2017年12月15日金曜日

佐野邦彦氏との回想録5・鈴木英之

この回想録も早5回、今回もVANDA18の乱丁本に同封した「感想&リクエスト」手紙の中から発生したもう一つのコラム「Classics Ⅳ」についてのエピソードをまとめさせていただく。彼らについては、前回紹介した「The Grass Roots」と違い、全くの後追いなのでもともと誰かに伝えられるほど詳しいわけではなく、単にもっと知りたいという興味半分の軽い気持ちで書いたにすぎなかった。ちなみに彼らを知ったのは1981年にレンタルした『American Hit Anthology 1965-1975(アメリカン・トップ40)』での偶然の出会いが始まりだった。



このLPの目当ては、Cornerious Bros. & Sister RoseToo Late Turn Back Now」だったが、ここに収録されていたClassics Ⅳの「Spooky」にノック・アウトされてしまった。そして、馴染みのショップでClassics Ⅳのレコードを探してもらったところ、「グローリー・オブ・60’sアメリカン・ポップス」という1,500円廉価版シリーズに『Traces/ Classics featuring Dennis Yost』があり、即座に入手した。このアルバムには「Traffic Jam」「Free」「Rainy Day」など粒ぞろいのオリジナルが並び、またカヴァー「Sunny」でのDenis Yostブルージーなヴォーカルにも魅せられ、完全にはまってしまった。その後、カット盤のセカンド『Mamas And Papas/Soul Train』をゲットし、ここでもヒット曲「Stormy」やYostのヴォーカルが光るカヴァー「The Girl From Ipanema(イパネマの娘)」にくぎ付けになり、その後この2枚は我が家のステレオではヘビロテ状態が続いた。



さらに、以前から聴いていたAtlanta Rhythm Section(以下ARS)はClassics Ⅳの発展型と知り、彼らはUnderdog』(1979/8作)で「Spooky」をカヴァーしていた。また、Santanaが『Inner Secret(太陽の秘宝)』(1978/10作)で「Stomy」をカヴァーしている事実を知り、彼らについてさらに詳しく知りたいという探究心が芽生えた。加えて当時の愛聴盤『パジャマ・デート/Juciy Fruits』のLPセルフ・ライナーに「~コーラスがちょっとデニス・ヨースト&クラシックス的~」という表記を見て興味は深まるばかりだった。ただ、当時は田舎暮らしでショップも少なく、1960年代のポップ・バンドを探すには困難を極め、その後に入手出来たのは『The Very Best Of~』だけだった。さらに当時著名ショップが「Denis Yostカムバック・ソロ作」とプッシュしていた新作LPを手に入れるも、それなりの健闘作とは感じたが、やはり全盛期には遠く及ばない出来に失望し、以降彼らについての探索心は萎えてしまった。


その後、稲垣潤一が1987年のシングル「思い出のビーチクラブ」のカップリングに「Traces」を収録するといった出来事もあったが、徐々に彼らの記憶も薄れていった。そんな時期にVANDA誌と出会い、この本の執筆陣には詳しくまとめくれる方がいるのでは?という切なる願いから要望を入れたのだった。その期待に応え、VANDA20に佐野さん自らまとめた待望のClassicⅣ単独コラムが掲載された。また、その末筆には「次号ではまだ未聴の音源を探して特集を組む予定なので、お楽しみに。」とあり、次号ではさらに掘り下げた深い内容を披露してくれるのだろうと楽しみになった。しかしその直後、佐野さんから「鈴木さんにお願いしたい。」と連絡が入り、まさか自分がまとめることになるとは思っておらず、想定外の展開に唖然としてしまった。とはいえ、彼がコラムを掲載したことにより、関西の大手ショップでも「ClassicsⅣ」のコーナーが設置されるようになったので、「きっとこれなら音源も探しやすくなるだろう」という安易な気持ちから引き受けた。

実際に私が担当になったと言っても、ヒストリーやディスコグラフィーは、既に佐野さんがほぼまとめてあったので、内容に専念しGrass Rootsでも参考にした「1960年代の音楽雑誌」の情報をベースに当時の状況チェックしはじめた。とはいえ前回と違って、かなりの後追いなので、自分の得意とするリアルタイマー的なまとめ方が上手く表現出来ず、佐野さんには頻繁に内容確認をしていた。それほど不安交じりのスタートだったが、彼から「それだけ古いことを記憶しているのだから大丈夫!」と励まされ、ClassicsⅣがARSに繋がっていく経緯も含め、それなりに納得のいくものをまとめる事が出来た。そして19966月にVANDA21が届き、目次をみたところClassicⅣは(恐れ多くも)第2特集で掲載されていた。ディスコグラフィーもなく、たったP4でこの扱いは恐縮するばかりではあったが、今回は二編掲載ということでの配慮かと思うことにした。

そのもう一編とは、前回の寄稿後に佐野さんとのやり取りから突然浮上したもので、私が高校当時に書き綴っていた手書きヒット・チャート表をベースにしたコラム「Music Note」(と佐野さん命名)のことだ。こちらは私よりも佐野さんがとても楽しみにしていたものだった。

なおこの号の発売された1996年にはVANDA18で大特集した「ソフト・ロックA To Z」が、音楽之友社より単行本として発売されている。また828日には東芝EMIより『Soft Rock Collection~Traces』なるコピレーションも発売され、ClassicⅣの音源が(多分)本邦初CD化されるとともに、「ソフト・ロック」という言葉が、日本の音楽シーンに定着するきっかけとなった。そんな飛躍の年に、執筆者の一人としてVANDAに参加させていただけたことは光栄に思っている。

ちなみにこのCDにはヒット曲のみならずClassicⅣ前身のClassics名義の「Pollyanna」や、アルバム収録曲の「Rainy Day」も選曲されており「さすが!」と唸った。さらには山下達郎ファンにはお馴染みの「Guess I'm Dumb/Glen Campbell」など鋭い選曲が組まれ、まるであのRhinoにも迫るようなコンピだった。これをメジャーのレコード会社で発売できたのは、全ては佐野さんの博識に対する信頼の表れだと感じた。このようにClassics ⅣもJigsaw同様、日本でその存在がクローズ・アップされた。


そして、20141119日には東芝EMIより“Soft Rock Best Collection 1000”シリーズの中に佐野さん選曲(&解説)による待望のClassics Ⅳ単独のベスト・アルバム『The Very Best Of The Classics Ⅳ』が発売されている。このCDが発売された時期に、この選曲について佐野さんと話す機会を持ち、カヴァー曲は何故外したのか伺ったが、彼は「あくまでオリジナルにこだわった」とのことだった。ただ自分としては、Yostのシンガーとしての力量にスポットを当てたカヴァーも捨てがたいと思っているので、可能であれば初期オリジナル4作を「4 in 2」(多分これくらい?)での完全CD化の実現を望むところだ。


という事で、次回は私が音楽マニアになりたての頃に聴いていた、当時のラジオ番組のチャートを振り返る「Music Note」について紹介させていただくことにする。




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