そもそもウワノソラ'67はシティポップ・バンドのウワノソラのいえもとめぐみと角谷博栄の二人によるユニットで、全てのソングライティングを手掛けている角谷により大滝詠一氏を追悼するというコンセプト元にアルバムが制作されている。 詳しくは彼らのオフィシャルサイトにて筆者がおこなったインタビューを参照してほしい。
ウワノソラ'67:『Portrait in Rock'n'Roll』リリース・インタビュー
今回アナログ7インチでリリースされた意義は極めて高い。
その裏付けとも言えるエピソードがあるのだが、筆者が『Portrait in Rock'n'Roll』のリリース直前、現ナイアガラ・エンタープライズ代表取締役の坂口修氏に本作をお勧めしたところ、何と既に予約されており、逆にアナログ盤でのリリースの可能性を聞かれたほど強く望んでいらしたのである。
ナイアガラ・サウンドの神髄を継承されている氏も、彼らのサウンドがアナログ盤にて生かされるということを真に理解されていた証拠なのだ。
さて「シェリーに首ったけ」をアナログ7インチで聴いたファースト・インプレンションだが、まずその音圧に圧倒される。
5管のホーン・アンサンブル(特にバリトン・サックスのブロウ)やドラムのキックなど低域の迫力はCDでは聴けなかった。大編成によるサウンドの醍醐味はアナログならではということだろう。
カップリングでハチロク・バラードの「雨降る部屋で」では、ストリングスのトップ・ノートの空気感はCDよりも明らかに豊かに広がり、このオブリガートがいえもとの麗しいヴォーカルを引き立ているのが理解出来るだろう。
リッキー・リー・ジョーンズの「Company」(『Rickie Lee Jones』収録・79年)のストリングス・アレンジもかくやと言うべき美しさである。
昨年のレビューから各曲の解説も以下に引用するが、CDでは味わえないアロナグ7インチのサウンドを是非堪能して欲しい。
リードトラックの「シェリーに首ったけ」は、ずばり「君は天然色」(つまりフィレス・サウンドからThe Pixies Threeの「Cold Cold Winter」やロイ・ウッド(ウィザード)の「See My Baby Jive」等)を意識したアップテンポのシャッフルだが、バックビートにアクセントを持つヴァースのベースラインは「青空のように」(『NIAGARA CALENDAR』収録・77年)からの影響を感じさせる。
いえもとのヴォーカルは難しいラインのピッチも安定していて、全体的にチャーミングな雰囲気で非常に魅力的だ。
ホーンはテナー・サックスが2管、バリトンとアルト、トロンボーンが各1管の編成で、ドラムとピアノはダブル、エレキとアコースティック・ギター、12弦ギターを20本分、スレイベルとタンバリンは20回のオーバーダビングを施し、カスタネットは5人!でプレイしているというから恐れ入谷の鬼子母神である。
ソウル・ミュージックからのエッセンスが希薄な本アルバムでは珍しく、カーティス・メイフィールド風のギターリフのイントロから導かれる「雨降る部屋で」は、ビーチ・ボーイズのハチロク・バラードを心から愛する角谷が「Your Summer Dream」を意識して作ったという。メロディーラインにはロージー&オリジナルズの「Angel Baby」(フィル・スペクターのプロデュースによりジョン・レノンもカバーしている)のそれを感じさせるが、コーラス・パートはヴェロニカの「I'm So Young」とライチャス・ブラザーズ「( I Love You ) For Sentimental Reasons」(有名なスタンダード・ナンバーでもある)を意識したという。
サビに絡む美しい対位法のストリングス(アレンジ:角谷&深町)からアルト・ソロに雪崩れ込む時ピークとなり、一流ジャズ・サックス奏者である横山貴生による見事なプレイに耳を奪われる。
因みにこのアナログ7インチは、彼らのオフィシャルサイトの他、リリース元のJET SET等のレコード・ショップで購入出来るので興味を持った読者は是非入手して聴いて欲しい。
ウワノソラ'67 オフィシャルサイト・オンラインストア
(ウチタカヒデ)
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