多くのミュージシャン達に愛されたドラムの神童ことジェフ・ポーカロは、1954年4月1日にコネチカット州ハートフォードで生まれた。
父親がジャズ・ドラマーでパーカッション奏者としても著名なジョー・ポーカロということもあり、7歳から本格的にドラムを習い始める。
17歳になった71年にはジャズ作編曲のジャック・ドーハティの『The Class Of Nineteen Hundred And Seventy One』にレコーディングに参加し、プロドラマーとしてデビューする。翌72年にはソニー&シェールのツアー専属ドラマーとなり、更にシールズ&クロフツの『Diamond Girl』(73年)からシングル・カットされたタイトル曲に参加するなど、プロドラマーとしての活動基盤を築いていくのだ。
また後のプレイ・スタイルに大きな影響を与えたとされるスティーリー・ダンの準メンバーとして参加するのもこの時期で、当時同バンドのギタリストだったデニー・ダイアスの紹介でスタジオに招かれた時、まだ19歳だったというから驚かされる。スティーリーのツアーとレコーディングでのプレイは評判となり、多くのセッションにオファーされるようになる。
76年には幼馴染みのデビッド・ペイチ(ジェフと同様に父親はジャズ・ミュージシャンで、ピアニスト兼アレンジャーのマーティー・ペイチ)、スティーヴ・ルカサー、それに弟のスティーヴ等とTOTOを結成し、82年の4thアルバム『TOTO IV』はグラミー賞で6冠に輝き成功を得たのは読者もご存じだろう。
その後もTOTOのリーダーとして、また一流のセッション・ドラマーとして活動を続けたが、92年8月5日に悲劇は起こる。ロサンゼルスの自宅のバラ園に農薬を散布後アレルギーで心臓発作を起こし、38歳という若さで急死してしまう。
彼の葬儀にはその人望の厚さを証明するかのように多くのミュージシャンが参列し、棺側葬送者はスティーリーのプロデューサーだったゲイリー・カッツが務め、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーからの弔電も読み上げたという。
ここではそんなジェフ・ポーカロ氏を心より敬愛するミュージシャン達と、彼のベストプレイを挙げてその偉業を振り返ってみたい。今回は参加者の内5名がドラマー(経験者含め)であり、その巧みなプレイを詳しく解説してくれた。特にこのシリーズでは初の女性ミュージシャンでドラマーの北山ゆう子氏は、掲載前の最終編集中に急遽ベストプレイを提出してくれた。
全9名分のサブスクリプションの試聴プレイリスト(2時間45分!)を聴きながら読んで欲しい。
【ジェフ・ポーカロのベストプレイ5】
●曲目 / ミュージシャン名
(収録アルバムまたはシングル / リリース年度)
◎選出曲についてのコメント
【足立浩(アダチ ヒロシ)】
Drums & Percussion 奏者/じゃむずKOBO 代表/S.A.D.ドラムスクール 講師
◆HP URL:https://adhiroshi.amebaownd.com
●Better Make It Through Today / 大村憲司
(『Kenji Shock』/ 1978年)
◎アルバム唯一ボーカル曲の幕開けはジェフのビートから。
このテンポでこの強固なグルーヴにまずは驚嘆。
そしてキメへ向かう”タカタドン”(0:51)。最高に気持ち良い。
その後、ギターソロに呼応するように入るタム回し(2:07)と手足コンビネーション(2:14)も聴き所である。
ソロ後には、1拍目にスネア(3:15)を入れることでより場面転換を印象付け、さらにクローズリムショットとスネアの交互打ちで新鮮な空気を呼び込む。
前出のベースのフレーズに乗っかりに行ったような、引っ掛けたスネアに魅力を感じる。(3:29)
●Sweetest Music / 竹内まりや
(『Miss M』/ 1980年)
◎アルバムの1曲目。カウントが全てと改めて実感させられる。ダンサブルな曲調の中、重心が低くメリハリの効いたドラムでバンドサウンドを鼓舞し牽引する。随所に散りばめられたフィルイン”タカドン”のスピード感。これこそが楽曲の推進力をさらに高めている。シンプルなフレーズだが、ドラムを知れば知るほどジェフの凄さには感嘆するばかり。
唐突なエンディングからのM2「Every Night」への導入がまた何とも心地良い。
●If You Want Me / 河合奈保子
(『Daydream Coast』/ 1984年)
◎イントロの6連フィルから痛快!そのままこれぞ!というサウンドへなだれ込む。シモンズのタムとの融合がもたらす楽曲への影響は絶大。
フィルインはもちろん、リズムパターンへも組み込み、自身のプレイへと昇華させている。マイケル・ランドウの饒舌なギターも必聴だ。
●Love Everlasting / オフ・コース
(『As Close As Possible』/ 1988年)
◎打ち込みのビートと生ドラムの対比が楽しめる1曲。
サビの1小節前から華々しく入り、素晴らしいサウンドで曲にエネルギーを生み出す。打ち込みとの共存にとどまらず相乗効果をもたらしている。素晴らしいアレンジだ。
ジェフは全体を通して大きなグルーヴを作り、1音の大切さをこれでもかと教えてくれるプレイ。説得力しかない!
