2015年3月25日水曜日

★鳴門・四万十ツアー2015

鳴門・四万十ツアー2015


佐野邦彦




さて四国である。関西圏の方には馴染み深い観光地だと思うが、関東圏の私にとっては遠い場所だった。まず距離が近くではない。車で行くには時間がかかり過ぎる。じゃあ公共交通機関を使うなら飛行機...となると、より遠くの沖縄か北海道への端へ行ってしまう。
沖縄離島へ15回、北海道へ5回と行き尽くしたか感が出てきたら次は九州に引かれ通い始めた。その中、おや、日本列島で、四国にまだ行っていないことに気付いた。病気になって2年半、障害者にもなったが、先月、以前まったく諦めていた旅行に行くことができた。(「★第7回 宮古諸島ツアー2015」)障害者になってみて分かったが、特に飛行機ではもう至れり尽くせりのサービスをしてくれる。行ってみて初めて分かることがある。
ただ旅行は12日のスケジュールしかない。理由は2匹のネコ。土日は子供達が土日休の職場なのでまかせて出かけられる。平日は無理。そしてネコはイヌと違って環境の変化が嫌いなので、今まで一度もペットホテルに預けたことがない。かつては34日の旅行の間、近くに住む母に毎日餌やりに来てもらったので安心して出かけられたのだが、母も歳で足が弱ってもう来てもらえない。そのため「どこへ行くのも土日の12日」、この条件しかない。
そして私は4週間のうち3泊4日の入院治療が必ずあり、その週は仕事を病欠。残る3週は仕事に行くが、訪問診療と訪問リハビリで水曜日が病欠。そのため月の出勤は13日程度しかなく、職場の休みに行く今のパターンが丁度いいのだ。 1泊2日で四国...意外と広い。香川で本場のうどんも食べてみたいが、食べ物はいいや。瀬戸内海もパス。となるとやはり鳴門のうず潮を目の前で見るのと、清流で知られる四万十川、この2つに絞った。
後者は20年近く前、淡水魚を飼っていた時があり、「四万十産」という文字はそれだけでプラチナムで、憧れがあった。この2つに絞れば1泊2日でなんとか行けそうだ。
さっそく今回は貯まったマイルで行き帰りの飛行機を簡単に予約できた。マイレージでのタダ予約だが、沖縄方面便は熾烈で瞬時に取られてしまうのに、こういう地方空港は土日でも空いていて驚いた。
時期は土日が大潮であること。うず潮は干満の差が大きい時が見どころなので、新月か満月に近い月齢の土日を探すと3月の入院の翌週の土日がドンピシャだ。時期もいいし、飛行機、レンタカー、ホテルの予約をそれぞれネットで済ませて一安心。
そして2月の入院。2月は祭日が間に入るので、入院が月曜ではなく木曜と変則だった。そして退院日。「次の入院は3月○日でいいんですよね」と確認するといったんOKが出た後、先生が戻ってきて「間を3週空けた方がいいから一週後になるよ」...。げっ入院の週じゃないか!退院した翌日から旅行に行くんだ、大丈夫かなと少し不安になるが、一週ずらすと干満差が無くなり意味がないので、変わらず行こうと決心する。



3月21日(土)



