オリジナル曲の作曲はリーダーの平川雄一である。冒頭の「街のアンサンブル」はこのアルバムの中の一番お気に入りンナンバー、1曲目にもってきただけある。爽やかでキャッチーで曲の展開も流麗、バックの鈴やグロッケンの音が華やかさを醸し出しているし、間奏のギターが音色もフレーズも良くここもポイントだ。「What A Summer」は英語で歌われるオリジナルのソフトロック・ナンバー。この曲もグロッケンやカスタネット、パーカッションなど、曲の展開も含め丁寧に作られていている。エンディングはまさにソフト・ロックのパターンだ。そしていよいよ「Poor Boy」。ロイヤレッツのカバーと書かれているが、それはある意味正確ではない。ソフト・ロック・ファンにとっての「神」であるテディ・ランダッツォのワークスと言うべきだ。1965年から1967年にかけてのテディ・ランダッツォが書いた曲はテディが作曲、そしてプロデュースを行い、めくるめく転調、弓を引っ張って引っ張って一気に解き放つようなドラマティックなプロデュースがあまりに素晴らしく、ポップスの頂点を極めたミュージシャンの一人だった。そのテディの1965年のワークスだが、テディ・ランダッツォのようなメリハリを付けたドラマティックなプロデュースではなく、あくまでもリード・ヴォーカルの爽やかさを生かす華やかでスムーズなプロデュースにしている。続く「Long Way To Be Happy」はご存じフィル・スペクターがプロデュースしたダーレン・ラブの快作。毎回、フィル・スペクターのプロデュース曲のロネッツの曲をカバーしてきたが、今回は最もソウルフルなダーレン・ラブ。オーバー・プロデュース気味のスペクターのエコーではなく、バックの細かいハーモニーまで聴こえるナチュラルなプロデュースを行っていた。オリジナルの「Where Did You Go」はギターのリフから始まるロック・ナンバーで、カウンターの男性ヴォーカルのとのからみがいい。「土曜日の恋人」は誰もが知っている山下達郎のカバー。しかしこの完成度の極めて高いナンバーのカバーにトライしようとしたミュージシャンは知っている限りなく、それにトライしただけでも画期的なのに、見事に成功している。この曲はあえてアレンジを同じにして、女性ヴォーカルが歌うとこうなるという見本を聴かせてくれた。私自身、数ある山下達郎のナンバーの中でもベスト2(もう1曲は「愛を描いて」)に入れる名曲中の名曲、最も好きな曲だけにこれは嬉しいカバーだ。なおこの曲のイントロはゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのアルバム・ナンバーの「We'll Work It Out」で、スナッフ・ギャレット&レオン・ラッセルの浮き浮きする華やかなサウンド作りも継承している。「Summertime Girl」は1枚目でも取り上げたトレードウィンズのカバー。ソルト・ウォ-ター・タフィーのアレンジ...ではなく、ここはトレードウィンズのアレンジでのカバーだが、オリジナルはRed Bird時代の曲でサウンドが薄かったため、ここではエコーたっぷりにまるで山下達郎の『Big Wave』でカバーしたかのような充実したアレンジで、オリジナルより聴かせてくれる。「Before My Summer Ends」は英語詞のオリジナルで、バラードかと思いきやアップテンポに展開するポップ・ナンバー。そのあとはまた私の大好きな曲のカバー「By The Time I Get To Phoenix」だ。ジミー・ウェッブ作のこの曲はグレン・キャンベルが歌ってグラミー賞を獲得し、スタンドードになった名曲中の名曲。この曲は邦題に「恋はフェニックス」というとんでもないタイトルが付いたので、「恋は不死鳥」なんて思っている人が多いようだが、歌詞を読んでみると、恋人を置いて別れた男が、フェニックス、アルバカーキ、オクラホマへと帰っていくストーリーだ。実に味わい深い歌詞、そこに素晴らしいグレン・キャンベルの歌声で心にしみわたる名曲になった。