2014年5月28日水曜日

☆Rolling Stones:『Sweet Summer Sun Hyde Park Live Extra Bonus』(Ward Records)

ちょっと古い情報だが、2012年にハイド・パークで行われたライブのブルーレイもしくはDVD+CDの日本盤は、昨年10月にスペシャル・ボーナス・ディスクがプラスされたCD3枚でリリースされ、輸入盤と比べ「Happy」を多く聴くことができた。今年になってこの日本盤の帯を証拠としてWard Recordsに送れば、360円の実費(送料込)でさらに「All Down The Line」「Bitch」「Beast Of Burden」が入ったExtra Bonusディスクを送ってくれる。これでこのコンサートの全ての曲が聴けることになる。ストーンズの場合、日本盤は値が張る代わりに、輸入盤に比べ日本のみのボーナス曲が入ることが多いので、安いからと言って輸入盤に飛びつくと、損することになる。「Bitch」はゲイリー・クラーク・ジュニアが1コーラスとサビを歌っているがミックに比べ迫力がなく残念。この3曲はストーンズのライブ定番なので自家薬篭中の出来だ。(佐野邦彦)
申し込みは下記まで。

2014年5月6日火曜日

ヤマカミヒトミ:『Withness』(nu music/nu001)


 日本が誇るボサノバ・シンガーである小野リサのバンド・メンバーとして国内外のツアーに参加する傍ら、由紀さおりや久保田利伸などの大物アーティストから、saigenjiや流線形など独自の世界観を持った拘り派のミュージシャンまでボーダーレスにサポートする、女性サックス・プレイヤーのヤマカミヒトミが初のソロ・アルバムをリリースしたので紹介したい。

 ヤマカミヒトミは立教大学在学中にジャンプ・ブルース・バンドの世田谷ジャンボリーに参加したのを皮切りに、カセットコンロスのメンバーとなった後もマルチ・リード奏者(アルト・サックス、ソプラノ・サックス、フルート、メロディオン)として、アン・サリーやsaigenji、ハナレグミ、おおはた雄一、湯川潮音、流線形等々数多くのミュージシャンのレコーディング・セッションやライヴをサポートしてきた、言わば百戦錬磨の女性プレイヤーである。
 05年より小野リサ・バンドのレギュラー・メンバーとして、海外の著名ジャズ・ミュージシャン達が出演する音楽フェスでも演奏しているのでその腕前については説明不要であろう。
 またカセットコンロスから離れた後、ピアニスト兼作曲家の宮嶋みぎわとのhitme&miggyで『音には色がある』(07年)、BE THE VOICEの和田純子、モダーン今夜の永山マキ、前出の宮嶋みぎわとの女性4人でのLynn名義で『GIRL TALK』(08年)を各々リリースしており、その活動は多岐に渡る。

 そんなヤマカミにとって初のソロ・アルバムである本作『Withness』は、これまでのセッションで培ってきた演奏経験を元にジャズからブラジリアン・ミュージックをボーダーレスに展開した、非常に心地よい全編インストゥルメンタル・アルバムで、オリジナル4曲、カバー曲2曲から構成されている。
 サウンド・プロデューサーにはギタリストの平岡雄一郎を迎え、アルバム全編で巧みなギター・プレイを披露しており、パーカッションは名手の石川智が参加している。




 では主な曲を解説しよう。冒頭の「The wedding」は、南アフリカ共和国出身のピアニスト、アブドゥーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)の最高作の一つに挙げられる名バラードで、ここでは元曲が持つ崇高な美しさを活かしつつ、6/8拍子にリズム・アダプトされおり、石川の複数のパーカッションが効果的に曲を演出している。この1曲だけでアルバムのよさを感じ取れる、そんな演奏である。
 続くオリジナルの「A Rainbow After The Rain」はソプラノ・サックスがリードを取り、ユニゾンしているピアノもヤマカミ自身が弾いている。この静かに包まれる音空間は、ウェイン・ショーターの『Native Dancer』(74年)にも通じる心地よさで、窓辺から雨上がりの空を見上げたくなる。
 2曲目のオリジナル「New Green Days」は、ブラジル北東部の沿岸地域で発達したリズム"ココ"で演奏され、ヤマカミは主旋律のピッコロとアルト・サックス、伴奏のメロディオンを担当している。全編で聴ける石川のパンデイロ、平岡のギター・ソロも聴き逃せない。
やはりアルバムを通して聴いて残るのは、例えようのない心地よさであり、アルバム・タイトルの"Withness"という言葉が象徴している。

(テキスト:ウチタカヒデ





The Bookmarcs:『眩しくて』(small bird records)


 VANDA30号にて筆者と対談したミュージシャンの近藤健太郎と作編曲家の洞澤徹によるユニット、The Bookmarcs(ブックマークス)が3曲入りシングルを配信でリリースしたので紹介したい。

昨年本サイトでレビューしたカバー・アルバム『音の栞 ~Favorite Covers~』で、その拘りの選曲によって筆者を唸らせた彼等The Bookmarcsは、作編曲家でギタリストの洞澤徹と、ポップ・グループ"Sweet Onions(スウィート・オニオンズ)" のリーダーでヴォーカリストの近藤健太郎が2011年に企画した男性ボーカル・ユニットである。
12年にリリースしたEP『Transparent』がiTunesヴォーカル部門チャートで最高9位になるなど評価も高く、翌年には映画「風切羽」に劇中挿入歌を提供し、全編の音楽を洞澤徹が手掛けている。

