このライブは2004年6月12日、イギリスのワイト島で3日間にわたって行われたフェスティバルの中日のメインにフーが登場した時の映像DVDに音源CDを付けたものだ。同じ2004年では『ロック・オデッセイ』のメイン・アクトとして、フーが待望の初来日を果たした。CSで放送があったので映像は今でも宝物だが、私は横浜競技場にフーの登場時間に合わせて行って、次のエアロスミスは見ないで帰った。友人に一緒に行こうと誘われたがそれも断り、ただただ初めてこの目で見るフーに集中したいので、それ以外の要素は全て遮断するほど真剣だった。そのためこのライブは曲目が完全に重複しているので見ながらあの感動を追体験できた。ただし日本では披露しなかった「Bargain」「The Punk And The Godfather」「Eminent Front」「Drowned」「Naked Eye」「You Better You Bet」「Magic Bus」も見られるので、さらに楽しめるだろう。その2004年の横浜での初ライブの映像と見比べたかったが、ベッド上で動けない体では指図などできず、そしてこれから名前があがる映像DVDなど探してもらうのは大変過ぎるのでその前との違いは見比べていないのであしからず。このソフトの前のライブ映像化は急増している。『The Vegas Job』(1999年)、『Live At Royal Albert Hall』(2000年)、『Live In Boston』(2002年)があるが、これも個人的には1996年にサポートのドラムがザック・スターキーになってフーのサウンドが安定し、フーらしいライブが出来るようになった証だと思う。フーは1984年にいったん解散、その後はイベントでの単発再結成が続き、1989年に25周年ツアーがあったものの、ザックがドラムで入った1996年のプリンス・トラストから本格的にフーはライブに戻る。しかしその中2002年にはキース・ムーンと並び称されるロック界最高のベーシストのジョン・エントウィッスルも亡くしてしまうが、代役のピノ・バラディーノが実に巧みなジョンと同じグルーヴのベースが弾けたので、フーのリズム隊は維持された。自分は。フーは完璧なキース・ムーン派で、ケニー・ジョーンズのドラムがフーのダイナミズムを削いでしまったと思っている。ケニーは上手なドラマーだがフーには合わない。ピート・タウンゼンドがケニー時代にソロ活動に軸を移していたのも、それが遠因のような気がしてならない。25周年時のサイモン・フィリップスもダメだ。ザックが来るまでは満足できるドラマーは存在せず、ザックが入ってからはCDでもまず通販のみの1999年の『The
Blues To The Bush』、そしてコンサート毎に全公演を通販した『Encore Series
2002』『Encore Series 2004』『Encore
Series 2006』『Encore Series 2007』という驚異的な大量のCDがリリースされ、あの感動の2004年7月24日・25日の初来日の横浜と大阪がCDで聴けるようになったのだ。ワイト島は日本での一か月前のコンサートなのでロジャーのシャツとジーンズは同じ、ピートは上にジャケットを羽織っているが黒の上下で統一している。バンドはさらに1985年からのサポートのキーボードのジョン・バンドリック、そしてピートの弟のサイモン・タウンゼンドがサポート・ギターで入り、この安定した布陣で、フーの往年の名曲を存分に楽しめる。この頃には、ピートがエレキ・ギターに復帰しているのも極めて大きい。難聴を防ぐためにしばらくアコギ中心だった時代のライブはやはりダイナミズムが無かった。こうしてリズム隊が安定すると、ピートのギタープレイは冴え、ロジャーも安定して歌える。そしてライブは実に巧みに計算された選曲で盛り上げてくれる。「I Can’t Explain」からまず初期の3曲、「Who Are You」を挟んで『Who’s Next』から3曲、『Quadrophenia』から3曲と名曲が続いていく。そこでジャジーなピートがソロで歌う「Eminence Front」を入れアコギの2曲が続いてインターミッション。その後は同年にリリースしたばかりのベスト盤『Then And Now』で発表した久々の新曲2曲を入れながら、「My Generation」「Won’t Get Fooled Again」というライブで最も乗りあがるロック・ナンバーで盛り上がり、最後は「Pinball Wizard」から始まる『Tommy』メドレー4曲、ラストは「See Me Feel Me」で、もうファンなら昇天だ(古い表現だがこれが一番しっくりくる)。ちなみに日本公演は「See Me Feel Me」をアンコールのラストにしていて、初来日ということもあってか、ピートはイギリスでは見せなかったギターを叩きつけるパフォーマンスを見せてくれ大いに盛り上がった。このコンサートでは本編がここで終わりでアンコールは「Magic Bus」。ピートは上着を脱いで日本公演と同じになった。エンディングは大ロックンロールになりピートの風車弾きも炸裂、最高潮のエンディングとなった。なおBlu-ray版も出ているが、入荷が遅そうなので早く聴くためにDVD版を注文した。DVDも十分キレイ。(佐野邦彦)
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