エンディングに登場する4拍目のスネア(4:05) 、これには思わず背筋がピンとなる。
●Tema Purissima / 大貫妙子
(『PURISSIMA』/ 1988年)
◎オーケストラアレンジの華やかで壮大な世界観の中、絶妙に溶け込みながら心地良いビートを刻む。 パワフルでタイトに全体を牽引するプレイも素晴らしいが、音楽に寄り添うリラックスした温かいビートもジェフの魅力。改めてドラムアプローチの深さを感じさせてくれる名演だ。
実父ジョー・ポーカロがパーカッションを担当しており、親子共演も聴き所の一つである。
If You Want Me / 河合奈保子
【北山ゆう子(lake、キセル、王舟、流線形、THE LAKE MATTHEWS etc)】
●Keepinʼ It To Myself / Jaye P. Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎元曲AWB版よりもテンポアップして軽快なディスコナンバーに。
でもハイパー過ぎなくって好みのタイプです。
●Hard Times / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 77年)
◎バックはほぼTOTO。前作よりリズムがたっている印象。 重心が低いのに軽やかなビートは名人芸。
●Come As You Are / Laura Allan
(『Laura Allan』/ 78年)
◎うたに寄り添うコントロールされた演奏。
●All Right / Christopher Cross
(『Another Page』/ 83年)
◎アルバム中シングル・カットされたこの曲だけ(ジェフ)ポーカロの演奏でした。 シンプルでムダがないですね。
わたしが語ることなんて何もないや。
●The Girl Is Mine / Michael Jackson
(『Thriller』/ 83年)
◎もう、曲が好き。自然と歌に耳がいってしまう演奏って理想だ。
The Girl Is Mine / Michael Jackson
サックス吹きでもありベーシストでもあります。 https://twitter.com/sgs_kozonohttps://smallgardenstudio.jimdo.com/
●Black Friday / Steely Dan
(『Katy Lied』 / 75年)
◎6/8系の小気味良いシャッフルビートが心地良い楽曲だ。開き過ぎない品のあるハイハットがシャープな印象を与えている。ジェフの細かいロールの正確さ、乱れのない打点は非常に気持ちのよい音で、ドラムセットを「叩いている」というよりも「奏でている」と言った方がしっくりくるだろう。当時は20歳くらいだろうか、この若さでの才能の開花はまさに天性のものだ。
●Point it up / Larry Carlton
(『Larry Carlton』 / 78年)
◎カールトンのサードアルバムからアップテンポでスリリングな楽曲。 ある意味で音色に特徴のない「耳障りでない」完璧すぎるドラミングこそがジェフ・ポーカロ、その人を指すといっても過言ではないと思う。これほどスリリングな曲でも自分の存在をアピールせずにメインアーティストのサポートに徹するプレイが業界において高評価を得ていることは間違いない。まさに職人ワザの極みではないだろうか。
●Breakin’ Away / Al Jarreau
(『Breakin’ Away』 / 81年)
