WACK WACK RHYTHM BAND(以下ワック)が、2012年のベスト・アルバム『XX CLASSICS』(HIGH CONTRAST/HCCD-9535)から約6年振りとなるリリースを、7インチ・アナログシングルで2ヶ月連続発表する。
彼等は90年代初頭にリーダーの小池久美子を中心に結成され、東京のクラブ・シーンを背景にUK経由のR&Bをベースとしたインスト・グループだ。
弊誌でも03年のオリジナル・セカンド・アルバム『WACK WACK RHYTHM BAND』(FILE / FRCD-116)を皮切りに、続く05年のサード・アルバム『SOUNDS OF FAR EAST』(FILE / FRCD-146)は、当時筆者が連載していたフリーペーパー誌でも取り上げるほど贔屓にしているバンドである。
その後幾度かのメンバー・チェンジはあったが、結成当時からのハイセンスな折衷感覚は健在で、東京の拘り派ミュージシャン達の集合体であるワックならではのスタンスを感じさせる。
彼等にはVANDA読者にもアピールする、ソフトロッキンなナンバーも多く、セカンド・アルバム収録の「Bittersweet In My Bag」や「Dreams Come Through」は特にお勧めだ。
さてここでは、10月10日と11月11日のぞろ目の日付にリリースされる『Easy Riding / I’ll Close My Eyes』(WWRB/WWRB001)と、『Madras Express / Stay-Pressed』(WWRB/WWRB002)について解説したい。
「Easy Riding」はハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラスに通じるトランペットがリードを取るサウンドで、アレンジにはジミー・ウエッブの匂いがするソフトロック・インスト・ナンバーだ。ライヴでは08年からプレイしており、ソングライティングはキーボードの伊藤寛が担当している。
ブリッジの転調は5th ディメンションの「It's a Great Life」(『Stoned Soul Picnic』収録 68年)をオマージュしていて、初期ORIGINAL LOVEファンもニヤリとするに違いない。因みにこの曲のミックスはマイクロスターの佐藤清喜が担当している。カップリングの「I’ll Close My Eyes」は、元々英国のコンポーザーであるビリー・リードの作品で、後にアメリカのソングライター、バディ・ケイが歌詞を付け加えてミュージカル映画『Sarge Goes To College』(47年) でフューチャーされヒットした。その後ジャズ・スタンダードとして、トランペッターのブルー・ミッチェルの演奏やヴォーカリストのサラ・ヴォーンの歌唱で知られるようになる。
歌物ではそのロマンティックな歌詞を讃えたバラードとしてアレンジされることが多いが、ここでのカバーは、名匠アーティ・バトラーがアレンジした67年のゲイリー・ウィリアムズのヴァージョンを下敷きにしたミッド・テンポでプレイされている。メンバーによる甘い男女混声ヴォーカルとコーラスやトップで鳴っているグロッケンなどソフトロック・サウンドがVANDA読者にもお勧めである。ミックスはベーシストの大橋伸行(元ブリッジ)が担当している。
蛇足だがこの原曲のメロディ・センスは、山下達郎の「あまく危険な香り」でもオマージュされているのをお気づきだろうか。
カップリングの「Stay-Pressed」も三橋が手掛けた曲であるが、前曲とは打って変わってロンドン経由の洗練されたスタックス・ソウル系のインスト・ナンバーである。ゆるくシェイクする独特なエイトビートとハモンド・オルガンが特徴的で、正しくスティーヴ・クロッパーを意識した山下洋のギターソロも聴きものだ。ミックスは大橋が担当している。
以上の2枚の7インチ・アナログシングルは、大型レコード・チェーンの他、独立系店舗でも扱っているので、彼等のface bookでチェックしてほしい。
https://www.facebook.com/wackwackrhythmband/
そして11月21日には、ワックの記念すべきファーストアルバム『WEEKEND JACK』がボーナス・ディスク1枚をつけてリイシューされる。コーネリアスこと小山田圭吾が主宰していたトラットリア・レーベルから98年にリリースされ、20年後の今でも色褪せないフリーソウル・アンセムの「HIT AND RUN」をはじめとしたオリジナル・アルバム11曲をディスク1に収録。
ファースト・マキシの『TOKYO SESSION』(94年)、トラットリアのコンピレーション・アルバム『Bend It! Japan 98』(98年)と『MENU200』(00年)、またカセットのみでリリースされ今回初デジタル化される『LIVE AT YOYOGI-PARK』(96年)からの計9曲に今回ここで紹介した「Easy Riding」がディスク2に収録されている。
既に廃盤になっている音源も多いので、読者をはじめ音楽ファンはこのリイシュー盤も入手すべきだ。
(ウチタカヒデ)
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