アルドル・ヴォーカル・グループRYUTist(リューティスト)が、前作『センシティブサイン』(PGDC-0010)に続いてニュー・シングル『きっと、はじまりの季節』を10月29日にリリースする。
RYUTistのメンバーはリーダーの佐藤乃々子をはじめ、宇野友恵、五十嵐夢羽、横山実郁の4 人で、全員が新潟で生まれ育ったことでご当地を中心に活動しており、素晴らしいヴォーカル・ワークを誇っているのが特徴である。
また今月アルバム・レビューしたばかりの鈴木恵TRIOの鈴木恵が楽曲提供しているなどソングライター陣の層が厚く、音楽通を唸らせるそのサウンドとプロダクションは数多存在するアイドル・グループとは一線を画している。
前作は若きシンガー・ソングライターのシンリズムや『柳都芸妓』(PGDC-0005)から参加している佐藤望(Orangeade他)、microstarの飯泉裕子と佐藤清喜が楽曲提供していたが、本作ではシンガー・ソングライター兼ギタリストで、2013年からはKIRINJI (キリンジ)のメンバーとして活躍している弓木英梨乃がタイトル曲「きっと、はじまりの季節」を提供しており、大きな注目を集めるだろう。この曲のアレンジはsugarbeansことキーボーディストの佐藤友亮によるものだ。
カップリングの「Never let me back」は、リリース元であるPENGUIN DISCのレーベルヘッドを努める音楽ライターの南波一海が作詞し、作編曲はEspeciaのサウンド・プロデュースで知られる東新レゾナント(=Schtein & Longer)が担当している。
もう1曲「愛のナンバー」は、今年7月にライヴ会場で限定発売した7インチ・シングル『Majimeに恋して』のB面の既出カバー曲で、いずれもMagic, Drums & Loveのキーボーディストでシンガー・ソングライターの℃-want you!(シー・ウォンチュ!)のソングライティングである。アレンジは多くのメジャー作品で知られる武藤星児、コーラス・アレンジはRYUTistのプロダクションではお馴染みのカンケこと柏崎三十郎がそれぞれ手掛けていて音楽マニアの心をくすぐるだろう。
きっと、はじまりの季節
ではこのシングル収録曲について解説していこう。
「きっと、はじまりの季節」は、スチュワート・コープランド(元ポリス)が叩きそうな独特でタイトなドラミングがリズムを引き締めたドラマティックなポップスで、複数のギターでサウンド・ウォールしたオケをバックにRYUTistのコーラス・ワークの見事さを引き出している。またパーソナル・クレジットが手元にないので定かでは無いが、メロディックで流れるような運指から間奏のギター・ソロはこの曲の作者である弓木自身ではないだろうか。
「Never let me back」は所謂R&B歌謡サウンドではあるが、クレシェンドしていくホーン・セクションやベンディングを多用したシンセ・ベース、トーク・ボックスのアクセントなど80年代初期ファンクのエッセンスが感じられて面白く、また嘗てのSPEED等も想起させた。
そして弊サイト読者に最もアピールするのは、ラストのカバー曲「愛のナンバー」かも知れない。オリジナルは昨年4月に℃-want you!がリリースしたサード・シングルで、イラストレーター兼漫画家の本秀康氏が主宰する“雷音レコード”から7インチでリリースされた。レコードコレクターズ誌ではお馴染みだが、国内随一のジョージ・ハリスン・マニアとして著名な本氏のレーベルということもあり、あの3枚組をこよなく愛するビートル・マニアから強く支持され直ぐにソールド・アウトした。
ここでのRYUTistヴァージョンは、これまたラジオ番組を持つほどのビートルズ研究家として知られるカンケ氏のコーラス・アレンジにより、多彩でスウィートなハーモニーがフューチャーされて、この曲が持っていたポテンシャルを更に高めたサウンドになったといえよう。
「My Sweet Lord」(70年)や「All Things Must Pass」(70年)のオマージュとされるソングライティングもさることながら、様々なアイディアを忍ばせたコーラスにビートル・マニアは唸ると思う。そしてフックの「いつの間にか、コーラはお酒に変わったけれど」のパンチラインが耳に残って離れない。
ニール・ヤングの「After The Gold Rush」(70年)を英国フォーク・トリオのプレリュードが美しいハーモニーでアカペラ・カバー(73年)したヴァージョンを引き合いに出したら褒めすぎかも知れないが、とにかく筆者はこのRYUTistのカバー・ヴァージョンが最近のお気に入りになっているのだ。
(ウチタカヒデ)
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