では本作について解説しよう。タイトル曲の「眩しくて」は前々作収録の「黄昏のメトロ」同様に、スティーヴィ・ワンダーを彷彿させる温かいシンセのフレーズが印象的なミドル・テンポのラヴソングで、打ち込みによるホーン・アレンジも実に効果的だ。近藤による切ない歌詞も相まって、爽やかな大人の純愛という世界観が描かれる。



続く「想い出にさよなら」は、前作『音の栞 ~Favorite Covers~』で取りあげた「こぬか雨」(『DEADLY DRIVE』収録・77年)の作者である伊藤銀次の最も知られる曲、「幸せにさよなら」(『Niagara Triangle Vol.1』収録・76年)の当初のタイトルとしてナイアガラ・ファンには知られるが同名異曲であり、伊藤のファンと公言している彼等二人によるオマージュであろう。
そんな洞澤のアレンジにもナイアガラ経由のフィレス・サウンドの影響が垣間見られて、ドラミングのパターン、ティンパニやカスタネットのアクセント等聴いていて楽しめる。
青春の喪失感漂う近藤による歌詞もサウンドにマッチしていて、リフレインする一人多重のコーラス・パートは完成度が高い。
WebVANDA読者にはこの曲が最もアピールすると確信するので是非聴いて欲しい。

ラストの「消えない道」は「想い出にさよなら」に世界観が近いが、この曲のアレンジには80年代のテイストが加味されていて、ストリングス・シンセのリフや主張し過ぎないギター・ソロなど洞澤のセンスが光っている。また近藤の声質に寄るところも大きいが、トーマス・ドルビーが手掛けていたころのプリファブ・スプラウトを彷彿させる。


なお本作は4月30日から下記のITunesサイトから配信リリースされているので、興味を持った音楽ファンは是非購入して聴いてほしい。

2014年5月3日土曜日

☆Beach Boys:『Back Again』(Echoes/ECHO063-9)DVD ☆Frankie Valli And The Four Seasons:『Live In Chicago 1982』(Immortal/IMA105015)

どちらも昨年のリリースで、今頃気づいたという有様。そのため、まとめて紹介しておくことにした。前者はジャケットにLive In USA 2012 Live In Japanとくっきり書いてあるが、1曲だけがアメリカで残り33曲は全て2012816日の千葉QVCマリーン・フィールドでのリユニオン・ライブをそっくり収録したもので、これは同年9月にWOWWOWで放送されたものをそのままDVDに焼いただけ。それなのに画質はあまり良くない。限りなくブートに近い代物だろう。この日のコンサートには実際に足を運んでいて、過去Web VANDAで詳しいレビューを書いたので、内容は省略。 だこの放送があった9月には入院しており、それが現在まで続く長い闘病生活のスタートなのだが、そのためこのWOWWOWの放送は見られなかったので個人的には嬉しいところ。だってメンバーのアップなんて全然見られなかったから。自分のリードの曲はしっかりやるけど他はやる気のまったくないブライアン、ファンサービスに徹する汗だくのマイク、やっぱりヴォーカルは一番しっかりしているなーと痛感するアル、ニコニコと明るいが、歌も演奏もどれだけ貢献しているのか分からないブルース(大好きなのに残念!)、しっかりとリード・ギターで貢献していたデビッドと、遠かった会場と違って近くでじっくりと見られた。最後の「In My Room」は画面にTV14と表示されるアメリカでのスタジオ・ライブで、歌も演奏も、画質も良い。こっちももっと入れてもらいたかったなー。
フォー・シーズンズはDVDも出ているが、レビューで画質最悪と書いてあったので、CDのみとした。その前年にリユニオン・コンサートが行われているので、ボブ・ゴーディオも入った同じメンバーだろう。やはりフォー・シーズンズの音楽的中核はボブ・ゴーディオなので、彼がいないとそれはフランキー・ヴァリのソロになってしまう。「Grease」の大ヒットから月日が経っていないので、まだ現役バリバリの彼らの歌と演奏が楽しめる。演奏はかなりビートが効いていて、ラフな分、迫力がある。冒頭に一番好きな曲である「Dawn」を持ってきたのには泣けるが、レコードのスリリング感が乏しい。フランキー・ヴァリのソロでは「My Eyes Adored You」と「Can't Take Me Eyes Off You」が光るが、後者は観客も大合唱で一番人気はやはりこの曲だなと分かる。個人的なハイライトは「A Sunday Kind Of Love」のア・カペラで、やっぱりフォー・シーズンズの実力を見せてくれた。そして嬉しいのは往年のヒット曲メドレー群。ベストは「I've Got You Under My Skin-Working My Way Back To You-Will You Love Me Tomorrow-Opus17- I've Got You Under My Skin」。最高の流れ。「Save It For Me-Candy Girl-Big Man In Town-Ronnie-Rag Doll」もいい。最後は「Let's Hang On」で締め、これもいいなあ。残念ながら昨年のフランキー・ヴァリのソロ・コンサートは入院中で寝たきり状態、残念とか言える状態以前の悲惨な体だったが、今は治療が効果を奏して、短い距離なら両手の杖で移動できるようになったので、色々な場所に連れて行ってもらえるようになっている。4月には権現堂の桜と菜の花のコラボを見てきましたよ。今は手動運転装置付の車の発注中で、8月納車なので10月には2年ぶりに職場復帰予定。まあ治療は続くので、4週に1週は休みという不規則勤務ですが。昨年とは飛躍的にQOLが上がっていますので、今は自宅を打ち合わせ場所にして、VANDA以前に作っていたマンガのミニコミの関係で、マンガの復刻を次々準備中。そちらも発売日が決まったら告知します。(佐野邦彦)
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