◎要所で細かいアウフタクトが多い曲だがソツなくこなしてしまうジェフには脱帽だ。 ミドルテンポの16thシャッフルビートでの一糸乱れぬ演奏にはドラムロボットのような質感が伴いやすいがその背景には非常に細かい揺らぎが隠れており、それが機械たらし めない「ジェフ・ポーカロのヒューマニズム」が常に存在しているのである。
●蒼夜曲 セレナーデ / 尾崎亜美
(『Hot Baby』 / 81年)
◎尾崎亜美のアルバムよりダイナミックなバラード風楽曲。 恐らく数テイクもかからずに録音を終えているのではないだろうか。楽曲を身につけているという解釈より譜面を初見で間違いなくこなすようなプレイが目立つジェフの演奏は注目さえしなければメインアーティストを引き立てる最良のプレイだとも言える。 しかし、そのソツのない演奏は「絶対で間違いのない演奏」として重宝がられていたことはその圧倒的レコーディング数からも証明出来るのではないだろうか。
●Dear John / Elton John
(『Jump Up!』 / 82年)
◎ストレート8ビートの正統派ロックポップス、そんな副題にピッタリのジェフのプレイは泥臭さが無いところが、エルトン・ジョンのロックテイストをいわゆるアメリカの「ビッグビートロック」ではなく「ブリティッシュロック」に落とし込めている要因の一つになっているはずである。
Breakin’ Away / Al Jarreau
【ショック太郎(無果汁団)】
アレンジャー。只今ファースト・アルバムを製作中。学生の頃はドラムもやっていました。
https://twitter.com/shocktarou
●Doctor Wu / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎フィル・ウッズのサックスソロの素晴らしさはもちろん、フェードアウト間近の歌心溢れるジェフのドラムソロも印象的。この曲のサックスとドラムの関係性は、後の「Aja」のウェイン・ショーターとスティーヴ・ガッドを彷彿させます。
●Livin’s Easy / Sanford & Townsend
(『Duo Glide』/ 77年)
◎Aメロのスネアのパラディドル部分が、なんとなくポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」のガッドのプレイに影響された感も。その曲の8分裏のタンバリンはフット・ハイハットで対応し、これがまた絶妙なカントリーテイストに。
●Goodbye Elenore / TOTO
(『Turn Back』/ 81年)
◎10代の頃に買った「ジェフ・ポーカロ/ドラム奏法」にも載っていた超難曲。バーナード・パーディーのハーフタイム・シャッフルをストレートなロックサウンドに見事に応用。
コピーは無理でも譜面だけは見て繰り返し聴いていた筆者の思い出の1曲。
●One Step Ahead Of The Bad News / Randy Goodrum
(『Fool’s Paradise』/ 82年)
◎ランディ・グッドラムの名盤ですがジェフのプレイも名演ぞろい。
この曲はソウルフルなミディアム16ビートのノリを残しながらも32ビートの細かい刻みをひたすらキープしていて圧巻。
それでいて、この大らかなグルーヴ感。さすがです。
●Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理
(『My Heart In Red』/ 89年)
◎ジェフ得意の「ロザーナ」系ビートで、時代が時代だけにスネアの音がデカいですが、この強弱を使い分けながら絶妙にグルーヴするハイハットワークに耳を傾けるべし。デュエットしている男性ボーカルは、何とジョセフ・ウィリアムス本人!
