2018年11月7日水曜日

【ガレージバンドの探索・第三回】 『V/A - SIGH CRY DIE』

60年代ガレージを聴いていると、気に入った曲について調べようとしても情報が少なく、バンドの出身地くらいしか分からないこともよくある。
こういう、その時代の一瞬で忘れ去られてしまってもおかしくなかった得体の知れないバンドの音源をコンピレーションに収めたレーベルの功績は偉大だと思う。
この手のコンピに収録されているバンドはシングルのみしか出していない場合が多いのだけれど、アルバムを残していても1、2曲以外は期待外れなことも多く、コンピで聴くのが最適だったりする。但しそんな性質のガレージコンピは大量にあるのでどれを聴こうか迷う。見つけた時にとりあえず買ってみるのも楽しいけれど、せっかくなので好みの内容で手元においておきたい音源が入ったコンピを選んでみようと思い、下調べして購入したのが、Arf! Arf! のサブレーベル Cheep! Cheep!から出ている『Sigh Cry Die』(AACC-098)だった。
2004年にCDのみでリリースされている。


邦題で『ヘタレの花道〜ガレージロック凹編』なんてついているような失恋ソングばかりが集められたコンピだそうだ。
個人的にはたまらなくトワイライトな音傾向の名曲多数のコンピだと思っている。憂鬱さの中に淡い光を漂わせるような魅力がたっぷり味わえる。ただ全体を通して聴くと、このCDの注意書きで「WARNING: THIS PRODUCT MAY BE ADDICTIVE AND LEAD TO MENTAL DETERIORATION」と書かれている理由はよく分かる。全29曲。前回記事で書いたThe GentsもシングルB面曲が収録されている。



特に目当てだったのはThe Nomadsというノースカロライナ州マウント・エアリーのバンドで、収録されているのは「How Many Times」というシングル曲。金属的なギターの音にたどたどしく入るドラム、スカスカな演奏。不完全さが生み出す哀愁には無性に感動を覚える。 The Nomads はシングル音源と未発表デモの編集版『From Zero Down』(CRYPT LP 006)も出ていて、LPでも入手したいと思うバンドのひとつ。


この『V/A - SIGH CRY DIE(邦題:ヘタレの花道〜ガレージロック凹編)』には対になるコンピとして、『V/A - PARTY PARTY PARTY(邦題:バカの花道~ガレージロック凸編)』(AACC-097)も同時リリースされている。

【文:西岡利恵(The Pen Friend Club)】

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