2014年12月4日木曜日

☆Kinks:『The Kinks The Anthology 1964-1971』(Sanctuary/8875021542)



ロックの最も偉大なバンドは、いや、好きなミュージシャンと言いかえてもいい、それは何と問われれば、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ローリング・ストーンズ、フーそしてキンクスだと迷わず答える。かなり多くのロック・ファンが同じ思いを共有するはずだ。この中で今も残っているのはビートルズの除いた4バンドで、ビーチ・ボーイズ、ストーンズ、フーはそれぞれ50周年記念のアルバムを相次いで出したばかり。そのトリを飾ったのが、我らがキンクスで、このCD5+アナログシングル1枚のコンピーション『The Kinks The Anthology 1964-1971』がそれに当たる。ただ、1971年ってことは当然Pye時代のコンピでそのあとのRCA時代、Arista時代...はすっ飛ばされた訳で、他の3バンドに比べて淋しい感は免れない。よく見ると「50周年記念」とはどこにも書かれていない。曲目も他が「50」にちなんで50曲ずつのセレクトだったのに比べ140曲と圧倒的に多い。これは単なるPye時代のコンピなのか?と思ったが、未発表トラックが24曲も入り、初CD化も2曲、同梱には42Pの素晴らしいカラーの写真集。やはりこれは50周年記念と考えるべきなのだろう。音源派の私はこういう写真集とかはあまり重視しないのだが、このボックスの写真集は見たことがない素晴らしい写真が多く、しばらく見入ってしまったほど。
バンドとして4人で写ったポートレイトが非常に多く、若きキンクスなのでファッションも含めてとても可愛らしく、写真からもいい時代だったんだなと伝わってくる。およそサービスカット風のがないキンクスだが、階段に並んだ4人が、後姿の女性達に、手を伸ばして声をかけている?写真があったのには驚いた。こういう写真は撮らせないバンドのような気がしていただけに面白い。オシャレなタートルネックのファッションも見逃せないぞ。実はこのアルバム、日本のamazonで注文したが入荷が12月末とあきれるほど遅くに延期され、即刻キャンセルしてイギリスのamazonに注文し直して届いたばかり。ビートルズの『Work In Progress Outtakes 1963』も同じパターンでイギリスに再注文した。『Art Of McCartney』もそうだし、最近の日本のamazonは遅くて信用できない。最初のオーダーが少なすぎてすぐにはけてしまって再注文...なのかどうか分からないが、要注意なので、入荷遅延の場合はすぐに海外をチェックしてキャンセル海外で再注文をオススメする。円安で送料込でも値段はたいして変わらない。さてではいつものごとく、初登場の音源のみ初回しよう。まずは「Who'll Be The Next In Line」のAlternate MixSession Excerpt-Backing Track Take Oneだが、前者は完奏するのでこれは初めて。後者は荒削りな4人だけのバックトラック。誰かがピアノのコードを弾いているのでおそらくレイだろう。「Tell Me Now So I'll Know(Alternate Demo)」は、既発表のデモに比べてずっとスローテンポで荒削りなのでより初期の録音だろう。「Dedicated Follower Of Fashion(Session Excerpt Take1-3)」はタイトルの通り初期デモ。まだ掛け合いのコーラスもなく、後半はメロディを大分崩して歌っている。「She's Got Everything」のAlternate Mono MixBacking Track Take Twoだが、前者は歌い方も違うしヴォーカルもずっとオンでもともとメチャクチャかっこいい曲なのにさらにかっこよくなった。間奏の後半にはホルンも入っていた。後者はまだ間奏のリードギターが完成していない初期演奏。デイヴ・デーヴィスのギターはセンスがいいなあと改めて思う。「Big Black Smoke(Alternate Stereo Mix)」は従来のステレオに比べて非常にクリアーで分離のいいステレオで新鮮に聴こえる。「Mr. Pleasant」は初登場のステレオ・ヴァージョンで、やはりサウンドがクリアーでより楽しく聴こえる。「This Is Where I Belong」も初登場のステレオ・ミックスで、従来のステレオに比べ分離がよく、ヴォーカルがダブルトラックだとはっきり分かるミックスになっている。「Village Green」も初登場ステレオ・ミックスで、ヴォーカルがはるかにクリアーでオンになっていてレイが耳元で歌っているかのようで良い。初登場のステレオ・ミックスはまだ続き、「Two Sisters」は冒頭に短い楽器の音とカウントから始まり、これもヴォーカルがオンでクリアーだ。「Waterloo Sunset(Session Excerpt Backing Track Take Two)」はタイトルの通りでこの名曲の初期バックトラック。シャララのパートにこんな荒削りなギターが...というのが発見。「Act Nice And Gentle」はエンディングの演奏が20秒以上長く楽しめる初登場ステレオ・ミックスでこれもクリアーで分離がいい。「Harry Rag(Session Excerpt)」「Days(Session Excerpt)」「Johnny Thunder(Session Excerpt)」はごく短く歌もないので曲と言えるかどうか...。「Afternoon TeaAlternate Stereo Mix)」はイントロにスタジオチャットの後にピアノの前奏が入るがこれは初登場。ピンク・フロイドもぶっ飛ぶほどにプログレッシヴな「Lazy Old Sun(Alternate Stereo Mix)」は、レイのヴォーカルがあの鼻づまりのようなミックスではなくクリアーに聴こえて新鮮。エンディングの演奏も20秒以上長く続いていた。デイヴ・デーヴィスの「Good Luck Charm」はこれまた初登場のステレオ・ミックスで、スタジオチャットとピアノの演奏の後に曲がスタートする。そしてクリアー。「Rosemary Rose」は初登場のステレオ・ミックス(こればっかり書いている気がするが...)で、間奏の後にパパラパというレイのスキャットが10秒ほど加わっているのでその分、ロング・ヴァージョンになっている。「Lincoln Country(Single Version)」は初のシングル・ヴァージョンのステレオで、ストリングスの低音の響きが全く違う。また中間のスキャットのパートのストリングスも大きくミックスされていた。「Did You See His NameAlternate Ending)」は初のステレオで、モノではエレキ・ギターが大きく、シンプルな演奏に聴こえたが、ステレオでは全編にハーモニーが入っているのがよく聴こえ、アコースティックギター、オルガン、ハンドクラップと繊細な演奏だったことが分かる。エンディングがモノの突然ぶっちぎられる終わり方ではなく完奏する。「Misty Water(Alternate Mix)」はエンディングが20秒長く最後はララーMisty Waterとちょっと崩して歌ってフェイドアウトする。そしてアナログ・シングルへ移ろう。憎いことにどちらも初登場のTwickenham Television StudiosでのTV番組『Shindig!』用ライブ音源で、「You Really Got Me」は19641216日に収録され、スタジオ・ライブらしいザクザクした歌と演奏が楽しめる。「Milk Cow Blues」は196584日の収録で、アルバムよりはるかにヘヴィな歌と演奏で、これもスタジオ・ライブならでは。最後に、特別なクレジットはされていなかったが、1973年リリースの未発表曲を集めた『The Great Lost Kinks Album』に収録されていた「Till Death Us Do Part」と「When I Turn Off The Living Light」は初のCD化である。前者はノスタルジック、後者はメランコリックなナンバーでどちらもテレビ用に作られた曲だった。(佐野邦彦)