 初日は四万十川へ行くので、高知空港へ向かう。前回も書いたが、障害者はJALの場合「スマイルサポート」というコーナーがありそこで荷物まで預かってくれるので、羽田の長蛇の手荷物を預ける列に並ぶ必要がない。羽田の場合、規模が大きいのでここで車椅子のみ預け、自分は空港内用の小さい車椅子に乗り換えて移動する。空港の手荷物検査がある入り口も長蛇の列だが、ここでも障害者は声をかけると一番端に設けてある入口へ案内してもらってそこから入ることができた。
ただし、車椅子のせいなのか背中に金属が埋め込まれているせいなのか、必ずピーピーなるのでボディチェックが大変だ。高知行は7時55分発だが、30分くらい前から優先搭乗が始まる。車椅子の連絡は入っていて、すぐにCAさん達が車椅子を押して機内まで案内してくれる。そして席。マイレージの席でもツアーの席でも「車椅子」とJALに事前に伝えておくと、出入口に近い前方の席に事前に変更してくれていて、搭乗時は真っ先に案内してくれる。フライト時間は正味70分程度、高知空港へは9時35分に到着した。降りるときは最後のお客さんが出るまでのんびり待っていると、もう車椅子が機内出口に待機してくれている。そしてアシスタントの方が(あの遠い遠い羽田空港でも)手荷物受取の場所までずっと車椅子を押して行ってくれるのだ。
機内を出る時間が遅めの事もあって、到着すると自分の車椅子がカウンターに既に置いてありすぐに自分の車椅子に乗り換えられる。なんて至れり尽くせり。歴史好きでもあり、高知と言えば坂本龍馬で縁の場所はたくさんあるのだが、ここは遠い四万十まで一気にいかないと間に合わない。
レンタカーは、翌日に徳島空港乗り捨てで一番安かったタイムズカーレンタルを使う。SAクラスで2日間のフルプロテクションも付けて15520円だから安いもの。まずは空港から近い南国インターから入り高知自動車道に入るが有料は途中の須崎東まで。その後は無料区間で四万十町中央まで行ける。驚くのは有料区間も含め大半が一車線であること。そしてトンネルの多さだ。いかに高知が山の中ということがよく分かる。交通量から行って一車線で十分なのだが、何か大事故があったら先へ進めず大変な事は多いだろう。
高速区間は90分弱で快適だが、ここから先は一般道しかない。一般道は海沿いだったり、山の中だったり、人が行き交うような集落は存在せず、さらに90分走ってようやく中村という四万十市の町中に入ることができた。なんと所要時間3時間!
しかし目指す四万十川で屋形船をやっている「四万十の碧」というところまではさらに川沿いの道に入らないといけない。このあたりはカーナビがまったく役に立たず、ガソリンスタンドで道を聞いて進んだが、どうも道を間違えたのか行ったり来たり。ようやく佐田沈下橋というトンネルから川沿いの道に入るがここが極限の狭さ!
相互通行なのに車幅は一車線、そこに採石場からのダンプも来るのだ。退避帯に車を寄せてなんとかやり過ごしながら進んでいくが、こんな崖沿いの道を行って船着き場が出てくるのか疑心暗鬼になってしまう。運転しているのは初心者マークが取れたばかりの妻だから大変だ。そうして約30分で船着き場に到着。船は崖の下なので車椅子の人は無理と車で下まで送ってもらう。



ふと見ると道路端のチケット売り場の向かいに見える崖の遥か上に「平成17年台風14号跡」と印がしてある。これは何ですか?と聞いたら、この台風で四万十川が増水した時の水面の到達点だという。こんなとこまで水位が増すんですか?じゃあこのお店も完全に水没したんじゃあ?と聞くと、にっこりとうなずく。なんと10mも水位が上がると言うから驚きだ。その訳は川面に降りてはっきりと分かる。




急こう配で狭い道を降りてもらって船着き場に付くともう14時の屋形船の出発だ。誰もいない船に二人で乗り込み、自分は床に座れないので風呂場の椅子のようなものをもらって出発を待つが、ほどなく船は「貸切」状態で出航した。
四万十川は深い緑とも藍とも言える水をとうとうと湛え、切り立った山の間をゆったりと流れている。今日のような穏やかな日は川の流れを感じない。この四万十川には3社の屋形船があるが、四万十川で特徴的な沈下橋を2か所見られるのはこの「四万十の碧」だけ、そのため一番奥にあるここまで来たのだ。
最初に橋の下を通った三里沈下橋は、真下でその作りを見ることができた。シンプルな橋脚だけの橋で、欄干など橋の上に何もない。この四万十川では増水で橋がしばしば川の中に沈んでしまうので、水の抵抗で橋が流されてしまわないようにこういう独特の橋を作ったのだそうだ。船は先にある佐田沈下橋まで行って引き返すのだが、こちらには橋の上に人が数人歩いていてその横を2台の車が走って行ったので、横幅はそこそこあるのだろう。ガードレールもなにもないので、運転にはかなりの度胸がいるようだ。
川面では菜の花の群落が心を休ませてくれる。険しい山肌には、もう山桜が満開で、春を告げている。再び三里沈下橋をくぐって戻るが、ここには車はおろか人も歩いていないので、よほど狭いのに違いない。屋形船の60分は静かで、スピードもゆったり、東京から遠く離れようやく一息付けた。行く時に川面に停めた車の車輪はすこし水に浸かっている。上流で雨が降るとしばらくしてすぐに水位が上がってくるのだそうだ。この峻険な山間では雨が降れば一気に増水するのは必然だと言うことがよく分かった。






