さて皆さんのところにも『The Beatles 1+(Deluxe Edition)』が届いただろう。今年のNo.1リイシューはこれで決まった。文句なしだ。レア度?映像はほとんど見たものばかり、ビートルズ・フリークならそれは常識だ。だから初めて見た、という人のためにはレビューしない。初めてこの手のPVを見たのはもちろんブートレグだが、市販品ではなく25年くらい前の事だった。いやーもう興奮した。あまりにカッコ良すぎ、写真の中にしか存在しないと思っていた動く映像に感激して思いを共有しようと友人・知人にコピーしまくったもの。その中にブルーハーツのマーシーもいたのだが、マーシーからも電撃で連絡があり、「こいつはスゲー、どこにあったの?」と同じ興奮を抑えられない。そう、ビートルズ・ファンならこのPV集を初めて見た時は、自分の中には留めておけないほどの爆発的な力あった。そんなインパクトの映像は他ではビーチ・ボーイズの『An American Band』、フーの『The Kids Are Alright』くらいだ。その中もやはりNo.1だ。さて、このBlu-ray(DVD版などは買わないよね?映像の質が違う)は当然、Blu-ray2枚組のデラックス・エディションを買っただろう。間違っても1枚ものではないよね。万が一1枚ものだったら大変だ。あのヴァージョン違いの『Revolution』も、『Strawberry Fields Forever』も、サングラス姿の「Paperback Writer」も、「Rain」もその他の数多くの別ヴァージョンもみな見られないのだから。だからこのBlu-rayはDeluxe Editionが基本フォーマット、既にこれらの映像を見たことがある人を対象に紹介したい。初めて見た時に感激した映像順で、それも楽器を持って口パクでも歌に当てているものが上位に来る。その前に、もうどこでも書かれているが、これらの映像がみな最新のリストアで、特にカラーは信じらないクオリティになり、少しも古さを感じさせないレベルになっているので、驚きの連続だったことを初めに書いておく。「げっSGT.Peppersの服を着て歌ってるじゃん!」と狂喜乱舞した「Hello Goodbye」は、ちゃんと3Version入った。『Anthology』など、あの私服のとか、おふざけVersionとかを、つないで編集してしまったものが多く、きちんと3Version、フルで見られるのは嬉しい。もちろんベストは制服Versionで、華麗なリンゴのドラミング(当てだが)が楽しめる。「Revolution」は『Anthology』では音がシングル盤のものに差し替えられ怒り狂ったものだが、今回はシングルよりはるかにカッコいい、この当時では稀有な別ヴァージョン、ポールしか出せない超ハイトーンのDon't you know it's gonna beのカウンターで入るシャウトは本当に最高だ。「Paperback Writer」はエド・サリバン・ショーで流した、演奏をきちんと当てているカラーのサングラスVersion(初オフィシャル化)と、チズウィック・ハウスの庭Versionの両方、「Rain」はゴチャマゼ版だったが、チズウィック庭Versionと、モノクロながらちゃんと演奏を当てているアビイ・ロード・スタジオ・ヴァージョンも両方が入った。でも「Paperback Writer」の別演奏のアビイ・ロードでのモノクロと、「Rain」のエド・サリバン・ショーでの別演奏のカラーは落ちてしまった。中途半端なのが残念。(この2曲は演奏しているシーンが違うだけで音はみなレコード)「Hey Jude」はもちろんデヴィッド・フロスト・ショウのポールの生歌Version映像だが、ちゃんと一番最初のデヴィッド・フロスト・ショウのテーマをメンバーが適当に弾くところやポールの歌い出しまでに時間がかかる部分もノーカットで、これも素晴らしい。シングル盤の音を当てた別Versionも作られていたが...。完全版は初めてだ。「Hey Bulldog」は「Lady Madonna」で先に当てられたPVだが、1999年のレストア版映画『Yellow Submarine』のために元の「Hey Bulldog」を当てたので口がピタリと合うので感激したことを思い出す。どちらも収録された。