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2017年3月31日金曜日

☆Rolling Stones:『From The Vault Extra : Live In Japan Tokyo Dome 1990.2.24』(Ward Records)/GQBS90274-6)1DVD+2CD☆Rolling Stones:『Totally Stripped Paris』(Ward Records)/GQXQ90244-6)1Blu-ray+2CD



2年前に1990年のローリング・ストーンズ初来日コンサート時にTV放送された226日のコンサートの完全版(TVでは11曲もカットされていた)がブレーレイとそのCD版でリリースされたが、今回、この放送のテスト用に録画された224日のコンサートの映像がDVDとそのCD版が発売された。ブルーレイ版がないのは、映像のクオリティがDVD並だからだろう。こちらも完全版、テスト用だけあって、選曲も同じである。基本構成は同じなので両者を聴いて大きく違う部分は気づきにくいが、ここは解説があの寺田正典氏、メンバーの細かい立ち振る舞いの差や、カメラワークまで違いを細かく指摘してくれているので非常に参考になる。明らかに違うのは「Rock And Hard Place」の画面にこの曲もPVをなぞって文字が全面に飛び交う邪魔な編集がされていたことと、「Paint It Black」がモノクロだったことで、これは不要な演出だったので、改善されてよかった。さて、たくさんある指摘の中で、時に違いが気になったのはまず「Midnight Rambler」。歌が一度終わったあと、キースがギターを弾きながら右に行きまた戻るという226日にはない動きがありキースのギターも多いのでトータルで122秒長い。「You Can’t Always Get What You Want」のイントロのホルンで少しハウリングの音が聞こえ、キースが何度も振り向いて首を横に振っていたことから、キースの曲への思いが感じられる。「Happy」では後半にロンのボトルネックギターがキースのギターと掛け合いのように入るが、この日はキースが多くギターを弾き、迫力が増していた。「Gimme Shelter」ではミックが絡んで歌うコーラス隊は既発の226日ではシンディ・マイゼーが歌っていてちょっと新鮮だったが、こちらはいつものリサ・フィッシャーだ。あとは「Satisfaction」で、この日は226日のようにミックが下に降りてファンとハイタッチしたり、キースが上に上がったりなどの演出部分がないため演奏は111秒短かったが、途中でミックが「Can you hit me 1times2timest…3times…4times」で盛り上げていく演出で失敗は無かったが、226日では「1times」のところでちょっと上手くいっていなかった。その分後半の演奏で盛り上げていくのはさすがだったが。この224日は、ミック、ロン、キースと最初に着ていたジャケットをすぐ脱ぎ、特にキースはこの公演でほぼ着ていたブルーにプラス2色のコムデギャルソンのセーターではなく白いシャツで新鮮だった。なおこのボックスのボーナスディスクはお謎の侍を左右に備えさせる選出付きのプレス会見の模様と、東京ドーム会場での説明を聴く取材があったが、そこに寺田さんが写っている気が…。寺田さんの解説はこの1990年前後の社会情勢を解説していて、1985年のペレストロイカから1989年のベルリンの壁崩壊、ルーマニア革命でチャウシェスク大統領夫妻の処刑など東ヨーロッパの共産党独裁体制が雪崩を打って倒れ、TVの前でワクワクしながら見ていたことを思いだした。1989年には天安門事件が起き期待したが中国は武力鎮圧してしまい、今の共産党独裁を保っているが、アーサーCクラークも「2001年宇宙の旅」で予測できなかったソ連の崩壊は1991年に訪れ、ロシアなど15の国に分裂した。(内バルト3国はいち早く独立したが)その頃は素晴らしい世界が来ると期待したものだが、(当時はパンドラの箱を開けてしまったのかと思った時もあったが企業のグローバル化や世界中がインターネットに結びついたなど、単純なものではない)1991年には湾岸戦争が勃発、世界中に紛争、テロが拡大し、世界に明るい期待が持てなくなってしまったのはどういうことなのだろうか…。音楽は配信中心でカネにならなくなったが、その点、ライブを欠かさず続けてきたストーンズは強い。やはり史上最強のロック・バンドだった。
ここで昨日書いた時は終わりだったが、続いて届いたので後述したのではなく、別掲載にしなかったのは一部の私のようなコレクターのみ必要なのが『Totally Stripped Paris』だからだ。このBlu-rayは1年前の『Totally Stripped』(Ward)のBlu-rayに、1995526日のアムステルダム20曲、このBlu-rayとまったく同じ73日のパリ22曲、そして719日のロンドン22曲の3枚がありこの3公演+345日の東芝EMIスタジオの映像(4曲収録)があったので、既発売のものなのだ。ただ同梱のCD3会場からのミックスで、パリ公演の「音」は5曲だけだったので、CDとしても完全版を持っていたいというコレクターだけが必要なのだ。内容は既に全編見られるので省略。それにしてもメンバー紹介でのチャーリーとキースの人気は圧倒的だなあ。(佐野邦彦)

☆「手塚治虫シナリオ集成1970-1980」☆「手塚治虫シナリオ集成1981-1989」(立東舎)


手塚治虫のシナリオ習性が2冊発売された。1冊は「手塚治虫シナリオ集成1970-1980」、もう一冊は「手塚治虫シナリオ集成1981-1989」と年代別に分冊されている。このシナリオの大半はこの時期のアニメーションのシナリオ。手塚治虫のアニメーション愛はもう半端ないもので、マンガで稼いだ金をアニメーションにつぎ込み、虫プロダクションを設立。1963年の「鉄腕アトム」から1969年の「どろろ」まで手塚の代表作7作がTVアニメになったが業績不振で1971年に手塚は社長を辞任、1973年倒産している。手塚治虫はマンガ家としては自分も含め、永遠のNo1であり、「マンガの神様」である。講談社の手塚治虫漫画全集を揃えただけでは飽き足らず、国書刊行会を筆頭に小学館クリエイティブやジェネオンなどのカラー復刻も集めている熱心なファンである。(手塚ファンは人生そのものの人も多く、書き直しが多い手塚なので掲載誌全てを揃えるレベルの方からは「読んでストーリーが分かればいい」という自分はまだ小僧っこだろう)あの宮崎駿監督も「マンガではどうやっても手塚治虫にかなわないので、アニメーションで凌駕するようにした」と言うほどだが、この言葉の後半で出てくるように「手塚アニメ」の評価は低い。手塚治虫が積極的に関わった作品がより評価が低く、宮崎駿は「手塚さんのアニメーションのアプローチは完璧に間違っている」と断罪するがこれも多く同意できる。アニメ―ションの流れを無視して、突然マンガで通用しないギャグを入れたり、ミュージカルでセリフを言ったり、自分の好きなものをアニメの中に入れ込み過ぎて失敗している。これはこの本にある虫プロ後のアニメ(手塚プロダクション)でも少しも変わっていない。何作は実際に見たが特番は一度見ただけ、TVシリーズは途中で見るのをやめているほど。多くのアニメ評論家に低評価を受けながら、手塚は最後までアニメを作り続けた。子供の頃に見たディズニーの「バンビ」や「白雪姫」や、敗戦目前の昭和45年に公開された「桃太郎海の神兵」の感激を忘れられず、最後まで自分が関与してアニメを作りたかったのだろう。幸いといっては失礼だが、この本はシナリオなので実際にアニメは映らないので、「見てガッカリ」はないので、純粋に本で楽しもう。「手塚治虫シナリオ集成1970-1980」の冒頭は手塚が原案・絵コンテ・演出・総指揮を努め1978年に日本テレビで放送された2時間のスペシャル・アニメ「100万年地球の旅バンダーブック」だ。シナリオでは色々伏線があり、兄であったブラックジャックと共に、自分の父母の仇を内に過去の地球を支配していたマザー・コンピューターを破壊、その後の平和なエピソードもあるのだが、アニメではへんてこりんな宇宙人が意味もなく出てくるなど、いらないカットが多すぎ、面白いアニメではなかった。しかし24時間テレビの中で放送され28%という最高視聴率を取ったため、以降手塚アニメのスペシャル枠が設けられた。個人的にはこのシナリオで十分だ。続いて1980年から1981年まで日本テレビで52話放送された「鉄腕アトム」の中から7話を選んだものだ。私はこの時期にはもう手塚アニメから離れていたので1話も見ていない。ストーリーを読むとなかなか面白く、ここでもブラックジャックが地球最高の名医としてタイムマシンでアトムと行動したり、あの人間に危害を加える事に躊躇しない因子を組み込まれたロボット・アトラスが、この第2作では設定をまるで変えてアトラスの姉代わりのロボットへの恋物語を織り込みながらアトムと対決し、最後は決着をつけずに余韻を残して終わらせていた。最終回の「アトムの恋」はアトムの原型のロボットの少女と淡い恋心を抱くがこの少女は中性子爆弾を内蔵させれていて起動スイッチが押されもう中性子爆弾のある頭と胴体を切り離す以外助かる道がなく、作った科学者も設計図がないのでそれしかないとあと数秒で切り離され爆発は回避される。アトムは残った体をお茶の水博士の元に持っていって、この少女の足を自分の足と付け替えてもらうよう懇願し、それがアトムの足が少女の足のように見える秘密だという衝撃?のエンディングとなる。このシーンは最近、テレビのクイズ問題に出て、正答者はいなかった気がするので、このアトムの第2シーズンは印象に残っていない、思い起こされることのないシリーズだったということだろう。「太陽の石」は1980年にNHK第1ラジオで手塚本人ドラマとして放送されたが、ここに書かれた内容とは大幅に違っていたそうだ。本のシナリオでは縄文人と渡来の弥生人との争いを、現在につなげ、日本は神国という集団には、昔の巨石文明を知られることが困るから…といういかにも手塚らしい左翼的史観が込められ、まあこのまま放送されなかったのは当然だろう。残りは数多い短いシノプシス集。1970年から1977年までのもので、当時の手塚のマンガに使われたものも多い。1970年の「クレオパトラ」は虫プロで大人のアニメ「アニメラマ」として長編アニメ化されたシノプシスだ。21世紀から「クレオパトラ計画」なるものを探るため、古代エジプトへタイムマシンで行くのは同じだが、アニメではパロディ全開でおふさげが過ぎた印象しか残っていない。1977年の「草原の子テングリ」に手塚が原案だったことを忘れていた。雪印の宣伝用22分の短編アニメは大塚康生が作画だけでなく演出までやった唯一の作品であり、宮崎駿が原画で手伝っていたので後にDVD化され、そのため自分も購入していた。音楽が『太陽の王子ホルスの大冒険』の間宮芳生だったので二重に期待したが、どちらも及第点だが傑作ではない。手塚のシナリオは2本あり、2本目が採用されていた。1977年にフジテレビで放送された『ジェッタ―マルス』のシノプシスもあった。善と悪の科学者2人に共同で育てられていく未完成の子供のロボット・マルスが成長していくストーリーだったが、途中で退屈になって見なくなってしまった作品である。かなりのものが残されているそうなので、機会があったら読んでみたいものだ。その他にもたくさんあるが印象に残ったもののみ紹介した。