時間を見ると既に15時。朝の5時頃から何も食べていない。ここ四万十市で何か食べていかないと...。天然ウナギとかあるが高いだけのような気がして、もっと気楽な店を...と車を走らせていると土佐くろしお鉄道沿いに「やまちゃん」(おそらく)というお好み焼き屋を発見する。海の家のような作りの庶民的な店だ。お腹が減っていたのでまず入ってお好み焼きを2つ注文。
するとお店のおばあさんは「うちのは大きいからひとつにしておきなさい」と言う。それなら一番高いものをと「デラックス」800円を注文する。作ってくださるというので、その間、おでんでも食べていてと目の前の大なべを開けると長い串にささりたっぶりと茶色になるまで煮込まれた牛スジや厚揚げ、こんにゃく、昆布などのおでんがあるので、その中から牛スジや厚揚げなど4本を二人で食べる。
おでんダネも大きくすぐに小腹が満たされた。するとお好み焼きの準備に入るが、これが大きい。自然薯のつなぎに卵、野菜、イカ、タコ等にデラックスなのでウナギまで入る。両面とも緑で見えなくなるくらいの四万十のりを惜しげもなく振りかけてくれる。船があるので自分で取ってくるから...との事だが、それにしても豪快だ。直径は30cm、厚さは3cm以上、凄いヴォリュームだ。お腹が減っていたし、美味しいので、二人でどんどん食べるが食べきれない。3切れ残ったところでおばあさんが持って帰りなさいとパックに入れてくれる。お会計は...というとたったの1300円!あの巨大なおでんは100円で牛スジだけ150円だったのか。あまりの安さに唖然とするしかない。こんなので商売になるの?と今横浜に嫁いでいるという妹さんも心配するそうだ。まったくこちらで有名な「ぼ○ぼ○」なんて店のお好み焼きは、値段はこれ以上で大きさはこの半分以下。
おでんだって値段は倍以上。まったく東京なんてショバ代だけでコストパフォーマンスが悪い、ラーメン屋でつけ麺食べるくらいがちょうどコストが合うのであり、高い店なんてくだらなくておよそ行けないなと、持論を深めた次第。
なおこのお店、食べログなどで出てこないが、口コミで東京の方からも食べに来るそうだ。私はFBなどで食べる前に写真を撮ってアップするのが、なにか不作法のような気がして嫌なので写真は撮らないし載せない(載せたのは常連の店だけ)ので写真はなく、お店を出て店名を探したが、お好み焼きのノボリなどはあったが店名がどこにも書かれてなく、今、グーグル・ストリート・ビューで見て「やまちゃん」ではないかと判断した。だから最初に紹介した時に「おそらく」が付いている。
宿泊は土佐の温泉なので、ここからまた2時間半はかかる。土佐のインターを出たところで予約をした旅行会社から携帯に電話が。「宿泊先様から夕食は19時までということですが、まだお見えになっていないので」。時計は1830分。ヤバイ!でもあと15分で着くからと返事をし、荷物を置いてすぐに食事に。
しかし15時過ぎに、もう食べきれないとう量でお腹はパンパンなのだ。お刺身とかでなんとか半分近く食べたところでギブアップ。部屋に入ると苦しくてそのままベッドに倒れこむように数時間も寝てしまった。温泉好きの妻は夜と朝と2回行ったそうだが、一人で手すりもない温泉へ行くのは自信がないので、部屋のユニットバスに入るが、ユニットバスはシャワーチェアがないので立ったまま体を洗うしかなく、髪の毛も洗いづらくとても不便な事が分かった。でもまあ体が洗えただけ良しとしないと。しかし初日からこんなにキツくていいのか。やっぱり入院した週の旅行は無理があるようだ。

3月22日(日)