ちなみにジミー・ウェッブの出身地はオクラホマで、グレン・キャンベルが音楽活動を始めたのがアルバカーキ。この曲はさすがに原曲の雰囲気を壊すとぶち壊しになるので、オリジナルにかなりそったアレンジで歌われる。ジミー・ウェッブはデビュー初期に才能を使い果たした感もあるほどこのデビュー期のワークスは凄かった。前作では同コンビの名曲「Wichita Lineman」をカバーしており、やっぱりやってくれたなというところ。最後はオリジナルの「His Silhouette」。一瞬ライブかと思うような拍手がインサートされたア・カペラから始まり、ミディアム・テンポに変わって、穏やかで優しいメロディのクロージングナンバーになる。この曲も英語詞。これだけオリジナル、カバーともに充実した日本のポップ・グループは他にはない。オススメである。(VANDA/佐野邦彦)
2015年12月27日日曜日
☆Pen Friend Club: 『Season Of The Pen Friend Club』(Penpal/PPRD0001)
ペン・フレンド・クラブ待望の3枚目のアルバム『Season Of The Pen
Friend Club』が2016年1月20日に発売される。2014年から年1枚という順調なリリースだ。多くのポップス・ファン、ソフト・ロック・ファンを唸らしたペン・フレンド・クラブ。オリジナルはもちろんいいのだが、今回も多くのコアなファンを満足させるカバーを入れてくれた。1枚目で言えばブルース・ジョンストンの隠れた名曲、ブルース&テリーの「Don't Run Away」で、2枚目ではボブ・クルーのプロデュースで、クルー&サンディ・リンツアー&ダニー・ランデル作というフォー・シーズンズ・ファン感涙のラグ・ドールスの「Dusty」だった訳だが、今回は、私が一押ししているテディ・ランダッツォ作・プロデュースのロイヤレッツの「Poor Boy」になる。もちろんそれ以外のカバーセンスも素晴らしいのだが、今回はこれできたか!と私のようなマニアを喜ばせてくれた。さて、それではアルバムの内容を紹介しよう。
オリジナル曲の作曲はリーダーの平川雄一である。冒頭の「街のアンサンブル」はこのアルバムの中の一番お気に入りンナンバー、1曲目にもってきただけある。爽やかでキャッチーで曲の展開も流麗、バックの鈴やグロッケンの音が華やかさを醸し出しているし、間奏のギターが音色もフレーズも良くここもポイントだ。「What A Summer」は英語で歌われるオリジナルのソフトロック・ナンバー。この曲もグロッケンやカスタネット、パーカッションなど、曲の展開も含め丁寧に作られていている。エンディングはまさにソフト・ロックのパターンだ。そしていよいよ「Poor Boy」。ロイヤレッツのカバーと書かれているが、それはある意味正確ではない。ソフト・ロック・ファンにとっての「神」であるテディ・ランダッツォのワークスと言うべきだ。1965年から1967年にかけてのテディ・ランダッツォが書いた曲はテディが作曲、そしてプロデュースを行い、めくるめく転調、弓を引っ張って引っ張って一気に解き放つようなドラマティックなプロデュースがあまりに素晴らしく、ポップスの頂点を極めたミュージシャンの一人だった。そのテディの1965年のワークスだが、テディ・ランダッツォのようなメリハリを付けたドラマティックなプロデュースではなく、あくまでもリード・ヴォーカルの爽やかさを生かす華やかでスムーズなプロデュースにしている。続く「Long Way To Be Happy」はご存じフィル・スペクターがプロデュースしたダーレン・ラブの快作。毎回、フィル・スペクターのプロデュース曲のロネッツの曲をカバーしてきたが、今回は最もソウルフルなダーレン・ラブ。オーバー・プロデュース気味のスペクターのエコーではなく、バックの細かいハーモニーまで聴こえるナチュラルなプロデュースを行っていた。オリジナルの「Where Did You Go」はギターのリフから始まるロック・ナンバーで、カウンターの男性ヴォーカルのとのからみがいい。