さてもう1冊の晩年の「手塚治虫シナリオ集成1981-1989」だ。

最初は1981年に日本テレビの24時間テレビ内の2時間スペシャルで放送された「ブレーメン4 地獄の中の天使たち」だ。手塚はブレーメンの4匹を動物の舞台を、某独裁国家によって荒廃させられた国とし、そこで4匹は地球視察に訪れ瀕死の重傷を負った宇宙人を助け、円盤に乗って去っていく宇宙人に1日だけ人間の形に変身できる薬をもらうことができ、4匹はこの力を使って侵略者を追い出す計画を立てるというストーリー。「バンダーブック」以降手塚は、翌年の1979年に手塚スターシステムを使ったドタバタ「海底超特急マリン・エクスプレス」、1980年には名作「来るべき世界」をご都合主義の駄作に貶めた「フウムーン」とガッカリ作品を作り続けていたので、この「ブレーメン4」は楽しめた記憶がある。傑作でないが、見られたということだ。翌1982年は竹宮恵子・光瀬龍の「アンドロメダ・ストーリーズ」が例学的に24時間テレビの枠で放送されたが1983年は手塚の「タイムスリップ10000年 プライム・ローズ」に戻った。マンガの「プライム・ローズ」の主人公は、露出度の多いコスチュームの美少女で、当時新進気鋭の吾妻ひでおを意識した作品とされる。昔、吾妻先生と話した時に、「手塚先生が俺ごときをライバル視したなんて…」と苦笑していたことを思いだした。ただこのシナリオでは198×年にある国の衛星落下によりアメリカのダラスと日本の九十九里浜が消滅、20××年にタイムコントロールが出来るようになってこの両都市は1万年後の世界に飛ばされ、それを胆原ガイという日本人の血を時間調査員が1万年後の九十九里へ飛ぶが、全ては1980年代の建物だったが廃墟になっていた…でシナリオは終わり。肝心な主人公のプライム・ローズが出てこない。20××年の現在の世界を支配するグロマン人と支配されているククリット人がいるが、この両民族のおこりはタイムスリップした両都市だとつきとめ調査にいく。プライム・ローズはグロマン王の王女だが、ククリットとの和平のために養女としてククリットに引き取られ、本人は根っからのククリット人だと思っている。ククリットでの名前はエミヤ・タチ。アニメでは彼女は最初からククリット人とされているそうだが見ていないので分からない。設定面からは見たら面白い話だった可能性が感じられる。「大自然の魔獣バギ」は1985年の24時間テレビスペシャルアニメだ、この作品は設定が現代で、主人合の母親が遺伝子組み換えの失敗で、米1粒で1万人殺戮ができる毒性米が出来たので破棄しようとするが大統領に細菌兵器として反対派に使うために量産を指示するが拒否したため殺されてしまう。その時に主人公が子供の頃に育てていた子猫、それはメスのアフリカライオンで、それに人間の遺伝子を組み合わせた実験動物が成長していて猫女のバギになっていたが、母親はバギに毒性米の集めたライスボールを事にいきさつの手紙と共に託す。主人公はバギが母親を殺したと勘違いし、数年後に出会ったバギと戦い刺してしまったバギが持っていたライスボールト手紙から犯人ではバギではなく真相を知る…という当時、懸念されはじめた遺伝子組み換え技術の悪用に警鐘を鳴らした手塚らしいストーリーのアニメだった。ただ本書に短く掲載されたシナリオは2本あって、妹の誘拐から科学者の父親に誘拐組織が要求するライスボールの存在を知り、ライスボールを送ったという熊本の博士の研究所でバギ(シナリオではジャガー女)に助けられる。アフリカでのライスボール争奪事件後、熊本で陰謀組織は要求をライスボールではなくバギとの交換に変更、首尾よく戦って逃げ全員脱出に成功、帰宅した家でTVキャスターの母親にこの事を話しても信じてもらえず、「これは夢物語じゃないんだ!」と主人公が怒鳴るところでひとつめのシナリオは終わる。2つ目は主人公と母親の環境を変えて同じようには話が始まるところでおしまい。手塚は第1作の「バンダーブック」の時から本業のマンガにかかりきりで毎回のようにシナリオが間に合わず、初回の「バンダーブック」から放送2か月前になっても絵コンテも原画がほとんど完成しておらず制作担当が失踪する有様。そのくせ出来上がった原画に放映一カ月前でも手塚は平気でリテイクを出し、スタッフのイライラは常にマックス。最後の3日間はスタッフ全員貫徹で、放送5分前に納品とか、放送中に後半納品というとんでもない回もあり、どんどん酷くなっていったとか。これでは3年以上かけてじっくりつくる宮崎アニメに勝てるわけなどない。不十分なままオンエアーするので、その後他局での放送では手直しするというマンガでは自分で切り張りすれば簡単だが、集団作業のアニメで行うという無駄な事をしていたというから呆れてしまう。他は手塚のライフワークの「火の鳥」が1987年に「黎明編」で実写化(一部アニメパートあり)されたあと、その後の未来編、宇宙編、復活編、望郷編を合体されたようなアニメーション用のシナリオを書いたものが収録された。これはきれいに完結しているが、手塚はこのフル・アニメで1980年に「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」として脚本、総監督を務めるが、話は大幅に変えられ、内容ももちろんだが、古臭い演出、シナリオが退屈、絵がキャラクターでバラバラ、フル・アニメを理解していないなど批判の嵐で終わる。評価されたのは樋口康雄の当時の最高の演奏者を集めたフル・オーケストラによるクラシック調の音楽で、手塚は「外国で質問が飛ぶのは冨田勲(ジャングル大帝、リボンの騎士など虫プロ前と虫プロ時代の音楽を数多く担当。オーケストラも多い)、そして樋口康雄ばかりだ」と言ったが、この点は手塚の類まれな作曲家の人選の良さであり、入魂の作品の音楽は常に最高のクオリティで作られていた。音楽は手塚がアニメで自画自賛出来る唯一のものだったろう。もうひとつは手塚の死の前日に公演されたミュージカルの舞台のシナリオ。「火の鳥(大地編)」とされているが、シナリオと上演されたものは違うそうだ。結局、手塚の死により、ライフワークの「火の鳥」の完結は読むことができなかった。手塚は「アイデアはいくつも浮かぶので、描く方が追いつかない」とこぼしていたマンガの神様、「火の鳥」の最終シナリオはきっと決めておらず、次々と話が思いついて最終編と決めたならば悩みに悩んで、単行本化の時には書き直していたかもしれない。(笑)その他は手塚がこだわった「ネオ・ファウスト」で古く虫プロ時代の1968年にアニメラマの企画で上がるがボツ、第3弾の時に日本物に翻案して「百物語」と企画されるがボツで「悲しみのベラドンナ」に変わる。1884年に劇場アニメとして企画されたシナリオ「ファウスト第1稿」と「ネオ・ファウスト(劇場版・未完成)」が本書で掲載されているが、これもボツになり、最後はマンガでと朝日ジャーナルで連載を始めるが病により絶筆で終わっている。その他では「ユニコ」は1979年のパイロットの短編1作と1981年。1983年に長編が2作、劇場アニメとして公開されたが、本書では劇場1作目のものはないが、短編と長編2作目のシナリオ3本が収められた。そして手塚の死後、1989年から1990年にNHKでTVアニメとして39話放送された「青いブリンク」の初出の初期資料や、1話から5話でのシナリオ(5話で絶筆となった)など現存するすべてが収録された。主人公の少女に助けられた青い雷獣ブリンクが、悪い皇帝にさらわれた主人公の父親を助け出す為、皇帝が次々送り込む刺客と戦うストーリー。主人公はすぐに弱い気持ちになるのでブリンクが体から雷球を送ると勇気が出て活躍でできる。しかし雷球には実際はそんな効果はなく、主人公自身の成長なのだ。しかし実際に、ほとんどこの時期の手塚アニメを見ていないので詳細は分からない。最後に「悪魔島のプリンス 三つ目が通る」で、1985年の24時間テレビで放送されるが、製作はそれまですべてを担当している手塚プロダクションではなく、唯一東映動画だった。手塚が自身のイースター島旅行に触発された書いたストーリーと言われている。マヤ民族の遺品の中にあった矛は重大な力を持っていて、第三の目が開いた写楽に、日本や世界を支配しようとする昔の三つ目族の力を知ったネオナチ組織にその力を使われそうになるが、人間にコントロールできるものではなく三つ目の写楽に収められ、そのすぐ後に写楽は親友の少女に第3の目を塞がれ、元の幼い子供の戻るというストーリー。なお手塚の死後の1990年から1991年に1年間テレビ東京で、手塚プロダクション制作のTVアニメでシリーズ化されている。

この2冊を読むと、1978年の「バンダーブック」以来、1982年を除いて24時間テレビでの手塚アニメスペシャル2時間(実タイムは約90分)で1986年にも「銀河探査2100年 ボーダープラネット」と9回中8回で手塚アニメが組まれた。そして手塚の無くなった1989年に古いマンガの宇宙編を病床の前年に手塚がシノプシスを書くが、完成を見ることなく、その「ぼくの孫悟空 手塚治虫物語」で計9回の日本テレビ24時間テレビの手塚アニメスペシャルは終わっている。(翌年に「アンパンマン」が同枠で放送されたが最低視聴率だったため、アニメ枠も消えた)

手塚の死後、日本テレビは宮崎駿&ジブリに完全にシフトする。1980年に放送した「ルパン三世カリオストロの城」がいきなり21.%の高視聴率を取り以降15回放送されている。「風の谷のナウシカ」は、1886年の最初は16,5%だったが17回放送される中2000年には23.5%、「天空の城ラビュタ」は初回の1988年こそ12.2%だったが翌年には22.6%15回の放送のうち5回が20%を超えた。そして1989年の「となりのトトロ」は初回から21.4%で、15回放送中10回が20%超というオバケ番組、以降13回放送の「魔女の宅急便」は1990年の初回で24.5%11回放送の「紅の豚」は1993年の初回20.9%9回放送の「もののけ姫」は初回の1999年になんと36.1%9回中5回が20%超えた。そして8回放送の「千と千尋の神隠し」は初回の2003年に46.9%という不滅の記録を樹立。5回放送の「ハウルの動く城」も初回の2006年に32.9%を記録した。以降、宮崎アニメは賓作で3回放送の「崖の上のポニョ」は2010年の初回が29.8&、長編引退作(最近撤回したが)の「風立ちぬ」は201519.8%だった。その他のジブリ作品も軒並みリピートされているが、手塚の24時間アニメ9作が再放送されたなんて記憶にない。

