バリー・マンは後の妻になるシンシア・ワイルとのコンビで、1960年代から1980年代と、年を追うごとに大ヒットナンバーを書き続けたアメリカを代表するソングライターである。同時期にデビューし、活躍したキャロル・キング、バート・バカラック、エリー・グリーンウィッチのチームなど優れたコンポーザーがいるが、バリー・マンの書く曲には深みがあり、バリー・マンが最も好きと言うファンも多く、山下達郎さんが特に有名だ。ところが私が一番好きなのはバリー・マン本人が歌うソロなので提供作は除外すると対象リストは激減する。そのため1993年のVANDAで山下達郎さん本人に書いていただいた山下さんのバリー・マン・アンケートを最後に記載するのでご覧いただきたい。バリー・マンは当初は1959年に歌手としてデビュー、シンガー・ソングライターとして「Who Put The
Bomb」をヒットさせ、同名のアルバムもリリースしたが、この頃の曲はオールディーズなので対象外。オールディーズ色が払拭されつつある1963年のColpix、1964年のRed BirdのシングルからCDに収録されていたので対象にした。しかしこれほどバリー・マンのソロに惚れ込んだのはアルバム『Survivor』の存在が全て。静かな美しさを湛える「Don’t Seem Right」からエモーショナルな「I’ll Always Love You」まで自在に書き歌い上げるバリー・マンのシンガー・ソングライターとしての凄さ、そしてこのアルバムを至高の存在に高めたブルース・ジョンストン&テリー・メルチャーのイクイノックス・プロダクションのプロデュースの素晴らしさ、まさに奇跡の1枚だった。その他ではアルバム『Lay It All Out』が良い。『Barry Mann』もこの2作には劣るが、いい出来だ。シングルは「She Is Today」、「I Just Can’t Help Believing」、「Feelings」、「Jennifer」(『Survivor』のボーナストラック収録)、「Almost Gone」が素晴らしく、オリジナル・テイクが未CD化のままの「Carry Me Home(Single Version)」も忘れてはいけない。作曲家としては完璧、そしてヴォーカリストしてこれだけ渋くかつ広いレンジの声域を持つバリー・マンが、シンガー・ソングライターとして成功しなかったのは、まさに下記の山下達郎さんの言葉のとおり、「執着心がなかった」からだ。これだけ長期にわたってヒット曲を書き続けられれば、コンポーザーがメイン、たまに自分で歌ったアルバムを出してみる…というスタンスになったのだろう。
★BARRY MANN SOLO(1963-1980)
☆オリジナル・アルバム
1971 『Lay It All
Out』2000 Reissue(TYO)※初登場の上昇部のオーケストレーションが長い「Carry Me Home(Long Version)」と、1971年リリースの通常ヴァージョンのシングルB面「Sundown」をプラス。
1975 『Survivor』2000 Reissue(BMG)※1stプレスには「I’m Survivor」が無く、シングルその代わり「Nothing Good
Comes Easy」が入っていた。2ndプレスは「I’m Survivor」が入り「Nothing Good Comes Easy」が外れた。そしてRCAから1974年にアルバム未収録シングル「Woman Woman Woman」(A面はアルバムの「Nobody But You」)があり、1975それぞれの欠けた曲のシングルがリリースされたが、本盤には全曲(2曲多いだけだが)収められた。さらに1976年のAristaからのシングル「The
Princess And The Punk」…US78、「Jennifer」をプラスしている。
1980 『Barry Mann』2014 Reissue(Vivid
Sound)
☆必要なコンピレーション
1997 『Inside The
Brill Building Complete Recordings 1958-1964』(Brill
Tone)※1964年がラストなので対象曲が僅かだが、1963年のColpixのシングル「Graduation Time」「Johnny Surfboard」と1964年のRed Birdのシングル「Talk To Me Baby」「Amy」が収録されている。この中で「Talk To Me Baby」はビートがあってオールディーズを脱却している。ちなみにアルバム『Who Put The Bomb』全曲のステレオやJDSでのデビューシングル含む80曲が収録され、未発表曲も多数。
☆必要なシングル(全て未CD化)
1966 「Angelica/Looking At Tomorrow」(Capitol)
1967 「She Is Today/ Where Do I Go From Here」(Capitol)
1968 「The Young Electric Psychedelic Hippie Flippy Folk And Funky
Philosophic Turned On Groovy 12 String Band/Take Your Love」(Capitol)
1968 「I Just Can't Help Believin'/ Where Do I Go From Here」(Capitol)
1970 「Feelings/ Let Me Stay With You」(Scepter)
1971 「Carry Me Home(Single Version)/(Sundown)」(New Design)
1977 「The Best That I Know How/Lettin’ The Good Time Get Away」(United Artists)
1979 「Almost Gone/For No Reason At All」(Warner
Brothers)
(作成:佐野邦彦)
◎山下達郎さん BARRY MANNアンケート(1993年VANDA10号より)
1.作曲家バリー・マンで好きな曲を10曲挙げてください。(アーティスト名も)
①Sweet Cherry Wine…B.J.Thomas
②She Is Today…Vogues
③Lookin’ Through The Eyes Of Love…Marlena Shaw
④I’m On The Road…The
Partridge Family
⑤Magic Town…Vogues
⑥Brown Eyed Woman…Bill
Medley
⑦Just A Little Lovin’…Dusty Springfield
⑧On Broadway…Drifters
⑨Soul & Inspiration…Righteous Brothers
⑩I Love How You Love Me…Paris Sisters
2.シンガーソングライターのバリー・マンで好きな曲を5曲挙げてください。
①I’ll Always Love You
②When You Get Right Down To It
③Don’t Seem Right
④I’m A Survivor
⑤Who Put The Bomb
3.好きなバリー・マンのアルバムは
Lay It All Out
4.バリー・マンがシンガーとして成功出来なかったのはなぜかと思いますか。
本人にそれほど執着心がなかった。
5.バリー・マン&シンシア・ワイルの曲が他の作曲家チームと比べて、どこが優れていると思いますか。
アレンジの良否に左右されにくい、メロディーラインの顔立ちの明確さ、構築力の見事さ。
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