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2020年10月25日日曜日
一色萌:『Hammer & Bikkle / TAXI』(なりすレコード / NRSP-789)
2020年10月21日水曜日
【ガレージバンドの探索・第十回】The Pirates
昨年末、関西に帰省するバンドメンバーに頼んで大阪のレコード屋さんで買ってきてもらったThe Piratesの7インチ (Back Stage Records – 5001)。バンドのことを少し調べてみたのだけれど、数ある一発屋のガレージバンドと同じように情報はあまり見つからなかった。僅かに出てくる情報も、Jonny Kidd & The Piratesと間違えられていたり、カリフォルニア出身だ、ニューオーリンズ出身だ、とかだいぶ錯綜しているけれど、おそらく正しくはルイジアナのバンドと思われる。オリジナル盤のリリースは65年か66年のようだ。
Cuttin'Out / The Pirates
コンピレーション『VA - Don't Be Bad! 60s Punk Recorded In Texas』(CDSOL-8345 Solid Records/Big Beat)に収録されていて分かったのだけれど、プロデューサーは、Sir Douglas QuintetやBarbara Lynnのプロデュースで知られる Huey P. Meaux(The Crazy Cajun)だった。このコンピはHuey P. Meauxが60年代に手掛けたガレージパンク作品を集めたものだそう。
ガレージのコンピは地域で括られているものをよく見る。音楽性によってジャンル分けされたりするのは、自分好みの音楽に出会える道しるべとして便利なものだと思うのだけれど、ガレージは地域性が色濃いことや、バンド自体よりも曲単位で知られることが多い特性もあって、どこの地域のバンドかを知るのがジャンル分けと同じように特に役立つのかもしれない。
The Piratesについて、レコードコレクターの間でこれはガレージじゃない、R&Bだという人もいて意見が分かれるらしい。そういえば、ガレージが好きだという話をすると、ガレージって何?と聞かれることがあるのだけれど、いつも上手に説明できない。
よく成り立ちとして説明されているのは、60年代半ばにブリティッシュ・インベイジョンの影響を受けたアメリカの若者がガレージ(車庫)で演奏していたことが始まり、というもので、そういう形式なのでもともとは本当に音が悪かったのだろう。そんな環境の中で生まれた味わいを含む音、音楽が今はガレージという1ジャンルとして確立した、ということかもしれない。
激しいのもあれば、大人しそうなのもあったり、傾向として演奏が下手な場合も多いけれど、下手ならガレージになるわけでもなく、どういうものかと考えると難しい。ただガレージが好きな人は、聴いた時にそれがガレージだと分かる、というような音楽なんじゃないかと思う。
【文:西岡利恵】
2020年10月17日土曜日
bjons:『抱きしめられたい』(なりすレコード / NRSP-775)
ポップスバンド、bjons(ビョーンズ)が7インチ・シングル『抱きしめられたい』を10月24日にリリースする。なおこのシングルはカップリング曲を含め既に配信リリースされていたが、7インチ・アナログという温かみのあるメディアで聴くことを勧めるので紹介したい。
2020年10月12日月曜日
Argyle:『DOWN TOWN / ぼーい・みーつ・がーる』(unchantable recoerds/UCT-32)
大阪を拠点に活動する大所帯パーティー・バンドのArgyle(アーガイル)が、13年振りの新作として7インチ・シングル『DOWN TOWN / ぼーい・みーつ・がーる』を10月14日にリリースする。
昨年紹介した宮田ロウの『ブラザー、シスター』の先行シングル『悲しみはさざ波のように』と同様、弊サイト企画”ベストプレイ・シリーズ”の常連であるグルーヴあんちゃんが主宰するUNCHANTABLE RECORDSからのリリースだ。
彼らは大阪のクラブシーンで人気のバンド、hot hip trampoline schoolやa million bamboo、pug27等で活躍中のキーボード兼ヴォーカリストのキャイこと甲斐鉄郎を中心に、1995年に結成されたホーン隊とフルートを含む総勢10名のバンドだ。これまでに『HARMOLODIC』(2003年)と『Go Spread Argyle tune』(2005年)のオリジナル・アルバムをリリースしており、本作は2007年の7インチ・シングル『WALK OUT TO WINTER』(アズテック・カメラのカバー)以来のリリースとなる。
本作『DOWN TOWN』のオリジナルは、弊サイト読者にはお馴染みの山下達郎と大貫妙子が参加した伝説のバンド、シュガー・ベイブ(1973年~1976年)の唯一のアルバム『Songs』(75年)と同時リリースされたシングルとして世に出た。この曲はリリース時より後の80年にシンガー・ソングライターのEPOが、デビュー・シングルとしてカバーしたヴァージョンが一般的に知られるようになった。これは当時フジテレビ系の人気バラエティ番組『オレたちひょうきん族』のエンディング・テーマ曲に採用されたことも大きく影響している。
伊藤銀次の作詞で山下達郎の作曲のクレジットになっているが、サビのリフレインは伊藤のソングライティングであったことがマニアには知られている。またよく言われるアイズレー・ブラザーズ「If You Were There」(『3 + 3』収録/73年)へのオマージュではなく、ザ・フォー・トップス「I Just Can't Get You Out Of My Mind」(73年)を意識していたということだ。(筆者作成のプレイリストを聴いてみて欲しい。)
今回アーガイルのカバーではヴォーカルには、元クリームチーズオブサン(原田茶飯事がフロントマンだった)のメンバーで、現在は前川サチコとグッドルッキングガイ(甲斐も参加)を率いる前川サチコを迎えて、彼女のチャーミングな歌声をフューチャリングしている。
アレンジ的にはアーチー・ベル&ザ・ドレルズの「Tighten up」(68年)に、弊誌監修の『ソフトロックAtoZ』(初版96年)の巻頭カラーページでお馴染みのアルゾ&ユーディーンの「Hey Hey Hey, She's O.K.」(『C'mon And Join Us!』収録/68年)をミックスしてオマージュしたイントロに先ずはやられてしまう。「Tighten up」のグルーヴは、本編サビのリズム・セクションでも引用されており、ホーン・アレンジにはバーバラ・アクリンの「Am I The Same Girl」(68年)のそれを意識しているから更にたまらない。長年クラブシーンで活動していた彼らならではのサウンド・メイクは成功している。
カップリングの「ぼーい・みーつ・がーる」は甲斐のオリジナルで、flex life (フレックス・ライフ)の青木里枝がフューチャリングされており、彼女のハスキーでソウルフルな歌声が聴きものだ。
独特のシンコペーションのリフが効いたR&Bパートと、ブリッジのボサノヴァ・パートのコントラストが効果的で、アーガイルにしか出来ない折衷感覚のシティポップ・センスはさすがである。元メンバーで現在NEIGHBORS COMPLAIN(ネイバーズ コンプレイン)で活動するギタリストのGottiのプレイも全編でデイヴィットTを彷彿とさせて、筆者も初見で気に入ってしまった。
数量に限りのある7インチ・シングルなので、筆者の解説を読んで興味を持った音楽ファンは早めに入手して聴くべきだ。