手塚本人の思いはいくら他に負けなくても、アニメーションでは宮崎駿に完敗しているのが現実だ。実際、クオリティが段違いなので比較の対象にならない。マンガの神様はアニメの神様にはなれなかった。ただしこの本の前の虫プロからは出崎統、杉野昭夫、安彦良和、富野喜幸、杉井ギザブロー、坂口尚、笹川ひろし、宮本貞雄、鳥海尽三、荒木伸吾、金山明博、月岡貞夫など凄いメンバーが名を連ね、虫プロ後に東京ムービー、日本サンライズ、タツノコプロダクション、東映動画などで大きな成功を収めている。このことから手塚のアニメへの強い思いは無駄ではなかったのだ。

(佐野邦彦)

2017年3月29日水曜日

NHKで再放送された「今よみがえるアイヌの言霊」。昭和22年に録音された100枚のレコードにより、消滅危機言語であるアイヌの歌と言葉が鮮やかに蘇った。


先日NHKで再放送された「今よみがえるアイヌの言霊」は、期待どおりの出来で、夢中になってTVの前で釘付けになった素晴らしい番組だった。アイヌ人は江戸時代には強欲な松前藩に収奪され、明治になると狩猟を禁止、農業従事を強要され、アイヌ文化が失われていった。日本語が浸透し、アイヌの言葉が失われていく中、戦後の昭和22年にNHKが言語学者の金田一京助とアイヌ人で初めて北海道大学教授になった知里真志保の監修のもと、北海道各地でアイヌの歌や言葉をSP100枚分、ダイレクト録音した。この貴重な資料が収録から70年後に発見され、デジタル化が開始される。70年間、レコードは紙のジャケットに入っていたため袋の紙がレコード盤に大量にこびりつき、その紙を丁寧にはがすことからスタート、はがしてもディスクがノイズだらけなので、音声を少しも切らないようデジタル化し、クリアに聞こえるようになった。その中にはユーカラという叙事詩もあった。アイヌの英雄達が神の国や地の国を自由に行きかう壮大なストーリーを、祭りの時に33晩も歌うこともあり、金田一京助はアイヌ民族が誇る文学だと絶賛した。アイヌは文字をもたない民族だったので、全ては口承で受け継がれていたため、登別に住む歌い手の女性はローマ字を習って(日本語と発音が違う)このユーカラを20年かけてノート50冊に残していた。ただそのユーカラがどう歌われたのか録音は僅か一部分なのだがこれで初めて当時のユーカラが音で分かったのだ。猟場のもめごとなどが起きた時は長老の前でチャランケという当事者2人での談判が行われる。しかし白老で録音されたチャランケはこれもメロディのついた歌なのだ。お互いが歌で主張し、一昼夜かかることもあるという。すぐに暴力に訴えない平和なアイヌ民族がこの歌からよく伝わってきた。そんなアイヌも戦時には徴兵され沖縄やガダルカナルで命を落とすものもいたという。師団があった旭川も爆撃で大きな被害を受けた。戦後、即興の跳舞の歌のシノッチャを聴くことができる。「かつて我らの先祖が大切に育んだ我らのふるさとでありますが 偉い人達の政(まつりごと)が悪かったため素晴らしいふるさとを戦(いくさ)が荒廃させた しかしながら神にしっかり守られるのが我らアイヌ民族でございます まさにこれからよい暮らしが子々孫々続くことでございましょう」と希望を込めて歌っている。ただ後述するがアイヌの思いはさらに戦後半世紀も待たないといかなかったのだが…。アイヌの音楽は女性たちが手拍子をしながら歌うウポポという熊が獲れた時や祭りで歌われた歌が、メロディもよりしっかりし何よりもリズムがあるのでとても聴きやすくて楽しい。釧路で録音されたが、その歌詞の美しさ、そして日本語とはまったく違うアイヌ語を併記して一部を書いてみよう。「チュプ カ ワ カムイ ラン イワ テッサム オラン(月から神が降りてきた 岩山の手前に降りた)イワ テッサム コンカニ マウ ネ チヌ(岩山の手前 美しい風音となってきこえる)」。奈良時代の日本語を残す琉球語に比べ、アイヌ語に共通点は乏しく孤立言語とされる。縄文語という説もある。そのアイヌはカムチャッカ、千島、樺太から北海道、東北北部(太平洋側と秋田以北の日本海側)まで住んでいた。ロシアになったアイヌ語は消失し、わずかに北海道のアイヌ語が残るのみで母語として話す人は2007年の段階で10人しか残っていなかった。ただ、今はアイヌ語を残そうとアイヌの血をひいていない人も多く学んでおり、早稲田大学でアイヌ祭が行われたり、北海道の一部では小学校の中でアイヌ語をおしえるようになっている。沖縄でもそれぞれの島の言葉を残そうと取り組んでおり、それぞれの民族の言葉が伝承されるようになったのは素晴らしいことだ。ただ沖縄と違って、アイヌ語は消滅危機言語とされ、本当の危機にある。アイヌ人も差別を免れるために大和民族との混血が進んで純粋なアイヌ人は相当少ないと推測される。昔のアイヌの写真を見ていただければわかるが二重瞼で鼻が高く、眉と目の間が近く、眼窩がくぼんでいるなど、彫りが深い。一見、外国人に見えるほど。しかしモンゴロイドであり、縄文人なのである。日本に住むアイヌ民族、大和民族、琉球民族だけに共通した遺伝子「ハブログループD1bY遺伝子)」があり、これが縄文人の遺伝子でアイヌ人は87.5%と高く、琉球民族が50%弱、大和民族が30%となっている。このハブログループD1bは、日本列島以外では確認されず、中国や朝鮮には存在しない。沖縄の人は彫りが深い美男美女が多いし、本土でも3割いるのだから、端正で外国人のような顔立ちの人は縄文人の血をひいているのかもしれない。東北のアイヌ人は早くに藩政の中、同化したが、北海道は蝦夷地としてまだ日本として認識されてもいなかった。北海道のアイヌの人口は少なく江戸時代で26800人とされる。江戸時代に北海道を独占的に支配しておいた松前藩は、先住民族のアイヌに苛烈な仕打ちをしていた。アイヌ人は和人(大和民族)の事を「シャモ」と呼んでいたが、それはネガティブなものではなく「兄弟」という意味だった。そんなアイヌは、自分達で獲った毛皮や鮭、昆布などを、和人の米や漆器、鉄器類などと交換していたが、米の交換レートを一方的に1/3にしたり、砂金採りによる勝手な開発、鮭の大網による捕獲など、生存権を脅かされたアイヌはついにシャクシャインを頭として蜂起、多くの侵略者の和人を倒したが、すぐに松前藩が反撃に出る。戦いは長期化が予想され、当時の幕府は問題を起こした藩は改易(お取り潰し)をしていたため、それをおそれた松前藩は和睦を呼びかけ、それに応じたシャクシャインは酒宴の場で謀殺された。卑怯極まりない悪辣な松前藩のやり方がよく分かる。シャクシャインの戦いのあとに本土から近江商人の飛騨屋という悪徳商人が出てきて、場所請負制をしいて、政商が結託して搾取。男は国後島などの離島で苦役につかせ、女は漁民の性の相手をさせられるなどそのひどい扱いは、日本人の松浦武四朗の「近世蝦夷人物誌」の克明に記されたが、幕府、明治政府に長く出版を禁じられた。明治時代になると、アイヌは平民となるが戸籍には「旧土人」と記され、明治政府はアイヌに急速な同化政策を敷く。名前は和人風に、アイヌの文化である狩猟を禁じられ、土地は奪われ、土地を与えられても「管理能力が無い」という理由で土地の売り買いもできない。入れ墨などの風習は野蛮(女性は結婚すると口の回りに口の形に沿って大きく入れ墨をしたので特に奇異に映った)であると禁止、教育の場でアイヌ語を使うことを禁じられ、ひどい差別のためでアイヌは和人との混血を望み、アイヌの伝統や文化は急速に失われていった。なんと平成9年になってようやく明治時代に公布された北海道旧土人保護法等が廃止され、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図るため、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(アイヌ文化振興法)が成立する。国は、この法律に基づき、アイヌ語・文化の振興、アイヌの伝統的生活空間の再生事業などアイヌ文化の振興施策を推進するようなった。

こうやって日本が過去にやってきた史実を知り、その独自な文化を絶やさないよう、振興するのは文明国として当然のことだ。ネイティブ・インディアンを虐殺し、ハワイ王国を滅ぼしたアメリカや、アボリジニを惨殺し、人間狩りまでしたオーストラリアは、今は先住民族を保護している。もちろんヨーロッパ諸国はおぞましいアフリカでの黒人奴隷狩り、南米、アラブ、アジアでの侵略で血に染まった歴史が知られているが、同じヨーロッパ内でもイギルスのウェールズ語やアイルランド語の撲滅政策、フランスのプロヴァンス人、アルザス人、ブルゴーニュ人への同化政策、プロイセンのスラブ人への同化政策。(後のナチスドイツは論外)、その他スペイン、イタリア、スウェーデンなどどこでも行ってきた。さらに苛烈なのは民主主義がほとんどない中露で、周辺国にロシア語を強制し逆らう人間は抹殺した旧ソ連、今のロシアでもウクライナやジョージアのように逆らう国には、ロシア系住民保護のためと占領下に置いて平気の平左。中国のウイグル自治区、ネパール自治区は、過酷な支配で民族の文化を破壊、漢族をどんどん送り込んで人口比まで変えようとしていて、取材は厳しい制限があって実態が分からない。でもテロや抗議自殺が絶えないのを見ると中国共産党のおぞましい実態が見える。(最近のハリウッド映画は中国マネー目当てで、中国はアメリカを助けてくれるパートナー扱い、中国が人権無視の共産党の独裁国家ということに目をつぶるハリウッドは、いくらトランプを批判してもダブルスタンダードでお先真っ暗だ)いつも支配ばかりされてきたような感がある朝鮮でも済州島の島民への同化政策を強要した。そして日本ではアイヌ、沖縄がある。では昔に戻せるのかと言えばそれは無理で、昔はここが領土だったと言い出せば7世紀の地図を目指すイスラム国のようになってしまう。現在では先住民族の存在を認め、その文化を継承できるよう、国家が責任を持って保護に努めているのが民主主義国家だが、我が日本には未だに日本は単一民族、皇国史観に基づいた神の国だ…なんていって言っているバカ者が政治家に多くいるので困ったもの。平和主義者で現憲法を評価し守るとおっしゃっている天皇陛下の真逆のことを主張するこいつらは、自分達が一番言われたくない「逆賊」なのが分からんかね。と、話が逸れてしまったのでここでおしまいとしたい。最後にアイヌ語は北海道の多くの地名がアイヌ語由来なのでその点はしっかり生き残っている。東北の地名もアイヌ語由来がかなりあるので、興味をお持ちの方は調べて欲しい。※下の写真は北海道・新ひだか町のシャクシャイン像、ようやく英雄になった。(佐野邦彦)
 

