昨日退院したのでお約束通りワーナーのコンピ3枚の紹介。まず23曲収録の『She Rides With Me-Warner Surfin' & Hot Rod Nuggets』の目玉はなんといってもブルース・ジョンストンはビーチ・ボーイズ加入前の1965年にリリースしたSidewalk Surfers名義のシングル「Skate Board/Fun Last Summer」が両面とも収められたことだ。どちらもブルースが書いた曲で特に流麗なA面のメロディとハーモニーを聴くと、ブルースがビーチ・ボーイズに引っ張られた理由がはっきりと分かる。B面も明るくポップな佳曲。1993年に日本のM&Mの『Bruce & Terry Rare Masters』に収録されていたのみでマスター(でしょう)からは初。そしてタイトルになったブライアン・ウィルソンが作曲・プロデュースを担当したPaul Petersenの1964年のシングル「She Rides With Me」は、かつてPaul Petersenのベスト盤CDに収録されていたが、長く廃盤だったので持っていない人はマスト・バイ。曲としては『Little Deuce Coupe』収録曲を彷彿させるようなちょっとタフな曲で、バックヴォーカルにエフェクトがかけられていた。しかしここで要注意。このワーナーのテイクはミックスが違うので印象が若干華やかながら、6秒早くフェイドアウトしてしまう。エンディングのハンドクラップのあとの低いヴォーカルも小さくミックスされていたので、Paul Petersenのベスト盤CDを処分してはいけない。
ブライアンの作詞・作曲ではCastellsの名曲「I Do」も入っているが、先に書いたようにCastellsのコンプリート作品集や、直近で紹介したコンピ『Here Today』にも入ったので今はレア度がない。ただし出来は一番いい。その他では他のコンピには入ったことはあるがバリー・マン自作自演の1963年シングル「Johnny Surfboard」も入っていた。バリー・マンがオールディーズから脱却しつつある時期の曲なので、まだ甘酸っぱさの残る曲だ。A面の「Graduation Time」はコンピの内容に合わないという理由で収録されなかった。その他ではサンディ・リンツァー&ダニー・ランデル作、ボブ・クルー・プロデュ-ス、チャーリー・カレロのアレンジというフォー・シーズンズ・チームのBeach Girlsの「Skiing In The Snow」はさすが安定してできたが、この手はワーナーの他のコンピのものも『The Dyno Voice Story 1965-1968』に収録済みでお馴染みだろう。ゲイリー・アッシャー関係も内容がいいものが多いがその他のコンピに収録済み。でもインストあり、初CD化ありでよく考えられた選曲だ。バリー・マン作は他にMatadorsのシングル「I've Gotta Drive」が収められたが、内容的にはその前にリリースされたゲイリー・ゼクリー作の「Ace Of Hearts」のシングルの方がいい曲だったが、歌詞の内容が違うか...。特筆すべきはこのコンピシリーズの素晴らしいのは、①コンポーザー②プロデューサー③アレンジャー④レコード番号が全て明記してあること。海外のCDにはこの情報が書けているものが多いので、これはさすが。アーティストを知らなくても①②③の情報でおおこれはって聴いてしまう。60年代は優秀なスタッフが山ほどいるので注目点満載となる。あとはVol.1からVol.5まで5枚同時に出たガール・グループ集があり、そこにもスタッフ的に興味芯々な曲が多いが、「ガール・グループ」は得意ジャンルではなく出版社から「ガール・グループで1冊お願いできませんか」と頼まれた時は即座に断ったほど。だから気になる曲以外、一切触れないのでご勘弁願いたい。中途半端な知識で書くのは嫌なので。『What A Guy-Warner Girl Group Nuggets Vol.3』にはテディ・ランダッツォの作曲・プロデュース1曲、プロデュース1曲が入った。元々はシンガーだが後に作曲家兼プロデューサーに転身、特に1964年から1967年の楽曲は、ためてためて一気に弓を放つようなドラマティックなプロデュースと、転調に次ぐ転調の見事なメロディラインは最高で、このFBでも少し前にこの時代の作品リストをまとめて掲載させてもらった。どれだけテディ・ランダッツォが評価されているかというと、山下達郎先生が、バリー・マンと並んでテディ・ランダッツォのワークスも集めている...と聞けばよく分かるだろう。しかし残念なのはその多くがCD化されていないことで、今回収録されたAnnabelle Foxの「Lonely Girl」はかつて『Girls Will Be Girls Vol.1』というコンピに収録されていたもの聴けなくなっていたので持っていない人は購入しよう。Royalettesのセカンドアルバムに入っていたので曲がご存じの方も多いと思うが、ヴォーカルがより力強いので出来はこちらの方がいい。残念なのはこのシングルはSatinというレーベルから101の番号でリリースされたものだが、100の方は同じくテディ・ランダッツォの作曲・プロデュース、さらに同じくRoyalettesのセカンドに入っていた「Getting Through To Me」で、こちらの曲はRoyalettesにテディが提供した曲の中でもベストのドラマティックな曲だったので、こちらも是非入れて欲しかった...。その他ではプロデュースだけ担当したOrchidsの「Love Is What You Make It」があるが、テディらしさは感じられない。もう1枚は『Hanky Panky-Warner Girl Group Nuggets Vol.2』で、この中のHale & The Hushabyesの「Yes Sir, That's My Baby」は貴重。ジャック・ニッチェがプロデュース、リード・ヴォーカルはダーレン・ラブの妹のエドナ・ライト。バック・コーラスにはブライアン・ウィルソン、ジャッキー・デシャノン、ソニー&シェール、ダーレン・ラブが参加したという超豪華版だ。興味深い事はこのシングルは1964年にApogee盤の直後にReprise盤が出て、1967年にはThe Date With Soulにクレジットを変えてYork盤と、3つのヴァージョンがある。Apogee盤はReprise盤よりエコーが多め、York盤はさらにエコーが薄くひとつひとつのヴォーカルが聴きやすくなっている。さてではこのコンピに入っているのは何のヴァージョンか?クレジットではReprise盤となっているが、これはYork盤。というのはフェイドアウトが10秒短い。長いRepriseヴァージョンは、かつて1993年にM&Mからリリースされていた『Brian Wilson Still I Dream Of You』で聴くことができきる。この盤にはフォー・シーズンズ・ファンにはマスト・バイ・アイテムが。それはDiane Renayのセカンド・シングルB面の「Tender」で、曲とプロデュースはボブ・クルー、アレンジはチャーリー・カレロ、語りを交えたバラード曲で世界初CD化である。なおこのシリーズ全6枚のデザインは、VANDAのデザインを担当していただいているデニー奥山さんだ。(佐野邦彦)
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