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2017年12月17日日曜日
The Beach Boys 『Graduation Day 1966: Live At The University Of Michigan』・平川雄一
2016年末に海外で既に配信されていた本盤であるが、この2017年12月に日本での販売が解禁された。本盤にはビーチ・ボーイズによって1966年10月22日に行われたミシガン大学でのライブ演奏、2ステージ分が収録されている。
この年の10月と言えば既にアルバム『ペットサウンズ』、シングル『グッドバイブレーションズ』が発売されブライアン・ウィルソンは天才の名を欲しいままにし、次作アルバム『スマイル』のレコーディングの真っ只中にあった。
レコーディングに専念するブライアンに代わりブルース・ジョンストンがライブに参加していたが、当日は『グッドバイブレーションズ』初披露の日。"ボーイズ"達が我が傑作をしっかり演奏出来るか不安になりミシガンまで同行、リハーサルを監督した。更にブライアンは2ステージ目のアンコールで喝采の中、登壇。メンバーと共に『ジョニー・B・グッド』を歌った。その模様も収録されている。
肝心の『グッドバイブレーションズ』だが両ステージともブライアンの指導のお陰か丁寧な歌唱、演奏ではあるがやはり薄さは否めない。更にアウトロのリボンコントローラが両テイクともピッチを大きく外しており少々残念な結果に。
他の曲もそうだがこの頃のビーチ・ボーイズは楽器演奏面でかなりラフで悪い言い方をすれば適当な印象だ。後のアメリカでの人気凋落後のライブへの気合の入れ様(ホーン隊を追加したり)とは格段の差だ。ブライアンがライブに参加していた時期の熱気を帯びたグルーヴもこの頃にはない。
余談ではあるがカールはフェンダー社のジャガーやリッケンバッカー社の12弦エレキなど個性的なギターを鋭角な音色で使用、独特のキラキラ感を演出していたが、本盤ではギルド社のセミアコ6弦エレキのスターファイアを乾いた音色で使用。これを使い出してから音に煌きがなくなったようにも思えてならない。それに加えてデニスのドラミング、グルーヴが最もないのが1960年代中盤のまさにこの時期なのではないだろうか。
しかしながらブライアンという存在感のあるボーカルを欠いていたとしても依然、各人のボーカル、コーラス面での魅力が溢れている。やはりビーチ・ボーイズは歌、ハーモニーの人たちなのだと再確認させられる。
サントラ『エンドレス・ハーモニー』にも収録されている、『Medley: Fun, Fun, Fun / Shut Down / Little Deuce Coup / Surfin’ USA』は演奏共に聴ける代物。『God Only Knows』のカールの美しい歌唱も堪能できる。各曲のコーラス、ハーモニーにも唸る瞬間が沢山ある。マルチで録ってあるので音の分離もよい。
本盤は1966年秋のまさにバンド絶頂期の余裕ぶっこいていた時期の危機感のないラフなライブ演奏を聴くことが出来るし、なによりブライアン本人が監督した『グッドバイブレーションズ』の初演も収録されている。そんな意味でも価値ある一枚(配信ですが)ではないだろうか。
因みにボーナストラックの『Row Row Row Your Boat (Live)』。一聴してお分かりいただける通りこれはライブ演奏ではなくスタジオ録音版だ。しかもこれは前年1965年11月にブライアンのプロデュースではあるがハニーズのボーカルで録音されたもの。公式での初出は喜ばしいことではあるが、果たして本盤に収録した意味があるのだろうかと疑問に感じる。
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