 今日の朝はゆったり食事ができる。旅行先はやはり朝は和食の方がいいね。車椅子になったので、昔のように「目一杯」というスケジュールをやめたからだ。
845分にチェックアウトし、土佐インターからひたすら徳島まで高知自動車道と徳島自動車道を進むことになる。土佐インターへは9時に到着、ここから目指す鳴門北インターはなんと200㎞先だ。相変わらず高速でも一車線の区間が多く、飛ばすのが嫌いな妻は、すこし遅めの車がいるとその後ろについて離れないようにするので、結局、1回も休憩することなく、1130分に鳴門北インターを出た。
この鳴門のうず潮の観測船は3社あるのだが、一番小型で一番近くの港から出航するうずしお汽船の小型観測船を選ぶ。大潮の時間は13時なのでその近辺の観光船ならいい渦が見えるのだと言う。船は30分おきに出航。所要は20分、僅か数分で渦へと到達できる。実はこれがポイントだった。


車椅子ごと乗船できる他社の大型観測船はいいのだが、少し離れた場所に港があるので渦まで10分以上かかってしまう。やはり船に乗ったら、デッキへ出て、手すりにつかまりながら写真やビデオを撮らないと、人の頭越しに見るハメになってしまう。その点、うずしお汽船の小型観測船は5分程度で渦を体験できるのだ。車椅子から離れ、体幹が弱いのに立っていなくてはいけない自分にとって、立っている時間は短ければ短いほど楽。小型といっても団体客も来るので、数十人が乗り込んでくるが、手すりを占領できるのは20人ちょっと。よって10人ほど並んだところで、自分も列に入って立って出航まで待っていた。12時半に出航。空は晴天。海は凪。しかし瀬戸大橋の下のあたりの渦が出来る鳴門海峡が近づくと海水が波を立てて流れ始める。海峡の境にある段差のようなところから一気に水量が増し、海は一面、真っ白な多数の波頭に覆われ、まったくの別世界になる。


高速の水流の中だが、さすがに観測用に設計されている船、ほとんど揺れないのが凄い。この水域に他社の大型観測船や、さらに大きいバイキングの船のような大型船まで現れ、対照物ができるとかえって臨場感が増してくる。水流がどんどん早くなると突然、渦になり、消え、また次の渦になる。鳴門のうずしおというのは一つの大きな渦がグルグル回っているものかと思っていたが、干満の差で多くの海水が狭い海峡に出入りする際にできる激しい流れが、自然に渦になって消え、渦になって消えという偶然の連続の産物なのだ。写真を見ると非常にスぺクタクルに見えるが、音や揺れは見た目ほどではなく、時化の海の方が遥かに怖い。しかしこれだけの迫力あるシーンは他の海で見ることは不可能で、「世界の三大潮流」と言われる鳴門のうずしお、一度は見るべきだろう。ただし月齢での時期確認を忘れずに。
 ここを見てしまうともう徳島で他へいく時間は残っていない。まずは昼食だが、海鮮系などどこでも食べられるので、徳島ラーメンの名店へ行ってみることにする。徳島市内に40分くらいで戻り、一番の人気店という「いのたに」へ。入ってみて驚いた。座席だけで50以上はあるという大型店。注文と配膳をするベテランのおばちゃんが何人もいて様々な注文をさばき、厨房の男性達とケンカのようなやり取りをしながら上手く回している。基本的に一種類だけで普通盛・大盛、肉有、タマゴありとか選ぶだけだ。徳島ラーメンを全国区にした店なので、基本の肉有・生タマゴ入りを頼む。肉は豚バラというが、妻でも美味しいと言っていたほどしつこくなく、見た目はこってりで味の濃そうなスープも意外とあっさりしていて実に食べやすい。合わないと思っていた生タマゴもこれなら合う。
一度三軒茶屋に「徳島ラーメン」の看板を出した店があり、そこのは濃すぎておいしいとは思わなかったが、やはり本場は違う。熊本の天外天のラーメンもそうだが、地元の老舗で人気店(だいたいそういう店は一種類で勝負)に行った方が、こじゃれた店に行くよりよっぽどいい。だいたい私も妻も酒はビール程度、「飲まなくてもいい」というのはリーズナブルで個人的には楽しい。
 その後早々と徳島空港へ付き、早めに全国ハンバーガー選手権で8位になったという「とくしまバーガー」を食べる。阿波牛のバーガーと牛肉のスライス、トマトにすだちのソースがよく合う。特にバンズは絶品で、東京にも是非出店して欲しい。
帰りは早い方がいいので1735分発で、1時間10分後には羽田に到着した。自宅に付いたのは20時頃。次の日は仕事があるから早く帰らないと。といっても自分は体力がないので、翌日は年休。もちろん今回は職場にはナイショだ。まだマイルは余っているので、次回ももう計画中。振り返ってみると18か月前に群馬大病院で寝た切りになり、一生このままかと思っていた時にはマイルは2人で6往復分くらい貯まっていた。しかしもうマイルで出かけることなどないだろうと、みなamazonのクーポンに替えCD等を注文、週に3回、群馬まで来てくれる妻に、毎回何か持ってきてもらった。それしか何の楽しみもない時だったので、今になるともったいない使い方だが、あの時は気楽に使えて楽だった。あの時のマイルの使い方は、あれはあれで正解だった気がする。(佐野邦彦)











