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2017年9月15日金曜日

☆Rolling Stones:『Sticky Fingers Live At Fonda Theatre 2015(From The Vault)』(Ward/GQXS90284-5)Blu-ray+CD


ローリング・ストーンズは大規模ツアーの前に、小規模な会場で密かにウォームアップギグを開催してきたが(古くは1977年の『Love You Live』のエル・モガンボが皮切り)、2015年の北米ツアーの前の2015520日に、席数が1200人というごく小規模のフォンダシアターでこのライブが行われた。今までのスモール・ギグとは全く違うのは、今回は名盤『Sticky Fingers』を全曲披露するというコンセプトライブで、全16曲という曲数も絞り込んだものであること、そしてこのギグを4Kで撮影して初めてその全貌が我々ストーズファンに届けられたことにある。解説は寺田正典さんが主で、知りたいことが全て分かる。例えばストーンズのアルバムで全曲がライブで披露されたものは何枚あったのかなと思ったら『Let It Bleed』『Sticky Fingers』『Black And Blue』『Some Girls』の4枚だけだそうで『Exile On Main St.』も強く望まれたが、チャーリーいわく「今、あんな叩き方はできないよ」と。さすが名盤が並ぶ。ミックはコンサートの冒頭付近で「今度は『Their Satanic Majesties Request』を全曲やるかな」と言っていたが、もちろんこれは冗談、先日、キースは『Their Satanic Majesties Request』を最低のクズと言っていたので、100%やるわけがなく、ミックのブラックジョークだ。コンセプトのあるギグなので、アルバム10曲とその他6曲の計16曲という短いコンサートだ。まず全体的に言えるのはやはりこういう取り組みはストーンズも楽しいようで、始終笑顔のキースが忘れられない。Blu-rayCDは曲順が違い、正しいのはCDだが、『Sticky Fingers』の曲をプレイすると何度もメンバーの想い出のインタビューが挿入され、そこが面白いので、その内容を交えながら紹介していきたい。冒頭は「Start Me Up」だ。「Jumpin’ Jack Flash」と並ぶストーンズのオープニング・アクトの定番から始まる。やはりいくら『Sticky Fingers』といえども、頭に「Brown Sugar」を持ってきては、「ライブでアルバムを楽しませる」ことには直結しないので「Sway」からスタートする。この粘っこいR&Bナンバーを、かなりテンポアップしてプレイする。キースも通常のギターなのでなんとなく歯切れがいい。そして「Dead Flowers」だ。シンプルなC&Wナンバーだが、人気がある。そしてキースがミックとの自慢の共作だと誇らしくインタビューで語る「Wild Horses」。キースはアコギではなくエレキを弾き、若干テンポアップしてウェットな感じにはしていない。そしてミックが本作はドラッグの隠語満載と言い、キースはインタビューでバレたかと笑う本アルバムの中でも最問題作「Sister Morphine」。久しぶりにプレイしたら不気味で70年代にタイムスリップしたよ、我に返ったら胡麻塩頭の頭の自分がいた(笑)と語る笑顔のキースはそれでも嬉しそう。冒頭は確かに不気味な滑り出しだが、中間以降のロンのボトルネックギターの迫力は素晴らしく、ロンの名演だ。そして1970年当時にこのアルバムを買った時には、なぜこんなメチャクチャシンプルで酔っぱらいのざれ歌のようにも聞こえたアルバム唯一のカバー曲、フレッド・マクダニエル作の「You Gotta Move」の登場だ。カッコいい事にキースのアコギのブルースギターに乗せてミックら全員で歌う。単純なブルースの繰り返しだが、会場全員で「You Gotta Move」を全力で歌うようになるのは感動的。発売当時は分からなかったが、今はこの曲の魅力にハマるなあ。そしてアルバムの中でもハイライト級に人気がある「Bitch」の登場だ。ボビー・キーズ、ジム・プライスのホーンが最高のこの曲、キースは2014年に急死してしまったボビーが最高だと忘れられず、いつも右横にはボビーがいる気がすると、全幅の信頼を置いていたことが伝わってくる。ライブではあのリフをロンにまかせ、キースがリード・ギターを自在に弾いている。ホーンが弱く聴こえるのが残念だ。そしてアルバムの中である意味、一番斬新な「Can’t Hear Me Knocking」。ザックリとしたギターのリフに乗せたロックナンバーが途中からのコンガからラテン・ジャズに変わって演奏が続いていくフリーキーな曲でカッコいい。ボビー・キーズの後釜のカール・デンソンがサックスで頑張っている。ミックもその当時、プレイしていてストーンズの新しい面が見られてやっていて楽しかったそうだ。そしてメンバーがストーンズで最もスローなナンバーと口を揃える「I Got A Blues」。最もスローといいながらミックの熱唱によるスロー・バラードで、テンポは特に遅いわけではない。そして『Sticky Fingers』の最後はオリエンタルな「Moonlight Mile」。聴いていて何か違和感があると思っていたら、見事寺田さんの解説でミックのオリジナルはGだが、ライブでは5度上のDで歌っていて色々と歌い方も違っているのだそうだ。そして最後はいよいよお待ちかね、「Brown Sugar」。ミックは無人島へ持っていく1曲なら「Brown Sugar」と断言していて、傑作を書いたという自信に満ちていた。さらにキースもレコーディングは感動的だった、究極のロックンロールを仕上げた気分だった、そして何よりも熱があったんだと語る。キースのリフも当時のレコードと同じ跳ね上がらない弾き方でこういう小さいところも嬉しい。そしてアンコールはB.B.キングのカバーの「Rock Me Baby」。徐々に盛り上がりエンディングでロンのギターソロ、キースのギターソロ、ミックのブルースハーブで終わるところが最高だ。そしてオオトリは「Jumpin’ Jack Flash」。昔から自分が力説しているようにこの史上最強のロックナンバーをここでは一切崩さず、But it’s alright nowの部分もレコードと同じハーモニー、ミックの歌い方もレコードと同じで崩さず、こういうライブ・ヴァージョンが一番好きだ。この会場の人はこういう部分も幸せだな。ボーナストラックは実は「Start Me Up」の後に続いて演奏された「All Down The Line」と「When The Whip Comes Down」で、なかなか熱いライブだ。そして3曲目の「I Can’t Turn You Loose」は、実際には「Jumpin’ Jack Flash」の続いての本当のラストナンバーだった。オーティス・レディングで知られるこのナンバーだが、最も親しまれているのはブルース・ブラザースがデビュー・アルバムのオープニングに使われていたからで、このこの繰り返すホーンのフレーズを聴いたことがない人間などいないだろう。みんなが明るく笑顔で終わる最高のエンディングだ。このライブ、なんとたったの$29.5だったそうで、なんと幸せなファンなのだろうか。ただ会場にいたオーディエンスにはそうそうたる有名人が並び、一般人じゃとても入り込むすきなどなさそう。(佐野邦彦)

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