2016年9月5日月曜日

☆Pete Townshend’s Deep Ends Face The Face(Ward/GQBS90182-4)DVD+2CD

このDVDはかつて1986年にリリースされた似たタイトルのアルバム『Deep Ends Live』とはまったくの別物。というのも『Deep Ends Live』の収録日が19851112日でロンドンのBrixton Academyだったのに比べ、ライブのメンバーは同じだが1986129日にフランスのカンヌで行われたライブだからだ。ちなみに『Deep Ends Live』の方は後のボーナストラックをいれて12曲だったが、2004年にEel Pieから27曲の完全版の『Live:Brixton Academy’85』がリリースされていた。そしてこの初登場のカンヌでのライブは15曲で、付属のCDにも全曲収録されている。ちなみにこのWard Records発売のもの以外はCD1枚で「I Put A Spell On You」がカットされているので、CDの完全版はこのWard盤しかないので要注意だ。このピート・タウンゼンドのソロ・ツアーは17人という大所帯で、なんといってもリード・ギターにデイヴ・ギルモアが参加しているのが目玉。さらにドラムはフーでもドラムを叩いていたセッション・ドラマーのサイモン・フィリップス、ライブでブルース・ハーモニカを炸裂させるピーター・ポール・エヴァンス、フーのアルバムにも参加したキーボードのラビットとこジョン・バンドリックなどの実力者が入り、ピートのただのソロ・ライブとは一線を画した豪華メンバーになった。キース・ムーンの亡き後のドラムを担当したケニー・ジョーンズとの最後のスタジオ・アルバムになった1982年の『It’s Hard』でピートはフーとしての活動に一応終止符を打ち、その後のスタジオ・アルバムの『Endless Wire』は2006年と、24年もの時間が必要だった。一方この頃のピートは1980年の『Empty Glass』が全米5位の大ヒットになるなどソロ活動に力を入れており1985年には映画も作成した『White City:A Novel』をリリースして充実していた。一方デイヴ・ギルモアはピンク・フロイドの『The Wall』のあとロジャー・ウォータースと決別し、1984年にはソロ・アルバム『About Face』をリリース、親交のあったピートが作詞で2曲に参加、本盤でもこのソロ・アルバムからシングル・カットされた『Blue Light』を披露している。ちょうどソロ活動に力を入れていた2人だからこそこの奇跡のコラボが実現した。これだけのメンバーがいるのでピートは6曲をアコースティック・ギター、7曲がエレキ・ギターで、よりヴォーカリストとして力を入れていた。もちろんフーのナンバーの「Pinball Wizard」などはアコギと歌の完全なソロなのだが、ソロの「Face The Face」「Night Train」ではギターを持たず歌いながら華麗なステップを見せるというフーでは考えられないパフォーマンスを披露している。曲は1980年の『Empty Glass』から「Rough Boys」「A Little Is Enough」、1982年の『All The Best Cowboys Have Chinese Eyes』から「Slit Skirts」「The Sea Refuses No River」、1985年の『White City: A Novel』から「Give Blood」「Face The Face」「Hiding Out」「Secondhand Love」と8曲を占め、フーのナンバーは「Won’t Get Fooled Again」「Behind Blue Eyes」「Pinball Wizard」の3曲だけ、「After The Fire」「I Put A Spell On You」「Night Train」はライブで披露した曲で、ラスト1曲は前述のギルモアの「Blue Lights」という構成になっている。「Give Blood」「After The Fire」「The She Refuses No River」などのギルモアの美しいリード・ギターの音色には惚れ惚れで、このコラボに感謝するばかり。曲では他に「Slit Skirts」「A Little Is Enough」「Rough Boys」が軽快で快調、非常にいい出来だ。ダンサブルな「Face The Face」もいい。なおピートの弾き語りの「I Put A Spell On You」はCCRのカバーでお馴染みのナンバー、さすがにこの曲はジョン・フォガティの狂おしいまでのヴォーカルとサウンドには遠く及ばなかった。(佐野邦彦)

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