さあいよいよフーの『My Generation』のSuper Deluxe Editionだ。CD5枚組、これでコンプリートが期待できるかも。なにしろ『My Generation』はステレオ化が始まってからでも2002年の『Deluxe Edition』と『Collector’s Edition』、そしてパートが不足した部分を完全化した2014年のiTunesのみの配信があったので、今回のBOXで細大漏らさず入ったと期待値はmax。ラインナップを見るとiTunes配信のCD化を除いても15曲の未発表トラックに9曲のデモ、その中には大好きな『Sell Out』の「Sunrise」のデモ(なんと64年!)もあるというのだからもう待ちきれない。さて結果は。買う価値は十分。絶対購入すべき。でもFull Lengthと書いてあってFade Outだったり、完奏があるのに入れなかったり、Deluxe Edition等にあるのに落としたり、納得いかないものもあり、結局は前述の盤はひとつも処分できないのでご注意を。ではまずメリットから順に紹介。ディスク1はオリジナル盤のモノなのでパス。
ディスク2はオリジナル盤のステレオ。Deluxe Editionでの問題点はiTunes版『My Generation(Stereo)』で改善されていたので、以下の部分がiTunes版のとおりになり、初CD化となる。「My Generation」の1分後の欠落していたカウンターのギターが入り、リード・ヴォーカルがシングル・トラックになっていた「La-La-La Lie」「The Kids Are Alright」「The Good’s Gone」はダブル・トラックに戻る。「A Legal Matter」も欠落していた43秒、2分7秒のリード・ギターのリフが復活した。「I’m A Man」は大きすぎたパーカッションを抑えてミックス、「The Ox」はバカでかいリード・ギターをセーブし聴きやすくなったが前のステレオより6秒短く、ファイドアウトになった。Deluxe Editionでは完奏していたのに、オリジナルがそうだしiTunes版通りとはいえ、それならFull Length版としてディスク4にも入れるべきだった。
ディスク3は同時期のモノ作品を集めたもの。12曲目まではオリジナルと同じとあるが「Instant Party Mixture」はiTunesの『My Generation(Mono)』で初登場したものでリード・ギターがやや大きく、エンディングのアドリブのギターなど5秒長い。「Circles」は『My
Generation(Collector’s Edition)』で初めて登場した「Circles(Alternate Version)」の方で、通常のモノはずっとジョンのホルンが全面で鳴っているが、こちらはやや控えめで一緒に入っているコーラスも聴こえる。続くフランス盤EP(トップは「I Can’t
Explain」)のみ収録の、リード・ヴォーカルのメロディ・ラインが違う「Anyway Anyhow
Anywhere(French EP Version)」は、オリジナル・モノは初CD化。このEPは€200くらいするレア盤なので今回の目玉のひとつ。ただ残念なのはカウンター・コーラスが欠落したステレオが『My Generation: Collector's Edition』にAlternate
Versionとして入っていたのにカットされていて非常に残念だ。付け加えておくとDeluxe Editionのア・カペラの「Anytime You Want Me(A Cappella)」もカットされている。「Out In The Street (Alternative Guitar Break Version)」は1分34秒からのリード・ギターがスウィッチングなど使わず全く違うコードを弾く。「Out In The Street (Alternative Early Vocal Version)」はバック・コーラスが無い。続いてDeluxe Editionで、ステレオで収録済みだがモノは初なのがまず1分38秒長い「I Don’t Mind(Full Length Version)」と30秒長い「The Good’s
Gone(Full Length Version) 」で自然終止するまで入っている。「My
Generation (Alternative Version)」は5秒のスタジオ・チャットが入り、1分3秒からのリード・ギターは欠落、最後にキースの激しいドラムに部分に単音のリード・ギターが加わっている。「I'm A Man (Version 2 / Early Vocal Version)」は中盤の歌詞stand up in a big longlineのあとの57秒からの歌詞が違い、1分5秒で歌をやめてしまい、1分15秒までの絶叫するI tell you baby …you did nothin’ wrongの歌が無く、歌の最後で盛り上がる部分で歌うTell all you women Don’t do me no wrong Now
I’m a manの歌もまったく無い。「Daddy
Rolling Stone (Alternative Take)」はイントロが長く、バック・コーラスが無く、58秒からのカウンター・コーラス部分にリード・ギターが入るなどギターパートが全く違い、さらに完奏するのでオリジナル・モノより20秒長い。「Lubie (Come Back Home) (Alternative
