2019年6月9日日曜日

Cowboy ~ Scott Boyer, Tommy Taltonの活動

いつもは「ガレージバンドの探索」というコラムを書かせていただいているのだけれど、今回は最近気に入ってよく聴いていたサザンロックバンドのCowboyについて調べてみることにした。
1969年にScott BoyerとTommy Taltonを主要メンバーとして結成されたバンドで、The Allman Brothers Bandとの繋がりが深い。
二人はセッション・ミュージシャンとしての活動も多かったようだ。

【主要メンバー】
Scott Boyer(Acoustic guitar, electric guitar, vocals, violin) 
Tommy Talton(Electric guitar, acoustic guitar, vocals)

1966年
Scott Boyerはフロリダ州立大学を卒業後、大学で知り合ったButch Trucks(The Allman Brothers Band)らとフォーク・ロック・グループ、The Bitter Indを結成。ここから始まった活動が後にCowboyの結成に繋がっていく。

Tommy Talton の方はこの頃、意外にもフロリダ州オーランドでWe The Peopleというガレージバンドをやっていた。シングルも7枚リリースしている。

ニューヨークのフォーク・クラブ、The Bitter Endに商標権を主張された為The Bitter Indはバンド名をThe Tiffany Systemに改名。

1967年
The Tiffany Systemでシングル「Let's Get Together」(MIN-128)をリリース。

1968年

新たにバンド名をThe 31st Of Februaryに改名し、Vanguard Recordsと契約。この時のメンバーはScott Boyer、David Brown、Butch Trucks。セルフタイトルのアルバム『The 31st Of February』(VSD-6503)をリリースする。

その後Steve Alaimoプロデュースで、2ndアルバムの為のデモが録音される。この録音にはDuane AllmanとGregg Allman兄弟(The Allman Brothers Band)が参加していて、後にThe Allman Brothers Bandの代表曲のひとつとなる「Melissa」の初録音が含まれていた。

このデモ音源をVanguard Recordsに送ったものの断られてしまったそうでThe 31st Of February名義で世に出ることはなく、The Allman Brothers Band が有名になった1972年になって『Duane and Greg Allman』というタイトルでBold Recordsからリリースされた。(Bold Records‎–33-301)

今月の6月12日に、この『Duane and Greg Allman』の世界初オフィシャルCD化された国内盤が、SOLID/T.K.RECORDSから発売される。(CDSOL-5678)

We The Peopleを脱退したTommy Talton、ロサンゼルスで活動していたHour Glassを解散してフロリダに戻っていたDuane AllmanとGregg Allman兄弟がThe 31st Of Februaryに加わったものの、2ndアルバムのリリースが上手くいかなかったこともあってかその後に解散してしまう。


1969年
The 31st Of February解散後、Duane AllmanとGregg AllmanはThe Allman Brothers Bandの結成に繋がる活動を始め、Scott BoyerはTommy Taltonと新バンドを結成することにした。こうして、ジャクソンビルでScott Boyer 、Tommy Taltonを中心にピアニスト/ギタリストのBill Pillmore、ベーシストのGeorge Clark、ギタリストのPete Kowalke、ドラマーのTom WynnによってCowboyが結成される。

結成して間もなく、Capricorn Recordsと契約していたThe Allman Brothers BandのDuane Allmanが、レーベルオーナーのPhil Waldenに薦めてくれたおかげでCowboyもCapricorn Recordsと契約することになる。

1970年

Capricorn Recordsのあったジョージア州メイコンに拠点を移し、Johnny Sandlinプロデュースで1stアルバム『Reach for the Sky』(SD 33-351)をリリース。全体的にアコースティックな雰囲気のアルバム。味のある歌声とコーラス、温かい空気感が心地いい。


このアルバムの収録曲「It’s Time」は1974年のBonnie Bramlettのソロアルバム『It’s Time』でカバーされていて、Scott Boyer、Tommy Talton、Capricornのミュージシャンがバックバンドに参加している。(CP 0148)

