small garden(スモールガーデン)は、小園兼一郎(コゾノ ケンイチロウ)によるソロ音楽・ユニットだ。
ソフトロックやネオ・アコースティック、ジャズ・ミュージックのエッセンスを内包し、女性ヴォーカリストを迎えてAOR~シティポップとして昇華させたサウンドを展開している。ソングライティングやアレンジ、全ての演奏はもとより、ミックスダウンからマスタリング、アルバム・パッケージのデザインまで一人で担当するという小園のプロフィールにも触れておく。
都内で生まれ育った彼は、小学生の頃にテレビでナベサダ(渡辺貞夫)やマルタの姿を観て、サックス奏者に憧れたという。高校生の頃よりサックスを始めてジャズにのめり込み、某音大のジャズ科へと進学する。そこでは中村誠一氏や山下洋輔氏から手ほどきを受けていたが、ジャズ・ピアニストとしてあまりにも著名なハービー・ハンコックに強く影響を受け、作曲業へ転向し学校を中退してしまう。その後音楽制作会社へ入社しサウンドクリエイターとして数年勤め、フリーランスとなる。
ソフトロックやネオ・アコースティック、ジャズ・ミュージックのエッセンスを内包し、女性ヴォーカリストを迎えてAOR~シティポップとして昇華させたサウンドを展開している。ソングライティングやアレンジ、全ての演奏はもとより、ミックスダウンからマスタリング、アルバム・パッケージのデザインまで一人で担当するという小園のプロフィールにも触れておく。
都内で生まれ育った彼は、小学生の頃にテレビでナベサダ(渡辺貞夫)やマルタの姿を観て、サックス奏者に憧れたという。高校生の頃よりサックスを始めてジャズにのめり込み、某音大のジャズ科へと進学する。そこでは中村誠一氏や山下洋輔氏から手ほどきを受けていたが、ジャズ・ピアニストとしてあまりにも著名なハービー・ハンコックに強く影響を受け、作曲業へ転向し学校を中退してしまう。その後音楽制作会社へ入社しサウンドクリエイターとして数年勤め、フリーランスとなる。
現在はゲーム音楽のクリエイターを活動しながら、この音楽ユニットsmall gardenを2016年に始動した。
今回ここで紹介するのは、そのファースト・アルバム『歌曲作品集「小園」』(16年10月)と、今年の9月にリリースされたミニ・アルバム『Out Of Music』である。
まずは『歌曲作品集「小園」』から解説しよう。
初めて冒頭「木漏れ陽」のイントロを聴いてから筆者は、small gardenに世界観に引き込まれてしまった。
チェンバロ(ハープシコード)のフレーズにアコーステックギターの刻み、フルートのオブリが柔らかい木漏れ陽を感じさせて、イタリアの地方都市に佇んでいるような錯覚をしてしまった。ディープな映画音楽ファンには説明不要だが、エンニオ・モリコーネが60年代後半にマカロニ・ウエスタンやオーケストレーションを駆使した大作の狭間で手掛けた、所謂カルト映画のラウンジ感漂うサウンド・トラックを彷彿とさせるのだ。
本アルバム収録曲の八割でリード・ヴォーカルを取る野沢菜のナチュラルな声質と相まって、このアルバムの代表曲として第一にお勧めする。
2曲目の「ほたる」は、ボッサのリズムを基調としながら、ジャズ・ピープルらしいピアノのインタープレイが光るポップスとして完成度が高い。ストリングス・アレンジの細部に渡る構成も見事である。
インスト小曲の「間奏」(同名曲が収録されているのでpart1としておく)には、ウェイン・ショーターの『Native Dancer』(75年)で聴けるサックスの響きのように心地よく、続く「かわたれ」の前奏として効果的だ。
その「かわたれ」はゆるいシャッフルで演奏され、柔らかい中域を強調したホーン・セクションの色彩はハンコックの『Speak Like A Child』(68年)の影響を感じさせる。こういったサウンドの随所にエレメントが見え隠れしているのがジャズ学科出身らしい。
「靄」は80年代シティポップというカテゴリーで捉えてもおかしくない曲であるが、ユーフォニウムのソロや生演奏風のサウンドにシーケンス音を有機的に絡めたり、NY派のジャズ系ドラマーがプレイするようなフィルが聴けたりと、細部に渡ってかなりの拘りが感じられる。
これだけ解説して元も子もないが、筆者好みである佐藤準が手掛けていた頃の今井美樹のサウンドにも近く、それは野沢菜のヴォーカル・スタイルに起因しているかも知れない。