「Get Back」「Let It Be」「The Long And Winding Road」と「Don't Let Me Down」は映画『Let It Be』のAppleの屋上で演奏されたライブだが、「Don't Let Me Down」は音が『Let It Be...Naked』のものに差し替えられていた。確認していないが、あのルーフトップのコンサートは、「ビルの谷間で聴こえた」感を出すため過剰なエコーをしばしばかけていたので、それを外したのだろう。この『Let It Be』の映画だが、大昔に私が石丸電気で買った輸入盤のレーザーディスクを最後に公式版は未だに出ていない。そのレーザーディスクもアラン・クレインのAbkcoの許可を取っていないということですぐに廃盤にされ、いったいいつになったらAbkcoはソフト化の許諾を出すのか、謎のままだ。「Get Back」は『Let It Be...Naked』のために作られたスタジオ風景のVersionがあり、後半はスタジオで、みんなで円になって録音、音は『Let It Be...Naked』のものでも口が合っているので、これは見ものだ。紹介が遅くなったが、既に公開されている「All You Need Is Love」は演奏シーン付なので大好きなPVだが画質が最高。また「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」は演奏無しのPVだが、今までは完全版はソフト化されなかった上に画質が最高でビックリ。「Strawberry Fields Forever」のPVの最後の方でピアノにかける液体の色まで分かるとは...。これからは遡る。「We Can Work It Out」は黒タートルネックと、短いスタンド・カラーのネルー・ジャケット(というのだそうだ。制服みたい)の2Versionがフルで入る。後者はジョンがキーボードに足を乗せるおふざけVersion。「Day Tripper」も黒タートルネックはちゃんと当てぶりをするが、ネルー・ジャケットはリンゴとジョージはセットの窓から顔を出すだけのおふざけVersion。さらにもうひとつグラナダTVのスペシャル番組「The Music Of Lennon & McCartney」でネクタイを締めた口パクヴァージョンが入る。このショウでは「We Can Work It Out」も演奏されたのだが、なぜかそちらはカットされた。ここは実に中途半端で残念。「Help」は4人が一直線に並んで腰掛けリンゴが傘だけ持っているPV、「Ticket To Ride」は頭に日本語が出てきて驚かされた3人が椅子に座って歌うPV(完全版は初めて)、「I Feel Fine」はリンゴがなぜかエアロバイクみたいなものを漕ぐ(いつもリンゴはドラムセットを省略され可哀想)PV。みな有名な映像でかつ、まともに演奏もしないので内容は?だが、オフィシャルでソフト化されたのは初なので価値がある。そして初めて見たのが「I Feel Fine」のPVでメンバーが何やら床に置いた食べ物をガツガツ食べているもの。食べていたのはフィッシュ&チップスだそうだが、この映像を見たブライアン・エプスタインは「ビートルズのイメージダウンになる」とその場で封印したのだとか。確かにこれはイメージが悪い。ブライアン・エプスタインはさすがに賢明だった。残念なのは「Yesterday」と「Please Please Me」がエド・サリヴァン・ショウの映像そのものだったこと。既に完全版がリリースされているから、他のソフト化されていないライブから選んで欲しかった...。「A Hard Day's Night」は1965年のフランス公演からでこれのソフト化は初。ポールが風邪気味なのか声がいまいち出ないので、サビを崩して歌うのがちょっと嫌だが、こういうフランス公演や、ドイツ公演、オランダ公演、オーストラリア公演などブートレグでバンバン出回っているのだから、1曲とは言わず丸ごとソフト化して欲しい。(オランダはドラムが代役のジミー・二コルだから無理か...)「Can't Buy Me Love」は『Ready Steady Go!』の特番『Around The Beatles』からのものだが、この当時のカメラの変な常識で、「リード・シンガーだけにカメラを当てる」というカメラワークのため、勘違いして真のリード・シンガーのポールにカメラがほとんどこないというおかしなものになっている。他の『Ready Steady Go!』出演での同曲は口パクながらポール中心のカメラワークで納得だったが...。