真島昌利とヒックスヴィルの真城めぐみがユニットを組んだ「ましまろ」(同じくヒックスヴィルの中森も参加)のマキシ・シングル『ガランとしてる』がリリースされた。ネットのチェックが甘い私はマーシーの新しいシングルだ!と相当前に予約していたがユニット名の意味が分かっていなかったのでこれで納得。何しろ私にとって日本のアーティストで最大のインパクトがあったのはブルーハーツだった。はじめて聴いて人生が変わると思った。同じブルーハーツファンのしりあがり寿さんが、まだキリンビールの社員でもあった頃の話だが、しりあがりさんも初めて聴いた時に人生が変わったと思って、その後の営業はとても強気に望めた(笑)なんて言っていたことを思いだす。ブルーハーツ時代も好きだが、ハイロウズ時代も大好きな曲が多い。これはヒロトの曲だが「14才」なんていつも聴くと涙ぐんでしまう。これって俺だ!なんで分かるんだっね。ヒロトは超名曲を残すが、マーシーも負けていないどころが、平均的にはマーシーの曲の方が好き。詩人であり、ロマンティストであり、そして怒りを持つロックンローラー。ロックでもフォークでもこの3つのどこかに特化してしまうミュージシャンが多いが、マーシーはその全てにバランスが良く、そしてメロディ・メーカーでもある所が凄い。そしてだ。マーシーの私にとって個人的に最大の魅力は、安っぽい表現に聞こえてしまうかもしまうが「少年の心」を持ち続けていることだ。それは小学生から高校生までの楽しさや、やるせなさや、心のときめきや、折れそうな気持ちを持ち続けていて歌にしてくれる。しかしそれはブルーハーツやハイロウズ、クロマニヨンズでは一部しか出せない。例えばブルーハーツでは「青空」や「Train-Train」「1000のバイオリン」などの普遍的な名曲もいいし、先駆的な「チェルノブイリ」を作り「イメージ」でロッカー的な視線も素敵だ。でも「ホームラン」を聴くと、身も心も解放されて、あの楽しかった、幻想の子供時代に一瞬トリップできる。小学生の頃には河川敷などなく、高校の頃神宮外苑でテニスボールの草野球をやっただけで実際はまったく違うのだが、そのイメージは目に浮かぶのだ。メロディもサウンドも爽やかで、個人的には超名曲のひとつ。ハイロウズでもマーシーのこういう曲はあるが、やはり、その内面をさらけだすのは、ソロ活動になる。マーシーは最初のソロを出したのは3枚目の『Train-Train』でグループが頂点を迎えた感がある翌年の1889年に『夏のぬけがら』を出し、サウンド的には頂点と思える『Bust Waste Hip』の翌年にセカンドの『Happy Songs』をリリースする。『夏のぬけがら』ではハードなサウンドの曲は少なく、メランコリックな少年時代のマーシーの歌が心を打った。吐き出すようなマーシーの声は、アコースティック・ギターにピッタリ合う。その中でも軽快な「カローラにのって」が好きで、実際に自分の車で日野橋を渡ってみた。「花小金井ブレイクダウン」にも引かれて花小金井にも行ってみた。それほどマーシーが好きだった。『Happy Songs』では、スペクター・サウンドやボサノヴァを取り入れたポップな曲が多くなり、聴きやすいアルバムになった。実はこの2枚は、マーシーがブルーハーツ加入前に在籍していたブレイカーズ時代での旧友である篠原太郎さんと一緒に録ったデモから作らており、当時B-Jacks(後のBrick's Tone)というバンドを作っていた篠原さんにみんな聴かせてもらった。そのまま使われなかった曲もあるが、大半はそのまま、ほとんど同じようなアレンジでアルバムに入った。そしてこの1991年にマーシーは伝説のソロ・コンサートを行う。日清パワーステーションで行われ、私も見に行ったが、バックには先の元ブレイカーズの篠原太郎さんだけでなく、ドラムの大槻敏彦さんも入り、旧友を大事にするマーシーの人柄も感じられ素晴らしいコンサートだった。今でもこのコンサートはDVD『Live Another Summer』で購入できる。その後は1992年の3枚目のソロ『Raw Life』は全2作とは一転、ロックンローラーのマーシー全開で、「俺は政治家」などメチャクチャカッコいいロックナンバーが並ぶがその中にも一服つけるように陽光溢れる「ドライブしようよ」を仕込んでくれた。4枚目のソロは1994年で、もうブルーハーツがバラバラの時代。『人にはそれぞれ事情がある』が今考えると意味深なタイトルで、アルバムも今までの要素をミックスしたような内容。インストもあった。そして翌年の1995年にはブルーハーツを解散し、ヒロトと共にハイロウズをスタートさせている。そのハイロウズは10年後の2005年に解散、マーシーはソロを作らず、ヒロトはその頃ヴォーカリストとして色々ゲスト参加していたがソロには至らず翌2006年に三度、ヒロトとマーシーでクロマニヨンズをスタートさせた。歌詞の意味をギリギリまで削いだクロマニヨンズ、新しい試みでアルバム8枚を昨年までリリース。今年は3月までツアーを行い、そして久々のマーシーのソロ活動?となった。このましまろはライブを9月から10月に行い、秋にアルバムもリリースされる。ただ、?マークを入れたのは、曲のリード・ヴォーカルは基本的に真城であり、マーシーは一節をソロで歌ったり、ハーモニーを入れるだけ。4曲の内3曲がマーシーの作詞・作曲で、1曲はバディ・ホリーの「ハート・ビート」にマーシーがまったく違う?日本語詞を付けたものなので、音楽的中心は明らかにマーシー。サウンド的には、アコースティック色が強いサウンドで、曲もメロディアスで、歌詞は詩的だが、ノスタルジックな想いを織り込んでいてマーシーの初期のソロを思い起こさせる。ただ血を吐くようなマーシーのヴォーカルではないので、爽やか度が強い。「公園」なんてまさに夏、飛行船、クワガタ、ギターとマーシーの世界で、マーシーのソロ部分が出てくるとそこが楽しみになってしまう。「しおからとんぼ」は嬉しいマーシーのソロから始まり後半、真城へ移る。このフォーキーで爽やかなサウンドは、セカンド・ソロの「休日の夢」と共通したもの。マーシーは再び、ソロでバンドではできないサウンドと、詩の表現をしたくなったようだ。レーベルはソニー内のariolaで変化なく、公認のソロ活動と言えるだろう。2014年にはTBS日曜劇場『ごめんね青春!』のサウンドトラック盤でマーシーは9曲のインストを提供しているが、曲は全てマーシーで、ギターがマーシー、ベースが小林、ドラムが桐田なのでまさにヒロト抜きのクロマニヨンズ。リズム隊との関係もいいようだ。ただ来年でクロマニヨンズも10年。ブルーハーツ、ハイロウズと10年ごとに解散して、リフレッシュしてきたが、どうなるんだろう。もし新しいバンドになったとしてもヒロトとマーシーは離れない。これほどお互いをリスペクトして、必要としているコンビはちょっと他にはない。ミックとキースだって険悪な時期があったのに、この二人にはない。しばらくましまろでリフレッシュして、アルバムでマーシーの穏やかで詩的な一面を味あわせて欲しい。(佐野邦彦)
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