2015年3月21日土曜日

☆大滝詠一:『Niagara CD BookⅡ(Box Set)』(ソニー/SRCL8700-11)



 ここで初めて『A Long Vacation』以降のアルバムを聴いたなんていう人はいないとして、以降のアルバムは全部持っていると仮定し、初登場もしくはレア音源のみに絞って話をすすめたい。CD12枚組の充実した仕様だ。1981年の『A Long Vacation』は幻に終わった12インチシングル5枚組仕様の『A Long Vacation Single Vox』で聴くことができる。同年のリードメロディが入ったカラオケ『Sing Along V.A.C.A.T.I.O.N』、1982年の『Niagara Triangle Vol.2』はそのまま。1984年の『Each Time』は当初のCDから31年後にようやくオリジナルの形でリリースされ、待望の「レイクサイド・ストーリー」はフェイド・アウトの後にエンディング部分が入って完奏する(フェイド・アウト前のリフレインの数は30thAnniversary Editionが一番多いので最長ではない)の「大エンディングヴァージョン」だ。これは朗報。同年にリリースされた12インチシングル5枚組はプラス4曲加えて『Complete Each Time Single Vox』として登場した。

「魔法の瞳」は330秒後に新たにサビ(「ブルーの夜明けまで...」以降の30秒)が加わったロング・ヴァージョン、「夏のペーパーバック」はイントロにベースの入らないシンプルなヴァージョン、「木の葉のスケッチ」はエンディングまで入った長いヴァージョンになった。「1969年のドラッグレース」はエンディングのギター音が長く伸びるヴァージョン、「恋のナックルボール」は曲が終わった後小さくSEと大滝の会話が入ると僅かに違い、「レイクサイド・ストーリー」はフェイド・アウトされたヴァージョン(その他の曲は1986年の『Complete Each Time』のCDと同じだが、このヴァージョンは30thで登場したファイド・アウトが最も長く最長)である。加えられた「Bachelor Girl」と「フィヨルドの少女」は通常のヴァージョン、Niagara Fall Of Sound Orchestraの「Bachelor Girl(Instrumental Version)」は1989年仕様の『Niagara Song Book 2』のみ収録されていたもの。「哀愁のフィヨルドの少女」は『Snow Time』で登場したインストの「Fiord」。その1986年にプロモのみでリリースされた『Snow Time』は、1996年にCD選書でリリースされたものではB面部分に1曲エレキ・インストが無かったので、Niagara Fall Of Sound Orchestraの「レイクサイド・ストーリー」(1989年以降のフェイド・アウトするもの)を外し、渡辺満里奈のシングルに書いた「うれしい予感」をインストにした「Yokan」を入れたが、本ボックスでは元に戻った。ただし本ボックスの『Snow Time』はCD選書ヴァージョンでしか聴けないアコーディオンが冒頭に加わった「木の葉のスケッチ」をそのまま残してくれた。そして外された「Yokan」は本ボックスの『Niagara Rarities Special』に収録されている。初CD化のディスクは1982年リリースの『Niagara CM Special Vol.2』で、曲名はクレジットされていないが冒頭の9秒だけの「NIAGARA CM Special Theme」と、「A面で恋をして」の3ヴァージョン「(Narration)」「(A Cappella)」「(Track Only)」、さらに『A Long Vacation』のCM用の「Spot Special」「Instrumental Special」の6トラックが初CD化。1989年の『B-each Time Lon-g』はオリジナル仕様。Niagara Fall Of Sound Orchestra による1982年の『Niagara Song Book』と1984年の『Niagara Song Book 2』だが、曲名はオリジナルの形になったが、前者は1989年の仕様の「夢で逢えたら」のロング・ヴァージョンは元に戻され、後者は1984年仕様の『レイクサイド・ストーリー』の大エンディング・ヴァージョン仕様や、別ヴァージョンの「魔法の瞳」は使われなかった。