この『Ready Staedy Go!』のシリーズはみなレーザーディスクになって日本でも発売されたのに、DVD時代以降は一部を除いてオクラ入り。もったいない。「She Loves You」は1963年のスウェーデンのTV番組「ドロップ・イン」のリアル・ライブで、『Anthology』では同番組の「I Saw Her Standing There」と「Long Tall Sally」が入ったので残るのは「Twist And Shout」になる。ここでの演奏は充実しているのだが、客がともかく冷静というか通常だと女の子たちは絶叫していうのにみんな足を組んでゆっくりと手を叩き、隣同士で話をするなど、まあ信じられない観客の、特に女の子の態度。「お前らビートルズの生演奏だぞ!一秒でも目をそらすな!」と画面に向かってどなりたくなるほど(笑)その唯一漏れた「Twist And Shout」はこの映像ではなく、63年に北ウェールズで録画され「シーン・アット6:30」で放送されたよく見る映像。ただしいつもさわりだけなので、完全版は初めてのソフト化だ。「From Me To You」は1963年のロイヤル・ヴァラエティ・ショウのリアル・ライブ、「Love Me Do」は1962年の「マージー・ビート」での口パクライブ、あと1963年に「レイト・シーン・エクストラ」で放送されたジョンとジョージがアコギという完全口パクの「I Want To Hold Your Hand」PVは『Anthology』にも収録されたもの。編集ものでは「Eight Days A Week」はシェア・スタジアム・ライブのオフ・ショットなど中心に構成した映像。「Baby It's You」と「Words Of Love」はBBCパリス・シアター前の珍しいメンバーのおどける姿などを8ミリで録画したものを中心に構成したもので、音源もBBCだ。他オフ・ショット映像で構成したものでは「The Ballad Of John & Yoko」の完全版は初、メンバー4人の奥さんと一緒の4組の2ショットで構成した「Something」は冒頭にナレーションが被っていたので完全版はこれも初。ミック・ジャガー、キース・リチャード、マイク・ネスミス、ドノヴァンも登場したサイケデリックな「A Day In The Life」の映像も完全版は初だ。そういえば最新のインタビューでキースが「ビートルズのSGT.Pepperはクソだった」と言っていたが、それはキース独特のアイロニーで、「SGT.Peppersを真似たストーンズのSatanic Majestiesがクソ」だった訳で、それまでの「Yesterday」のあとの「As Tears Go By」、『Revolver』の後の『Between The Buttons』、「All You Need Is Love」のあとの「We Love You」とビートルズを追いかけていた一時期のストーンズは哀れなもので、全て二番煎じで終わっていた。このあとストーンズはビートルズを追うのを止め、ストーンズのルーツに戻って『Beggar's Banquet』、そして「Jumpin' Jack Flash」という超傑作を出しビートルズ色を払拭、ほどなくビートルズは解散し、その後ストーンズは世界最高のロック・バンドとして45年も君臨するキングになったのだから、ストーンズは何をすべきかということを教えてくれたアルバムだったのだ。その他、ジョンの死後、ジョンのデモにポール、ジョージ、リンゴがコーラスと演奏を付けて「ビートルズ」を蘇らせた「Free As A Bird」「Real Love」のメイキングPVはやはり『Anthology』にも入っていた。「Yellow Submarine」と「Eleanor Rigby」はアニメの『Yellow Submarine』から構成、「Come Together」「Within You Without You/Tomorrow Never Knows」は2000年以降に作られたPVだった。それぞれのBlu-rayにはポールとリンゴのコメントが入っているが、なかなか面白いのでこれも飛ばさず見て欲しい。CDはBlu-rayのDisc1で、2000年にリリースされた3200万枚も売りあげた『The Beatles 1』である。(佐野邦彦)
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