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2020年1月20日月曜日

さとうもか:『melt bitter』(SOUND SKETCH,Inc./ANCP-004)


さとうもかは岡山県出身の20代半ばの若い女性シンガー・ソングライターだ。今月22日にファースト・シングル『melt bitter』をリリースする。
彼女は2015年にファースト・ミニアルバム『THE WONDERFUL VOYAGE』でデビュー後、その個性的な歌声と唯一無二のソングライティングによる楽曲をライブで披露し、多くの音楽ファンを魅了してきた。これまでに『Lukewarm』(18年)と『Merry go round』(19年)の2枚のフルアルバムと、デジタル・シングル3枚、同EPを1枚リリースしている。


タイトル曲の『melt bitter』のテーマは、18年のデジタル・シングル『melt summer』の続編という位置づけでサウンド的にも新機軸となるバンド編成アレンジでトライされている。
ジャケットのイラストにも触れるが、スウィートでシュールな世界観をアメリカン・ポップ・アートとして昇華しているのは、大阪府出身のイラストレーター中島ミドリだ。
ではこのシングルの収録曲について解説しよう。

 

タイトル曲の「melt bitter」は所謂Ⅱ-Ⅴ進行を基調とした黄金のコード進行のソングライティングと、バンド・メンバー達とのヘッド・アレンジでサウンドはクリエイトされている。
さとうのヴォーカルとコーラスの他、エレキギターとベースは中川翔太、ドラムは金本聖也、ウーリッツァー系のエレピなどキーボードは小川佳那子がそれぞれ担当している。彼女の楽曲としては新境地サウンドであり、コーラス・アレンジにはチャカ・カーンの匂いもするのでR&Bファンにもアピールするかも知れない。

音楽通には説明不要で下記のプレイリストを聴いて理解出来ると思うが、グローヴァー・ワシントンJrとビル・ウィザースによる「Just the Two of Us」(『Winelight』収録80年)を代表とするⅡ-Ⅴ進行の名曲は多く存在し、それ以前もシェリル・リンの「Got To Be Real」(78年)やボビー・コールドウェルの「What You Won't Do for Love」(78年)が知られ、後年もアイズレー・ブラザーズの「Between the Sheets」(83年)、ジャミロクワイの「Virtual Insanity」(96年)も一部のパートはその系譜だろう。
日本ではFLYING KIDSの「幸せであるように」(90年)や椎名林檎の「丸ノ内サディスティック」(99年)、近年ではあいみょんの「愛を伝えたいだとか」(17年)等々と、そのアーティストにとって代表作となっている曲が多く、このコード進行によるマジックは聴く者の琴線に触れているので、さとうの曲もきっと注目されるだろう。


続く「ひまわり」は、アレンジとプログラミングにエズミ・モリ(ESME MORI)が参加しており、母子の愛情を綴ったハートウォームでナチュラルな歌詞に先ず惹かれるが、複数のパートで構成された曲の展開がとにかく素晴らしい。某大手化学メーカーの洗剤の動画広告としてタイアップ・ソングに抜擢されたのも記憶に新しい。
ラストの「かたちない日々」は、小川佳那子のアコースティック・ピアノだけをバックに歌ったドラマティックなバラードで、ローラ・ニーロに通じる叙情的なサウンドと歌声が耳に残って離れない。 
(ウチタカヒデ)


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