1971年
2ndアルバム『5'll Getcha Ten』(SD 864)をリリース。 The Allman Brothers Band のDuane Allman、Chuck Leavellも参加している。
収録曲「Please Be With Me」のスライド・ドブロ・ギターはDuane Allman。この曲はEric Claptonの1974年のアルバム『461 Ocean Boulevard』でカバーされた。(SO 4801)

1stアルバムと2ndアルバムはカップリングされ、『Why Quit When You're Losing』(2CX 0121)として1973年にも発売されている。

2ndアルバムのリリース後、バンドは休止状態となる。
Scott Boyer 、Tommy TaltonはCapricorn RecordsのセッションミュージシャンとしてAlex Taylor、The Allman Brothers Bandなどのバックに参加していた。

1974年
この年、Gregg Allmanの『Laid Back』ツアーに同行したScott Boyer 、Tommy TaltonはデュオとしてCowboyの名前で演奏を行い、その2曲がGregg Allmanのライブアルバム『The Gregg Allman Tour』(2C 0141)に収録されている。


3rdアルバム『Cowboy~Boyer&Talton』(CP 0127)をリリース。このアルバム、CowboyとBoyer&Taltonどちらがタイトルの扱いなのかはっきり分からなかった。1st、2ndと比べ少しロック色が強まった印象。
Cowboyに興味をもったのは最初にこのアルバムを聴いたのがきっかけだった。Johnny Sandlinはプロデュースだけでなくプレイヤーとしても参加。その他Chuck Leavell 、Bill StewartなどThe Allman Brothers BandのメンバーやCapricorn Recordsのミュージシャンが参加している。


2018年にCD化された『Cowboy~Boyer&Talton』(RGM-0709)には、上述の『The Gregg Allman Tour』で演奏した2曲がボーナストラックとして収録されている。

3rdアルバムリリース後も、二人はCapricornでセッションミュージシャンとして活動。

1976年
T. Talton / B. Stewart / J. Sandlin名義のアルバム『Happy to Be Alive』(CP 0167)がリリースされる。これは事実上Tommy Taltonのソロアルバムのようだ。

1977年
Scott Boyer、Tommy Taltonは新たにTopper Price、Chip Millerなどを加えてCowboyを復活させ、4thアルバム『Cowboy』(CPN 0194)をリリース。

1970年代末
Capricorn Recordsが倒産し、Cowboyも正式な発表はしなかったものの解散状態となる。

2011年
2010年12月17日にジョージア州メイコンにあるキャピトル・シアターで再結成ライブを行っていて、そのライブCD 『Cowboy, Boyer & Talton Reunion 2010』(RS110516-01)が2011年にリリースされている。Scott Boyer、Tommy Taltonの他、3rdアルバム期のメンバーRandall Bramblett、Bill Stewartなどが参加。

2018年
最後の新作アルバム『10'LL GETCHA TWENTY』(CCR008)がリリースされた。収録曲は2007年以降に録音されていたもので、トラックの半分にはオリジナルメンバー全員が参加している他、3rdアルバム期のメンバーRandall Bramblett、Bill Stewart、Chuck Leavell なども参加している。

Cowboyが解散状態となった1980年代以降、Scott Boyerはいくつかのバンドで活動後、1988年からマッスル・ショールズに住み、Johnny SandlinがスタートさせたThe Decoysで活動。(Johnny Sandlinは途中で脱退。)2018年の2月に亡くなるまでThe Decoysで活動を続けた。息子のScott Boyer IIIもギタリスト、ボーカルとして、マッスル・ショールズで音楽活動を行っている。

Tommy Taltonは1994年にルクセンブルクに移りMatt Dawsonのバックバンドに参加。新バンド、The Rebelizersを組みヨーロッパで活動し、2005年以降はソロ作品をリリースし活動を続けている。

【文:西岡利恵(The Pen Friend Club)/編集:ウチタカヒデ】 

 

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