2017年5月27日土曜日

☆Beatles:『SGT. Pepper’s Lonely Hearts Club Band(Anniversary Edition)』(Universal/UICY78342)4CD+1Blu-ray+1DVD


DISC12017年ステレオリミックス、音圧が増してパワフルな感があり、自分はこれはこれで楽しめるだが、異論もあって当然。自分はアナログ&オリジナル信者ではないので色々楽しめる。

ただ自分にとって肝心なのは別テイクが集まったここからだでまずDISC2から。冒頭は「Strawberry Fields Forever」。今までの公式のデモは『Anthology2』の3テイクで、そこのジョンのギター1本のデモ「Demo Sequence」はない。このBOXでソロは必要ない。「Take1」はどちらもあるがBOXの方にイントロとジョンとカウントがあり5秒長い。「Take4」は初登場で前半部のアレンジは大分完成していてジョンのヴォーカルはシングルトラック。「Take7」は両方にありBOXはジョンの声のイントロが加わりジョンのヴォーカルはダブル、そして最後の演奏がフェイドアウトになっていくように崩して演奏する部分で終わるが、『Anthology2』は「Take7 & Edit Piece」のタイトルの通り崩して歌う部分の最後にレコードで最後の逆回転のドラム部分のセッションの模様を無理やりつないであるので総尺は1分ちょっと長い。非常にピッチの早い原型のオーケストラヴァージョンの「Take26」はBoxで初登場。「When I’m Sixty-Four」のアウトテイクは初。初登場の「Take2」はまだカウンターのコーラスのないシンプルなテイク。ポールがきちんと歌っているので聴ける。「Penny Lane(Take6-Inst)」は初登場でこの時からサウンドがクリアだ。ポーンがないので新鮮なインストになり色々な消されてしまった遊びが聴けて面白い。逆に「Vocal Overdubs/Speech」は曲を聴きながら(わずかに聴こえる)手拍子をしながら会話をし、イントロの部分にコーラスを小さく歌っているがレコードで使っていない。『Anthology2』で登場したポールのヴォーカルがシングルトラックで聴かせどころの中間部のピッコロトランペットのないテイクはこのBOXにはない。これにはエンディングにもピッコロトランペットが登場、そのままプロモシングルのみのメロディも吹いてくれるがガチャガチャ終わる。DISC4の「Capitol Records Mono US Promo Mix」は盤おこしと思われ音質は良くないが初のモノで最後がプロモのみのピッコロトランペットエンディング。『Rarities』のはステレオに継ぎ足したものだった。「A Day In The Life」の「Take1」はポールのパートにつなぐ24節が出来上がっていなのでピアノと声のカウント入り。ポールの部分も歌はないがジョンのパートに戻る部分の演奏は出来ている。そしてジョンの歌で最後の上昇部もまだできていないピアノとカウントのみ。「Take2」は普通のジョンの1234のカウントから始まり構成は「Take1」と同じだが、ポールのパートのアコギが切れ切れのカッティング、マルのカウントのエコーが大きい上にピアノの弾き方も違い、最後に本番で使用されなかったメンバーによるエンディングコードのハミングが入っている。「Orch Overdub」はオーケストラのみの上昇部の練習。「Hummed Last Chord Tks 8,9,10,11」はレコードではピアノの連弾のコードになってしまったが、Take2で聴けるメンバーのラストのコードのハーモニー練習。「The Last Chord」はそのピアノのラストコードの練習でピタリと合うとのレコード雷鳴のような音になる。DISC4の「First Mono Mix」はポールパートのつなぎはマルの24までのエコーたっぷりのカウントで、ポールのパートが歌は入るがまだ歌い方が一部違う。ジョンのパートは完成されているがエンディングはオーケストラなしでさらにピアノの弾き方が違い下降するベースも入るが最後のコード音なし。『Anthology2』のものは最初は「Take1」とあるがポールのパートは「First Mono Mix」のものに差替えたもの。そしてエンディングはオーケストラをもの持ってきてエンディングのコードは入れなかった「継ぎはぎテイク」だった。「SGT.Peppers Lonely Hearts Club Band」の「Take 1 - Inst」は4人だけのザックリした演奏でこれはこれで魅かれる。最後は次につなぐと決めてあったので適当に終わる。「Take 9 / Speech」はリードギターが完成していないがポールもジョンもきちんと歌っていてコーラスも決まり、4人の演奏だけなので迫力があっていい。最後のつなぐ部分はジョンが適当に歌っていて面白い。「Good Morning Good Morning」の「Take 1 - Inst, BD」はシンプルな演奏だけのインスト。「Take8」はジョンの歌のみがシングルで入り、4人の演奏だけなのでロックンロール色が強くてなかなかいい。『Anthology2』のものはジョンのヴォーカルがダブルでクリアにミックスされており、最後のリンゴのドラムもサウンドがクリアなので手数が多く聴こえるが内容は同じ。

