2018年2月18日日曜日

『Springs Live Picnic 2018』ライヴレポート

2月10日に東京は千代田区神田神保町の楽屋(らくや)で開催されたSprings(スプリングス)のライヴ『Springs Live Picnic 2018』の模様を紹介したい。
Springsは、VANDA読者にはお馴染みの書籍『HARMONY POP』(2000年/音楽之友社)、『ソフト・ロック in Japan』(2001年/音楽之友社)に企画・構成、執筆で参加している音楽家のヒロ渡辺(渡辺博之)が、土屋剛、シンディ浅田と組んでいるソフトロック・グループである。
そもそもSpringsは 95年にドラマーでマルチ・ミュージシャンでもあるヒロ渡辺とヴォーカリストのシンディ浅田の二人により結成され、翌96年にセクサイト・レーベルよりミニ・アルバム『SPRINGS』でデビューした。同年デビュー作にも参加していたキーボーディストの土屋剛を正式メンバーに加えるもシンディの脱退により、翌97年に二代目ヴォーカリスト毛利公美子を迎え、同年アルバム『PICNIC』をリリースする。
その後活動休止の期間を経て、2009年のシンディのソロ・アルバム『I Remember You~メモリーズ・オブ・ローラ~』の制作をきっかけにオリジナル・メンバーでリユニオンし現在に至る。

さて今回の『Springs Live Picnic 2018』だが、2016年の『SPRINGS 20th ANNIVERSARY PREMIUM GIG』以降1年ごとに開催されているライヴのようだ。
ヴォーカルのシンディを中心に、アコースティック・ギターのヒロ渡辺(リード・ヴォーカルも取る)とキーボードの土屋剛がそれぞれコーラスをつけるというシンプルな3人の編成で、彼らやシンディのソロ・アルバム同様に中村俊夫氏がプロデューサーという繋がりから、ゲストにシンガーの原めぐみ(元アイドル歌手から女優、タレントに転身して活躍している)が参加していた。
当日のセットリストは以下の通りであるが、WebVANDA読者をはじめとするソフトロック・ファンには垂涎の選曲といえよう。


【第一部】
01. Don't Go Breaking My Heart
02. Workin' On A Groovy Thing
03. I'll Be Back
04. Snow Queen
05. The Carpenters Medley:
 I Won't Last A Day Without You~
 A Song for You~
 We've Only Just Begun~
 Top Of The World
06. Samba Take Seven (Lola’s Theme)
07. Under The Jamaican Moon
08. In The Morning

【第二部】
01. Our Day Will Come
02. There’s A Kind of Hush(All Over The World) ※ with原めぐみ
03. I Love How You Love Me ※ with原めぐみ
04. トビラ~Everlasting Love~ ※ with原めぐみ
05. Love On A Two Way Street
06. Guess I'm Dumb 07. The Drifter 

【アンコール】
01. God Only Knows 
02. Don't Take Your Time


冒頭の「Don't Go Breaking My Heart」から「I'll Be Back」、「Snow Queen」、ラストの「The Drifter」、そしてアンコールの「Don't Take Your Time」は、日本におけるソフトロックの聖典とされた『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』収録曲である。これはSpringsが男女3声のハーモニーを大事にしていることを如実に現している。
またカーペンターズ・メドレーでは、現在もカリフォルニア在住というシンディによるネイティヴな英語歌詞の発音と美声によりカレンの歌声を彷彿とさせた。実際シンディは多くの国内CMでカーペンターズのカバーを歌っているので、知らず知らずの内に耳にしている人も多いはずだ。
他にもニール・セダカの「Workin' On A Groovy Thing」やニック・デカロのカバーで知られるスティーヴン・ビショップ作の「Under The Jamaican Moon」、ルビー&ザ・ロマンティックスの「Our Day Will Come」、ブライアン・ウィルソン作で昨年逝去したグレン・キャンベルの「Guess I'm Dumb」など通好みのカバー曲で観客を唸らせた。

オリジナルの「In The Morning」や「Love On A Two Way Street」はライヴではお馴染みで、ファンにとっては欠かせないナンバーだろう。
シンディのソロ・アルバム『I Remember You~メモリーズ・オブ・ローラ~』からは「Samba Take Seven (Lola’s Theme)」が演奏されボサノヴァのリズムが心地よかった。
ゲスト・シンガー原めぐみのコーナーでは往年のファンの皆さん(メグミン隊か?)からの声援で大いに盛り上がったのは言うまでも無い。特に原自身が作詞して、渡辺が曲を提供し土屋がアレンジした「トビラ~EVERLASTING LOVE」は、ロネッツの「Do I Love You」の影響下にある完成度の高い曲である。


こんな素敵なライヴであったが、筆者的に最大のハイライトは、アンコールで弊誌編集長、佐野邦彦氏に捧げた「God Only Knows」の演奏だった。渡辺氏から語られる知られざるエピソードと心のこもった熱唱には思わず感激してしまった。
佐野氏もそのリユニオンを心より願っていたであろう、Springsの最高のパフォーマンスに心酔した一夜だった。


(文&写真:ウチタカヒデ / 写真提供:シンディ浅田氏、撮影:皆川幸男氏)

 

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