Send Love To Me ~愛をとどけて~ / 飯島真理
【西浦謙助(集団行動 / mezcolanza etc)】
集団行動HP https://www.syudan.com/
ツイッターアカウント @tikanakangana
●Brother Love's Traveling Salvation Show / Sonny & Cher
(『Mama Was A Rock And Roll Singer Papa Used To Write All Her Songs』/ 73年)
◎発売年からするとレコーディング時はまだ10代ですか。恐ろしい。こんな一面もあったのね…という感じで荒々しく叩きまくっている若き日のジェフを楽しめます。
●Lowdown / Boz Scaggs
(『Silk Degrees』/ 76年)
◎この曲のリズム隊の息を呑むクールさよ!2つのドラムトラックが効果的なこちら、イントロのフィル、流れるような16のハットとキック、陶然でございます。
●Thank You For Being A Friend / Andrew Gold
(『All This And Heaven Too』/ 78年)
◎ピアノポップの名曲。ドラム的には手数も多くなく地味かも知れませんが、歌モノのドラムかくあるべし!という教科書のようなジェフのドラムが流石です。サビのハイハットのオープンクローズとキックのダブルの入れ方が素晴らしいです。
●Lost In Love With You / Leon Ware
(『Leon Ware』/ 82年)
◎匂い立つ80年代AOR臭のアダルト具合に赤面してしまいそうになるこの曲ですが、恥ずかしがりながら聴き耐えていると02:10〜からの怒涛のキメフレーズでヤッホーイ!とテンションが上がり楽しいです。
「キメフレーズでも過剰なエモさがなく小気味良い」これぞジェフの真骨頂。
●Rosanna / TOTO
(『TOTO IV』/ 82年)
◎臆面もなくこちらをチョイス。「簡単そうで実は超えげつない」ドラムでおなじみのこちら、語り尽くされているハーフタイム・シャッフルについてはググって頂くとして、個人的にはサビ前のキメのフィルが超かっこよくて最高です。
Rosanna / TOTO
【洞澤徹(The Bookmarcs)】
https://silentvillage.wixsite.com/horasawa
●Look Who's Lonely / Bill LaBounty
(『Bill LaBounty』82年)
◎イントロのスネアのフィルから心掴まれます。Bill LaBountyとの相性の良いハネ具 合も気持ちよい。
●That’s Why / Michael McDonald
(『If That’s What It Takes』82年)
◎ポーカロらしい躍動するドラミング。
ハットとバスドラのタイミングが最高に好み。
●Jamaica / Bobby Caldwell
(『Carry On』82年)
◎TOTOでも聴いたことあるアフロっぽいリズムパターンがとってもポーカロっぽい。
●Stay The Night / Chicago
(『17』84年)
◎加工された、まさに80’のドラムサウンドだけどその迫力がかっこいい。中学生の頃 リピートしまくっていた。
●Running With The Night / Lionel Richie
(『Can’t Slow Down』84年)
◎ポーカロのドラムの音色と16ビートがライオネル・リッチーの声ととっても相性が良い と思える1曲。
Jamaica / Bobby Caldwell
【増村和彦(GONNO × MASUMURA etc)】
http://www.ele-king.net/writters/masumura_kazuhiko/
●Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan
(『Jaye P.Morgan』 / 76年)
◎デイヴィッド・フォスター初期プロデュースの自主盤中のキラーチューン。
サビで飛び出すスネアと同時に叩くフロアからやって来る推進力が渋い。
●The Devil In You / Ned Doheny
(『Prone』 / 79年)
◎何故か当時日本だけでリリースされたらしい3rd。このポーカロのプレイは全部の音に配慮が行き届きすぎていてちょっとこわい…。
●Nice Girl / Eye To Eye
(『Eye To Eye』 / 82年)
◎Julian MarshallとDeborah Bergのユニット。プレイヤーはスティーリー・ダンでお馴染みのメンバー。タイト!