2017年3月21日火曜日

☆大滝詠一:『Niagara 45rpm Vox』(NIAGARA/SRKL-3041-3050)9Singles+1CD


大滝詠一のアナログシングル9+音源CD1枚の『Niagara 45rpm Vox』(Niagara/ソニー)がリリースされて、大滝の音源リイシューがほぼ完成した。21384円なので高額との批判もあるがこの中の4枚のプロモ・シングルはその1枚だけで軽くボックスの値段を超えるので安い買い物だ。自分も大滝のコレクターだが、あまりに高すぎるものは断念しているので非常に助かった。特に素晴らしいのはアナログだけで組まずにその音源のCDを付けた事。アナログ復権の昨今だが、自分はCDで十分なので、ボックスを購入したが、障害の身を押してシングルはプレイする根性はなく、CDからiTunesに入れてもうしまっている。マテリアル派じゃないんで。さてまず貴重なプロモ4枚の違いから。

大滝詠一楽団名義の「ブルー・バレンタイン・デイ (インストゥルメンタル)」は、イントロにわざとスクラッチノイズが2回入り、「今日は」の歌いだしの部分のギターがリード用に入っている。A面は「ブルー・バレンタイン・デイ」のシングル・ヴァージョンで、モノはこれだけ。ただし大きな違いはない。この曲はエコーがかかった『NIAGARA CALENDAR '81』のヴァージョンが好きで、『A Long Vacation』以降の大滝が好きな自分でも、大滝のベスト5に入れるほど好きな曲で、初のカラオケに感動した。

同じく大滝詠一楽団名義の「青空のように (インストゥルメンタル)」はシングル・ヴァージョンのカラオケだが、カスタネットが『NIAGARA CALENDAR '81』並みに大きく入っている。エンディングはシングルより5秒短く「ランララララー」にからむ大滝のコーラスがあまり聴こえない。A面は「青空のように」のシングル・ヴァージョンで、モノはこれだけ。これも大きな違いはない。

多羅尾伴内楽團名義の「サーファー・ムーン (The Surfer Moon)Promo Version」はイントロのベースの音が大きくミックスされ印象が大きく違う。オリジナルの『多羅尾伴内楽團 Vol.2』の波の音はない。A面の「心のときめき (Ajoen Ajoen)Promo Version」もオリジナルの『多羅尾伴内楽團 Vol.2』の波の音が無く、頭に一瞬入るドラムではなく、イントロに5秒のドラムのソロが入る。このイントロのドラムは『Niagara Black Vox』『NIAGARA FALL STARS』などと同じだが、エンディングは1秒ちょっとでフェイドアウト、ほとんど聴こえない『Niagara Black Vox』、11秒ドラムが続く『NIAGARA FALL STARS』とエンディングが違う。なお『Niagara Black Vox』収録のものに波の音はない。

最後はメチャクチャ高額のプロモだ。モンスター名義の「ピンク・レディ(Promo Version)」だが、『LET'S ONDO AGAIN』は頭に15秒の「Oh my darling…」のイントロがあり240秒で曲が終わる。最後にワウのような声が被り256秒から34秒まで小さく駕籠かきの掛け声が聞こえる。そして『Let's Ondo Again Special』にはさらにイントロの2526秒のブレイクにピーポーのような声が入っているが、このプロモには15秒までのイントロをカット、前述のイントロのブレイクはシングルでは1011秒になるがピーポーの声がなく、エンディングのあとのワウのような声もない。カップリングの多羅尾伴内楽團名義の「峠の早駕籠(Promo Version)」シングルの駕籠かきの掛け声が4秒で演奏が始まるが、『LET'S ONDO AGAIN』は掛け声が17秒、『Let's Ondo Again Special』は20秒から始まる。ちなみに『Let's Ondo Again Special』は演奏が始まって3秒後の掛け声のようなSEが大きく、15秒後の「ピッ」という声がこちらでは「ピピッ」と2回になっていた。

続いてレギュラー盤。「お花見メレンゲ(Single Version)」が決定的にアルバムと違うのは大滝のヴォーカルがシングル・トラックであること。そしてヴォーカルは『NIAGARA CALENDAR '78』よりオンであり聴きやすく『NIAGARA CALENDAR '81』の演奏のオーバーダブは無い。加えてモノである。A面は「ブルー・バレンタイン・デイ」のシングル・ヴァージョン。

Cobra twistSingle Version)」は、『GO! GO! NIAGARA』よりヴォーカルが若干オン気味で、時に最後の「Hey Little Cobra,Don’t You Know You’re Gonna Shut’em Down」のコーラスが大きくはっきりミックスされている所が違う。そのあとのリフレインは11回ではなく10回でフェイドアウトする。加えてこれもモノ。なお『NIAGARA FALL STARS '81 Remix Special』は最後のリフレインに変なオルガンのような音がオーバーダブされ30秒以上長く無駄に完奏している。他でも81年のミックスはフェイドアウトするものでも変なオルガン入り。A面は「青空のように」のシングル・ヴァージョン。

レアな多羅尾伴内楽團のシングル「霧の彼方へ (Mr. Moto)」は『NIAGARA FALL STARS Vol.1 2nd Issue』のテイクよりキーもピッチも低く、イントロのギターのエフェクトもなく堂々とした仕上がり。(エフェクトは『NIAGARA FALL STARS '81 Remix Special』の方がもっと大きい)このシングル・ヴァージョンは『多羅尾伴内楽團Vol.1』にB面の「悲しき北風 (The Last Leaf)」と一緒に収録されている。

あと残りの2枚、「幸せにさよなら」と「ナイアガラ音頭」シングル・ヴァージョンAB面は『NIAGARA TRIANGLE Vol. 1 30th Anniversary Edition』に収録済みだ。4500セット限定なので無くなって後悔しないように今の内に購入しよう。

(佐野邦彦)


☆大滝詠一COLLECTING GUIDEを披露。オリジナル盤などどうでもいい音源派なので、ほぼCDで集められる。ちなみに自分は音楽的には完全な「ロンバケ」以降派である。


大滝詠一に関してはナイアガラの信者が山ほどいて、様々な本が出ているので、リストは新鮮味に欠けるという意見もあるだろうが、音源マニアの私なので、どんな貴重なプロモであろうがリイシューされてしまえば無価値なので「聴ける」という一点だけでまとめた。大滝コレクターなのであの『Snow Time』もLPで当時なんとか入手できたが、リイシューされたのでもう処分してしまった。私のように音源のみで集めるほとんどがCD化されていて、アナログのみとかは少しだけだ。邦楽をバカにしていた私は友人は「そんなBeach Boysとか好きなら絶対好きなるよ」と大滝詠一・山下達郎の存在を1982年に教えてもらい、その時の最新盤はリリースされたばかりの大滝の『A Long Vacation』と山下の『For You』で、これは最高の衝撃だった。(山下達郎COLLECTING GUIDE20131031日に掲載し加筆している)まさに、完璧な自分の好みのサウンドとメロディ、そして歌声。『A Long Vacation』『Niagara Triangle Vol.2』『Each Time』の3枚は山下を凌ぐ最へヴィ・ローテーション、私と違ってロックやポップスに興味のない奥さんもこの時期の大滝は絶賛している。これが自分の大滝の原点なので、他のナイアガラ・ファンと違って、真に好きなのは「ロンバケ」以降で、その前のアルバムでも「ロンバケ風」サウンドの曲やメロディアスな曲(「Blue Valentine’s Day」など)を追い求めるので、コアなナイアガラ・ファンの方とは話が合わない。ナイアガラ時代の大滝の曲に対する細かい引き出しやこだわりは、自分も相当詳しい?音楽ファンなのでよくわかるが、こだわりの凄さはわかっても、『Let’s Ondo Again』みたいなのは苦手。大滝詠一マニアの中では自分は異端なのかもしれないが、一切気にならず、ゴリゴリのナイアガラ・ファンとは共通認識を持つ気はない。ただしナイアガラ時代やはっぴいえんど時代も好きな曲はあるし(写真を見てもらえば分かるがよく聴いたので箱がボロボロ)、このようにコンプリートを目指してコレクティングしてきたが、「ロンバケ」以降の方が圧倒的に好きというだけ。そういえばこのロンバケの前、日本の音楽をちゃんと聴いていなかった時代にYMOが大流行し、テレビで頻繁に流れてきたが、その音楽には興味のカケラもなかった。その後に知った山下・大滝・ユーミンの曲は瞬時に衝撃を受けて好きになったが、そっち系はその後も好みではないので、大御所であろうが好き嫌いは明らかに分かれる。山下さんと何かで話した時、坂本龍一が出てきたときに「曲がつまらない」と言ってくれた時には、思わず膝を叩いてしまったほど。やっぱりねって感じで。それでは話がそれたので大滝詠一のCOLLECTING GUIDEを紹介しよう。

★大滝 詠一COLLECTING GUIDE

(◎はっぴいえんど時代の音源)

☆オリジナル・アルバム

2004 『はっぴいえんどBOX』(エイベックス・イオ)※3枚のスタジオ録音アルバム『はっぴいえんど』(70年)『風街ろまん』(71)、『HAPPY END』(72年)にアルバム未収録音源(未発表多数)12曲、そして数多くのライブ・アルバムに分散して収録されていたものに未発表をプラスした70~73年のライブ音源47曲(はっぴえんどの前身のヴァレンタイン・ブルーの70113日の「Bluebird」ライブ含む)、同時期のバックで演奏した14曲も収録された。さらに85615日の「All Together Now」のイベントで再結成された時のライブ4曲も収録された究極のボックス・セット

 

☆『はっぴいえんどBOX』未収録ライブ

1999 松本隆『風街図鑑』(ソニー)※72825日名古屋勤労会館での「ちぎれ雲」のライブ収録。

2009 『はっぴいえんどLive On Stage(エレック/URC復刻プロジェクト2009(ポニーキャニオン)71414日「加橋かつみコンサート」での5曲、同821日「ロック・アウト・ロック・コンサート」での5曲収録。

2014 『岡林信康ロック・コンサート』(FUJI)※70109日のライブ2曲収録。

2014 『岡林信康コンサート』(FUJI)※70121日のライブ2曲収録。

 

☆大滝詠一ソロ・オリジナル・アルバム(リリース年順ではなく、内容順にしている)

