今から5年前の2009年にリリースされたCDを何故今更とお思いだろうが、気づいてしまったのだから紹介しておかないわけにはいかない。CCRは2001年にリリースされた前身のTommy Fogerty & The Blue Belvets,Golliwogsのシングルから、ライブアルバム2枚を含めた全アルバムを6枚のCDに収めたボックスセット、2008年のラストアルバム以外の全スタジオアルバムに未発表音源を収録した単独盤のリイシューがあったので、これで全音源終了と思っていた。さらに映像も2006年のDVD『I Put A Spell On You』でTV用クリップもほぼ大丈夫とチェックしてなかったのが今回の失敗。このCCRのアルバムは1968年から解散後の1976年シングル計14枚を全てオリジナルのモノで収録していたのだ。CCRが全シングルをモノにしていたのは正直、気づいていなかったのである。またオマケの4曲入りDVDにもYou Tubeでは見た「Bootleg」のTV映像が入っていた。甘々のチェックでWeb VANDAの読者の方に申し訳ない。さて内容だが、アルバム音源までモノだった「Call It Pretending」「Proud Mary」「Bad Moon Rising」「Lodi」「Sweet Hitch-Hiker」以外は全てモノラルとして初CD化(ベスト盤の音源はモノの可能性ありだがチェックしたことがない)だ。やはりストレートなロックンロール、そしてアルバムではなくシングルヒットを目指したCCRのシングル曲はモノラルで聴くと最高だ。ヴォーカルも音圧が違う。何かパンチに欠けるなと思っていた「Green River」もモノで聴くと一気に迫力が増し、大ヒットが理解できた。このモノシングル、最後のギターフレーズが1回多く3秒長い。逆に「Down On The Corner」はイントロのハイハットとカウベルの10秒分がカットされ、リフから始まりこれがシングルヴァージョンとして正解だ。「Travelin' Band」のアルバムヴァージョンはモノに近いミックスで、1分後のピアノのフレーズの位置でステレオと気づくほど。その他のシングル曲も、アルバムではステレオながらモノ風にミックスしている事が多い。ジョン・フォガティの狙いが分かる。その他では、中学生時代に買った「Suzie Q」のシングルがPart1とPart2に分かれてこともこのCDで思い出した。(キング・クリムゾンの「クリムゾンキングの宮殿」のシングルも同じパターンで当時買った)長い曲はこのパターンもあったな。バッサリとカットしたのは「Born On The Bayou」で5分12秒が3分44秒に。解散後リリースの「I Heard It Through The Grapevine」も10分59秒が3分49秒、わざわざAB面ともモノミックスを作るこだわりが素晴らしい。この機会に全スタジオ曲をチェックしたが『Creedence Clearwater Revival』の「The Working Man」と『Bayou Country』の「Penthouse Pauper」はモノだと思うがどうだろうか。なおディスク2のプロモ用のラスト2曲だけオマケなのでステレオ。CD2枚とDVD1枚なのに値段は非常に安いのでオススメ。(佐野邦彦)
2014年8月30日土曜日
2014年8月24日日曜日
☆Kinks:『Lola Versus Powerman And The Moneygoround & Percy』(Sanctuary/88843089592)
コンスタントに『Arthur...』まで出ていたキンクスのDeluxe Editionは2011年7月以降、ピタリとリリースが途絶え、この2枚を飛ばして『Muswell Hillbillies』が2013年9月にようやく発表された。しかしそれまでのDeluxe Editionはモノ盤があった時代なのでステレオ+モノ+ボーナストラックという構成だったが、1971年の『Muswell Hillbillies』はステレオのみの時代なのでステレオ盤+ボーナストラック盤という2枚組に構成を変えた。それにしても飛ばされた2枚はどうしてと疑心暗鬼が漂っていた1年後の2014年9月、なんと『Lola...』&ボーナストラック+『Percy』&ボーナストラックというカップリング形式のリリースとなった。もちろんこの2枚も70年、71年でモノ盤のない時代なのでステレオである。これでは1998年に単独でCastleからリリースされたものと同じではとお思いの方もいるだろうが前者はボーナストラックが3曲から7曲に、後者は5曲が10曲にと大幅に増え(Castle盤『Percy』は本盤未収録3曲あり)、さらに前者は7曲全てが初登場、後者は4曲が初登場と充実のリリースとなった。アルバムについては、このWeb VANDAの読者なら語るまでもないだろう。特に『Lola...』はPye時代の傑作として名高い名盤。よってボーナストラックのみ記述する。
