2015年7月6日月曜日

祝!軍艦島世界遺産登録!でも一番見たいのは5300人の住民がさんざめく端島の映像。どの番組で見れるのか、一挙まとめ

ようやく軍艦島(端島)を含む明治産業遺産がユネスコで世界文化遺産登録された。例によって面倒なお隣さんが大変だったが、はるか昔から軍艦島を世界遺産にとがんばっておられた元島民の「軍艦島を世界遺産にする会」の会長である坂本道徳さんも満願叶ってさぞやお喜びの事だろう。お会いしたことはないが、この会を作った時は「何を夢物語を...」という雰囲気で役所も相手にしてくれなかった。ブームに乗っかるのではなく、一から活動していったこういう人達が一番偉い。さて、軍艦島のDVDはこの前2枚ベストのものを紹介したがそのポイントは、廃墟の軍艦島ではなく、南北480m、東西160mの小島に5267人もの人が住んでいた「端島」時代の映像が見られること。私は廃墟は好きだが、廃墟になる前の人がさんざめく時代の映像を見るのが一番好き。ということで過去のフィルムが見られる2枚のDVDと、最近テレビで放送された特番について、「端島時代の映像」のみ視点を絞ってまとめてみよう。


    HASHIMA軍艦島2010』(NBC長崎放送)DVD


商店街で買い物をする主婦たちは②と同じ、閉山の看板を外すところと島を去る人達でまずプロローグ。その後は炭坑内に入る炭坑夫達、トロッコ、排出される水の中での作業、コンベアで運ばれる土とパワーショベル(パワーショベルは②と同じ)、石炭巻き上げのタワー、貯炭場の山、石炭を運ぶトロッコ、石炭を運ぶ船...とこれだけ「炭坑・端島」を映した映像は他にはない。台風の大波、閉山近くなのか少人数で授業を受ける児童、公民館でカルタをする子供達(モノクロ)、映画館で溢れるばかりの児童とバンド演奏と司会、これもモノクロだが草野球をやっている子供達で女の子が打ったボールが建物のガラスを割ってしまいみんなで割れてしまったガラスを覗いているフィルムは一番の傑作シーン。地獄段を駆け上がる中学生くらいの男子達、列を作って土の入ったバケツを持って日給社宅の屋上まで行きその土で屋上農園を作る子供達、モノクロで4人の子供がテレビを見入っているシーンはきっと隣近所でみんな出入り自由だったという端島のアトホームな環境からいって近所の子供も一緒に見ているのだろう。神輿をかつぐ男達、運動会で綱引きに必死になるお父さん達、入荷したキャベツに群がる主婦たち、バナナのたたき売りのおじさん、そして今では決して考えられない(ここは絶海の孤島、水深も半端ない)順番になって海へ高飛び込みしていく男子達...。島に暮らし炭坑で働いた加地英夫氏の説明と共に、ともかく貴重フィルムのオンパレード。長巻のシーンも多く、最も充実した昔の端島が味わえる。建物については軍艦島の建物をずっと研究している東京電機大学の阿久利喜孝先生が解説してくれる。

    『軍艦島オデッセイ』(O ProjectDVD

最近CSでも放送しているのでご覧になった方も多いのでは。O Projectも坂本さんと並ぶくらい昔から軍艦島にスポットを当てていた先駆者だ。端島小学校から出てくる児童と校庭で子供、端島病院の模様、65号棟の滑り台で遊ぶ子供、屋上で側転をする女子、アイスを買って食べながら歩く男子、地獄段を上るたくさんの児童達、商店街で買い物をする主婦たち(ここのみモノクロ)、端島神社にお参りする模様と海を眺める女子、在りし日の端島神社の全景と真っ白な幹部住宅、安全第一の看板の前を歩く女性達と映画館の値段(大人100円、こども50円)、、炭鉱の巻き上げ機やパワーショベル、閉山で島を去っていく人達が写る。バラエティに富んでいるが、回想シーンとしてのインサートなのでそれぞれ短く編集されているのがちょっと残念。モノローグで綴られる。