「土曜日の恋人」は誰もが知っている山下達郎のカバー。しかしこの完成度の極めて高いナンバーのカバーにトライしようとしたミュージシャンは知っている限りなく、それにトライしただけでも画期的なのに、見事に成功している。この曲はあえてアレンジを同じにして、女性ヴォーカルが歌うとこうなるという見本を聴かせてくれた。私自身、数ある山下達郎のナンバーの中でもベスト2(もう1曲は「愛を描いて」)に入れる名曲中の名曲、最も好きな曲だけにこれは嬉しいカバーだ。なおこの曲のイントロはゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのアルバム・ナンバーの「We'll Work It Out」で、スナッフ・ギャレット&レオン・ラッセルの浮き浮きする華やかなサウンド作りも継承している。「Summertime Girl」は1枚目でも取り上げたトレードウィンズのカバー。ソルト・ウォ-ター・タフィーのアレンジ...ではなく、ここはトレードウィンズのアレンジでのカバーだが、オリジナルはRed Bird時代の曲でサウンドが薄かったため、ここではエコーたっぷりにまるで山下達郎の『Big Wave』でカバーしたかのような充実したアレンジで、オリジナルより聴かせてくれる。「Before My Summer Ends」は英語詞のオリジナルで、バラードかと思いきやアップテンポに展開するポップ・ナンバー。そのあとはまた私の大好きな曲のカバー「By The Time I Get To Phoenix」だ。ジミー・ウェッブ作のこの曲はグレン・キャンベルが歌ってグラミー賞を獲得し、スタンドードになった名曲中の名曲。この曲は邦題に「恋はフェニックス」というとんでもないタイトルが付いたので、「恋は不死鳥」なんて思っている人が多いようだが、歌詞を読んでみると、恋人を置いて別れた男が、フェニックス、アルバカーキ、オクラホマへと帰っていくストーリーだ。実に味わい深い歌詞、そこに素晴らしいグレン・キャンベルの歌声で心にしみわたる名曲になった。ちなみにジミー・ウェッブの出身地はオクラホマで、グレン・キャンベルが音楽活動を始めたのがアルバカーキ。この曲はさすがに原曲の雰囲気を壊すとぶち壊しになるので、オリジナルにかなりそったアレンジで歌われる。ジミー・ウェッブはデビュー初期に才能を使い果たした感もあるほどこのデビュー期のワークスは凄かった。前作では同コンビの名曲「Wichita Lineman」をカバーしており、やっぱりやってくれたなというところ。最後はオリジナルの「His Silhouette」。一瞬ライブかと思うような拍手がインサートされたア・カペラから始まり、ミディアム・テンポに変わって、穏やかで優しいメロディのクロージングナンバーになる。この曲も英語詞。これだけオリジナル、カバーともに充実した日本のポップ・グループは他にはない。オススメである。(VANDA/佐野邦彦)
オリジナル曲の作曲はリーダーの平川雄一である。冒頭の「街のアンサンブル」はこのアルバムの中の一番お気に入りンナンバー、1曲目にもってきただけある。爽やかでキャッチーで曲の展開も流麗、バックの鈴やグロッケンの音が華やかさを醸し出しているし、間奏のギターが音色もフレーズも良くここもポイントだ。「What A Summer」は英語で歌われるオリジナルのソフトロック・ナンバー。この曲もグロッケンやカスタネット、パーカッションなど、曲の展開も含め丁寧に作られていている。エンディングはまさにソフト・ロックのパターンだ。そしていよいよ「Poor Boy」。ロイヤレッツのカバーと書かれているが、それはある意味正確ではない。ソフト・ロック・ファンにとっての「神」であるテディ・ランダッツォのワークスと言うべきだ。1965年から1967年にかけてのテディ・ランダッツォが書いた曲はテディが作曲、そしてプロデュースを行い、めくるめく転調、弓を引っ張って引っ張って一気に解き放つようなドラマティックなプロデュースがあまりに素晴らしく、ポップスの頂点を極めたミュージシャンの一人だった。