1972 『大滝詠一(Special Edition)1997 Reissue(ソニー)※+10曲 ※「恋の汽車ポッポ第1部」はシングルのこと。

1975 『Niagara Moon(20th Anniversary Edition)1995 Reissue(ソニー)スタジオライブの「福生ストラット(PartⅡ)」「あの娘に御用心」「楽しい夜更かし」「ハンド・クラッピング・ルンバ」「恋はメレンゲ」を収録。この盤のみ。他1曲。

1975 『Niagara Moon(30th Anniversary Edition)2005 Reissue(ソニー)※未発表の「ジダンダ」「夜の訪問者」など含むアウトテイク14曲を追加。

1975 『Niagara Moon(40th Anniversary Edition)2015 Reissue(ソニー)※アルバム自体が1995年に大滝がリミックスして曲順から大幅に編集し直したもののボツにした1995年リミックスが初登場。「サイダー」が'75だけだったり冒頭の「Niagara Moon」がない、歌詞も一部違うなど別物。ディスク2には1977年の「ナイアガラ・ファースト・ツアー」からライブ8曲、当時のアーリーミックスに大滝の鼻歌程度の歌が入ったDemonstration Rough Mix Version1を曲収録。かまやつひろしのために書いた「お先にどうぞ」のデモは初。

1976 『Go! Go! Niagara (30th Anniversary Edition)2006 Reissue(ソニー)※+14曲。

※「Go!Go!Niagaraのテーマ~Dr.Kaplan’s Office」の86年版は冒頭の球場のSEをカット。「こんな時あの娘がいてくれたらなあ」は76年版は最後に「あのーサイドワン終わったんですけど」のナレーションが入る。曲は358秒までで、86年版は410秒まで曲が続く。「ジングル:ベースボール」は86年版が12秒長い。「ジングル:土曜の夜の恋人に」の86年版は最後の大滝の語りをカットしたので14秒短い。「針切り男」は96年版は14秒短く、86年版は逆に25秒長い。「Cobra Twist」の86年版は12秒長くコーラスで自然終止する。「再びGo!Go!Niagaraのテーマ」は、96年版は2分短い。86年版は110秒短く、最後に「あのー終わったんですけど」が入っている。

1976 大滝詠一:山下達郎:伊藤銀次『Niagara Triangle Vol.1(30th Anniversary Edition)2005 Reissue(ソニー)※3人が交互にリード・ヴォーカルを取る「幸せにさよなら」(Single Version)も収録。大滝詠一の歌は「夜明け前の浜辺」だけでインストの「Fussa Strut Part.2+布施の「ナイアガラ音頭」3テイク。伊藤の「ココナッツホリデイ’76」の長尺と「ココナッツホリデイ3日目」も収録。

1977 『Niagara CM Special Vol.1』(コロムビア)※2011年の『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』(ソニー)で丸ごとリイシュー。「Cider’73 B TypeC Type」「ジーガム(Audition)」「土曜の夜の恋人は(Mono Mix.Single Vocal)」「土曜の夜の恋人は(Version 2.Backing Track Stereo Mix Double Vocal)」はこれのみ。34トラック。

1981 『Niagara CM Special Vol.1 2nd Issue』(CBSソニー)※1986年の『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』(CBSソニー)で丸ごとリイシュー。50トラック。

2007 『Niagara CM Special Vol.1 3rd Issue(30th Anniversary Edition)』(ソニー)※70曲収録。

1983 『Niagara CM Special Vol.2』(CBSソニー)※2015年の『Niagara CD Book Ⅱ(Box Set)』で丸ごとCD化された。曲名はクレジットされていないが冒頭の9秒「NIAGARA CM Special Theme」と、「A面で恋をして」の3ヴァージョン「(Narration)」「(A Cappella)」「(Track Only)」、さらに『A Long Vacation』のCM用の「Spot Special」「Instrumental Special」の6トラックが初。

1995  Niagara CM Special(ソニー)※1と2から抜粋して、さらにその後の音源をプラスしたもの。抜粋でも別テイクに差しかえられているものもある。他でも聴けるが、ロンバケサウンドの「Cider ‘83」「出前一丁」「オシャレさん」、「CM Special Vol.2」などが聴きもの。

1977 『多羅尾伴内楽團Vol.1』※2011年の『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』(ソニー)収録。全編エレキ・インストで多羅尾伴内楽団名義。

1978 『多羅尾伴内楽團Vol.2』※2011年の『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』(ソニー)収録。オリジナルは波の音入り。ただし『Niagara Black VoxBox Set)』のLPのみ波の音をカット。

2007 『多羅尾伴内楽團Vol.1&Vol.2(30th Anniversary Edition)』(ソニー)※2イン1で、1987年の『Niagara Black BookBox Set)』の中のCDTarao Bannai Special』で登場した「サーフ・ライダー」と「霧の乙女号」に、「ブラック・サンド・ビーチ(Kayama Tribute Mix)」「霧の彼方へ(Speed-Up Version)」を追加した。

1977 シリア・ポール『夢で逢えたら』(ソニー)1997 Reissue ※オリジナル盤と同じミックスで、「夢で逢えたら」のシングル・ヴァージョン、モノ、カラオケなど6トラック追加。大滝はプロデュース(山下達郎もストリングス・アレンジ多数)と作曲。1987年には『Niagara Black Book(Box Set)』でCD化されたが、吉田保の手によりエコーが多めにかかり、曲順も変えたが、Black VoxLPに入っていた「夢で逢えたら、もう一度」は何故かCDではカットされた。

1977 『Niagara Calendar(’78 Edition)2015 Reissue(ソニー)※2011年の『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』がベスト。

1981 『Niagara Calendar(’81 Edition)2015 Reissue(ソニー)※2011年の『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』がベスト。

このアルバムは1977年版と1981年版でまったく違うアレンジがされているので比較しながらまとめて記述する。『Niagara Calendar(30th Anniversary Edition)』は’78 Edition81 Editionの2イン1だが、収録時間の限界で’81 Editionのラストが短縮版になっているのでそれぞれ丸ごと入っている上記ボックスがいい。まず「Blue Valentine’s Day」は77年版はシングル・ヴァージョンに近く大滝の声がほぼノン・エコーで入るが81年版はエコーたっぷりで個人的にはこちらが好み。「五月雨」は77年版では雨音が入っているが81年版ではカット。ライチャス・ブラザースの「Just Once In My Life」を狙っただけあって81年版ではバックのリフが大きく強調されすぐに違いが分かる。最も異なるのは「青空のように」だ。77年版では冒頭に導入部のインスト部分があるが、81年版はすぐにサビからスタートする。バックも77年版はスチール・ギターが大きく入ったアレンジだが、81年版ではほとんど聴こえなくアレンジを変更、カスタネットを強調して「Wall Of Sound」ヴァージョンに変貌した。後半にはドラムのタム・ロールが登場する凝りよう。シングル・ヴァージョンに近いアレンジの81年版の方が正解。導入部がないのに全体は10秒長い。「泳げカナヅチ君」も77年版の波音を81年版では全面カットしているので波音分の尺が短い。続く「真夏の昼の夢」も77年版には波の音が入ってしまっているが、81年版では全面カット、そしてヴォーカルやサウンドに十分なエコーをかけて、これも81年版が正解だ。「座 読書」も77年版と81年版はイントロのドラムがまったく異なる。サウンドも81年版はヴォーカルがオン。「想い出は霧の中」は77年版ではバックのオルガンの音が目立つが、81年版ではヴォーカルをオンにしてオルガンはバッキングに埋め込んでいる。「クリスマス音頭」は81年版でより日本的な雰囲気を出すために三味線や合いの手を大きくミックスし、後のビギンの『オモトタケオ』サウンドの先駆けになっている。

1981 『Niagara Calendar(’86 Edition)1986 ReissueCBSソニー)※86年の『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』(CBSソニー)ものは吉田保が81年版を元にミックスし、全面的にエコーがかかり、特に「Blue Valentine’s Day」はドリーミーで全てのヴァージョンでこれがベストだ。うっとりとしてしまう。「五月雨」の深いエコーは最も「Wall Of Sound」になっていた。「青空のように」「真夏の昼の夢」はよりソフトなサウンディングに。「想い出は霧の中」は歌の2番からバッキングにマンドリンがよく聴こえるようにミックスされ、より哀愁サウンドに。なお「お正月」のエンディングに77年、81年のどちらにも入っていた最後の最後に突然入るチャイムのようなキーボードはカットされている。

1978 『Debut』(CBSソニー)※読者リクエストで選ばれた12曲を全曲新録、未発表トラック、ライブで作り直したもの。2011年『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』で丸ごとリイシュー。

1987 『Debut Special』(CBSソニー)※『Debut』から曲を8曲削除、代わりに「空色のくれよん」「田舎道」「うららか~ハイカラ~ロンロン~サイダー」「Sheila~シャックリママさん~Love’s Made A Fool Of You」「指切り」のライブが追加され、「空飛ぶクジラ」(フェードインが長い)「水彩画の町」「乱れ髪」「外はいい天気だよ」はリミックスされたので『Debut』とはまったくの別物。1987年の『Niagara Black BookBox Set)』のみでリリース。

1978 『Let’s Ondo Again』(CBSソニー)※多羅尾伴内楽團の「峠の早駕籠」「337秒間世界一周」や宿霧十軒名義の「空飛ぶカナヅチくん」、Each Ohtaki名義の「烏賊酢是! 此乃鯉」の大滝4曲、残りは他アーティスト。ロンバケとはもっともほど遠いサウンド。2011年『Niagara CD Book Ⅰ(Box Set)』に収録。

1987 『Let’s Ondo Again Special』(CBSソニー)※『Let’s Ondo Again』から「峠の早駕籠」など6曲を別ミックスで入れ、加えて9曲を追加したので、もはや別物。『Niagara Black Book(Box Set)』に収録。

1981 『Niagara Fall Stars』(CBSソニー)※レア・トラック集で、「心のときめき」は別テイクで自然終止、「霧の彼方に」はテンポアップした軽いミックス、「いつも通り」はオーバーダブ前のVersion2など既存も曲も少しずつ違う。『Niagara CD Book(Box Set)』で聴けるがこのオリジナル盤の曲目では未CD化。(BOXのものは曲目の違う2nd Issue

1981 『A Long Vacation(20th Anniversary Edition)2001 Reissue(ソニー)※1981年にリリースされた『Sing Along V.A.C.A.T.I.O.N』(「さらばシベリア鉄道」無し)(CBSソニー)もカップリング。『Niagara CD Book(Box Set)』にも収録済み。

1981 『A Long Vacation(30th Anniversary Edition)2011 Reissue(ソニー)※20thの『Sing Along V.A.C.A.T.I.O.N』は楽器のリード・メロディが入っていて興ざめだったが、30thでは『A Long Vacation Tracks』として「さらばシベリア鉄道」も入った完全カラオケがカップリングされた。さらに「君は天然色(Original Basic Track)」もプラスされこれのみ。

