名作『Exile On Main St.』リリース直後の1972年の北米ツアーのライブで、ミック・テイラー在籍時の、コンパクトなバンド・スタイルでの最高のライブがCD化された。このライブは同名タイトルで既に2010年にDVDで発売されており、既にお持ちの事だろう。そのため私はCDのみを購入したが、Blu-ray+CD版なども出ているので万が一ご覧になった事がない方がいたらそちらを是非。何しろストーンズの創作能力が最高潮に高まっている時期だ。ただライブにはバラつきがあったそうで、そのベスト・パフォ―マンスがテキサスで6月24日・25日で行われた本作とミック・ジャガーも語っている。メンバーはミック・テイラーを含む5人に、サポートにピアノのニッキー・ホプキンス、サックスのボビー・キーズ、トランペット等のジム・プライス。一部イアン・スチュワートもピアノ参加しているらしい。女性コーラスもなく、シンプルな構成で、15曲が披露された。詳しくは本CDだけでなく2010年版DVDの解説を書かれた寺田正典さんの入魂の解説を読んでいただくだけで十分で私が書き添える事などない。曲数が少ないのはこの頃は1日2公演だというから驚きだ。6月24・25日テキサスでの収録だ。選曲は新しく作ったローリング・ストーンズ・レーベルと、デッカでも直近の音源をセレクトしていて、72年の『Exile On Main St.』から5曲、71年の『Sticky
Fingers』から3曲、デッカでも69年の『Let It Bleed』より4曲、68年の『Beggars Banquet』とシングルで2曲、残りはチャック・ベリーのカバー1曲で、ブライアン・ジョーンズ時代は一切感じられない。67年の『Their Satanic Majesties Request』を自分達の混乱の極みとしてそれ以前をこの時期は捨てていたのだろう。(1971年のマーキーでは「Satisfaction」を当時の全くの別アレンジで披露したが)ハンサムで爽やかな新メンバー、ミック・テイラーの存在とは裏腹に、この頃のストーンズは「セックス、ドラッグ、ロックンロール」のイメージの中にいた、しかし音楽的にはアルバムを作ればストーンズ最高作の一つ『Exile On Main St.』、ライブをやれば最高のロックンロールを披露する本CD、ということで、音楽で払拭している。この頃のライブに特徴的なのはまず多くの曲がミック・ジャガーのソロで歌われている。キース・リチャーズとハモるのは「Happy」「Dead Flowers」「Sweet Virginia」だけで、女性コーラスがないので「Tumbling Dice」や「You Can’t Always Get What You Want」も全編ソロだ。ミック・テイラーは全ての曲でギターの鋭いフレーズを聴かせてくれ、ロン・ウッド時代に慣れてしまった我々には、これだけ目立つギターが入るストーンズサウンドは新鮮で魅かれる。「All Down The Line」のギターは特に熱くて名演。「Midnight
Rambler」の中盤までは2本のギターがビンビン鳴ってエッジが強くて新鮮だし、ラストの「Street Fighting Man」のエンディングではミック・テイラーの自由なソロが鳴りまくるなど、ミック・テイラーの巧みなギターワークによりライブではキース・リチャーズとのつばぜり合いのような緊張感があって、音楽的に充実していたことが伝わってくる。(佐野邦彦)
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