2015年1月に復刊ドットコムから発売される「東映名作アニメ絵本・5巻セット」付属の小冊子と、5冊を入れる箱の最終校正が終わった。箱は裏の写真をお見せできないのが残念だが、全て今まで他の本には出ていないカットで構成してあり、箱だけでもインパクトがあるはず。この復刊ドットコムの特典の小冊子は、8月の「ぬいぐるみ殺人事件」で既に作り、またこの後来年2月の「ワンダー・AZUMA HIDEO・ブック」の分も作っているので、この半年に3つ作っている訳(前述の2冊は復刊ドットコムのサイト予約のみなので同じ特典で違う)だが、明らかにこの「東映名作アニメ絵本」のものが一番手間暇かけていて、売り物にしたいくらいの内容だ。しかし所詮オマケ、こういうお金にならず、部数も少ないものに手間暇をかけてしまうのは、性分なんだろうなあ。オマケなんだからと適当に作る事はどうしてもできない。好きなものになればなるほど手間をかけてしまう。特にこの「東映名作アニメ絵本」自体は、ほぼストレートな復刻なので、編集者としての腕を使いたくなるのはこの小冊子になる。まず表紙は、
1981 年に自分が編集人だった「漫画の手帳」で森康二先生の特集をした時に描いていただいたヒルダ。
カラーで載せられないのが残念。続く見開きはこの本のために描きおろしてもらったふくやまけいこさんの2Pのマンガ「ある夜のできごと」。このマンガは森康二ファンなら誰でも涙する珠玉の一遍だ。まず舞台が東映動画の前身、日動時代の「黒いきこりと白いきこり」で、心優しい白いきこりが森先生というベストの設定。最初にみんなを呼ぶのは同じく日動時代の作品「こうさぎものがたり」のウサギ。ビデオ化すらされていない短編だが森ファンなら知っているだろう。囲炉裏の周りには、ジム、キャシー、ヒルダ、タイタンボウ、白蛇伝のパンダ...ジャッキーもいるぞ。次のページにはローザ姫やどうぶつ宝島のキャラ達が。ラストの一コマで外にいるのはハッスルパンチのガリガリ博士や三匹の殺し屋...。もう森キャラ全員集合で、嬉しくなってしまう。そのあとは東映動画スタジオ時代が出来た時の生き字引ともいえる大塚康生さんに、東映動画スタジオの思い出を新たにインタビューしてたっぷり語ってもらった。クーラーのない時代、しかし夏でも動画用紙が風で飛ぶので窓は閉め切り、その代わりに部屋の真ん中に大きな氷をおいてみんなで触りにいった...なんてとっても昭和な雰囲気が妙に心地よい。彩色や仕上げのための女性スタッフが多いが、交通の便の悪い時代だったので、実はご近所に住む娘さん達を雇っていたとか、面白いエピソードをたくさん聴くことができた。そして私の、今回復刻した東映動画の4大名作「太陽の王子ホルスの大冒険」「長靴をはいた猫」「どうぶつ宝島」「わんぱく王子の大蛇退治」ともう1作品、石ノ森章太郎原作の「空飛ぶゆうれい船」について、作品評を交えつつ、1981年から1982年にかけてインタビューした宮崎駿さん、森康二さん、大塚康生さん、小田部羊一さんが、これらの作品について語っていただいた部分を抜粋しながらまとめた。本来はこの4人のインタビューを核にして、本として出す予定だったのだが、ムズカしい諸事情があって出せなくなり、こうやって一部だけでもとゲリラ的に取り込んでおいた。この名作アニメを作りだした中核である宮崎さんら4人のレジェンド・アニメーターと演出の高畑勲さんの5人だが、この絵本を入手した1976年当時はまだほとんど認知されず、自分達の目指す作品を求めて出身の東映動画をみな退社して、外で力を発揮していた。この長文の主眼は、インターネットも、ビデオも、コミケもなく、アニメのセル画が雑誌に一コマ載っただけでも大事件という時代に、どれだけこの本(発売当時は「小学館の絵文庫」)が貴重だったのか、どうやって情報を得てファンが増えていったのかなど、「世界の宮崎駿」となる大ブレイクまでをずっと追ってきた一ファンとして、ファン側の視点でこの時代を残しておくことだった。最終ページはVANDA5号での「太陽の王子ホルスの大冒険」特集用に、和田慎二さんに描いていただいた「ヒルダのこと」。これだけのラインナップでまとめたこの小冊子は、この5巻セットを刊行している間でしか手にすることはできない。是非、予約していただいて、手元に置いていただきたい。当時のレコードやソノシート、映画パンフレットなどの資料も載せてあるので是非。(佐野邦彦)
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