1981 『Sing Along V.A.C.A.T.I.O.N』(CBSソニー)※リード・メロディ入りのカラオケで「さらばシベリア鉄道」はなし。『Niagara CD Book(Box Set)』などに丸ごと収録。

1981 『Niagara Vox(Box Set)』(CBSソニー)※LP9枚組。前述の『Niagara Fall Stars』から3曲外れ4曲足した2nd Issue。そして、本ボックスのみの『More Niagara Fall Stars』『More More Niagara Fall Stars』に10曲を超える未発表ヴァージョンを収録したが、2015 の『Niagara CD Book(Box Set)(ソニー)CD化された。『Niagara Calendar』は81年版を採用。

1982 大滝詠一:佐野元春:杉真理『Niagara Triangle Vol.2(20th Anniversary Edition)2002 Reissue(ソニー)※オリジナル盤での大滝の曲は5曲。アルバムは『Niagara CD Book Ⅱ(Box Set)』、ボーナス・トラックのエンディングSE無しの「「ハートじかけのオレンジ(Single Version)」と、「Rock'n'Roll 退屈男」は『Best Always』に含まれているが、「A面で恋をして(CM Version)」の最後にシンセ・ドラムのオマケが一発入っているのはこれだけ。(実際のシングルではシンセ・ドラムは最後の溝に入っているので、オート・ピック・アップでなければエンドレスで聴ける) <

1982 大滝詠一:佐野元春:杉真理『Niagara Triangle Vol.2(30th Anniversary Edition)2012 Reissue(ソニー)※オリジナル盤プラス『Niagara Triangle Vol.2 Tracks』として全曲のカラオケと、「A面で恋をして」(カラオケ)に関してはコーラスあり、コーラスなしの2ヴァージョン収録された。

1982 『Niagara Song Book(CBSソニー)※大滝詠一プロデュース、井上鑑アレンジで作られたストリングス・インスト・アルバム。Niagara Fall Of Sound Orchestra名義。

1989年リリースのCD(ソニー/27DH5302)の「夢で逢えたら」のみLong Version(サビの後のAメロが1回多い。よって26秒長い)だった。以降は使われていないが、これは1985年の『B-each Time L-ong』のラストのオーケストラだけの「夢で逢えたら」がイントロに32秒のオリジナルのメロディの導入部が付いて、以降は前述のLong Versionとなるので、『B-each Time L-ong』があれば足りるということになる。

1982 『Niagara Song Book 30th Edition2013 Reissue(ソニー)※『Niagara Song Book』にプラスして「幸せな結末」と「恋するふたり」のストリングス・ヴァージョンが収められた。なお、後者は新たにイントロにストリングスが加えられたヴァージョンでここでしか聴けない。Niagara Fall Of Sound Orchestra名義<

1984 『Each Time(CBSソニー)

オリジナルは9曲仕様。「魔法の瞳」は後のリイシューは30th Anniversary Version以外330語のサビ以降歌詞が加筆された521秒ヴァージョンだが、オリジナルはこの453秒ヴァージョン。「木の葉のスケッチ」はフェイド・アウトするヴァージョン(※『Snow Time』ではアコーディオンのイントロがプラスされたヴァージョンも登場した)。「夏のペーパーバック」も後にイントロのベースのないヴァージョンが使われたが、イントロの楽器が多いこの盤がオリジナル。最も違うのは「レイクサイド・ストーリー」で2回のリフレインでフェイド・アウト気味に絞った後またフェードインして完奏する、俗称「大エンディング・ヴァージョン」であり、オリジナル盤と同じものは『Niagara CD Book Ⅱ(Box Set)』で聴くことができる。その前は最も初期の品番35DH78だけこのヴァージョンが収録され、それ以外のCD4回のリフレイン後にフェイド・アウトするロング・ヴァージョンに差し替えられている。このヴァージョンは537秒まであり、長さ的には最長ヴァージョンである。

1986 『Complete Each Time』(ソニー)※『Each Time』に「Bachelor Girl」と「フィヨルドの少女」が追加され11曲仕様になった。「魔法の瞳」は歌詞が加筆されたロング・ヴァージョン、「木の葉のスケッチ」はフェイド・アウトしない完奏ヴァージョン、「夏のペーパーバック」はイントロにベースがなく違い楽器の少ないヴァージョン(このヴァージョンは『B-each Time L-ong』にも収録)、「恋のナックルボール」は最後にSEが再度現れ大滝の呟きがかすかに入るヴァージョンでこのアルバムのみ、「1969年のドラッグレース」はエンディングの強弱の回数が少なくギター音が少し長く入ったヴァージョンに変更された。これらは1984年の33cm45回転シングル6枚のボックス『Each Time Single Vox(Single Box Set)(CBSソニー)で披露されていたものだった。そして「レイクサイド・ストーリー」は、3回のリフレインで522秒にフェイド・アウトする本盤のみのヴァージョンに差し替えられた。これらは『Niagara CD Book Ⅱ(Box Set)』の『Complete Each Time Single Vox』にまとめられている。

1984 『Each Time(20th Anniversary Edition)2004 Reissue(ソニー)※基本的に「Bachelor Girl」と「フィヨルドの少女」が追加された1986年リリースの『Complete Each Time』(ソニー)の11曲に、ボーナス・トラックとして初登場の「恋のナックルボール(1st Recording Version)」が入り、「マルチスコープ(=ゆらりろ)」「Cider’83」もプラスされた。この4曲は『Niagara Song Book Ⅱ(Box Set)』にも収録されているが、「マルチスコープ」の冒頭に子供の声が入るのはこの盤のみ。「魔法の瞳」は『Complete Each Time』に収録された歌詞が加筆されたロング・ヴァージョンだが、「木の葉のスケッチ」「夏のペーパーバック」「恋のナックルボール」は1984年版『Each Time』に戻る。しかし「レイクサイド・ストーリー」はここでもフェイド・アウトするヴァージョンだが、2回のリフレイン後の57秒で終わってしまう後述の『Snow Time』収録のものと同じ最短ヴァージョンになってしまった。

1984 『Each Time(30th Anniversary Edition)2014 Reissue(ソニー)※11曲仕様で、前述の11曲盤と全て曲順が違うが、これがFinalと題されたので決定盤と言える。ディイスク2には全曲の完全カラオケが収録されたが、歌入りとカラオケでは別ヴァージョンを使っている場合がある。「夏のペーパーバック」は『Complete Each Time』のイントロにベースのないヴァージョンを採用、ただしカラオケはベース入りのヴァージョンとなる。「木の葉のスケッチ」はオリジナルのフェイド・アウトするヴァージョンだが、カラオケは『Complete Each Time』の完奏するヴァージョンが使われた。「魔法の鏡」は、オリジナルのサビの挿入がない453秒に戻った。「1969年のドラッグレース」はエンディングのギターが長い『Complete Each Time』以降のヴァージョン。「恋のナックルボール」は通常ヴァージョン。「レイクサイド・ストーリー」は『Each TimeCD4回のリフレイン後でフェイド・アウトする537秒の最長ヴァージョンが再び採用された。しかしカラオケは『Each Time』のオリジナルの2回のリフレインの後にエンディングが現れ完奏する「大エンディングヴァージョン」が復活する。さらにこのヴァージョンだがオリジナルは2回目のリフレインがフェイド・アウト気味に音を絞るがここでは絞らずエンディングへ持っていく初登場のミックスである。

1984 『Niagara Song Book 2(CBSソニー)※大滝詠一プロデュース、井上鑑アレンジで作られたストリングス・インスト・アルバム第2弾。Niagara Fall Of Sound Orchestra名義。この1984年のCD(35DH111)での『レイクサイド・ストーリー』はファイド・アウトしないで大エンディング・ヴァージョン仕様になっていて20秒長く、「魔法の瞳」のサビの後に木管のAメロとブリッジパートが多く入り58秒も長かったが、以降のCDではこの2ヴァージョンは登場していない。

1984 『Niagara Song Book 2 1989 Reissue(ソニー)の盤のみ、「ガラス壜の中の船」「夏のペーパーバック(Reprise)」が外され、「Bachelor Girl」「白い港」に差し替えられた。ただこの2曲や、変更されたフェイド・アウトする「レイクサイド・ストーリー」や短い「魔法の瞳」など全て『Niagara CD Book Ⅱ』内に収録された。

1984 『Niagara Black VoxBox Set)』(CBSソニー)※シリア・ポール『夢で逢えたら』、『多羅尾伴内楽團Vol.1』『多羅尾伴内楽團Vol.2』『Debut』『Let’s Ondo Again』のLP5枚のボックス。エコーが多めにかけられている。『多羅尾伴内楽團Vol.2』に波の音が入っていない。『Niagara Black Book(Box Set)』にもセレクトされて入ったが『多羅尾伴内楽團Vol.2』の「In The Still Of The Night」「ジャワの夜は更けて(Java)」「魅惑の宵(Some Enchanted Evening 」「Paradise Lost」の波無しは本ボックスのLPのみ。また『夢で逢えたら』も曲順を変え全曲は入っているが、『Niagara CD Book(Box Set)』のものはストリングスのみの「夢で逢えたら、もう一度」がカットされた。

1985 『B-each Time L-ong』(CBSソニー)※『A Long Vacation』『Each Time』から抜粋した曲を、Niagara Fall Of Sound Orchestraでつないだ企画もの。『Niagara CD Book Ⅱ(Box Set)』に収録された。

1985 『Snow Time1996 Reissue(ソニー)※大滝がプライベートで作ったアルバムだが、評判となり1996年に正式リリースされた。半分大滝、半分インストだったが、大滝では森進一に書いた曲の英語カバー「夏のリビエラ」が何といっても目玉。またオフィシャル化の際、「木の葉のスケッチ」がアコーディオンのイントロから始まる未発表ヴァージョンになった。そして元はインスト曲が不足していたため『Niagara Song Book 2』の「レイクサイド・ストーリー」が収められていたが、「Yokan(渡辺満里奈に書いた「うれしい予感」)」のインストに差し替えられた。なお、インストサイドの「Siberia」は『Sing Along Vacation』に入らなかった代わりに録音されていたフィヨルド7名義で81年にリリースされた「哀愁のさらばシベリア鉄道(ギター・バージョン)」とは編集が違い、エンディングの高音のギターパートをそっくりカットして、その後のアドリブ・ギターを多く入れたもので別ヴァージョン。『Niagara CD Book Ⅱ(Box Set)』には「Yokan」を「レイクサイド・ストーリー」に戻したプロモと同じ選曲に変更され収録された。

