2015年12月25日金曜日

☆Beach Boys:『Fillmore East, New York, June 27th, 1971』(Download Only)

日本のamazonDoxy Collectionよりmp3販売された4枚のビーチ・ボーイズのライブ・アルバムがある。値段は1000円と安いが、音質は既にリリースされたブートレグそのもののレベルであり、若干怪しげだが、順に紹介しよう。1967年のモンタレー・ポップ・フェティバルの不参加により、前年には最先端を行っていたビーチ・ボーイズはジミ・ヘンドリックスに「サーフ・ミュージックが終わった」と揶揄され、『Smile』の失敗と重なって一気に時代遅れのバンドというレッテルを貼られてしまった。その後内容のいいアルバムを作ってもヒットせずブライアンは隠遁する。その中この1971年にリリースされた『Surf's Up』は久々に全米29位と好成績だった。ライブではホーン・セクションを導入し、厚みを増したパワフルなライブはまた人気となっていた。その中、グレイトフル・デッドなど数多くの大物ロック・バンドのライブが行われた事で知られたフィルモア・イーストでのライブは、お客もマンハッタンで最もヒップな人達が集まっていただろう。その観客の期待を裏切らない出来なのが冒頭の「Heroes And Villains」で、ホーンを大きくフィーチャ―した主旋律部分、ブレイクの時のア・カペラと切り替えが見事。「Do It Again」も良さそうなのだがリード・ヴォーカルがよく聴こえない。その点「Cottonfields」はアルのヴォーカルが力強く、コーラスのバランスと合わせてベストの1曲。変えよう」という意欲は次の「Help Me Rhonda」からも強く感じられ、あのリフを使わずコードで演奏、非常にパワフルにチェンジした。いい出来だ。「Wouldn't It Be Nice」はミキシングもあるがホーンが強すぎ、サビのリード・ヴォーカルがよく聴こえず、ハーモニーが少々雑だ。次は非常に珍しいブルース・ジョンストンのピアノ弾き語りのエルトン・ジョンのカバーの「Your Song」だ。「Disney Girls」「Tears In The Morning」「Deirdre」と超名曲を次々生んでいたブルースは自信満々で、後半のバンドが加わっても目一杯のヴォーカルでこの曲を歌い上げていた。この頃、ビーチ・ボーイズをリアル・タイムで追いかけていた自分にとってメンバーで一番の期待の星はブルース・ジョンストンであり、当時はブライアン以上だった。ただ翌年にはイクイノックスのプロジェクトのためにグループをしばらく去ってしまうのだが...。その後はマイクが何とかグループをヒップな存在にしたいと仕組んだ「Student Demonstration Time」で、元はご存じ「Riot In Cell Block No. 9」、まあ底が浅いのでさして盛り上がっていない。「Good Vibrations」はリード・ヴォーカルが小さいのが難だが、盛り上げを狙っていない繊細なカバーでなかなか良い。「California Girls」が出来はいいのは伝わるがいかんせんリード・ヴォーカルがほとんど聴こえない悲しいミックス。次の「I Get Around」もだ。演奏はかなり盛りあがっているのにリード・ヴォーカルがほぼなし。そしてその惜しさの頂点が「It's About Time」だ。このハードなナンバーのライブは最も聴きたいのにこれじゃインスト。この他のダウンロード・アルバムの中でも、本盤が音質は一番いいので惜し過ぎる。でもこのミキシングじゃリリースできなかったはずだ。(佐野邦彦)
Fillmore East, New York, June 27th, 1971 (Doxy Collection, Remastered, Live on Fm Broadcasting)

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