ただし、後者の1989年版の2曲の差し替えについては先に紹介した「Bachelor Girl」に加え、もう1曲の「白い港」も『Niagara Rarities Special』に収められた。本ボックスの目玉「『Niagara Rarities Special』のレア・トラックは、初登場の「恋するふたり(Title Back Version)」で、ドラマの中で使われた約半分の長さのまったく異なるヴァージョン。2007年の「恋するふたり(7inch Version)」は、CDと違ってフェイド・アウトのあとにダンドビドゥのスキャットが入って完奏する別ヴァージョンだ。「幸せな結末(7inch Version)」の違いは不明。最もレアなのは1984年のプロモシングル収録の「ペパーミント・ブルー(Promotion Version)」と、同じ年の12インチシングルのみのプロモ収録の「夏のペーパーバック(Promotion Version)」と「真夏の昼の夢(Promotion Version)」の3曲。「ペパーミント・ブルー(Promotion Version)」のイントロは『Niagara Song Book 2』のイントロのストリングスに一見似ているが、歌が始まる30秒の直前までリズムまったく入らずストリングスのみで演奏も違う。その後は通常の「ペパーミント・ブルー」。「夏のペーパーバック(Promotion Version)」はNiagara Fall Of Sound Orchestraのヴァージョンの253秒から38秒までの間に大滝の歌うヴァージョンを入れ込んだもの。「真夏の昼の夢(Promotion Version)」はもっと凝っていてNiagara Fall Of Sound Orchestraのヴァージョンの後の242秒から、はじめはア・カペラで、その後にストリングスに合わせて歌っていて、倍の長さになっている。その他では1981年にFiord7名義でシングルリリースされた「哀愁のさらばシベリア鉄道(Organ Version)」も収録され初CD化。ただしこのシングルのもう片方の「哀愁のさらばシベリア鉄道(Guitar Version)」は、『Snow Time』の「Siberia」の訳だが、「Siberia」は最後の高音でのギターパートをそっくりカットしてその後のアドリブ・ギターを入れている編集なので、9秒短い。なお「恋するふたり(Strings Version)」はイントロ・エレピ・ヴァージョンの方で、2013年にリリースされたNiagara Fall Of Sound Orchestraの『Niagara Song Book 30th Edition』収録の「恋する二人」はイントロにストリングス被せた新ヴァージョンは入らなかったので手離さぬよう。(「幸せな結末」の方は収録された)そしてNiagara時代のコンピ集『Niagara Fall Stars'  81 Remix Special』には1981年にリリースされたLP BoxNiagara Vox』の『Niagara Fall Stars 2nd Issue』『More Niagara Fall Stars』『More More Niagara Fall Star』からVersion2の「すてきなメロディ」(7秒長い)Yuki Ya Kon-Kon」*「Fussa Strut  Part2(最後まで歌が入っていて全くの別テイク。10秒長い)「あの娘に御用心」(アップテンポのラテンアレンジでまったくの別テイク。ドウワップのアルバムのものより1分半短い)「恋はメレンゲ」(ドラムのパターンから違いアップテンポでアコーディオンを大きくミックスした軽快な完全別テイク。10秒長いMandshurian Beat」(バックを抑えめにギター音をよく響かせ哀調サウンドになっている)「霧の乙女号」*「Ride The Wild Surf」*やVersion3の「いつも通り」(Version2よりバックのミックスが僅かに大きい)「Cobra Twist」(エンディングに笛の音が入る)「Down Town」(ヴォーカルが若干オフ気味)「The Surfer Moon」*が収録されていた。*の多羅尾伴内楽團のテイクに顕著な差はない。(佐野邦彦)