『Lola...』ではまず完全未発表曲の「Anytime」と「The Good Life」。前者はミディアムのナンバーで盛り上がりもありアルバム用としては十分な出来。後者はロックンロールのブギで後の「20th Century Man」を思わせる部分もある佳曲。録音はそれぞれ70年5月、70年9月で、『Lola...』セッション時のものであり、ボツ曲だった。「The Contenders(Instrumental Demo)」と「This Time Tomorrow(Instrumental)」はアルバム曲の歌なしだが、楽器が少なく、どちらもデモ・ヴァージョンである。ただし前者の録音は完成ヴァージョンより3日後の録音で意図はよく分からない。後者は同じ日なので、練習ヴァージョンだ。「Lola(Alternate Version)」は目玉のひとつ。イントロが印象的なコードではなく、アルペジオから静かに始まる。しかし2番からのアレンジ・コーラスはレコードに近く、完成間近のヴァージョンで、完成ヴァージョンの7日前に録音されたもの。「Apeman(Alternate Version,Stereo)」はイントロのSEが既に入っているのでこれも完成に近いが、レコードでは1番のミックスが極端に小さくミックスされているが、ここでは普通のヴォリュームなので聴きやすい。完成ヴァージョンの一か月前に録音されたもので、クレジットでは71年4月に発売されたテイチクの日本盤LPに入っていたと書かれているが初耳だ。そうだとすると大発見である。逆に最も違うヴァージョンが「Got To Be Free(Alternate Version)」で、レコードではギターによりカントリータッチの歌いだしで始まるが、このヴァージョンはグロッケンシュピールをバックに静かに歌われまったくアレンジが違っていた。オリジナルは70年9月の録音だが、クレジットでは70年10月にBBC1で放送されたものだという。
『Percy』のボーナストラックだが「Dreams(Remix)」42秒くらいから27秒くらい間奏が入っているが、こちらではそれがなくdreams...のコーラスがいきなり入り、流れとしてはこのRemixヴァージョンの方がいい。完成ヴァージョンはdreams...のコーラスにエフェクトがかかるがRemixにはそれがなく、その点もいい。「The Moneygoround(Alternate Version,Mono)」は『Lola...』の収録曲で完成版の一か月後に録音されたものだが、歌い方が一部違い演奏も違う。72年1月にヴォーカルがプラスされ、あのCD5枚+DVD1枚の『The Kinks At The BBC』のビデオに収録されている。「God's Children(Mono Film Mix)」は、ギターとパーカッションが大きくミックスされ、ヴォーカルもオンでアルバム版と印象がかなり違う。「God's Children(Mono Film Mix)」は、アルバム版はシンプルなインストだが、こちらはオーケストラにコーラス(キンクスではない)とまったくの別物。その他は既発表済のもので、「Lola」はCoca-ColaではなくCherry Colaとうたうシングルヴァージョン、「Apeman」「Rats」はモノシングルヴァージョン、「Powerman」のモノシングルヴァージョンは、以前の『Lola...』のCastleのCDに入っていたもの、「The Way Love Used To Be」のモノフィルムミックスも以前の『Percy』のCastleのCDに入っていたものだが、Castle盤は他に2ヴァージョン入っていた。あと「Apeman(Alternate Version.Mono」とはデンマーク盤シングルのみのヴァージョンのことで、Castle盤などで聴くことができる。(佐野邦彦)
2014年8月17日日曜日
グレンスミス:『Stevenson Screen』(ディスク・ユニオン/MYRD-73)