1986 『Niagara CD Book(Box Set)(CBSソニー)※吉田保プロデュースの別ミックスが貴重なシュガー・ベイブの『Songs』から『Niagara Calendar』までの6枚に、『Niagara Fall Stars 2nd Issue』(Version2は「霧の彼方に」、Version3は「ドリーミング・デイ」(いきなりピアノから始まり10秒短い別ミックス)「心のときめき」収録。他2曲は前述の『Niagara Vox(Box Set)』(CBSソニー)参照)と『Dawn In Niagara(ココナツバンクのライブや布谷文夫の未発表ヴァージョンなど収録。目玉はSugar Babeのデモ4曲だったが、『Songs30周年記念盤に収録された)8枚組。

1987 『Niagara Black Book(Box Set)(CBSソニー)※『Debut Special』、シリア・ポール『夢で逢えたら』、『Tarao Bannai Special』『Let’s Ondo Again Special』のCD4枚組。全体的にエコーを多く加えたリミックス。『Tarao Bannai Special』は『多羅尾伴内楽團Vol.1』『多羅尾伴内楽團Vol.2』の抜粋+ボーナス2曲(30th Editionでも聴ける)の構成で、『Niagara Black Vox(Box Set)』の『多羅尾伴内楽團Vol.2』は波のSE抜きだったので、「Ride The Wild Surf」「Beach Bound」「Black Sand Beach」「Moon Dawg」「Cruel Surf」「Surf Party」「Ajoen Ajoen心のときめきを」「The Surfer Moon」は波のSE無しである。また『夢で逢えたら』は曲順を変えたが、このCD版のみなぜかストリングスの「夢で逢えたら、もう一度」のみカットされた。『Debut Special』と『Let’s Ondo Again Special』は選曲がまったく違う。(前述)

1991 『大瀧詠一Song Book1/大瀧詠一作品集(1980-1985)』(CBSソニー)※大滝の書き下ろした曲を歌う太田裕美、山口百恵、松田聖子、ラッツ&スター、西田敏行などのナンバーに、大滝はこの盤のみ収録の「A面で恋をして(Instrumental)」(バンドの録音で、カラオケではない)など全17曲収録

2010 『大瀧詠一Song Book1/大瀧詠一作品集(1980-1998)』(ソニー)※大滝の最高作である松田聖子「風立ちぬ」渡辺満里奈の「しあわせの予感」や97年の大滝のシングル「幸せな結末」など21曲収録されたが、肝心な1991年版の「A面で恋をして(Instrumental)」が外されている。

1995 『大瀧詠一Song Book2/大瀧詠一作品集(1971-1988)』(ビクター)※大滝の曲を歌う沢田研二、森進一、小林旭、アンルイス、かまやつひろし、薬師丸ひろ子の曲などに大滝本人の「ゆらりろ=(マルチスコープ)」が入っている。その他17曲収録。

2002 小泉今日子『KYON3』(ビクター)※大滝が小泉のために1988年に書いた「怪盗ルビィ(小泉今日子&大滝詠一デュエット・ヴァージョン)」収録。

2011 『Niagara CD Book(Box Set)』(ソニー)※『Debut』や多羅尾伴内楽團の2枚、シリア・ポール、シュガー・ベイブ、『Let’s Ondo Again』まで含めNiagara時代のアルバム12枚をオリジナル・ミックスでリイシュー。『Niagara Calendar』は77年版と81年版で分けて収録してある。

2014 『Best Always』(ソニー)※ベスト盤で初登場の大滝詠一本人が歌う「夢で逢えたら」、大滝が歌い始める初登場のナイアガラ・トライアングルの「幸せにさよなら(Single Version)」、初登場の「ナイアガラ・ムーン(イン・ザ・プールMix)」、バックにピアノを前面に出した「烏賊酢是!此之鯉」のニューミックス、歌とカラオケをつないだ1分の「Cider ‘83」は初登場。フェイド・アウトではなくドラムで終わる「A面で恋をして(Single Version)」にはアナログ時代の最後の溝に入っていたシンセ・ドラムのマシンガン音まで1フレーズ入れたのは初。Single Version初登場は、81年版より分離が良く、カスタネットとコーラスがよく聴こえる「青空のように」と、79年版とほぼ同じでエコーが少ない「Blue Valentine’s Day」の2曲も初CD化だ。シングルのみの「幸せな結末」「Happy Endで始めよう」「恋するふたり」と竹内まりやの2003年のアルバム『Longtime Favorites』に入っていた竹内まりや&大滝詠一のデュオ「Something Stupid」も収録、あと目立った違いは無いが「君は天然色」(冒頭の音合わせ無し)「さらばシベリア鉄道」(早くフェイド・アウト)「恋するカレン」(ヴォーカルが若干オフ気味)のSingle Versionが収録された。その他カラオケで「ナイアガラ・ムーン」「幸せにさよなら」「夢で逢えたら」「ROCK’N’ROLL退屈男」「CM Special Vol.2」「Cider ‘83」「夏のリビエラ」「幸せな結末」「Happy Endで始めよう」「恋するふたり」が収録され貴重。

2015 鈴木雅之『All The Best-Martini Dictionary-(初回限定盤)』※197912月のシャネルズのライブに飛び入りした大滝がシャネルズをバックに「クリスマス音頭」「Who Put The BombIn The Bomp Bomp Bomp)」を歌う。

2015 『Niagara CD Book(Box Set)(ソニー)CD12枚組。1981年の『A Long Vacation』は幻に終わった12インチシングル5枚組仕様の『A Long Vacation Single Vox』で。同年のリード・メロディが入ったカラオケ『Sing Along V.A.C.A.T.I.O.N』、1982年の『Niagara Triangle Vol.2』はそのまま。1984年の『Each Time』は当初のCDとオリジナルの形でリリースされ、「レイクサイド・ストーリー」はフェイド・アウトの後にエンディング部分が入って完奏する「大エンディングヴァージョン」で復活した。同年にリリースされた12インチシングル5枚組はプラス4曲加えて『Complete Each Time Single Vox』として登場。「魔法の瞳」は330秒後に新たにサビ(「ブルーの夜明けまで…」以降の30秒)が加わったロング・ヴァージョン、「夏のペーパーバック」はイントロにベースの入らないシンプルなヴァージョン、「木の葉のスケッチ」はエンディングまで入った長いヴァージョンになった。「1969年のドラッグレース」はエンディングのギター音が長く伸びるヴァージョン、「恋のナックルボール」は曲が終わった後小さくSEと大滝の会話が入ると僅かに違い、「レイクサイド・ストーリー」はフェイド・アウトされたヴァージョン(その他の曲は1986年の『Complete Each Time』のCDと同じだが、このヴァージョンは30thで登場したファイド・アウトが最も長く最長)である。加えられた「Bachelor Girl」と「フィヨルドの少女」は通常のヴァージョン、Niagara Fall Of Sound Orchestraの「Bachelor Girl(Instrumental Version)」は1989年仕様の『Niagara Song Book 2』のみ収録されていたもの。「哀愁のフィヨルドの少女」は『Snow Time』で登場したインストの「Fiord」。その1986年にプロモのみでリリースされた『Snow Time』は、1996年にCD選書でリリースされたものではB面部分に1曲エレキ・インストが無かったので、Niagara Fall Of Sound Orchestraの「レイクサイド・ストーリー」(1989年以降のフェイド・アウトするもの)を外し、渡辺満里奈のシングルに書いた「うれしい予感」をインストにした「Yokan」を入れたが、本ボックスでは元に戻った。ただし本ボックスの『Snow Time』はCD選書ヴァージョンでしか聴けないアコーディオンが冒頭に加わった「木の葉のスケッチ」をそのまま残してくれた。そして外された「Yokan」は本ボックスの『Niagara Rarities Special』に収録されている。初CD化のディスクは1982年リリースの『Niagara CM Special Vol.2』で、曲名はクレジットされていないが冒頭の9秒だけの「NIAGARA CM Special Theme」と、「A面で恋をして」の3ヴァージョン「(Narration)」「(A Cappella)」「(Track Only)」、さらに『A Long Vacation』のCM用の「Spot Special」「Instrumental Special」の6トラックが初CD化。1989年の『B-each Time Lon-g』はオリジナル仕様。Niagara Fall Of Sound Orchestra による1982年の『Niagara Song Book』と1984年の『Niagara Song Book 2』だが、曲名はオリジナルの形になったが、前者は1989年の仕様の「夢で逢えたら」のロング・ヴァージョンは元に戻され、後者は1984年仕様の『レイクサイド・ストーリー』の大エンディング・ヴァージョン仕様や、別ヴァージョンの「魔法の瞳」は使われなかった。ただし、後者の1989年版の2曲の差し替えについては先に紹介した「Bachelor Girl」に加え、もう1曲の「白い港」も『Niagara Rarities Special』に収められた。本ボックスの目玉「『Niagara Rarities Special』のレア・トラックは、初登場の「恋するふたり(Title Back Version)」で、ドラマの中で使われた約半分の長さのまったく異なるヴァージョン。2007年の「恋するふたり(7inch Version)」は、CDと違ってフェイド・アウトのあとにダンドビドゥのスキャットが入って完奏する別ヴァージョンだ。「幸せな結末(7inch Version)」の違いは不明。最もレアなのは1984年のプロモシングル収録の「ペパーミント・ブルー(Promotion Version)」と、同じ年の12インチシングルのみのプロモ収録の「夏のペーパーバック(Promotion Version)」と「真夏の昼の夢(Promotion Version)」の3曲。「ペパーミント・ブルー(Promotion Version)」のイントロは『Niagara Song Book 2』のイントロのストリングスに一見似ているが、歌が始まる30秒の直前までリズムまったく入らずストリングスのみで演奏も違う。その後は通常の「ペパーミント・ブルー」。「夏のペーパーバック(Promotion Version)」はNiagara Fall Of Sound Orchestraのヴァージョンの253秒から38秒までの間に大滝の歌うヴァージョンを入れ込んだもの。「真夏の昼の夢(Promotion Version)」はもっと凝っていてNiagara Fall Of Sound Orchestraのヴァージョンの後の242秒から、はじめはア・カペラで、その後にストリングスに合わせて歌っていて、倍の長さになっている。その他では1981年にFiord7名義でシングルリリースされた「哀愁のさらばシベリア鉄道(Organ Version)」も収録され初CD化。ただしこのシングルのもう片方の「哀愁のさらばシベリア鉄道(Guitar Version)」は、『Snow Time』の「Siberia」の訳だが、「Siberia」は最後の高音でのギターパートをそっくりカットしてその後のアドリブ・ギターを入れている編集なので、9秒短い。なお「恋するふたり(Strings Version)」はイントロ・エレピ・ヴァージョンの方で、2013年にリリースされたNiagara Fall Of Sound Orchestraの『Niagara Song Book 30th Edition』収録の「恋する二人」はイントロにストリングス被せた新ヴァージョンは入らなかったので手離さぬよう。(「幸せな結末」の方は収録された)そしてNiagara時代のコンピ集『Niagara Fall Stars’  81 Remix Special』には1981年にリリースされたLP BoxNiagara Vox』の『Niagara Fall Stars 2nd Issue』『More Niagara Fall Stars』『More More Niagara Fall Star』からVersion2の「すてきなメロディ」(7秒長い)Yuki Ya Kon-Kon」*「Fussa Strut  Part2(最後まで歌が入っていて全くの別テイク。10秒長い)「あの娘に御用心」(アップテンポのラテンアレンジでまったくの別テイク。ドウワップのアルバムのものより1分半短い)「恋はメレンゲ」(ドラムのパターンから違いアップテンポでアコーディオンを大きくミックスした軽快な完全別テイク。10秒長い) Mandshurian Beat」(バックを抑えめにギター音をよく響かせ哀調サウンドになっている)「霧の乙女号」*「Ride The Wild Surf」*やVersion3の「いつも通り」(Version2よりバックのミックスが僅かに大きい)「Cobra Twist」(エンディングに笛の音が入る)「Down Town」(ヴォーカルが若干オフ気味)「The Surfer Moon」*が収録されていた。*の多羅尾伴内楽團のテイクに顕著な差はない。

