このテレビエイジシリーズの新作、井上大輔の主題歌集とCM集は、非常に画期的で重要なワークスだ。
まずはディスク1の主題歌集から。特撮の「レッドバロン」「マッハバロン」の主題歌4曲から始まるセンスが素晴らしい。おお、これは井上大輔だったのかという驚きと、この時代のアニメ&特撮テーマのパワフルさで一気に引き込まれる。「レッドバロン」は「テッカマン」を思わせるアレンジが面白い。そして「マッハバロン」はさすがGS出身、ロックの血が流れているなと感じさせてくれる傑作で、マッハバロンの歌詞のところでコードをさげていくアレンジがカッコいいロックナンバーで、ディスク1で一番のお気に入りのひとつ。
あとはテレビの主題歌で梶芽衣子の「ジーンズぶるうす」は彼女らしい少しやさぐれた歌謡曲。アグネス・チャンの「美しい朝が来ます」はこの頃のアグネスらしい明るく快活なポップソングで、出来はとてもいい。キャンディースの「卒業」はまさに伝統的な歌謡曲。井上忠夫本人が歌う主題歌を挟んでマイナー調でダンサブルな松崎しげるの「JAKA JAKA」が登場。ここから名義が井上忠夫から井上大輔に変名する。
そしてCD1で最も知られる「機動戦士ガンダム」の映画版の2と3の主題歌4曲が登場、一気に盛り上がる。みな井上本人が歌っており「哀戦士」「風にひとりで」「めぐりあい」「ビギニング」は誰でも耳にしたことがある傑作である。
その後は「スケバン刑事2」の主題歌を南野陽子が歌うが、サビの展開が洒落ている。さらに出来がいいのが山瀬まみが歌う「機甲戦記ドラグナー」の主題歌2曲で、どちらもディスク1で最もメロディアスで華やかな2曲で、山瀬まみの歌唱力の高さにも驚かされた。Switchの歌う「行け!稲中卓球部」のあとは鈴置洋孝のアルバムから井上作の5曲で終わる。
CM集はブルー・コメッツの「ハチハニーの歌」からスタート。曲の展開、サウンド、歌い方がまさにブルコメで嬉しいオープニング。大和田獏が歌う「コーヒーブラウン」は初めて聴くCM曲だが、キャッチーないい曲だ。そしてこのCDの中でもっとも有名な名曲、シャネルズの「ランナウェイ」が出てきて嬉しくなるが、これはパイオアニアのラジカセのCMで使われていた。
その後は短い井上本人が歌うコカ・コーラのCM「コカ・コーラAt Home ‘80」で、井上の作曲のセンス溢れる洒落た曲だ。次はアサヒ本生のCMでまさにドゥ・ワップの「夏のハッシャバイ」。井上本人の初出不明の洒落た「24th Street」を挟んで
ジュエリーマキのイメージソング「魔法でダンス」はなんとデイビー・ジョーンズが歌っていた。リクルート・フロムAのCMは井上本人が歌うアップテンポで哀調を帯びた佳曲。そしてハウスバーモントカレー83年のCMを西城秀樹が歌うが覚えていない曲だった。
そして再び誰でも知っているラッツ&スターの名曲「め組のひと」の登場で心が弾むがこれは資生堂のCMだった。TAOというグループの「AZUR」という曲はキューピーマヨネーズのCMだそうで初めて聴く英語のナンバーだが、軽快でポップ、このディスク2の隠れた名曲でお勧めだ。日清UFOのイメージソングで杏里の「気ままにREFLECTION」はどこかで聴いたことがあるような曲。
ポカリスウェットのイメージソングというOsny
Meloの「瞳の中で」はなんとも無国籍風のイメージたっぷりの佳曲。またコカ・コーラのCM「I feel Coke '87」が登場するが、記憶の隅にかすかに残る程度の曲。Coors LightのCMソングは記憶の隅にも残っていない。上田正樹の「GO WEST ~胸いっぱいの愛を~」は缶入りコーヒーWESTのCMだそうだがこれも記憶にない。尾崎紀世彦の「サマーラブ」はアサヒビールのCMで、この曲はどこかで聴いたことがあるようなメロディを持ち、尾崎の素晴らしい歌声により傑作に仕上がった。RDの歌うキリンのコープランドのCM「DEAD or LOVE ~薔薇と銃声~」は一転へヴィな曲。
そしてやっと久々誰でも知っているCMの登場だ。楠木勇有行の歌う「ネコ大好きフリスキー」は我々ネコ好きなら知らない人がいない名曲。誰も口ずさめるタイトルのフレーズ以外もこんな爽やかな曲だったとは…。ディスク2のハイライトのひとつ。一転超ベタなのは小林旭 with 東京スカパラダイスオーケストラの「アキラのジーンときちゃうぜ」でサントリーリキュールホワイトのCMだ。Le Coupleの荘厳なハーモニーに彩られた「遠い少年の目」は感動的でこれもディスク2のハイライトのひとつ。最後はアサヒビールのCMで世理奈の「風と花と光と」で、死後5年後の2005年に発表されたが爽やかな佳曲だった。井上大輔の底知れない才能が分かる。
こうやって初めてまとめて井上大輔の曲を聴いたが、ブルー・コメッツ時代にリアル・タイムで聴いていた時、「歌謡曲ロック」として下に見られていたが、「マリアの泉」を聴いて、これはただものではないと思ったものだが、ブルコメの曲を書いていた井上忠夫は、才能があったと改めて思った。
GSで作曲家として大家となったのはワイルドワンズの加瀬邦彦とスパイダースの大野克夫、知られていないがアウト・キャスツの穂口雄右と、ブルー・コメッツの井上忠夫の4人のみ。続いてスパイダースの井上堯之、かまやつひろし、ハプニングス・フォーのクニ河内の3人(沢田研二も書いていたがこの3人のレベルにはない)で、コンポーザーとして才能を十分に発揮したのは7人だけだった。
(佐野邦彦)
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