「間奏 (part2)」はピアノだけによる演奏の小曲だが、ビル・エヴァンスの『alone』(68年)の断片を聴いているようなひしひしとした孤独感がたまらない。
小園自身がリード・ヴォーカルを取る「斜陽」は、アルバム中最もコンテンポラリーなAORサウンドで、ソウル・ライクなホーン・アレンジ、インタールードのような独立した間奏、ラリー・カールトン風のギター・ソロなどは、北園みなみ経由のドナルド・フェイゲン・サウンドと言えるだろう。
そしてラストの「Fill Up Your Life」ではAkane(あかね)という女性シンガーが参加しており、この曲の作詞をしたVeronica(日本人らしい)の紹介から、偶然にもリード・ヴォーカルを取ることになったという。この曲ではフォーリズムとコンガに、ストリングス・セクションを加えたシンプルなサウンドがキャロル・キングのあのアルバムを彷彿とさせて好きにならずにいられない。小園自身によるソプラノ・サックスのソロも効果的だ。
続いて最新作のミニ・アルバム『Out Of Music』について解説しよう。
このミニ・アルバムは前作に比べて明らかに軸足をAOR~ライトメロウ・サウンドに寄せており、新たに迎えられた女性ヴォーカリストのyukky(ゆっきー)も多くのソウル、シティポップ系バンドでライヴ経験も豊富な実力派らしい。声質的にも尾崎亜美を彷彿とさせて個性が際立っている。
冒頭の「蓮花」は70年代ニューソウルのテイストを持つメロウな曲で、フェンダーローズを中心としたリズム・セクションにストリングスを加えていえる。ミニー・リパートンをこよなく愛するソウル・ファンは聴くべきだろう。
続く「流る星」もサウンド的には同質であるが、こちらには80年代初期のパトリース・ラッシェンのテイストを感じる。小園自身も掛け合いでヴォーカルを取っており、バックのコーラスも二人で担当しているようだ。ややハーモニー・ピッチに危うさを感じる箇所があるが今後改善されていくだろう。
「湖畔」は前作収録の「間奏(part2)」のメロディをモチーフとして発展させたと思しい、小園自身がリード・ヴォーカルを取ったシティポップだ。曲の後半の女性ヴォーカルは、ピアニストでもあるRomihi(ろみひ)が担当している。
ラストの「H.S.P」はこれまでのメロウな3曲とは異なる、ブルージーながらテクニカルなジャズ・ファンク調のサウンドがご機嫌で、ドナルド・フェイゲンの『Kamakiriad』(93年)に通じる。この曲でリード・ヴォーカルを取る小園の乾いた声質とのギャップも逆に面白いかも知れない。筆者的にはこのミニ・アルバム中最も好みである。
今回某SNSを通じて小園氏より筆者にコンタクトがあり音源を聴かせもらったのだが、こういったケースはこれまでも多々あった。中にはWebVANDAや筆者の趣味性を本当に理解してコンタクトを取ってきたのか疑いたくなる音源が多かったので、当初は然程期待をしていなかったのだが、そんな迷いも「木漏れ陽」のイントロ4小節を耳にして一掃された。
密かに活動している音楽家やその楽曲との出会いとはそういうものなのかも知れない。
自主製作ながらアマゾンでの取り扱いもあるので、気になった読者は是非入手して聴いて欲しい。
今回ここで紹介するのは、そのファースト・アルバム『歌曲作品集「小園」』(16年10月)と、今年の9月にリリースされたミニ・アルバム『Out Of Music』である。
まずは『歌曲作品集「小園」』から解説しよう。
初めて冒頭「木漏れ陽」のイントロを聴いてから筆者は、small gardenに世界観に引き込まれてしまった。
チェンバロ(ハープシコード)のフレーズにアコーステックギターの刻み、フルートのオブリが柔らかい木漏れ陽を感じさせて、イタリアの地方都市に佇んでいるような錯覚をしてしまった。ディープな映画音楽ファンには説明不要だが、エンニオ・モリコーネが60年代後半にマカロニ・ウエスタンやオーケストレーションを駆使した大作の狭間で手掛けた、所謂カルト映画のラウンジ感漂うサウンド・トラックを彷彿とさせるのだ。
本アルバム収録曲の八割でリード・ヴォーカルを取る野沢菜のナチュラルな声質と相まって、このアルバムの代表曲として第一にお勧めする。
2曲目の「ほたる」は、ボッサのリズムを基調としながら、ジャズ・ピープルらしいピアノのインタープレイが光るポップスとして完成度が高い。ストリングス・アレンジの細部に渡る構成も見事である。
