60’モッズ・サウンドをベースに若干15歳の美少女ボーカリスト“それいゆ”を擁するバンド、SOLEIL(ソレイユ)がサード・アルバム『LOLLIPOP SIXTEEN』を7月17日にリリースする。
このバンドは元ザ・ファントムギフトのベーシスト、サリー久保田を中心に結成され、それいゆのルックスとコケティッシュなボーカルで、多くのガールポップ・ファンを魅了している。
現正式メンバーは、それいゆとサリー久保田の2名になったが、弊サイトではお馴染みのザ・ペンフレンドクラブを率いる平川雄一がサポート・ギタリストとしてツアーに同行しているのは注目したい。
アルバム毎に参加している作家陣も実に多彩なのだが、本作にも筆者が高く評価しているガール・グループRYUTistの『青空シグナル』(18年5月)や『黄昏のダイアリー』(18年11月)を手掛けたTWEEDEESの沖井礼二と清浦夏実をはじめ、カーネーションの直枝政広、森若香織、高浪慶太郎、マイクロスターの佐藤清喜と飯泉裕子、のん(能年玲奈)、そしてフレネシらが楽曲を提供しており人選も非常に興味深い。全12曲中2曲はカバー曲で、フランス・ギャルの「Zozoi」(70年)、イモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」(81年/作詞:松本隆、作曲:細野晴臣)を収録している。
冒頭からTWEEDEES組による「ファズる心」(フランス・ギャルの「ジャズる心」のもじりか?)は、Cymbals時代の沖井の作風が色濃く出たハイブリッドなモッズ・ポップで、SOLEILの魅力を引き出している。
メロトロンガール/SOLEIL
7インチ・シングルカットされたリード・トラックで作編曲家の岡田ユミがソングライティングを手掛けた「メロトロンガール」は、サイケデリックな上物にモータウン・ビート(まるでH=D=H風だ)をぶつけて完成度の高いガール・ポップに仕上げている。
アルバム中VANDA的にチェックすべき曲は、マイクロスター組が手掛けた「Red Balloon」ではないだろうか。サウンドやアレンジは中期ビートルズのサイケデリック風味だが、メロディ・センスにはトニー・マコウレイに通じる。
歌詞と共に『microstar album』(08年)収録の「東京の空から」を彷彿とさせて好きにならずにいられない。
さてここでは、このアルバムに楽曲提供し筆者が監修したインディーズ・コンピ『Easy Living Vol.1』(06年)以来交流がある、女性シンガー・ソングライターのフレネシに、本作についてのインタビューをおおくりしよう。
フレネシ
●まずは今回SOLEIL(ソレイユ)のサード・アルバムとなる本作に楽曲提供した経緯を教えて下さい。
やはりボーカルのそれいゆさんがフレネシさんのファンを公言していたことが、大きなきっかけでしょうか?
フレネシ:ありがたいことに、そのようで…。全然存じずインタビュー記事を何気なく読んでいたら、突然「フレネシさんの…」と出てきて、思いっきり茶を噴きました。
それから、これはあんまり関係ないかもしれませんが、それいゆちゃんのお母様が私の母校の先輩と伺って、大変な親近感を覚えました。「学校近くのアイスもなか屋さん、閉店したんですってね」など…音楽と無関係な話をするなど。
●これまでも朝ドラで女優として一躍有名になり現在はミュージシャン活動もして、なんとこのアルバムにも楽曲提供している、のんさんがファンであることを公言されていましたが、こういうリスペクトに対してどう思われますか?
最近では、ウワノソラの角谷君やシンリズム君も学生時代にフレネシさんのアルバムを愛聴していたことが判明しましたね。
フレネシ:「全部夢じゃないだろうか?」と思うくらい、会う方に認知されていて、そういうことがあるたび驚いています。
私のアーティスト性には、ずば抜けてうまかったり、ずば抜けてキャッチーだったり、といった、ずば抜けている要素がこれといってあるわけではないので…数ある好きな音楽の1つに入れてもらえているだけでも、光栄なことですね。
●楽曲提供する以前からSOLEILのアルバムは聴いていましたか?
フレネシ:PVは見ていました。「魔法を信じる」を聴いたとき、これはTEDDY RANDAZZOの「Trick or Treat」(66年)だ!とすぐにピンときて。サリーさんとお会いした際、真っ先にその話をしました。
●「魔法を信じる」は18年のファースト・アルバムのリード・トラックですね。サリー久保田さんらしいアレンジは、モッズ経由モータウンの所謂ジェームス・ジェマーソンの三連ベースラインで、TEDDY RANDAZZO & ALL 6のオリジナル・サウンドと異なるから気付く人は少ないかもしれませんね。
ではメジャー・デビュー時からご存じだったということですか?
フレネシ:すみません、デビュー当時は存じず…。後追いでMVを視聴しました。
この時代感と世界観がこんなにハマっていて、この若さ?と衝撃でした。
●続いてフレネシさんが今回提供された「アナクロ少女」のソングライティングについて聞かせ下さい。
それいゆさん側からはどのようなリクエストがありましたか?
フレネシ:ファーストの『キュプラ』(09年)の「仮想過去」のような曲が良いと具体的にリクエストをいただいたので、とても作りやすかったです。
「なんでもいい」と言われると逆に困ってしまいますね。アウトのラインが分からなくて。
●「仮想過去」のオリジナルは、古くはConnie Francisの「Lipstick On Your Collar(カラーに口紅)」(59年)に通じる50年代ロックンロール・ベースのポップスで、『キュプラ』の収録曲の中では、比較的ストレートなアレンジのサウンドですが、この曲に注目した、それいゆさんの趣向が垣間見られて面白いですね。
フレネシ:そうですね。MVがあるわけでもない、ちょっと異端なこの曲をあえて選んでくださったのは、私としては意外でした。
●デモ制作中のエピソードがあればお聞かせ下さい。
フレネシ:育児・復職中でとにかく時間がなくて…詞が思い浮かんだ時点で作曲も並行して行い、およそ1日で完成させました。
ちょっと前に種村季弘の「アナクロニズム」を再読していて、引用などはないですが、今作のテーマになっています。
●ストック曲ではなさそうですが、約1日で完成させたのはさすがです。
サビのメロディ・センスが、セルジュ・ゲンスブールが手掛けていた頃のフランス・ギャルを彷彿とさせていい曲です。
サリー久保田さんのアレンジは、デモの時点からどのようにモディファイされていますか?
フレネシ:基本のビートのループにコード、メロディ、歌詞と符割までが私の仕事で、アレンジは全面的にお任せでした。イントロには驚かされました。
●ご自分の提供曲以外で気になった楽曲はありますか?
フレネシ:「ハイスクールララバイ」と「Zozoi」のカバー、最高ですね!カバーのチョイスって重要ですよね。アルバムの振れ幅を示す指標の一つだと思っています。
ハイスクールララバイ
フレネシさん提供の「アナクロ少女」のメロディ・センスも含め、60’Sフレンチ・ポップ路線の成果が今後の活動の試金石ともなりそうですね。
フレネシ:そうですね。このラインから大きく逸脱したそれいゆちゃんも見てみたかったりします、個人的には。
●最後にフレンシさんが感じた、本作『LOLLIPOP SIXTEEN』の魅力を語って下さい。
フレネシ:豪華すぎる作家陣に加えていただいて本当に光栄です。これほど多様な楽曲が集まっていながら、アレンジの力か、SOLEILカラーにまとまっているのがすごいですね。 それいゆちゃんの天然なのか計算なのか分からない表現力の素晴らしさにも驚かされました。
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