●Take A Good Look Around You / Timothy B.Schmit
(『Timothy B.Schmit』/ 87年)
◎ポコ、イーグルスと渡り歩いたティモシー・シュミットのソロ2枚目。イントロの2拍目のバスドラム、ハイハット、リムショットが、シンプルながら一人三役やっているような印象を与えて気持ちよい。
●Krougnegne / Mory Kanté
(『Touma』/ 90年)
◎ギニアのシンガー。ジェフ自らプログラミングしたというビートは、やはりジェフらしく端正で、クラブ・ミュージックにも通じそうだ。1:38〜間奏のコラはフランスのfolamourみたいだ。
Keepin' It To Myself / Jaye P.Morgan
【松木MAKKIN俊郎(Makkin & the new music stuff / 流線形 etc)】 http://blog.livedoor.jp/soulbass77/
●Directions And Connections / Tom Jans
(『The Eyes of an Only Child』/ 1975年)
◎ いくつか残されているジム・ケルトナーとのツインドラム。圧倒的な個性のケルトナー、その影響下にあるポーカロも個性が確立され、素晴らしいアンサンブルに。
●It's So Real / Originals
(『Communique』/ 1976年)
◎御大ジェイムス・ジェマーソンとの貴重なコンビネーションでシンプルなソウルミュージックを。ハイハットの引っ掻け方、後半のキメに対するアプローチなど、しっかりと斬新で最高。
●Slowdown / Paul Anka
(『The Music Man』/ 1977年)
◎クロスオーバー~フュージョン風にウネるパターンを、1音の淀みも無く太い音色で。マシーンのようにジャストなビートは、ハードロックまでカバーするポーカロの面目躍如。
●Whatcha Gonna Tell Your Man / Boz Scaggs
(『Down Two Then Left』/ 1977年)
◎歌い出し直前のサァァァというスネアだけでもう痺れる。フィリーソウルの黄金パターンをポーカロ流に仕上げた1曲。その熱量故に珍しく荒いが、それも含めて完璧なソウルミュージック。
●What I My Doing Wrong / Waters
(『The Waters』/ 1977年)
◎個人的に思うポーカロの最高傑作がこれ。BPM84、沈むようなフロアに、軽く舞うようなスネア。スロウでも強靭なグルーヴと深い音色は変わらない。マイケル・オマーティアンも流石のセンス。
What I My Doing Wrong / Waters
【ウチタカヒデ(WebVANDA管理人)】
●Your Gold Teeth II / Steely Dan
(『Katy Lied』/ 75年)
◎前作『Pretzel Logic』(74年)から更にスタジオ・ラボ化が進んだ4作目の収録曲。ジェフの神童振りが発揮されたハチロクのビパップ・ビートを基調に3/8、9/8の変拍子パートを加えたジャズ・ロック。
2000年のリユニオン以前の中期スティーリー・ダンのイメージはこの曲に代表される独自性が大きいと思う。
●Let's Get Together / Jaye P Morgan
(『Jaye P. Morgan』/ 76年)
◎Dフォスター最初期プロデュースの自主製作盤だがレアグルーヴ・ブームによって後年リイシューされたことでも知られる。DハンゲイトとSルカサーも参加したこの曲でのプレイはTOTO結成前夜の名演の一つに数えられるだろう。
繊細な16分のハイハットとタイトなスネアのコントラスト、ロータムのバックビートのタメの利いたグルーヴも最高だ。
●Zorro Rides Again / Les Dudek
(『Say No More』/ 77年)
◎ジェフといえばボズ・スキャッグス作品での名演が多いが、バンド・ギタリストだったレス・デューデックのセカンドからこのインスト大作を。新主流派以降のジャズ界きっての名ドラマー、トニー・ウィリアムスとのツインドラムは同時録音らしく、刺激を受けて徐々に白熱していくジェフのプレイは聴き応えがある。
トニーは右ch、ジェフは左chなので各名手のプレイを聴き比べることをお勧めする。
●Room To Grow / Brian Elliot
(『Brian Elliot』/ 78年)
◎知る人ぞ知るシンガーソングライターの隠れた名盤より。素早いタムのフィルから始まるジェフのプレイはDハンゲイトのベースとのコンビネーションで良質なミッドテンポ・グルーヴを醸し出している。ハンゲイトのスラップとダブル・ストップ、ギターのJグレイドンの例のチョーキングなどが乱舞するアクセントに呼応するジェフの多彩なプレイも聴きものだ。
●Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross
(7”『Arthur's Theme (Best That You Can Do)』/ 81年)
◎アカデミー歌曲賞を受賞した映画『Arthur(ミスター・アーサー)』のタイトル・テーマ曲。シンガーソングライターのクリストファー・クロスの他BバカラックとCBセイガー、Pアレンの共作でマイケル・オマーティアンのアレンジによるミディアム・テンポのバラード。
ドラムキットでピアニシモからフォルテシモを演出する歌伴の理想型がここにある。
Arthur's Theme (Best That You Can Do) / Christopher Cross