少し紹介が遅れてしまったが、元BRIDGE(ブリッジ)のイケミズマユミ(キーボーディスト)のソロプロジェクトThree Berry Icecreamが、オールタイム・ベスト・アルバム『SUNSHINE ON MY MIND 1998-2018』を昨年10月17日にリリースした。
BRIDGEは92年に渋谷系バンドとしてデビューし、元フリッパーズ・ギターの小山田圭吾が主宰したトラットリア・レーベル(ポリスター傘下)から2枚のオリジナル・アルバムをリリースしている。95年の解散後は、ベーシストのカジヒデキがソロ・アーティストとして成功し、その存在が改めて知られるようになった。17年には22年ぶりにオリジナル・メンバー6人で再結成ライヴを行ったことも記憶に新しいと思う。
さてイケミズマユミのThree Berry Icecreamの活動であるが、音楽誌「米国音楽」の付録CDに楽曲提供したのがきっかけとなり、99年にアメリカにてファーストEP『three berry icecream』を7インチでリリースし、その後も国内でミニアルバム『apricot』、『Rain Drops』を発表しており、17年には以前アメリカ・ツアーで一緒だったBrent Kenji(ブレント・ケンジ、Friedrich Sunlight)とのコラボレーションで「three cheers」を7インチでリリースしている。
彼女が紡ぎ出すシンプルなメロディと英語歌詞は海外でも評価が高く、アメリカ、台湾、韓国のイベントにも出演し、国内外合わせて20枚以上ものコンピレーション・アルバム(以下コンピ)に楽曲が収録されており、ゲーム音楽やLoftのキャンペーン・ソング、近年は『婚前特急』『わたしのハワイの歩きかた』『夫婦フーフー日記』 などの映画作品にも参加するなどその活動は多岐に渡っている。
今回の活動20周年を記念したベスト・アルバム『SUNSHINE ON MY MIND 1998-2018』は、そんな彼女の魅力を余すことなく詰め込んでいるので、ギターポップやWebVANDA読者をはじめとするソフトロック・ファンにも聴き応えがあるだろう。
なお本作には、BRIDGEで同僚だった、大友眞美や黒澤宏子の他、Swinging Popsicleの嶋田修、orangenoise shortcutの杉本清隆らと一緒にレコーディングした新曲「Come away to winter」「Honey and clover」の2曲を含む27曲が収録されている。 では筆者が気になった主な収録曲を解説していこう。
冒頭新曲の「Come away to winter」は、ボサノヴァのリズムを基調としたギターポップ・サウンドで、BRIDGEのリード・シンガーだった大友とSwinging Popsicleの嶋田、SmokebeesやRed Go-Cartなど複数のバンドに所属するヒロセミキがコーラスで、イケミズのヴォーカルをサポートしている。
なおこのコーラス・アレンジには、シンガー・ソングライターの小林しのが協力している。スリー・リズムのフォーマットでキーボードレスだが、グロッケンのオブリとヴィオラが入ることでサウンドが豊かになっていることにも注目したい。蛇足だがタイトルはAztec Cameraの「Walk out to winter」を彷彿とさせた。
続く「Honey and clover」も新曲で、こちらにはBRIDGEのドラマーだったクロサワヒロコが参加し歌心あるドラミングを披露しており、全編スキャットのこの曲にメリハリをつけている。また筆者が06年に監修したコンピ『Easy Living Vol.1』にも参加したMargarets Hopeのホザキマユミもフルートで参加して、この清々しいサウンドに彩りを添えている。
「Majestic monochrome (completed mix)」は12年のコンピ『胸キュン☆アルペジオ~Takayuki Fukumura with Friends』の冒頭に収録されており、往年のギターポップ・ファンが聴けば気付くと思うが、The Monochrome Setの「Jacob's Ladder」(84年)へのオマージュである。ルーツ的にはメジャー・キーのブルースだが、このモッドなサウンドは多くのバンドに影響を与えている。
この曲もそんな影響下にありイケミズとBrent Kenjiのデュエットで歌われる。バッキングはVasallo Crab 75のオオクライッセイがギターとベース、ヨシダアキヒロがドラム・プログラミングで参加している。
「Felicity fall」はセカンド・ミニアルバムの『Rain Drops』(06年)収録曲で、イケミズの曲とカジヒデキの詞という元BRIDGE組のソングライティングになっている。2分半程の小曲だがイントロからヴァースへかけてのコード進行が素晴らしく、イケミズによる印象的なアコーディンオンとグロッケンのプレイも効果的だ。
アルバム中最もソフトロック・テイストなのは「Fairy tale」で、07年に出版されたガール向け小冊子『My Charm』11号の付録CDに提供されたシャッフル・ナンバーである。歌詞はこの本の著者である磯谷佳江で、作詞家としても成功している彼女のセンスが光っている。アレンジ的には三連のピアノやグロッケンの配置、対位法のベースのフレーズなどアレンジもよく練られているのだ。
