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2017年2月1日水曜日

The Pen Friend Club:『Wonderful World Of The Pen Friend Club』(サザナミ・レーベル/SZDW1029) 平川雄一インタビュー


 WebVANDAではお馴染みのペンフレンドクラブが、早くもフォース・アルバムとなる『Wonderful World Of The Pen Friend Club』を今月8日にリリースする。 昨年ボーカリストの交代劇があったものの、新たにサックス奏者をメンバーに加え、新生ペンフレンドクラブとして新たな第一歩を踏み出した。
またリーダー平川雄一がRYUTistへ楽曲提供したことで、彼らのサウンドの裾野が広がったといえる。

アルバムの詳しい解説については、弊誌佐野編集長と筆者による推薦コメントを読んで頂くとして、ここでは通算三回目となる平川氏へのインタビューを掲載したい。
The Pen Friend Club OFFICIAL WEBSITE
●各方面からの推薦コメント 


●まずはサード・アルバム『Season Of The Pen Friend Club』リリース後に高野ジュンさんが脱退し、3月には新たに四代目ボーカリストとして藤本有華さんが加入されていますよね。アルバム毎にバンドの看板メンバーの交代が続くというのは、リーダーとしてかなり大変な出来事だと思いますが、毎回スムーズに対応されていて感心しています。
苦労話もあると思いますが、その辺のエピソードを聞かせて下さい。

平川(以降H):はい、毎回アルバムが出る度にボーカルが脱退するのは最早ペンフレンドクラブ(以降ペンクラ)の風物詩と化した感がありますが、実際は「止むに止まれず」、「苦渋の決断」というのが実情です。
メンバーの交代には相当な体力が要ります。精神的にもキツいものがあります。
あとボーカル交代の場合、キーがほぼ全レパートリー変更されるので演奏するメンバーも大変です。とはいえ今回新たに加入したボーカル・藤本有華に出会えたことは本当に幸運でした。


●藤本さんは声量や声域的にも素晴らしいものがありますが、ペンクラに参加される前はどのような活動をされていたんでしょうか?

H:子供の頃から歌うことが好きで、よくディズニーやミュージカル映画の英語の歌を真似ていたそうです。
ただ社会人になるまではカラオケ程度で人前での歌唱は未経験だったそうです。 「歌いたい欲」を持ったまま就職後、会社の同僚たちとアコースティックバンド ”T-time.” を結成しますが、好評を得るも短期間で終了します。その後、初のフルバンド ”まいすぺ” を結成し、主に洋邦のスタンダード曲を演奏するバンドでしたが、このバンドも3年程で解散しています。
 「歌いたい病」を患ったままピアノ弾き語りを習いに音楽教室に通ったり(教室主催のコンクールで受賞)、ライブハウスのオープンマイクに参加したり。 そんな中、ペンクラからお呼びがかかった。そんな感じらしいです。 


●看板メンバーであるボーカリストが藤本有華さんに変わったことで、何か新しい変化はありましたか?
また翌月にはサックスの大谷英紗子さんが加入しますよね。バンド・サウンド的にも幅が出てきたと思いますが、具体的にはどんなことでしょうか?

H:藤本の歌唱力、英語の正確な発音は間違いなくペンフレンドクラブのサウンドをいい意味で変えました。「歌うこと」への藤本なりの美学、自信を感じます。
一緒にやっていて本当に頼もしいですね。
大谷は現役のクラシック科の音大生で(2017年1月現在)、音楽的素養に関しては僕が言うに及びません。やはり彼女にも演奏家としての美学、信念を感じます。藤本同様、非常に頼もしい存在です。
ライブではテナーとアルト。4thアルバムの録音ではバリトンサックスも演奏しました。おかげで僕の本当にやりたかったサウンドが実現しました。 (特に「Born To Be Together」や「Sherry She Needs Me」。) 