そのテディの1965年のワークスだが、テディ・ランダッツォのようなメリハリを付けたドラマティックなプロデュースではなく、あくまでもリード・ヴォーカルの爽やかさを生かす華やかでスムーズなプロデュースにしている。続く「Long Way To Be Happy」はご存じフィル・スペクターがプロデュースしたダーレン・ラブの快作。毎回、フィル・スペクターのプロデュース曲のロネッツの曲をカバーしてきたが、今回は最もソウルフルなダーレン・ラブ。オーバー・プロデュース気味のスペクターのエコーではなく、バックの細かいハーモニーまで聴こえるナチュラルなプロデュースを行っていた。オリジナルの「Where Did You Go」はギターのリフから始まるロック・ナンバーで、カウンターの男性ヴォーカルのとのからみがいい。「土曜日の恋人」は誰もが知っている山下達郎のカバー。しかしこの完成度の極めて高いナンバーのカバーにトライしようとしたミュージシャンは知っている限りなく、それにトライしただけでも画期的なのに、見事に成功している。この曲はあえてアレンジを同じにして、女性ヴォーカルが歌うとこうなるという見本を聴かせてくれた。私自身、数ある山下達郎のナンバーの中でもベスト2(もう1曲は「愛を描いて」)に入れる名曲中の名曲、最も好きな曲だけにこれは嬉しいカバーだ。なおこの曲のイントロはゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのアルバム・ナンバーの「We'll Work It Out」で、スナッフ・ギャレット&レオン・ラッセルの浮き浮きする華やかなサウンド作りも継承している。「Summertime Girl」は1枚目でも取り上げたトレードウィンズのカバー。ソルト・ウォ-ター・タフィーのアレンジ...ではなく、ここはトレードウィンズのアレンジでのカバーだが、オリジナルはRed Bird時代の曲でサウンドが薄かったため、ここではエコーたっぷりにまるで山下達郎の『Big Wave』でカバーしたかのような充実したアレンジで、オリジナルより聴かせてくれる。「Before My Summer Ends」は英語詞のオリジナルで、バラードかと思いきやアップテンポに展開するポップ・ナンバー。そのあとはまた私の大好きな曲のカバー「By The Time I Get To Phoenix」だ。ジミー・ウェッブ作のこの曲はグレン・キャンベルが歌ってグラミー賞を獲得し、スタンドードになった名曲中の名曲。この曲は邦題に「恋はフェニックス」というとんでもないタイトルが付いたので、「恋は不死鳥」なんて思っている人が多いようだが、歌詞を読んでみると、恋人を置いて別れた男が、フェニックス、アルバカーキ、オクラホマへと帰っていくストーリーだ。実に味わい深い歌詞、そこに素晴らしいグレン・キャンベルの歌声で心にしみわたる名曲になった。ちなみにジミー・ウェッブの出身地はオクラホマで、グレン・キャンベルが音楽活動を始めたのがアルバカーキ。この曲はさすがに原曲の雰囲気を壊すとぶち壊しになるので、オリジナルにかなりそったアレンジで歌われる。ジミー・ウェッブはデビュー初期に才能を使い果たした感もあるほどこのデビュー期のワークスは凄かった。前作では同コンビの名曲「Wichita Lineman」をカバーしており、やっぱりやってくれたなというところ。最後はオリジナルの「His Silhouette」。一瞬ライブかと思うような拍手がインサートされたア・カペラから始まり、ミディアム・テンポに変わって、穏やかで優しいメロディのクロージングナンバーになる。この曲も英語詞。これだけオリジナル、カバーともに充実した日本のポップ・グループは他にはない。オススメである。(VANDA/佐野邦彦)
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