宮崎貴士を中心とした音楽ユニット、グレンスミスがファーストの『ロマンス・アルバム』から4年振りとなるニューアルバムの『Stevenson Screen』を8月20日にリリースする。
今作から筆者がインディーズ~メジャー時代を通して高く評価していた、シンガー・ソングライターのクノシンジが新メンバーとして加わり、このユニットに新たな化学反応を起こしたようだ。
宮崎にdetune.の郷拓郎と石塚周太、クノという4人がソングライティングを手掛けることで、各々の持ち味が絶妙に溶け合って完成度の高いアルバムに仕上がっている。
そもそもグレンスミスは、シンガー・ソングライター(以下SSW)田中亜矢らとのユニット図書館で活動中の宮崎が、たまたまラジオで耳にしたポップデュオdetune.のサウンドに惹かれてメンバーにコンタクトを取ったことからスタートしている。
ドラマーに元フリーボの廣瀬方人、作詞にはスタディストとして多くのメディアで活躍している岸野雄一をはじめ、漫画家の西島大介、ライターの足立守正が参加したファースト・アルバム『ロマンス・アルバム』を10年にリリースし各所で高い評価を得た。
その後クノシンジが正式メンバーとして参加し、12年にはSSWタニザワトモフミ(現在は谷澤智文で活動)の『何重人格』のレコーディングにグレンスミスとして3曲に参加している。
ユニットとしてグレンスミスの魅力だが、4者4様のソングライティングが絶妙に共存している点とメ、イン・ヴォーカリストである郷の唯一無二の個性と表現力であろう。
では今作の主な収録曲について解説しよう。
リード曲で冒頭の「The Great Escape」は、宮崎の作曲と足立の作詞によるスケール感のある曲で、タイトル通り、映画『大脱走』を思わせる詞のフレーズも出てくるが、曲調やコーラスを含めたアレンジにはポール・マッカートニーの影響を強く感じさせる。特にヴァースとサビを繋ぐブリッジはこの曲の肝であり、一聴してポールイズムを察知してしまった。無駄を排除した楽器配置と新ドラマーとなった堀江研介の的確なプレイも聴きどころだ。
続く叙情的なワルツの「こいやみ」はクノの曲だが、これまでの彼のイメージから想像できなかった劇的な転調を繰り返す。あがた森魚にも通じる郷と足立による詞の世界観も相まって完成度が高い。クノはベースとアコースティック・ギターの他、マンドリンとキーボードもプレイしている。印象的なアコーディンオンはZABADAK等のセッションに参加する藤野由佳による演奏だ。
今作中唯一のカバーは、滋賀県立大学教授で今年出版された著書『うたのしくみ』で知られる、細馬宏通作による「街頭行進」(細馬のバンド"かえる目"のレパートリー)である。
細馬自身もヴォーカルでゲスト参加しており、愛すべき歌声でこの陽気な曲に花を添えている。しかし宮崎の人脈の広さにはただ驚くばかりだ。
郷と宮崎の共作に足立が詞をつけた 「ティーンエイジ・ウルフ」は、3分弱の小曲ながらプログレッシヴな展開を持つ曲で、ストリングス・シンセやウクレレが効果的な響きをしている。
ピアノのみをバックに歌われる「ネジの雨」はクノの作曲、足立の作詞による美しいバラードで、間奏のアコギ・ソロはクノによるものだ。特にこの詞の世界観は秀逸で、ムーンライダーズ中期の鈴木博文を彷彿とさせて耳を奪われてしまった。
アルバム・ラストの「Meaning of Tonight」は宮崎の作曲、足立の作詞で、宮崎自身がリード・ヴォーカルを取り、コーラスには本作の殆どの作詞を手掛けた足立をはじめ、近年活動を再始動した東京タワーズの加藤賢崇と中嶋勇ニ、元有頂天のリーダーでナゴム・レコード主宰、現在は劇団「ナイロン100℃」主宰で鈴木慶一とのNo Lie-Sense(ノー ライ・センス)での活動で知られるケラリーノ・サンドロヴィッチ、また前出の細馬や前アルバムに作詞で参加した西島大介等々、宮崎の人脈によるゲストが一挙参加して大団円を迎えている。
デビュー当時から筆者が高評価しているクノシンジが全面参加したアルバムというポイントもさることながら、そのサウンドはムーンライダーズ及びその一派のファンは必聴であり、拘り派ポップス・ファンである本誌読者にも大いにお勧めしたい。
彼らの活動情報は下記へアクセスして欲しい。
グレンスミス・オフィシャルサイト
『Stevenson Screen』特設サイト
(ウチタカヒデ)
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