
 土屋貴雅を中心とするソロ・プロジェクト、ツチヤニボンドが7月17日に7インチ・シングル『にっぽん昔ばなし / Fall In Love』をリリースする。 
 土屋は高野山在住の鬼才ミュージシャンとして知られ、2018年のフォース・アルバム『MELLOWS』が今年3月にアナログ盤でリリースされたばかりだ。このアルバムからはリリース当時、筆者の年間ベストソングとして「Urbane」を選出していた。筆者は2011年の『2』からツチヤニボンドの独創的な音楽性を高く評価していたので、今回のフィジカルでのリリースも待望していたのだ。

 なおこの7インチも先月のペンフレンドクラブ『Chinese Soup / Mind Connection』と同様に "RECORD STORE DAY 2021 (RSDDrops)" でエントリーしている限定商品(限定プレス)なので、興味を持った音楽ファンは、リリース日にキャンペーン参加店舗で入手しよう。(店舗は文中リンク先で検索可能)


 ではこのシングルの解説に移ろう。A面の「にっぽん昔ばなし」は1975年1月から1994年3月まで放映されていた同名テレビアニメ作品のテーマ曲で、幅広い年齢層でご存じの方も多いと思う。作詞はこのアニメを監修していた脚本家で作家の川内康範氏で、作詞家としても「月光仮面は誰でしょう」(58年)をはじめ「骨まで愛して」(城卓矢/66年)、「伊勢佐木町ブルース」(青江三奈/68年)のヒット曲で知られている。作曲の北原じゅん氏はこのアニメの劇伴音楽も担当しており、川内氏とは前出の「骨まで愛して」や「愛ひとすじ」(八代亜紀/74年)でタッグを組んでいた。劇伴では『レインボーマン』や『荒野の少年イサム』などがあるが、やはり『まんが日本昔ばなし』が最も知られているだろう。
 前置きが長くなったが、今回のツチヤニボンドのカバー・ヴァージョンは、フアナ・モリーナの傑作『Segundo』(2000年)にも通じるアナログ・シンセによる音数が少ないエレクトロ・サウンドに、アコースティック・ギターのアルペジオが響くエクスペリメンタルな音像がひたすら気持ちいい。MOOG (モーグ)の MINITAURやmicroKORGなどのシンセ類とギターは、土屋が一人でプレイしたワンマン・レコーディングである。必要最低限の音で挑んだシンプルなプロダクションが生み出したマジックと言えるだろう。

 Fallin In Love / ツチヤニボンド

 B面の「Fall In Love」は今年3月に配信で先行リリースされていたが、前作「Urbane」の世界観を踏襲したアーバン・スプロールの喪失感が漂う、土屋ならでは美学が光っている。ギターとベースのオクターブ・ユニゾンのリフで進行するレゲエ・ビートを基調としながら、手練なミュージシャン達によるインタープレイ的展開がたまらなく、聴き逃せない。
 土屋はヴォーカルとベースを担当し、ドラム兼ヴォーカルには波照間将、パーカッションには弊サイト企画でお馴染みの増村和彦、そしてギター兼ヴォーカルには、本日休演のリーダーでギタリストの岩出拓十郎が参加している。本日休演は今年2月にフォース・アルバム『MOOD』をリリースしたばかりで、昨年末には岩出がプロデュースした『伊藤尚毅の世界』を弊サイトでも紹介したので記憶に新しいと思う。
 なお 土屋はその岩出と共にニュー・アルバムのレコーディングを継続中らしいので、その完成を楽しみに待とう。

 最後に繰り返しになるが、本作はプレス枚数が限られた限定商品であるので、興味をもった音楽ファンはリリースされる7月17日にRSDキャンペーン参加店舗で入手して欲しい。
(ウチタカヒデ)


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