インスト小曲の「間奏」(同名曲が収録されているのでpart1としておく)には、ウェイン・ショーターの『Native Dancer』(75年)で聴けるサックスの響きのように心地よく、続く「かわたれ」の前奏として効果的だ。
その「かわたれ」はゆるいシャッフルで演奏され、柔らかい中域を強調したホーン・セクションの色彩はハンコックの『Speak Like A Child』(68年)の影響を感じさせる。こういったサウンドの随所にエレメントが見え隠れしているのがジャズ学科出身らしい。
「靄」は80年代シティポップというカテゴリーで捉えてもおかしくない曲であるが、ユーフォニウムのソロや生演奏風のサウンドにシーケンス音を有機的に絡めたり、NY派のジャズ系ドラマーがプレイするようなフィルが聴けたりと、細部に渡ってかなりの拘りが感じられる。
これだけ解説して元も子もないが、筆者好みである佐藤準が手掛けていた頃の今井美樹のサウンドにも近く、それは野沢菜のヴォーカル・スタイルに起因しているかも知れない。
「間奏 (part2)」はピアノだけによる演奏の小曲だが、ビル・エヴァンスの『alone』(68年)の断片を聴いているようなひしひしとした孤独感がたまらない。
小園自身がリード・ヴォーカルを取る「斜陽」は、アルバム中最もコンテンポラリーなAORサウンドで、ソウル・ライクなホーン・アレンジ、インタールードのような独立した間奏、ラリー・カールトン風のギター・ソロなどは、北園みなみ経由のドナルド・フェイゲン・サウンドと言えるだろう。
そしてラストの「Fill Up Your Life」ではAkane(あかね)という女性シンガーが参加しており、この曲の作詞をしたVeronica(日本人らしい)の紹介から、偶然にもリード・ヴォーカルを取ることになったという。この曲ではフォーリズムとコンガに、ストリングス・セクションを加えたシンプルなサウンドがキャロル・キングのあのアルバムを彷彿とさせて好きにならずにいられない。小園自身によるソプラノ・サックスのソロも効果的だ。
続いて最新作のミニ・アルバム『Out Of Music』について解説しよう。
このミニ・アルバムは前作に比べて明らかに軸足をAOR~ライトメロウ・サウンドに寄せており、新たに迎えられた女性ヴォーカリストのyukky(ゆっきー)も多くのソウル、シティポップ系バンドでライヴ経験も豊富な実力派らしい。声質的にも尾崎亜美を彷彿とさせて個性が際立っている。
冒頭の「蓮花」は70年代ニューソウルのテイストを持つメロウな曲で、フェンダーローズを中心としたリズム・セクションにストリングスを加えていえる。ミニー・リパートンをこよなく愛するソウル・ファンは聴くべきだろう。
続く「流る星」もサウンド的には同質であるが、こちらには80年代初期のパトリース・ラッシェンのテイストを感じる。小園自身も掛け合いでヴォーカルを取っており、バックのコーラスも二人で担当しているようだ。ややハーモニー・ピッチに危うさを感じる箇所があるが今後改善されていくだろう。
「湖畔」は前作収録の「間奏(part2)」のメロディをモチーフとして発展させたと思しい、小園自身がリード・ヴォーカルを取ったシティポップだ。曲の後半の女性ヴォーカルは、ピアニストでもあるRomihi(ろみひ)が担当している。
ラストの「H.S.P」はこれまでのメロウな3曲とは異なる、ブルージーながらテクニカルなジャズ・ファンク調のサウンドがご機嫌で、ドナルド・フェイゲンの『Kamakiriad』(93年)に通じる。この曲でリード・ヴォーカルを取る小園の乾いた声質とのギャップも逆に面白いかも知れない。筆者的にはこのミニ・アルバム中最も好みである。
今回某SNSを通じて小園氏より筆者にコンタクトがあり音源を聴かせもらったのだが、こういったケースはこれまでも多々あった。中にはWebVANDAや筆者の趣味性を本当に理解してコンタクトを取ってきたのか疑いたくなる音源が多かったので、当初は然程期待をしていなかったのだが、そんな迷いも「木漏れ陽」のイントロ4小節を耳にして一掃された。
密かに活動している音楽家やその楽曲との出会いとはそういうものなのかも知れない。
自主製作ながらアマゾンでの取り扱いもあるので、気になった読者は是非入手して聴いて欲しい。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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