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2018年9月29日土曜日

small garden:『歌曲作品集「小園Ⅱ」』 (small garden studio/SGRK-1801)


 昨年11月に紹介したsmall garden(スモールガーデン)が、3作目で4曲入りEPの『歌曲作品集「小園Ⅱ」』を9月29日にリリースする。
 small gardenは小園兼一郎(コゾノ ケンイチロウ)によるソロ・ユニットで、これまでにファースト・アルバムの『歌曲作品集「小園」』(16年10月)と、昨年9月に2作目のEP『Out Of Music』をリリースしている。ソフトロックやネオ・アコースティック、ジャズ・ミュージックのエッセンスを内包したそのサウンドは同業ミュージシャンや音楽マニアに熱く支持されている。
 本作も前作、前々作同様、ソングライティングとアレンジ、全ての演奏(ベース&ドラムはプログラミング)はもとより、ミックスダウンからマスタリングまで小園が一人で担当している。
 また『歌曲作品集「小園」』に参加した山本ひかり(野沢菜)が4曲中2曲でヴォーカルを取っており、内1曲の作詞を小園と共作している。
 小園のプロフィールについては前回のレビューを読んで頂くとして、今月前半に音源を入手してからすっかり聴き込んでしまっている本作の収録曲を解説していこう。



 冒頭の「残夏」は、ハイブロウなコード進行に変拍子のドラミング、小園自身によるサックス・ソロからなる1分ほどの長くドラマティックなイントロから幕を開ける。この構築力は北園みなみにも通じるが、筆者は初めてこのイントロを耳にして彼の比類なき才能を改めて感じたのだ。
 本編はシャッフル系のリズムでグルーヴするヴァースからソナタのように展開して、山本のナチュラルでスムーズなリード・ヴォーカルを引き立てる。
山本と小園のヴォーカルの掛け合うパートでは、Lampの榊原香保里と永井祐介のそれを彷彿とさせる瞬間もあり彼等のファンは聴いてみるべきだろう。そしてこの曲のハイライトへと雪崩れ込むコーダでのサックス・ソロで、解き放たれる感情を抑えられなくなってしまう。
 正に今年の個人的ベストソングの中の1曲として選びたいほどの曲なのである。
 続く「横顔」は小園のヴォーカルをフューチャーしたマイケル・フランクス風のメロウなAORサウンドで、所謂シンガーソングライター・ヴォイスというべき味わい深い歌声がオケに溶け込んでいる。この曲でも彼のサックスのインタープレイが際立っており、単なるソロの域を出て楽しめるのだ。


 MORとニューソウルの狭間にあるような「シュールポワール」は、無重力な5拍子のリズムと独特なコード進行が特徴的だ。デジタル・ピアノとアナログ・シンセ系のリフもいいコントラストを生んでいる。キープするのが難しいと思われる絶妙なメロディ・ラインであるが、小園のヴォーカルは飄々とクールに聴かせている。
 ラストの「8番目の月」はリード・ヴォーカル山本が作詞も小園と共作している、ジャズ・サウンド寄りの曲である。リズム・セクションのないサックス・アンサンブルのみをバックに歌われるパートから4ビート・ジャズへと展開する心憎い演出もさることながら、これからの季節に似合う歌詞が山本と小園のデュエットで歌われる。曲が進むにつれてアップテンポになるアレンジも素晴らしい。音大のジャズ科出身者ならではのサウンドの構築はさすがである。

 さて本作は本日9月29日より高円寺のディスクブルーベリーで初回限定盤として先行で独占販売されるという。
 全国流通は12月を予定しているので、このレビューを読んで興味をもった音楽ファンは是非初回限定盤を入手してすぐに聴くべきだ。
ディスクブルーベリー
http://blue-very.com/


 ・初回限定盤(黒、赤のクラフト紙ジャケット仕様)


・通常盤
(黄土色の生成りクラフト紙ジャケット仕様)

(テキスト:ウチタカヒデ

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