You Tubeでポールとリンゴがジョイントしたライブの「With A Little Help From My Friends」をご覧になった事がある方も多いと思う。本Blu-rayはそのライブが行われた2009年のチャリティ・コンサートの抜粋版。ポール単独6曲、ポールとリンゴの共演3曲、リンゴ単独3曲と12曲もあるので十分楽しめる。その他ドノヴァンやシェリル・クロウなど6曲あるがここはパス。またこのコンサートはあのデビッド・リンチ監督が瞑想(TM)の財団を作ってその普及に尽力していてその活動に賛同した人が集まったライブであり、ポールとリンゴは故ジョージを通じたマハリシつながり。リンチが2人にTMも少しからめたインタビューしていたが興味がないのでこれもパス。映像ではまずリンゴが出てきて、ドラムは叩かず1971年の米英4位の大ヒット「It
Don’t Come Easy」を歌う。今、聴くと音程の幅の少ないリンゴらしい曲だ。当時はリンゴの単独クレジットだったが、曲が終わった後にMCで、この曲は収拾がつかなくなってジョージに頼んだ…なんて裏話をリンゴらしく楽しく話していた。自分はビートルズ解散をアルタイムで見てきたので、その後に4人がどう活躍するのかも最大の関心事だった。真っ先に飛び出したのがジョージで『All
Things Must Pass』のクオリティの高さ、そして「My Sweet Lord」も1位になって、多くのビートルズ・ファンは隠れていたジョージの才能に驚愕していた。2人目のナンバー1は誰かと思っていたらなんと最初の2枚のアルバムはでは想像もできなかったこの軽快なオリジナル・シングルで、当時、「ミュージック・ライフ」がキャッシュボックスのチャートを載せていたのでそちらでは1位だったのだ。「ジョンとポールを差し置いてジョージ、リンゴが先に1位をリリースするとは…」と、中2の自分はショックを受けていた。ただ数カ月後の同じ1971年内にはジョンは『Imagine』、ポールは『Ram』をリリースし、すぐに持てる実力を発揮していくのだが。話がそれたので映像に戻るが、次はリンゴがドラムを叩きながら「Boys」を歌うが、ここでお馴染みの光景に成り盛り上がる。最後はマイクを持って立ちながら「Yellow Submarine」。誰にでも愛されるこの曲、リンゴの人柄もあって会場のみんなが笑顔で一緒に歌っていた。この曲でリンゴは後半、かなりメロディを崩して歌うが、こういう歌い方は嫌い。歌が上手い人に多いが「メロディを崩して歌う」「わざと遅らせて歌う」、この2つは大嫌いだ。その点、これから登場するポールは常に正確に歌おうとするから大好きである。リンゴまでは「オールディーズ」の雰囲気だったが、ポールが登場するとバンドは一気に引き締まりロックバンドに変貌する。トップは最高のロックナンバー「Drive My Car」。何百回聴いたか分からないヘヴィローテーション・ナンバーだが、こんなカッコいいリフとドライヴ感、絶妙なハモリを持ったナンバーは無く、いつ聴いてもワクワクする。続いて「Jet」。このナンバーの重量感、ドライヴ感はビートルズ時代と匹敵するから凄い。そして「Got
To Get You Into My Life」へと続く。迫力溢れるこの3曲のパワフルなナンバーはただただ圧巻だ。そしてポールはピアノに座り「Let It Be」を歌う。1969年当時の声と比べるとかすれているが、この曲は常にスピリチュアルで心が洗われる。ロック評論家などのジョン至上主義に見られるポールの「Let It Be」などのメロディアスな曲を「ポップ」とこバカにするのがいるが、この曲を聴いて心が揺さぶられない人間なんて耳が腐っている奴だと、相手にしないことにしている。音楽雑誌をほとんど買わないのは、こういうタイプの連中のコメントが不愉快で読みたくないことも大きい。BSの音楽番組は司会はいいがゲストがダメで見られない。また話が逸れてしまったので映像に戻るが、ここでポールはアコギを持ち、僕の一方的なジョンへの思いだと言って「Here Today」を歌う。この物悲しいメロディの曲でポールの感情が一杯になって涙ぐんだように歌が揺れ、感動的だ。そしてポールはすぐに雰囲気を立ち直すために「Band On The Run」を歌うが、はじめは流麗で、そしてロックへ移っていくこのナンバーですぐに会場は盛り上がる。そしていよいよハイライト。ポールは「特別なゲストが来ています。みんなが知っているビリー・シアーズ!」とリンゴを呼び寄せ、「SGT」の最後の最後の部分のフレーズを入れて「With A Little Help
From My Friends」の冒頭のリフからリンゴが歌い始める。2人が並び、カールヘフナーのベースを持ったポールがカウンターコーラスを歌うところは感動的。会場の雰囲気が最高潮のここで、いったん引けアンコールへ。ポールは「どうせ出てくるって分かっていたでしょ?」と笑わせながら、ポールはアコギ、リンゴもドラムに坐り、「Cosmically Conscious」を歌う。この曲はポールがインドでマハリシに会った後のホワイト・アルバム時代に書かれていて、1993年のアルバム『Off The Ground』の最後にシークレット・トラックとして収められていた。そして完全版は『Off The Ground-Complete Works』に収録されていたマニアックな曲。覚えやすいメロディなので最後は会場の多くが覚えて歌っていた。ポールのこのチャリティへの最大の配慮だ。そして最後は全員で「I Saw Her Standing There」。リンゴももちろんドラムを叩いているが、今までもツインドラムがトリプルドラムになっている。この軽快なロックンロールでクライマックス、大いに盛り上がって終わるが、さすがポール、見事な選曲だった。(佐野邦彦)
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