続いてDISC3。「Fixing A Hole」の「Take1」はハープシコードのバッキングでポールがシングルで歌っているが完成度は高い。あの印象的なリードギターとコーラスはまだない。最後のアドリブヴォーカルもいい。「Speech And Take 3」は1分くらいの話し声などがあってから演奏が始まる。リードギター、コーラスがない上に歌はさらにアドリブメロディが多く、あとで元に戻したことが分かる。「Being For The Benefit Of Mr.Kite!」の「Speech From Before Take 1; Take 4 And Speech At The End)」はジョンがシングルで歌っていて、間奏部分にラララと歌ったりカウントを入れたりアドリブを入れている。『Anthology2』の「Take1 Take2」のTake2は歌いだしてすぐ終わってしまうがこれのみ。SEなどが入っていない「Take7」は『Anthology2』の「Take7」より歌いだし前のジョンのアドリブの歌が10秒ぐらい長い。ここでもジョンは前半間奏で歌を当てている。そして『Anthology2』の「Take7」の後半はSE入りにつないでフェイドアウトしているのでこれまた「継ぎはぎもの」だ。「Lovely Rita」のアウトテイクは初登場。「Speech And Take 9」は明るくポールがシングルで歌い、コーラスやSEなどは入っていない。後半の構成は出来ているが、ポールのアドリブのメロディがまだ多い。最後はジョンのヴォーカルが聞こえる。「Lucy In The Sky With Diamonds」の「Take 1 And Speech At The End」は出だしのメロディが同じ音の繰り返しでレコードと違っていて、中間とエンディングのコーラスは歌が入っていない。「Speech, False Start And Take 5」もまだ出だしの歌い方がレコードと違っている。ピアノなど前のテイクより完成しているがこれも中間とエンディングのコーラス部の歌は無い。『Anthology2』のものは出だしのメロディは同じく違っているが、中間とエンディングに歌とコーラスが入りより完成されたテイクだがBOXには入っていない。DISC4の「Original Mono Mix - No. 1」は通常のモノミックスだが冒頭にスタジオチャットや最初のハープシコードの1音の15秒がイントロに加わっている。「Getting Better」のアウトテイクは初で、「Take 1 -- Instrumental And Speech At The End」はジョンの声から始まりピアノからスタートしている。演奏としてはしっかりしていて、気合が感じられる。あのハイライトともいえるポールのベースは、Blu-rayの映像でポールが語っているようにベーシックトラックが出来上がってから入れるそうだが、「Take12」ではポールのベースランニングが披露され、完成に近づいていることが分かる。大好きな曲なので歌入りのものを是非入れてもらいたかった。残念!「Within You Without You」の「Take 1 -- Indian Instruments」は文字通り歌ナシのインストで、『Anthology2』の「Instrumental」と同じものだと思うがBOXの方のミックスがいい。「George Coaching The Musicians」はジョージが主に西洋楽器のバイオリンやチェロに微妙な節回しを口で歌って教えている。「She’s Leaving Home」のアウトテイクも意外な事に初登場、「Take 1 -- Instrumental」はマイク・リーンダーの指揮のもののオーケストラオケ。ジョージ・マーティンがシラ・ブラックのレコーディングで手が離せないというのでポールが急遽スコアを依頼した。「Take 6 -- Instrumental」も同じだが演奏がややスムーズ。どちらもオフィシャルでカットされた2番のリフレインの後、3番の歌が入る前の短く下降するメロディのチェロが入っている。ただまったく同じのが並んで歌もないのじゃあ…。DISC4の「First Mono Mix」はモノ盤のみのピッチの早いテイクだが、前述のチェロのカット前なので、2番の「…many years」のコーラスが入る233秒の後に下降するチェロが入って「Friday morning…」になるので初登場。「With A Little Help From My Friends」はアウトテイクが初めて。「Take 1 -- False Start And Take 2 -- Instrumental」だがシンプルな曲なのでバッキングもシンプル。しかしここに後からポールの絶妙なベースランニングと、対位法のコーラスが加わると、あんなにカッコ良く変身するから凄い。「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)」の「Speech And Take 8」はラフにポールのみが歌ったテイク。『Anthology2』の方のテイクはTake5、ポールのみがラフに歌うテイクだが、中間部の歌い方が明らかに違う。ディスク4はモノ盤と前述の補遺トラックで構成されている。

オマケのBlu-rayDVDは、内容は同じでアルバムのそれぞれのオーディオ・ヴァージョンがあるが、見たいのはビジュアルコンテンツで、1992年に作られた「The Making Of SGT.Pepper」が目玉。もうジョンはいないので、ポール、ジョージ、リンゴとジョージ・マーティンがこのアルバムが作る過程、作っていく過程が詳細に語られる。ジョージ・マーティンがミキサーをいじってどう音が作られていったかを聴かせてくれるのが多いが、ポールはこのアルバムをビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』の影響だとはっきり語っているし、サウンド作りなど大いに参考にしたと語る。またジョンの家にいつも車で行っては一緒に曲を作っていた…などのエピソードは聴いていて嬉しい。ジョージがインドへ行っても静かにしてもらえなかったとか、リンゴのドラムのテクニックをフィル・コリンズが絶賛し、でもリンゴは「他の3人がドラムに興味が無くて良かったよ」と笑ってかわすセンスがいかにもリンゴでいい。その他は「A Day In The Life」「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」のPVで『+1』で発表済み。しかしビジュアルコンテンツを探すのが冒頭の真っ赤な画面の黄色の線を右に変えないと出てこないというまあ不親切なもので、散々探してしまった。(佐野邦彦)



 



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