Mix)」はギターがクリアにミックスされている。「Shout And Shimmy (Alternative
Mix)」はカウンターのコーラスが欠落している。「Circles (Alternative Mix)」は6秒スタジオ・チャットが入り、ホーンが本ボックスには収録されなかった通常モノよりホルンがさらに大きくにフィーチャーされ、曲のメインのように鳴り続ける。ちなみにシングルの「Circles(Instant Party)」ははるかにスピードが速く、演奏からまったく違いロック色が強い。曲も約1分早く終わる。
ディスク4は同時期のステレオ集。17曲目までは既発表とあるが補足説明がかなり必要だ。一番問題は「The Good's Gone (Full Length Version)」。ヴォーカルがダブル・トラックになったもののDeluxe Editionでは同じステレオで完奏するのになぜかフェイドアウトしてしまう。よって5秒短い。これは最大のミスだろう。Deluxe Editionから改善されたのは「I Can’t Explain」に欠落していたタンバリンが入った。中間のハーモニカがデカすぎる「Bald Headed Woman」は普通の音量になり長さはモノより22秒長いまま。「Daddy Rolling Stone」はカウンターで入るリード・ギターがはっきり聴こえるようにミックスされた。1分44秒でモノにはない「ワー」のコーラスが入り、1分48秒から2分6秒までのカウンターのコーラスが欠落するのはDeluxe Editionと同じだが微かに聴こえる部分もある。「Daddy Rolling Stone (Alternative Version)」はディスク3の同タイトルのStereo Versionだが頭に2秒スタジオ・チャット入り。「Leaving Here」はディスク3や『Who’s Missing』のステレオ・ヴァージョンと違って1分27秒後の間奏のギターのカウンターの「アー」のコーラスが入っていない。「Motoring」はリズムギターがクリアに聴こえるようにミックスを変えた。「Anyway Anyhow Anywhere」はこれしか書いていないが、これはディスク3のFrench EP Versionのステレオで、Deluxe Editionと同じもの。きちんとクレジットしないとダメだ。初登場は「Circles(New Mix)」で、Deluxe
Editionではイントロ以外ジョンのホルンが欠落し、リード・ヴォーカルがシングル・トラックだったが、ここではダブル・トラックになってジョンのホルンが全面にフィーチャーされた。ただし、iTunes版の「Circles(Stereo)」はホルンがもっと控えめで、こちらは未CD化のまま。「Daddy Rolling Stone (Alternate Take
B.)」はtwoのカウントからスタート、「Daddy
Rolling Stone (Alternative Version)」は1分の時に通常ならカウンター・コーラスの部分にギターを入れていたが、このテイクではそれがなく自然であり、エンディングは終止するがきちんとした終わり方ではなく終わる。「Out In The Street (Alternate Take 2)」は1分34秒でリード・ギターがスイッチングなどしないでコードを弾くヴァージョン。「I'm A
Man (Alternate Version)」はディスク3の「I'm A Man (Version 2 / Early Vocal Version)」とまったく同じで前半の歌が短く、最後の歌が無い。
ディスク5は1曲を除き1965年のピート・タウンゼンドのデモである。トップの「My Generation (Version 3 )」は1982年の書籍「Maximum R&B」に封入されていたソノシートで、エコーがビンビンなるデモ、これでしか聴けなかったので朗報だ。四角のソノシートで針を落とすのが大変だったからだ。「My Generation (Version 2 )」はハンドクラップも入ってより完成したデモ。「The Girls I Could've Had 」はまるでボイス&ハートが書きそうな軽快なロックンロール・ナンバーだ。「It’s Not True」「A
Legal Matter」「Much Too Much」のアルバム収録曲は非常に完成度が高くまさにもうフーのヴァージョンが出来上がっている。デビュー期からピートはここまで作っていたのだ。「As Children We Grew」は、洒落た感じの曲だが、もうひとひねりピートはしたかったのだろう。これも初めて聴く。そして個人的に本ボックスの目玉、「Sunrise(Version 1)」だ。フーの1967年の傑作アルバム『The Who Sell Out』の中でもひと際輝くピートの弾き語りの美しいアコースティック・ナンバーだが、この曲はなんと1964年に書いていて、ピートの最も早いデモだという。ジャズ・コードを知らなければ書けない洒落たコード進行とギタリストとしての上手さ、そして類まれな美しいメロディ・ライン、まだフーとしてデビューする前にこれだけ高度な曲を書いていたことにピートの底知れぬ才能の凄さを思い知らされた。「My Own Love」は牧歌的でキャッチーなナンバーで、お蔵入りにしていたのが惜しいナンバー。もう1曲は『Scoop』収録曲、この10曲だけでもこのボックスを買う価値がある。最後にCDの入っているブックレットの写真は見ているだけでこの時代のイギリスを感じられるので、それも楽しみに。(佐野邦彦)
0 件のコメント:
コメントを投稿