    「タイムトリップ軍艦島」(フジテレビOne

最新の映像で坂本道徳氏がナビゲーター。船着き場から大勢下船する住民達、商店、通路で野球をする少年達、病院の待合?、島を巡回する警察官、魚屋さんを中心とした屋根のある商店街、青空市場で野菜を買う主婦達(青空市場のカラーは初)、ベランダから見おろす子供達、65棟の下の児童公園で回転する遊具に乗る子供達やブランコで遊ぶ子供達、パチンコ屋の男達、井戸端会議の主婦たち、自転車を置いて話す男子達、通路で固まって話す女子、チュパチャプスのような飴を舐めながら集まる女の子と男の子...さらに65号棟の児童公園の別の遊具で遊ぶ男の子、地獄段を降りる少女達、カメラに群がる小学校の男女と初めてみるカラー映像がずらりと披露された。さらに長崎で国体が行われた時に皇太子殿下・美智子妃殿下(もちろん現天皇・皇后)が船の上から端島に近づいて手を振る貴重映像も。これは記録映像なのでモノクロ。最後は閉山式の模様と引っ越しの模様、島を去っていく模様でこれも他とは被らない。

    「空から見た地球 軍艦島」(テレビ朝日)

ここでの映像は記録映像らしくモノクロだが高画質。俯瞰で撮った主婦でにぎわう商店街、ブランコをする児童、バトミントンに興じるOL、バレーのレシーブの練習をする授業風景がまず目を引く。炭坑へ降りていく坑員のあとは通りを颯爽と歩く女子中学生達、パーマを当てる女性達もこれのみの映像。他に俯瞰で撮った端島の景色、商店街での物売りのおばさん、洗濯物も取り込む主婦もめずらしい。地獄段を降りる主婦のあとは地獄段を手をつないで登る女の子と男の子達...自宅でタバコを吸いながらテレビを見るお父さんの前で本を読む子供達、お母さんは編み機で何かを編んでいる。そして当時は高価だったステレオが一番目立つ位置に。いかに軍艦島の生活が豊かだったか分かる。ナビゲーターは石原良純氏で、坂本道徳氏と一緒に回る。

    「探検バクモン伝説の廃墟軍艦島」(NHK

爆笑問題の番組だが、ここでも元島民の加地英夫氏がナビゲーターで登場する。登場するフィルムはモノクロ。堅坑から真っ黒で出てきた坑夫と、みんなで入るお風呂(上がり湯以外海水)の模様、ねんねこで子供をおぶった奥さんと子供、お父さんにお茶を出す奥さん、屋上で遊ぶ子供、そしてハイライトは話には聞いた台風の時に高層ビルを超えて滝のように降ってくるという海水の塊を避けながら走って行く島民のシーンだった。

 その他では「ワンダーJAPAN TV軍艦島」(BSスカパー)は軍艦島を追っている映像ユニットO Projectの代表の黒沢永紀氏が、産業遺産ナビゲーターの前畑洋平氏と「廃墟」の軍艦島を追った映像。最後に坂本道徳氏も出演するが、当時の映像無し。「鳥の目から見た軍艦島」(BS Asahi)は東大教授のロバート・キャンベル氏を招いて一級建築士の中村享一氏が集めた膨大なデータによるCGと、ドローン映像を駆使して作った「廃墟」軍艦島映像。ただドローンはどの局もみな使っているので「鳥の目」とうたうほどの差別化はない。同じテレビ朝日系ということで「空から見た軍艦島」の映像が少しだけ入る。この内③の「タイムトリップ軍艦島」はCSのフジテレビOneで放送されたばかりで、リピートはすぐあるはず。②はCSのヒストリーチャンネルで放送あり。もちろんDVDでも買えるけど。(佐野邦彦)



 
 

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