2015 『佐橋佳幸の仕事』(GT Music)※1997年に13年ぶりのシングルの為行われた幻の「ナイアガラ・リハビリ・セッション」からエルヴィスのカバーの「陽気に行こうぜ~恋にしびれて」を収録。『Debut Again』収録のものより冒頭のスタジオのやり取りが30秒多い。

2016 『DEBUT AGAIN(初回限定盤)(ソニー)※大滝詠一が他アーティストに提供した曲のデモ等を集めたセルフ・カバー集に、オマケとして1997年の再活動開始期にソニーでのリハビリ・セッションを初回限定でプラスしたアルバムだ。冒頭の1985年に小林旭のために書いた「熱き心に」がまずこの盤のハイライトの1曲。1994年に渡辺満里奈が歌った「うれしい予感」は、キーがオリジナルなので非常に低い。ミニアルバムでは222秒から35秒に登場する大サビの入っていない、シングル・ヴァージョンを使っている。1998年の「怪盗ルビイ」は2002年リリースの『Kyon3』に、小泉今日子と大滝の細かいつなぎ合わせのデュエット・ヴァージョンが収録されていたが、こちらは初登場の大滝のソロ・ヴァージョン。ラッツ&スターに提供した「星空のサーカス」と「Tシャツと口紅」はさすが男性用、キーが合うのでバックコーラスも完璧、自家薬篭中の出来。薬師丸ひろ子に提供した1983年の「探偵物語」「すこしだけやさしく」は、大滝が同年724日に西武球場で行ったコンサート「オールナイトニッポン・スーパーフェス’83」用に作ったオケで録音したソロで、アレンジから全く違う。前者は、ほぼオーケストラをバックにした薬師丸に比べ大滝はピアノのイントロからオーケストラが入りビートも感じられるアレンジで仕上げている。ただ大滝のソロ作品として見ると歌謡曲っぽさが強い曲想だ。後者の大滝ヴァージョンはカスタネットが加わりより大滝らしいサウンドになっていた。次は『Snow Time』で既に披露済みの「夏のリビエラ」。そして曲の魅力度ではこのアルバムの目玉である「風立ちぬ」の大滝ヴァージョンが登場する。使用したのは松田聖子に提供した1981年の123日に渋谷公会堂で行われた「ヘッドフォンコンサート」のライブ音源だった。キーを変えバッキングは新しく作られたが、基本的なアレンジは松田聖子ヴァージョンで、「探偵物語」ほどの違いはない。この音源にはブートで一部に出回っている松田聖子と同じキーで歌うデモヴァージョンがあり、そちらが収録されると思っていたが、よりキーが低く、歌声が地味だったので使われなかったのか。このブートには大滝本人が歌う「冬の妖精」のデモも入っていたがこれも収録されていない。最後は特典でしか聴けなかった「夢で逢えたら(Strings Mix)」が収録された。ハープシコードからスタート、その後はストリングスのバッキングなのでドリーミーな仕上がりでラストに相応しい。そしてオマケのディスク2。1997年に大滝がソロ活動再開をするためにソニーのスタジオで2ヶ月に渡って続いた「リハビリ・セッション」からの音源が続く。1928年のジミー・オースティンのカバー“My Blue Heaven”のカバー「私の天竺」で、中間に“Home On The Range”を入れるセンス、まさにナイアガラだ。続く「陽気に行こうぜ~恋にしびれて」(2015松村2世登場!version)は、ご存じエルヴィス・プレスリーのカバー・メドレーで、昨年リリースされた『佐橋佳幸の仕事1983-2015』に収録されたものから冒頭の30秒のスタジオでのやり取りをカットしたものだ。その後はカントリーのロジャー・ミラーとジョージ・ジョーンズのカバーのメドレー「Tall Tall TreesNothing Can Stop Me」と軽快なカバーが続いた。「うれしい予感」のB(扱い)で、植木等が歌った「針切じいさんのロケン・ロール」の大滝によるセルフ・カバー。このディスク2に回されたのは、オリジナルが1958年のノヴェルティ曲でそこにさくらももこが歌詞を付けたものだからで。大滝が歌うとまさにナイアガラ。

2017 『Niagara 45rpm Vox』(ソニー)

大滝詠一のアナログシングル9+音源CD1枚の『Niagara 45rpm Vox』がリリースされて、大滝の音源リイシューがほぼ完成した。特に素晴らしいのはアナログだけで組まずにその音源のCDを付けた事。さてまず貴重なプロモ4枚の違いから。大滝詠一楽団名義の「ブルー・バレンタイン・デイ (インストゥルメンタル)」は、イントロにわざとスクラッチノイズが2回入り、「今日は」の歌いだしの部分のギターがリード用に入っている。A面は「ブルー・バレンタイン・デイ」のシングル・ヴァージョンで、モノはこれだけ。ただし大きな違いはない。同じく大滝詠一楽団名義の「青空のように (インストゥルメンタル)」はシングル・ヴァージョンのカラオケだが、カスタネットが『NIAGARA CALENDAR '81』並みに大きく入っている。エンディングはシングルより5秒短く「ランララララー」にからむ大滝のコーラスがあまり聴こえない。A面は「青空のように」のシングル・ヴァージョンで、モノはこれだけ。これも大きな違いはない多羅尾伴内楽團名義の「サーファー・ムーン (The Surfer Moon)Promo Version」はイントロのベースの音が大きくミックスされ印象が大きく違う。オリジナルの『多羅尾伴内楽團 Vol.2』の波の音はない。A面の「心のときめき (Ajoen Ajoen)Promo Version」もオリジナルの『多羅尾伴内楽團 Vol.2』の波の音が無く、頭に一瞬入るドラムではなく、イントロに5秒のドラムのソロが入る。このイントロのドラムは『Niagara Black Vox』『NIAGARA FALL STARS』などと同じだが、エンディングは1秒ちょっとでフェイドアウト、ほとんど聴こえない『Niagara Black Vox』、11秒ドラムが続く『NIAGARA FALL STARS』とエンディングが違う。なお『Niagara Black Vox』収録のものに波の音はない。最後はモンスター名義の「ピンク・レディ(Promo Version)」だが、『LET'S ONDO AGAIN』は頭に15秒の「Oh my darling…」のイントロがあり240秒で曲が終わる。最後にワウのような声が被り256秒から34秒まで小さく駕籠かきの掛け声が聞こえる。そして『Let's Ondo Again Special』にはさらにイントロの2526秒のブレイクにピーポーのような声が入っているが、このプロモには15秒までのイントロをカット、前述のイントロのブレイクはシングルでは1011秒になるがピーポーの声がなく、エンディングのあとのワウのような声もない。カップリングの多羅尾伴内楽團名義の「峠の早駕籠(Promo Version)」シングルの駕籠かきの掛け声が4秒で演奏が始まるが、『LET'S ONDO AGAIN』は掛け声が17秒、『Let's Ondo Again Special』は20秒から始まる。ちなみに『Let's Ondo Again Special』は演奏が始まって3秒後の掛け声のようなSEが大きく、15秒後の「ピッ」という声がこちらでは「ピピッ」と2回になっていた。

続いてレギュラー盤。「お花見メレンゲ(Single Version)」が決定的にアルバムと違うのは大滝のヴォーカルがシングル・トラックであること。そしてヴォーカルは『NIAGARA CALENDAR '78』よりオンであり聴きやすく『NIAGARA CALENDAR '81』の演奏のオーバーダブは無い。加えてモノである。A面は「ブルー・バレンタイン・デイ」のシングル・ヴァージョン。「Cobra twistSingle Version) 」は、『GO! GO! NIAGARA』よりヴォーカルが若干オン気味で、時に最後の「Hey Little Cobra,Don’t You Know You’re Gonna Shut’em Down」のコーラスが大きくはっきりミックスされている所が違う。そのあとのリフレインは11回ではなく10回でフェイドアウトする。加えてこれもモノ。なお『NIAGARA FALL STARS '81 Remix Special』は最後のリフレインに変なオルガンのような音がオーバーダブされ30秒以上長く無駄に完奏している。他でも81年のミックスはフェイドアウトするものでも変なオルガン入り。A面は「青空のように」のシングル・ヴァージョン。多羅尾伴内楽團のシングル「霧の彼方へ (Mr. Moto)」は『NIAGARA FALL STARS Vol.1 2nd Issue』のテイクよりキーもピッチも低く、イントロのギターのエフェクトもなく堂々とした仕上がり。(エフェクトは『NIAGARA FALL STARS '81 Remix Special』の方がもっと大きい)このシングル・ヴァージョンは『多羅尾伴内楽團Vol.1』にB面の「悲しき北風 (The Last Leaf)」と一緒に収録されている。あと残りの2枚、「幸せにさよなら」と「ナイアガラ音頭」シングル・ヴァージョンAB面は『NIAGARA TRIANGLE Vol. 1 30th Anniversary Edition』に収録済み。


☆シングルのみ<

1981 「哀愁のさらばシベリア鉄道(Guitar Version)」フィヨルド7(ソニー)※大滝変名のインスト。エンディングが違い9秒短い。カップリングは「哀愁のさらばシベリア鉄道(Organ Version)」。Guitar Versionのみ未CD化。

 
☆プロモシングルのみ

1977 「夢で逢えたら(Inst.)」…大滝詠一楽団名義。シリア・ポールの「夢で逢えたら」のB面(日本コロムビア)

(作成:佐野邦彦)