2017年7月17日月曜日

☆Favorite Musician 全音源コレクティング第28回:RAY DAVIES


レイ・デーヴィスのソロ活動は、映画の『Return To Waterloo』からだろう。日本でもレーザーディスクで発売され、ぼんやりと映像を眺めていたことを思いだす。キンクスは前々年の83年にアメリカで全米6位と最大のヒットになった「Come Dancing」を放ち、順風満帆の中で余興のように作られた映画だった。しかしキンクスは1985年には黄金のアリスタ時代が終わって1986年にポリドールへ移籍、2枚のアルバムは変わらず辛口な内容だったがもうヒットにたどり着かない。ちなみにこの頃のレイ先生の歌詞には「TOYOTA」が名指しで出てきたが、今はイギリスは中国に席巻され、チャイナマネー様様、日本の影が限りなく薄くなってしまったのも悲しいところ。そしてキンクスは90年代の新作は自らのレーベルとなり、94年に自叙伝『X-Ray』を出版、日本には95年の12月にレイは『X-Ray』のソロ・ツアーで来日する。レイはアコギの弾き語りとトークで、キンクス時代とは180度違う静かで知的なライブだったことを思いだす。そしてこれから本格化する『X-Rayツアー』は歌と語りで構成された98年の『The Storyteller』で形になった。96年にレイはデイブを袂を分かちキンクスのライブ活動も休止する。レイのバンドサウンドでの渇望は2006年の『Other People’s Lives』と2007年の『Working Man’s Cafe』を堂々たるロックバンドのサウンドで作り、キンクスでなくても大丈夫と言う思いを得ただろう。アメリカに愛憎溢れる思いを持つレイは実際にアメリカに移住もしていて、2013年に次の小説の『Americana』を書いていた。そしてそれを音楽にしたのが今年の10年ぶりのソロ『Americana』である。レイの子供の頃から持ち続けたアメリカへの憧れと幻滅、しかしアメリカの自由と広大な大地にいまも魅かれ、しかしトランプの分断化政策で異文化の人間へのアメリカの敵意を二度と戻らないと嘆きながら、幻想の翼を広げて夢の中に生きるんだとまだヘナヘナ飛んで行こうといういかにもレイらしい終わり方で、このアルバムはレイのソロで最高のセールスを収めているのは嬉しいところだ。

 

RAY DAVIES

☆オリジナル・アルバム

1985 『Return To Waterloo(Soundtrack)』(Velvel)※「Return To Waterloo」「Lonely Hearts」「Not Far Away」「No Expectations」「Voices In The DarkEnd Title)」がレイの新曲で、残り3曲はキンクスの『Word Of Mouth』より。

1998 『The Storyteller』(Konk/EMI-Capitol)※「Storyteller」「London Song」のスタジオ録音2曲以外は語りを入れたライブ。UK105

2006 『Other People’s Lives』(V2 MusicUK36-US122

2007 『Working Man’s CafeNew West)※DVD付はレイ監督の映画付き。UK179-US140

2017 『Americana』(SonyUK2-US20

 

☆共演アルバム

2009 『The Kinks Choral Collection(Special Edition)』(Universal Music)※Crouch End Festival Chorusとのコラボ。Special Editionは「Postcard From London」付。UK28

2010 『See My Friends』(ユニバーサル)(日本のみ)※Bruce SpringsteenJon Bon JoviMetallicaなど全曲共演。日本盤は「Victoria」と「Moments」の2曲が多い16曲入り。UK12

 

☆必要なコンピレーション(ライブ参加含む)

1997  KinksThe Single Collection/Waterloo Sunset』(Castle)※デモの「The Shirt」「My Diary」「Return To Waterloo」「The Million-Pound-Semi-Detached 」とRemixLong Versionの「Voices In The Dark」収録。

2010  Rock And Roll Hall Of Fame 25th Anniversary Concert』(Time Life Records)※2009年のライブ。Metallicaと「All Day And All Of The Night」を共演。

2012 『Music For The Closing Ceremony Of The London 2012(Decca)※ロンドン五輪の閉会式のライブだが、CDではスタジオ録音された「Waterloo Sunset」(Ray Davies,London Symphony Orchestra,Urban Voices Collective名義)収録。

 

☆必要なシングル・EP

1986 「Quiet Life」※サントラの『Absolute Beginners』(EMI)に収録された。

2005  Thanksgiving Day』(V2 Music)※「Thanksgiving Day」「Yours Truly Confused No 10」「London SongStudio Alternate)」「Storyteller」「Thanksgiving Day (alternate mix)5曲入り。

 

(作成:佐野邦彦)

0 件のコメント:

コメントを投稿