●大谷さんの参加も大きいですね。レッキングクルーにおけるスティーヴ・ダグラスの役割をしてくれるので今後の展開も楽しみです。
あとはバラード系の曲で彼女のサックス・ソロをフューチャーすることで盛り上がりますし、平川さんの作曲の幅も広がると思いますよ。

H:ですね。今回の4thアルバムでも数曲サックス・ソロを披露してくれています。大谷曰く「もっと80歳くらいのサックス奏者のように吹きたい(吹かねば)」とのことです(笑) 。
こういうことを言えること自体がいいなと思いました。



●今回のアルバムもサード同様に、オリジナル曲とカバー曲の比率が5曲と5曲ということですが、アイドル・ユニット RYUTistへの楽曲提供等(タイトル「ふたりの夕日ライン」)が創作意欲に火を付けたなど平川さんの中で心境の変化がありましたか?

H:もともと火はついていたんですが、油を注がれた形です。
RYUTist側からは「いつものペンクラらしい曲で。変にアイドルに寄せないで、自身の作品と思って作曲して欲しい。」というオファーだったので嬉しかったですね。なので最初からペンクラでセルフカバーするつもりで書きました。
「夕日ライン」というのは新潟の【日本海夕日ライン】という道路の名称でRYUTistのアルバムタイトルであり、そのアルバムのコンセプトでもあります。
ただ新潟とは元々縁の無いペンクラでやることを想定して「夕日ライン」を【夕日によってできるライン状の影】や【夕焼け空の雲間から射すサンバースト】などにも解釈出来るように、と思いながら書いたんですが...歌詞内で名言してないのでそこまでは伝わらないですよね(笑)。 ただの自分内設定です。

       
 
●アルバムに先行して、その『ふたりの夕日ライン』のセルフカバーをシングル・リリース(1月14日)して話題にもなっていますが、そもそもRYUTistに楽曲提供した経緯は?

H:新潟のバンド、鈴木恵TRIOの鈴木さんを介してRYUTistのディレクターさんから楽曲提供依頼のメールを頂きました。
ペンクラの最初期の頃から注目していたとのことで、大変熱烈なご依頼で嬉しかったですね。 他アーティストへの楽曲提供は未経験でしたが興味があったので二つ返事でお受けしました。 その後、カンケさん、so nice鎌倉さん、鈴木恵さんと作家陣が決まり、RYUTistを中心に作家間のつながりも強まりました。


●このRYUTistの『日本海夕日ライン』には、伝説のシュガー・ベイブ~山下達郎フォロワーのso niceを率いる鎌倉克行氏も楽曲提供していますが、直接彼と出会って何か得るものはありましたか?

H:話好きでとても気さくで本当に楽しい方ですね。ペンクラのこともお好きでいてくれてたり・・・村松邦男さんを紹介していただいたりもしました。

●今回もVANDA的にカバー曲の選曲が非常に気になります。 マン&ワイル(&スペクター)作のザ・ロネッツの「Born To Be Together」、グリニッチ&バリー(&スペクター)作のアイク&ティナ・ターナーの「River Deep-Mountain High」とフィレス・レコードづいていますが、この影響はどこからですか?
またフィフス・ディメンションでは全盛期を過ぎた71年作の隠れた名曲「Love's Lines, Angles and Rhymes」を取り上げていて、選曲的にも心憎いですが。

H:いずれも「好きな曲」です。 『Born To Be Together』はバンド初期からやりたかった曲です。こういう曲をやることに生き甲斐を感じています。
『River Deep-Mountain High』は藤本の好きな曲でもあります。アイク&ティナのレコーディング版とライブ版のいいとこ取りをしたような仕上がりを目指しました。
『Love's Lines, Angles and Rhymes』は「藤本なら実現できる。」と思い、取り上げました。 本人は「普段こんな歌い方をしないから恥ずかしい。」と語りますが、アルバム中、本人に一番ハマっている歌唱ではないかと思っています。
且つ、この曲は聴きどころの沢山ある仕上がりになりました。スネアのリムの響き。ベースの音色と動き。サックス、フルート、グロッケンの混じり具合。好きなトラックです。


●どの曲もオリジナルでアレンジが完成されているじゃない。カバーする際ペンクラらしさを感じさせることで気を配ったことは?