レコーディング時期でアレンジを変えたスリー・ヴァージョンが収録された「Go pit-a-pat days」にも触れておこう。収録は発表順と時系列的に逆になるが、「Go Pit-A-Pat Days 96」は、02年に森達彦氏のハンマー・レーベルからリリースされたコンピ『STUDIO LAB/ FLOCKS』に収録された英語歌詞の最新ヴァージョンで、アコースティック・ギターには元BRIDGEの大橋伸行、バックトラックのプログラミングには現在活動停止中のmaybelleのキーボーディストで、作編曲家、劇伴音楽家として知られる橋本由香利が参加している。サウンド的にはアコースティック・ギターの刻みとウッドベースが利いたオールドタイミーなサンシャイン・ポップだ。
続く「Go pit-a-pat days (Brownie version)」は、ROUND TABLEの伊藤利恵子が主宰するブラウニーレコードのコンピ『9 pieces of BROWNIE』(99年)に収録されたヴァージョンで、バッキングは主に伊藤と北川勝利のROUND組二人で担当している。ベースは生のエレキだがヴァイオリンが入ることで、最初期ヴァージョンより落ち着いた雰囲気になる。
本作のラストに収録された最初期のオリジナル日本語歌詞ヴァージョンの「Go pit-a-pat days」は、98年にカセットで限定リリースされていた『Three Berry Icecream』に収録されており、ギターには元BRIDGEの清水弘貴が参加している。やや荒削りなアレンジと演奏であるが、清水はアコースティック・ギターとセミアコ・ギターを弾き分けており、オクターブ奏法も披露している。
この最初期ヴァージョンの時点でイケミズが描こうとしている世界観は垣間見られており、ブリル・ビルディングの時代に通じる巧みなソングライティングは、聴く者の心を掴んで離さないだろう。
(ウチタカヒデ)
続く「Honey and clover」も新曲で、こちらにはBRIDGEのドラマーだったクロサワヒロコが参加し歌心あるドラミングを披露しており、全編スキャットのこの曲にメリハリをつけている。また筆者が06年に監修したコンピ『Easy Living Vol.1』にも参加したMargarets Hopeのホザキマユミもフルートで参加して、この清々しいサウンドに彩りを添えている。
「Majestic monochrome (completed mix)」は12年のコンピ『胸キュン☆アルペジオ~Takayuki Fukumura with Friends』の冒頭に収録されており、往年のギターポップ・ファンが聴けば気付くと思うが、The Monochrome Setの「Jacob's Ladder」(84年)へのオマージュである。ルーツ的にはメジャー・キーのブルースだが、このモッドなサウンドは多くのバンドに影響を与えている。
この曲もそんな影響下にありイケミズとBrent Kenjiのデュエットで歌われる。バッキングはVasallo Crab 75のオオクライッセイがギターとベース、ヨシダアキヒロがドラム・プログラミングで参加している。
「Felicity fall」はセカンド・ミニアルバムの『Rain Drops』(06年)収録曲で、イケミズの曲とカジヒデキの詞という元BRIDGE組のソングライティングになっている。2分半程の小曲だがイントロからヴァースへかけてのコード進行が素晴らしく、イケミズによる印象的なアコーディンオンとグロッケンのプレイも効果的だ。
アルバム中最もソフトロック・テイストなのは「Fairy tale」で、07年に出版されたガール向け小冊子『My Charm』11号の付録CDに提供されたシャッフル・ナンバーである。歌詞はこの本の著者である磯谷佳江で、作詞家としても成功している彼女のセンスが光っている。アレンジ的には三連のピアノやグロッケンの配置、対位法のベースのフレーズなどアレンジもよく練られているのだ。
レコーディング時期でアレンジを変えたスリー・ヴァージョンが収録された「Go pit-a-pat days」にも触れておこう。収録は発表順と時系列的に逆になるが、「Go Pit-A-Pat Days 96」は、02年に森達彦氏のハンマー・レーベルからリリースされたコンピ『STUDIO LAB/ FLOCKS』に収録された英語歌詞の最新ヴァージョンで、アコースティック・ギターには元BRIDGEの大橋伸行、バックトラックのプログラミングには現在活動停止中のmaybelleのキーボーディストで、作編曲家、劇伴音楽家として知られる橋本由香利が参加している。サウンド的にはアコースティック・ギターの刻みとウッドベースが利いたオールドタイミーなサンシャイン・ポップだ。
続く「Go pit-a-pat days (Brownie version)」は、ROUND TABLEの伊藤利恵子が主宰するブラウニーレコードのコンピ『9 pieces of BROWNIE』(99年)に収録されたヴァージョンで、バッキングは主に伊藤と北川勝利のROUND組二人で担当している。ベースは生のエレキだがヴァイオリンが入ることで、最初期ヴァージョンより落ち着いた雰囲気になる。
本作のラストに収録された最初期のオリジナル日本語歌詞ヴァージョンの「Go pit-a-pat days」は、98年にカセットで限定リリースされていた『Three Berry Icecream』に収録されており、ギターには元BRIDGEの清水弘貴が参加している。やや荒削りなアレンジと演奏であるが、清水はアコースティック・ギターとセミアコ・ギターを弾き分けており、オクターブ奏法も披露している。
この最初期ヴァージョンの時点でイケミズが描こうとしている世界観は垣間見られており、ブリル・ビルディングの時代に通じる巧みなソングライティングは、聴く者の心を掴んで離さないだろう。
(ウチタカヒデ)
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