以下は後に判明した相違点。Whoの『My Generation(Stereo)(ハイレゾ)』の紹介文の最後に書いたものと同じだが、せっかくなのでここにも以下に添付した。

さて『The Kinks The Anthology 1964-1971』を犬伏さんがレココレで紹介していて、私も気づかない別ミックスがあったのでそれも書かせていただこう。ただし『The Kinks In Mono』や『Hidden Treasures』などに入っているものは割愛させていただく。これらは初登場のステレオ・ミックス。まず「Days」はバックに埋もれていたオルガンがくっきり聴こえる。「Death Of A Clown」はイントロに深いエコーのカウントのあとデイヴのヴォーカルが中央から大きく出てくるので新鮮。「Come On NowAlternate Version)」は『Picture Book』収録のものと同じで最初の失敗テイクは入ってないが、音質ははるかにいい。「All Night Stand」も音質は今までのベスト。なお、『The Great Lost Kinks Album』からの曲が2曲入ってこれで全部CD...と書いたが「Pictures In The Sand」も入っていたのを忘れていた。なおこの曲は歌無しヴァージョンがあり、1983年のコンピ『The Kinks'  Greatest Hits-Dead End Street』(PRT)の1stプレスのみ付けられた10インチのボーナスディスクに収められていたが、これは未CD化のままだ。(佐野邦彦)

Anthology 1964-1971 (5CD+7 Inch)






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