H:カバーする際、特に「ペンクラらしさ」は意識はしていません。ガレージバンドがこういった音楽を本気でやると、自ずと「らしさ」が出るんじゃないでしょうかね。
大きな声では言えませんが「オリジナルに勝ちたい(勝たねば)」という闘争心はあります。


●ビーチ・ボーイズのカバーが復活しましたが、65年のアウトテイクで、後にブライアンが98年のソロ作『Imagination』に「She Says That She Needs Me」と改名し収録された、「Sherry She Needs Me」ですが、これは平川さんならではの拘りですか?


H:これは昔から最高に好きな曲ですね。 ペンクラの2ndアルバム発売後くらいから密かに1人で録りを進めていたんですが、これまでずっと放置していました。 ある時、謎の音楽家・カンケさんがプライベートで録音したものを聴かせて頂いて、「俺もやらねば」という気になり今回の4thで取り上げた次第です。
基本的に65年BB版の音像をよりダイナミックに、明瞭にしようと。そこに98年BW版での追加要素を合わせたような仕上がりにしました。
このトラックはこれまでのペンクラ作品の中で一番好きです。特にテナーサックスとバリトンサックスの音色が最高です。

●なるほど、密かに一人多重録音でプリプロしていたんだ。
因みに平川さんはドラムまで演奏出来るので、マルチプレイヤーだと思いますが、メンバー含めたレコーディング本番までのプロセスを可能な範囲で教えて下さい。

H:メンバーの歌、楽器以外の素材は僕の方で全て予め宅録します。それをメンバーに聴いてもらって、各人に指示する感じですね。
ドラムのアレンジは祥雲(ドラマー:祥雲貴行)に全体の雰囲気を伝えて、あとは基本お任せです。祥雲アレンジの方が木目細かいので。

●サード・アルバムの山下達郎氏の「土曜日の恋人」に続き、大滝詠一氏の「夏のペーパーバック」を取り上げていますが、やはりペンクラのサウンドを聴く限り、この先人お二人の影響を受けていない訳は無いですよね?

H:もちろん、仰る通りです。日本人のミュージシャンで一番いいですね。次の5枚目の日本人カバー曲どうしようかなって感じです。

●オリジナル曲では一聴して「微笑んで」に惹かれました。 こんな名曲をどうやって作り上げたのか教えて下さい。

H:17年前、僕が18か19歳の時、まだ尼崎の実家で宅録をしていたときに原型を作りました。ほぼビートルズしか聴いていない時期です。
サビのメロディーは当時と全く同じで、Aメロ、Bメロはコード進行、メロディー共に変更しました。歌詞は全て書き直しました。
この曲は僕の原点みたいな存在なので、こうやって自分の納得のできる製品として完成させることが出来たのが凄く嬉しいです。あの頃の自分に聴かせたいです。

●ダイヤの原石は十代の頃に出来上がっていたんですね。そのデモも聴いてみたいですよ。サビメロは変わっていないということは、ソングライティング・センスが向上して、曲としての完成度を待っていたようで興味深いエピソードです。
こういった原石はまだあるんでしょう?

H:10代の頃作った曲で今でも出せそうなのは数曲あります。今後もちょっとづつ小出しにしていこうと思ってます。笑 あの頃のデモは・・・あのMDどこ行ったんかな・・・。見つかったらまたお聴かせします。

●最後にアルバムのPRと、レコ発ライヴ・イベントなど直近のライヴ・スケジュールをお願いします。

H:今回の4thアルバム『Wonderful World Of The Pen Friend Club』は目下ペンフレンドクラブの作品の中で一番出来がいいです。ぜひ聴いて確認してください。
2月以降のライブ予定はこちらです。

◎2/5 吉祥寺 伊千兵衛
◎2/19 HMV record shop渋谷
◎2/26 dues新宿
◎3/12 東高円寺 UFO Club


(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)


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